制裁 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151821530

作品紹介・あらすじ

凶悪犯が脱走した時、被害者の親が取った行動とは……。北欧最高の「ガラスの鍵」賞を受賞した〈グレーンス警部〉シリーズ第一作

感想・レビュー・書評

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  • 女児暴行・殺害の罪で服役中の囚人が護送中に逃走
    事件はそこから始まる

    自己満足のために卑劣きわまりない犯行をおこす性犯罪者の視点

    子どもの頃に性的虐待を受け、その記憶を呼び覚ますあらゆるものを氷釘で刺そうとする囚人の視点

    最愛の娘を殺され、それでもなんとかして生きていかなければならない親の視点

    犯人を捕まえるために総力を挙げて行方を追う警察の視点

    物語は大きくこの4つの視点で進んでいく

    そして、それぞれが駆り立てられるようにして起こした行動が思わぬ結果を招き、悪夢のような憎しみの連鎖が展開されていく

    もちろん本作はフィクションだが、フィクションでも現実社会でも幼い子どもの死は本当に心が苦しくなる…
    もちろんこんなことは考えたくないが、もし実際、幼い子どもをもつあなたが本作の様な事件に巻き込まれたらどうする…?
    犯人に対して行った行動が理解できるか?できないか?
    それは、この物語を読んだひとりひとりが自分なりの答えを出すのではないだろうか

    • 1Q84O1さん
      ほん3さん

      そうなんですよね
      やっぱり親の視点に感情移入してしまいます…

      訳者あとがきにもありましたが、娘を失った親の苦しみ
      その絶望、...
      ほん3さん

      そうなんですよね
      やっぱり親の視点に感情移入してしまいます…

      訳者あとがきにもありましたが、娘を失った親の苦しみ
      その絶望、決意、そして帰結を目にしたときの困惑
      救いようのない暴力の連鎖を前にして、心にずしりとのしかかる悲しみ
      そして、その連鎖はまだ続くに違いない、と思わせるエンディングの怖さ…
      これらが余すとこなく描き出されている作品
      機会があれば手にとってみてください♪
      2022/12/21
  • 怪物をめぐる人間の話、そして怪物となった人間と社会をめぐる話、とこの本は評せるかもしれません。

    冒頭の描写からどきつい……。女児に性的暴行を加え殺害し捕まった男。その怪物の思考と、犯行の描写の残虐さに、自分はいきなり物語にぐいとつかまれました。

    その怪物が移送中に逃亡。物語は様々な人物の視点を通し、重層的に描かれます。

    途中まで読んだ段階では、逃亡犯を追いかけるサスペンスなんだな、と自分は思っていました。しかしこの小説は、徐々に社会派小説の様相を呈してきます。

    事件が起こした波紋は、当事者たちの思惑や真意を超え、正義心となり、怒りや憎悪へ変化し、司法関係者や普通に暮らす前科犯にも及びます。

    こうした描写はSNSによる炎上が身近になった最近の方が、より身近に感じるかもしれません。作中の市民たちの感情は理解できるものの、それに対しての安易な同調は、自分の中の怪物に餌を与えるようなものだとも思います。

    それぞれの正義と秩序で揺れる人々と社会。そして悲劇に対しての悲しみの描写。いずれの描写力も確かです。そして、そこから問いかけられるのは、自分の中の正義と罰や倫理感。そして犯罪者の処遇と、社会の在り方についてだと思います。

    単なるサスペンスの枠を超え、怪物の存在を、正義と罰を、その暴走を描き、読者である自分にも問いかけてくる、力ある小説でした。

  • アンデシュ・ルースルンドのグレーンス警部シリーズ第1作。初読。

    冒頭の残酷描写から始まり、ただただ胸糞悪い展開が続く。読んでいて辛かった。。。鬱々としたストーリーではここ最近では一番かも。これぞ北欧小説だなぁと。

    冒頭に脱獄する犯罪者がとんでもない化け物(原題も「怪物」のようなニュアンスらしい)。あまりにも理解できない、意思の疎通もできない、どうしようもない怪物。その犯罪者に狙われた娘と、その父親の顛末が描かれる。。。と思いきや。中盤以降、全く予想もしていなかった展開に。憎しみの連鎖というか、悪い方向に転がり落ちていくってこういうことだよなと。読み終えて、邦題の「制裁」に納得。

    あまりの報われなさと意外な展開は非常に良かった。が、グレーンス警部が全く活躍しない笑。デビュー作らしいので、シリーズ化する考えがなかったのかも。ミステリ要素もほぼないため、その点だけ気になった。

  • ガラスの鍵賞受賞とのことだったので、本格推理ものかと思い読み始めたが、想定外のストーリーだった。

    日本は世界でも数少ない死刑制度存置国なので、フレドリックへの反応はスウェーデン以上になるのかなと思った。

    それにしてもスウェーデンの刑務所の自由さ、驚かされる。

  • こう終わるのかって・・考えさせられるなー。
    自分的にはどうなるんやろうって飽きずに読み進み読了。
    グレーンス警部次回以降に活躍があるのか興味津々。

  • ラストは想像できたけど…いやーあまりに暗くて重い。
    でもこのシリーズは全部買うことに決まり。インドリダソン、特捜部Qと同列で好きかも。

    2回目、暑くなってくるとミステリーを読みたくなる。三秒間の空隙まで一気にいけるかな…

  • アンデシュ・ルースルンドの本は、『熊と踊れ』から入り、『ボックス21』を読み、この『制裁』で3冊目。
    色んな立場の人の視点から物語が進められるが、それぞれの立場に、感情移入することができるのが不思議。

    今回も、犯罪を通して社会問題や倫理の問題を投げかけられた。
    自分の中で考えを纏めるのに時間がかかりそうだが、人が人を裁くって難しい。

    訳者あとがきより抜粋
    『他人の命を奪うことで、子どもの命を守れるとしたら、大人はそうすべきなのか。そうやって、人の生命の価値を、同じ人間が決めてしまうことは、果たして許されるのか。それが許されるとき、怪物が生まれるのではないか……。』
    しばらく考えてみる。

    次は『死刑囚』!

  • 初読

    北欧ミステリと思って読み始めたけど社会派サスペンス的でもあり。
    でも、「どこに連れて行かれるかわからない」というのもミステリかなと思いながら読んでいた。
    刑務所のパートがどこに繋がるんだ?とねぇ

    しかし制裁か。なるほど…
    シーラッハのテロのようになにが正義か、罪とは何か
    酌量する余地とは、という重く苦しい問い。

    それにしても、スウェーデンの刑務所、自由すぎる。
    ハシシでハイになるわ、食パンとリンゴでお酒作るわ
    ロリコン画像アップするわ…

    帯に「グレーンス警部シリーズ第1作」とあったけど
    この人でシリーズになるのか…へぇ

  • さらわれた娘救出劇なのかと思って読み始めたら、なるほどそうきたか。
    さすが北欧ミステリー、容赦ない。
    答えの出ない重いテーマにこれでもかってぐらいダークな展開で読み応えあり。
    小細工なしでここまで衝撃のラストにできるのはすごい。
    視点がころころ変わるしスウェーデンの人名地名が聞きなれない響きで難しいから丁寧に読まないと置いてかれそう。

  • 作中何度か突きつけられるような
    テーマと描写があり
    そしてラスト
    さらにはあとがきすら
    問題を突きつけてくる。

    この本を読んでから、子供を連れて
    女の子用のおもちゃの人形コーナーに行く都度
    置いてあるバラバラに荒らされた
    おもちゃの家と女の子の人形を見て
    この本のことを思い出してしまう。

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著者プロフィール

アンデシュ・ルースルンド 1961年生まれ。作家・ジャーナリスト。ヘルストレムとの共著『制裁』で最優秀北欧犯罪小説賞を受賞。

「2013年 『三秒間の死角 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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