ボックス21 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

  • 早川書房
4.17
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本棚登録 : 193
感想 : 26
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  • Amazon.co.jp ・本 (592ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151821547

作品紹介・あらすじ

強制売春の被害者が起こした思いもよらぬ事件。グレーンス警部が直面する北欧の闇とは? スウェーデン警察小説シリーズ第二作。

感想・レビュー・書評

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  • グレーンス刑事シリーズ第二弾。
    相変わらず重く、苦しく、辛い、だけどずっと読んでいたい。そんなザ・北欧小説という感じ。

    売春斡旋業者から大怪我を負いながらも逃げ出した女が、病院の死体安置所に人質を取って立て篭もる。要求はグレーンス刑事の親友と話をすること。なぜ人身売買により他国から売られた女が、立てこもり事件を起こすのか。一方、グレーンス刑事の恋人が脳に障害を持つきっかけとなった事故。その事故を誘引した犯罪者が刑期を終え出所することに。。。

    今作も2部構成。売春婦リディアが起こした立て篭もり事件の顛末と、そのことで明らかとなったある真相をめぐる二人の刑事の苦悩が描かれる。

    真相については途中でなんとなく察することができる。ラストについても同様。ただ、物語の構成が素晴らしく、読んでいても全く飽きがこない。
    救いはなく。希望も叩き折られる。だけど、素晴らしい小説。

    ボックス21とは何か。題名もとても秀逸。

  • 「制裁」以上に、夢中になって読んだ。
    満員電車に乗るのが全く苦にならないほど。
    なんだったら、この本が読めるから電車に乗るのが待ち遠しかったほど。

    恋人(だったのか?本当に)に裏切られ、船内で殴られた瞬間に希望が粉々に打ち砕かれ、自分の身体が自分のものではないと思いながら、絶望の日々を過ごすリディアを思うと、胸が締め付けられる。
    リディアの命とプライドを賭けた立て篭もり、真実が白日の元に晒されて欲しかった。
    彼女の心が壊れることと引き換えに保持していた「ボックス21」、このタイトルにも胸打たれる。

    しかもこの売春斡旋はフィクションではない。
    こんなに辛すぎる思いをする女性は、この世にただの1人もいてほしくない。

    そしてラスト3行の衝撃。
    「だからコイツやって言ってたやん」と誰にともなく独り言。分かってはいたもののやはり衝撃。

  • アンデシュ・ルースルンド&ベリエ・ヘルストレム『ボックス21』ハヤカワ文庫。

    北欧社会の闇を描いた警察小説の傑作。ランダムハウス講談社より刊行されたグレーンス警部シリーズ第2作が復刊。本作のラスト3行の衝撃はフィリップ・マーゴリンの『黒い薔薇』にも優るとも劣らない。

    売春斡旋業者から激しい暴行を受け、病院に搬送されたリトアニア人娼婦のリディアが取った思いも寄らぬ行動は事件の真相へと…

    ランダムハウス講談社版で既読であるのだが、これから刊行されるであろう未訳作品に期待を込めての再読。

  • エーベルト・グレーンス警部シリーズ第二作。

    もはや苦行だ。
    相変わらず苛烈な暴力の描写に、
    正義の無力さ、人生の虚しさの熱帯雨林をかき分けて前進するような苦行。
    その行程の果てにあるものは、
    心洗われる大瀑布でもなければ、
    失われた古代遺跡でもない。

    前作で登場した囚人が刑務所から出所して話ははじまるが、
    そこに外国から騙されて連れてこられた売春婦たちがからんでくる。
    酷い暴力の被害者の彼女が、銃と爆弾を持って立てこもった目的はなにか。

    グレーンス警部と囚人の因縁が明らかになり、
    自分の恋人に重傷を負わせ人生を破壊したその犯罪者を、
    傷害からくる事故死を殺人の罪で追い込むのはまだ良いとして、
    亡くなった刑事仲間の犯罪を隠蔽するのは納得できない。

    著者という現地の案内人に連れられ、
    蚊やヒルに襲われ夜に怯えながら進んだ
    密林の奥にあったのは、
    馬をも飲み込む底無し沼だった。
    人の心の闇という名の。

    いや、ここが終着点ではないのかもしれない。
    救いは次の作品にあるのかも。

  • エーヴェルト警部シリーズの2作目。
    北欧社会に蔓延る闇を主に話が進み、結末は…。
    嫌な読後感だけれど、物語が、世界全体に蔓延る闇を描いているようで、気持ちに突き刺さるものがある。

    北欧社会の社会が抱える闇は、東欧諸国にもつながり、そして、日本にも蔓延っている…。

    世界全体の問題。

    シリーズ3作目を読むつもりだが、エーヴェルト、スヴェンともに、心に深い傷をもったまま、仕事をしていくことになるのか…。

  • 東欧における女性の人身売買問題は西欧だけでなく、日本も大きなマーケットの一つのようだ。
    騙して借金させ、異国の地でその返済のために毎日十数人との売春を行う。

    その重いテーマを単なる犯罪ミステリーとして描くのではなく、「恥」として登場人物たちの気持ちの中に深い自責の念を呼び起こす。ラストも秀逸。

  • リトアニアからスウェーデンに来たリディアは、騙され売春婦として監禁され働かされている。ある時彼女が激しい暴力を受けて瀕死の状態で病院に送られる。そして起きられるようになるとある行動に出るのだ。エーヴェルト始め警官たちが対応するが思いがけない結果に終わる。リディアの行動の裏にある真実を知ったエーヴェルト、スヴェンの行動に吐き気がするほどショックを受けた。彼女の受けた仕打ちが残酷かつ克明に描写されているからこそ、警官たちの出した答えが、悩み抜いた上とは言え到底納得できない。あざとい幕切れもそうだが、つくづくこの作者は読者を簡単に満足させてくれないなと思う。

    • ikezawaさん
      何故?エーレンデュル?
      何故?エーレンデュル?
      2018/05/25
    • 10fumiko24さん
      すみません間違えました。「エーヴェルト」ですよね。
      すみません間違えました。「エーヴェルト」ですよね。
      2018/05/25
    • ikezawaさん
      いえいえ野暮ですみません。
      間違え方が、ミステリーを読み込んでる方の間違え方で好きです。
      (^^;気持ちはわかりますよ。
      名前が複雑な人も多...
      いえいえ野暮ですみません。
      間違え方が、ミステリーを読み込んでる方の間違え方で好きです。
      (^^;気持ちはわかりますよ。
      名前が複雑な人も多いですし。
      2018/05/26
  • 「ゼロの焦点」を読んでいると、ラスト3行が予測できるのであまり衝撃を受けないかも…

  • シリーズ最初から再読している最中、もちろんタイトルだけで内容を思い出すのは無理なのだが読み始めると記憶がよみがえって二度目ならではの細部の読みも深くなる。それにしても2作目は後味の悪さがどんよりと立ち込めて気持ちが悪い。後でこれも決着がつくのだろうか、楽しみに読み進めたい。

  • 【ネタバレ】
    不愉快な結末、予想を覆す…と煽っているものの、想定の範疇のラスト、主人公たちの不実…、こう書くと駄作極まりない作品のようだが、小説としてはオモロいのである。

    主人公だから、有能な警察官だから、過去の不幸と戦い正義を貫こうとする人物だから…といってその人物の行動すべてが正しいわけではないのである。
    その人物が義や仁や情に基づいて行動したとしても、それが万人にとっての義や仁や情に当てはまらないこともままあるのである。

    「不愉快な話」=「面白くない作品」
    多くの場合この指標は成り立つのだが、この作品はイコールではないと証明している。不愉快だがオモロい。憤りはすごく感じるが読ませる。だからこその☆5つである。

    しかし、この2人(エーヴェルトとスヴェン)は、この後、どの面下げて警察官をやっていくのだろう。不愉快ながら楽しみである。

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著者プロフィール

アンデシュ・ルースルンド 1961年生まれ。作家・ジャーナリスト。ヘルストレムとの共著『制裁』で最優秀北欧犯罪小説賞を受賞。

「2013年 『三秒間の死角 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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