五匹の子豚 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

  • 早川書房
4.13
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本棚登録 : 1042
感想 : 105
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  • / ISBN・EAN: 9784151310218

作品紹介・あらすじ

16年前、高名な画家だった父を毒殺した容疑で裁判にかけられ、獄中で亡くなった母。でも母は無実だったのです-娘の依頼に心を動かされたポアロは、事件の再調査に着手する。当時の関係者の証言を丹念に集める調査の末に、ポアロが探り当てる事件の真相とは?過去の殺人をテーマにした代表作を最新訳で贈る。

感想・レビュー・書評

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  • 評価に迷った。世評の結構高い作品のようだが、はっきり言って物語として面白くないのだ。ポアロが何人もの人に同じ事件の話を聞きに行き、さらにその人物たちの手記まで読まされるという退屈なもの。それぞれの人物の視点によって見えているもの、その人物自身の事件への解釈が違うところにこの作品の眼目があり、そこからポアロが真実らしきものを導き出すのだが。殺人犯として断罪されたキャロラインが堂々としていることや、5人の中に犯人がいるはずなのに皆なんの動揺もなくやって来るところから、真犯人の想像はつくのだが、そのキャロラインと真犯人の人物像の描き方は見事かもしれない。

  • 16年前の母の無実を証明して欲しい。と依頼されるポアロ。
    物的証拠は何も無い。16年前の裁判の弁護士、検察官の話を聞き、当時の関係者5人からそれぞれに事件の話を聞く。そして思い出せる限り詳しく手紙に書いてもらう。
    一つの事件を何度もなぞっているだけのようで、関係者それぞれの知っていること、印象、思いが加わり少しづつ事件の見え方に違いがでる。
    そして、一気にポアロの灰色の脳細胞が事件の真相を明らかにする。誰かがフッと耳にしたこと、誰かが何気なく見ていたことが、ポアロにより真実への大事な手がかりと気付かされる。
    犯人は16年間、ずっとこの事件に囚われていた事も印象的だった
    やっぱり面白い。

  • ドラマの美しい映像を思い出しながら(結末は思い出さないように)読む。過去の事件の真相解明に向かうポアロ。関係者達の証言が何を意味するか第三部の頭まで全く解らずにいたが、そこからの急展開が本当に素晴らしい!攻略本イチオシも肯ける。

    • ポプラ並木さん
      111108さん、ドラマにもなっているんですね。
      あまりドラマは見ないようにしているのですが、今回は女性陣の雰囲気を堪能したくなりました。...
      111108さん、ドラマにもなっているんですね。
      あまりドラマは見ないようにしているのですが、今回は女性陣の雰囲気を堪能したくなりました。この本は自分の中でポアロシリーズで一番かもしれません。
      2022/08/09
    • 111108さん
      ポプラ並木さん、コメントこちらでもありがとうございます♪

      今NHKBSでまたポアロドラマシリーズやってます。『五匹の子豚』はまだまだ先だと...
      ポプラ並木さん、コメントこちらでもありがとうございます♪

      今NHKBSでまたポアロドラマシリーズやってます。『五匹の子豚』はまだまだ先だと思いますが、機会あったらぜひ見てみてください。女性のキャスティングがとても合っていると思いますよ!
      2022/08/09
    • ポプラ並木さん
      情報ありがとうございます。女性キャスティング、とても興味が出ました!ドラマでも体験したいです~
      情報ありがとうございます。女性キャスティング、とても興味が出ました!ドラマでも体験したいです~
      2022/08/10
  • ふざけたタイトルだな~と思いながら読んだが、ポアロシリーズで最高傑作!16年前に母が父を殺人罪で逮捕されたことをポアロに真相を追求してほしいと依頼するカーラ、ここからポアロが関係者5人を訪ね、母(キャロライン)の起こした事件を遡る。画家の父(エイミアス)が20歳若いモデルのエルサと結婚すると言い出す。そして父が毒殺される。最後までいける!と思った犯人予想だったが、最後は残念、というより真相がスゴイ。そっち⁈キャロラインの犯人説を軸に置き、5人に書かせた真相の手記、最後までドキドキで動機も納得です。⑤↑↑

    • ポプラ並木さん
      なおなおさん、コメントありがとう!いや~当たらないよね。どんだけ外しまくっているのか、、、お恥ずかしいです。でもポアロシリーズで一番面白かっ...
      なおなおさん、コメントありがとう!いや~当たらないよね。どんだけ外しまくっているのか、、、お恥ずかしいです。でもポアロシリーズで一番面白かったです。殺害方法も明らか、犯人は5人に絞られている(自殺は否定しました)、動機は何か?この明確な状況なので楽しめるよね。さらに真相は「なるほど」と思えるのがポアロシリーズ。その中でもピカイチでした!!
      2022/08/09
    • 111108さん
      ポプラ並木さん、こんばんは♪

      〈ポアロシリーズで最高傑作!〉←私も同意です‼︎まだ全部読んではないですけど。ふざけたタイトルがちょっと損し...
      ポプラ並木さん、こんばんは♪

      〈ポアロシリーズで最高傑作!〉←私も同意です‼︎まだ全部読んではないですけど。ふざけたタイトルがちょっと損してる気もしますが、本当に面白いですよね!
      2022/08/09
    • ポプラ並木さん
      111108さん、こんばんは。おおお、賛同ありがとうございます。
      やっぱり面白かったですよね。
      自分も久しぶり集中して一気読みでした。し...
      111108さん、こんばんは。おおお、賛同ありがとうございます。
      やっぱり面白かったですよね。
      自分も久しぶり集中して一気読みでした。しかも終始ドキドキ。
      犯人予想も最後の最後まで残りましたが、最後に外れました・・・
      今回は当たった!動機も完璧!!と思ったのですが、簡単にはいきませんね。これがアガサクリスティでなのでしょう!
      2022/08/09
  • 久しぶりにポアロが登場するクリスティ小説を読む。ポアロ様がいれば事件は解決する、大丈夫。久しぶりにこの安心感を胸に、読み進める。
    まずタイトルが面白い。五匹の子豚?豚に何か仕込み、それを食した誰かの身に何か起こるとか?と単純に想像してみたが違う^^;
    原題は"Five Little Pigs"、マザー・グースの童謡「この子豚はマーケットへ行った」などの5つの歌詞にちなんだものであるらしい^^;章題にも注目したい。

    依頼人は16年前の事件の犯人とされた女性の娘。母の無実を信じ、ポアロに再調査を依頼する。過去の事件で物的証拠もないのに…できるの?
    事件当時の関係者5人に会う、そして手記を書かせる。その証言から真相を究明するポアロ!さすが!
    5人それぞれの手記が一番面白かったかも。何?何があった?それで?ふむふむ…とわくわくしながら読んだ。
    真犯人はこの人じゃないか!?とひらめいたが違った。違ったからちょっとがっくり。そして更なる驚きの真相も判明し、やるせなくなった。

    このような展開を描くアガサ・クリスティもすごい!好きなミステリー小説の1つとなった。

    • なおなおさん
      ポプラ並木さん、コメントをありがとうございます。夏季休暇、嬉しいですね!
      そっか…こういうのを書簡体小説というのですね。井上ひさし「十二人の...
      ポプラ並木さん、コメントをありがとうございます。夏季休暇、嬉しいですね!
      そっか…こういうのを書簡体小説というのですね。井上ひさし「十二人の手紙」、湊かなえ「往復書簡」もそうですよね。ポプラ並木さんも読まれているようです。嬉しいです(^^)
      2022/08/09
    • ポプラ並木さん
      なおなおさん、書簡体小説は手紙のやり取りだけで話しが進むのですが、今回も最後は手記で5匹の子豚目線での真相を示していて、とても斬新でしたね。...
      なおなおさん、書簡体小説は手紙のやり取りだけで話しが進むのですが、今回も最後は手記で5匹の子豚目線での真相を示していて、とても斬新でしたね。書簡体小説はとても大好きで、森見さんの「恋文の技術」も秀逸でした!森見さんが大丈夫であればお薦めします(^^♪今日から2泊、楽しんできます!!
      2022/08/10
    • なおなおさん
      ポプラ並木さん、本の紹介をありがとうございます。森見さんの本は読んだことないのですが、この機会にかりてみようかな。今日から旅行とのこと。気を...
      ポプラ並木さん、本の紹介をありがとうございます。森見さんの本は読んだことないのですが、この機会にかりてみようかな。今日から旅行とのこと。気をつけて楽しんできてください(^^)/~
      2022/08/10
  • 20年以上ご無沙汰していたクリスティー作品。
    「さすがクリスティー!他にもこんな凄い作品を書いていたのか!」
    「読書好きで良かった!読んで良かった!」
    というのが読了直後の素直な感想です。
    ここでは、ミステリー云々に関する評価・感想ではなく、主に「読書好きで良かった!読んで良かった!」と感じた理由について述べていきます。

    先ず、『アガサ・クリスティー完全攻略[決定版]:霜月蒼』(以下、『決定版』)を読んでいなければ、本書を手に取ることは恐らくなかったと思います。
    クリスティーの作品は、一般的に名作と言われている『そして誰もいなくなった』,『アクロイド殺し』等々は網羅したので、新たな作品に手を伸ばすつもりは正直に言ってありませんでした。
    しかし、e-honの新聞の書評コーナー(だったかな?)で『決定版』を見かけたことで「クリスティーで読むべき作品は他にないか?」という気持ちが沸き上がり、『決定版』を購入して読んだところ、本書の評価が高く(全作品中2位)、また霜月蒼さんのコメントも読書欲をそそる内容であったことが大きな要因となりました。
    *その中に、???となる一文「・・・私はジャスミンの香りや・・・・を体感したのである。」が【2023年8月15日読了】

    次に、『透明な夜の香り:千早茜』千早茜さんの長編作品は初めて読んだのですが、直木賞作家の実力どおり、作品名と内容は勿論のこと、文章・文体からも香りがする感覚に捕らわれ、とても魅了されました。読書によるこのような経験は初めてかもしれません。
    とりわけ、「香りは残るんだよね、ずっと。記憶の中で、永遠に。みんな忘れていくけれど」という言葉は、印象に残りました。【2024年1月12日読了】

    ようやく本書との繋がりの説明になります。
    先に書いたように、ミステリー云々・トリック云々については述べませんが、真相を披露する際の、ポアロの「ジャスミンの香りによって、氏の記憶がたちまち甦りました。人間というのは、思ったよりも匂いに影響されやすいのですよ。」の文章を読んだときには、それこそ鳥肌が立ちました。
    僅か2週間ほど前に読んだ『透明な夜の香り』(単行本は2020年4月刊行)で最も印象に残った言葉と同じ内容が、20数年ぶりに読んだクリスティーの本書(1942年刊行)で、それも真相解明の重要な手掛かりの一つとして書かれているとは!

    このような体験が出来たのも、
    1.読書好きであった
    2.クリスティーの作品を読んでいた
    3.e-honを利用していた
    (本屋さんの在庫にない作品は、ehonで注文⇒本屋さんの店頭で購入)
    4.『アガサ・クリスティー完全攻略[決定版]:霜月蒼』を読んだ
    5.『透明な夜の香り:千早茜』を読んだ
    6.『五匹の子豚』を読んだ

    からで、これからも読書は続けようと改めて強く思いました。

  • 謎の更なる上をゆく謎。いやいや、誤導されまくり...。第ニ部の手記と、第三部に突入してからの展開は、流石ですな! 結末はスッキリだが、読後感はモヤモヤです。
    ポアロシリーズは全て読んではいないので、ちょくちょく読んでいきましょうかね...。

  • これはおもしろい。傑作ですね。

    題名から、NHKみんなのうたの『五匹のこぶたとチャールストン』と関係があるマザーグース系のお話かと勘違いしたけど、何の関係もなし。

    真相を知って一番ショックを受けたのは、16年前に犯人とされ獄中死したキャロラインの妹のアンジェラだろう。自分の悪戯の意図を誤解した姉が自分を守るために無実を主張しなかった、と知るのはさぞつらいことでしょう。

    • 111108さん
      鴨田さん 
      今まで読んだクリスティーの中でベスト3に入るくらい好きな話です!
      タイトルで損してますかね?
      鴨田さん 
      今まで読んだクリスティーの中でベスト3に入るくらい好きな話です!
      タイトルで損してますかね?
      2021/11/15
    • 鴨田さん
      111108さん
      コメントありがとうございます。タイトル損はありますよねえ。でも、戯曲タイトルのGo back for murder (邦題...
      111108さん
      コメントありがとうございます。タイトル損はありますよねえ。でも、戯曲タイトルのGo back for murder (邦題: 殺人をもう一度)よりはキャッチーかも。内容のイメージは全くわかないけど。
      今のところ、クリスティのマイランキング1位です。
      2021/11/15
    • 111108さん
      お返事ありがとうございます!
      戯曲タイトル知らなかったです。確かにインパクト弱い(笑)
      お返事ありがとうございます!
      戯曲タイトル知らなかったです。確かにインパクト弱い(笑)
      2021/11/15
  • 16年前の事件を紐解くという動きが少なく静かなストーリー。ところがこれが面白く、一気読みしてしまった。

    同じ事実でも人によって捉え方が違ったり、前後の文脈から勝手に不足している事実を補って解釈してたり、無意識のうちにバイアスがかかっていたりといった事がうまく混ぜあわされ、さも事実らしい結論に落ち着いているあたりは流石の展開。

    一般的な知名度はあまり高くない気もするが『杉の柩』にも通じる雰囲気でクリスティの傑作として挙げられるのも納得です。

  • 16年前に高名な画家だった父・エイミアスを毒殺したとして有罪になり、獄中で亡くなった母・キャロライン。でも、母は無実だったのです。娘・カーラに宛てた母の手紙は真実なのか。ポアロは当時の関係者の証言を拾い集め、過去の事件を再構築していく──!

    作品の大部分が、関係者の証言と手記によって構成されたミステリ。事件の顛末を何回も聴き直す展開なので冗長さもあるが、まさにその証言の細やかな違いこそポイントになってくる。語りから見えてくるのは、よくぞここまで彫り込んだなという人物像。まるでその場で実在の人物の証言を聴いているような臨場感に圧倒される。

    「本当にものを見ることができるのは心の目だ、ということをいいたかったのです」
    このポアロの一言に尽きる。事実は一つだ。しかし、その事実は心によって解釈され、人の数だけ事実が生まれる。それは相手と、自分自身をも映す鏡なのだ。見ているものは、自分が選び取ったものにすぎないということを忘れないでいたい。

    語りには各関係者の主観が入り込み、感情をかき立てられる。そんな中、ポアロも「この男──株式で大儲けしたこの男──は、エルキュール・ポアロという名前をきいても感銘を受けていない! けしからん。」と内心で腹を立てているのに笑ってしまった。
    また、暴力的な言葉の話で「誰それをズタズタに切り刻んで、油でじっくり揚げてやりたい」という例えがあって、その発想はなかったと。油で揚げなくても(笑)

    最初に読んだ時は淡々とした物語かと思いきや、読み返してみると何気ない言葉の意味や違和感に気づいたりしてぞくぞくする。人間心理を描く巧みさ、過去の事件を二転三転させる推理劇。さすがアガサ・クリスティーと唸った一冊。
    最後に印象に残った文章を引用して終わります。

    p.120
    「いえ、ムッシュ・ブレイク。心理的な面から事件を解明していきたいんです。単なる事実ではだめなのです。わたしはあなた自身が選んだ事実を知りたい。時間とあなたの記憶がその選択を左右するのです」

    p.177
    「事実というのは、誰もが認めるものを指すのだと思っていましたが」
    「そうです。だが、事実の解釈となると、またちがってきます」

    p.179
    人目を惹くものや、きらびやかなものが、最上のものとはかぎらない。“金に糸目をつけない”というのは、想像力の欠如を示しているにすぎない。

    p.362
    「本当にものを見ることができるのは心の目だ、ということをいいたかったのです」

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