- Amazon.co.jp ・本 (444ページ)
- / ISBN・EAN: 9784151300523
作品紹介・あらすじ
冒険好きな若夫婦のトミーとタペンスが、国際探偵事務所を開設した。平和で退屈な日々は、続々と持ちこまれる事件でたちまち慌ただしい毎日へと一変する。だが、二人は持ち前の旺盛な好奇心と若さとで、猟犬のごとく事件を追いかける!おしどり探偵が繰りひろげるスリリングな冒険を描いた短篇集。新訳で登場。
感想・レビュー・書評
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クリスティー読み直しはまたまた変化球かよ!というね
この前、次あたりは王道『オリエント急行』あたりをなんて言ってたのにね!
それにしても面白かったです
普段から評価ゆるゆるの私も短編集となると評価が低くなりがち、でもこのトミーとタペンスのおしどり探偵の短編集はどれもこれも面白くての高評価
クリスティー作品のレビューで何度も触れてますが、クリスティーの最大の魅力は登場人物たちの軽妙なやりとりにあると思うんですね
そしてその最大の武器を活かすためには、クリスティーの生み出す名探偵たちにはどうしても「話し相手」が必要になってくるんです
ただそれが助手であったり支援者であったりだと、どうしても主従の関係になってしまうことが多いんです
だから探偵がちょっとしたユーモアを交えて会話しても皮肉のように受け取られてしまうことも多いんです
ところがクリスティーが生み出したトミーとタペンス夫妻の素人探偵が他と決定的に違う対等な関係性をもっているんです
対等な二人が織りなす会話は皮肉そのものであっても、ユーモラスでほほえましいものになるんです
二人が楽しい会話を繰り広げながら事件を解決していくパロディはクリスティーの読書家の一面も感じさせてくれます
トミーとタペンスの活躍もっと読みたくなってきてしまった
『オリエント急行』はまた後回しやなw詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
トミーとタペンスの短編集。主人公達が酷すぎる目に遭わない安心して気楽に読める所が私には良い。脱力系の話も多かったが、2人がホームズやポアロその他いろんな探偵になりきるのは笑えた。「婦人失踪事件」が一番オチが好き。
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『秘密機関』の時には二人合わせて45歳にもならなかったトミー&タペンス。彼らが結婚し、6年ほど経った時期の短編集。
結婚した二人が探偵事務所を開設するいきさつを描く『アパートの妖精』を皮切りに、名探偵の真似事をしながら相談を受けた事件を解決していく短編が14編続く。
霜月蒼氏の『アガサ・クリスティー完全攻略』ではかなり評価の低い本作。理由はミステリとしてゆるいこと、同じような尺で構造も似通った短編が13編(最初と最後を除く)も続くこと、名探偵の真似事といっても、各探偵の探偵法をパロディ化したわけではなく、口癖とかスタイルを真似ているだけだということ。
ただし、これをミステリとしてとらえず、トミーとタペンスの息の合ったコンビ活動とか、仲の良い夫婦のやりとりなどを楽しむ冒険物語ととらえれば、水戸黄門のような偉大なるマンネリとしてほほえましく読むことができる。
私が好きなのは2編目の『お茶をどうぞ』。ミステリというより、トミーとタペンスの考え方や得意分野の違いを露わにするようなささいなエピソード、といったところだが、二人の魅力があふれていて、読んでいて心が温まる。
最後の「16号だった男」は、タペンス最大の危機!だが、最後はほっこりしたおちで終わる。トミーとタペンスがポアロとヘイスティングズをまねしているのは、クリスティーの遊び心か。
とにかくクリスティーが楽しそうに書いているのが伝わってくるハートフルなシリーズ。長らくシリーズの作品が書かれなかったときに、ファンから二人はどうなったか、と問い合わせが多く届いたというのも納得である。 -
トミー&タペンスの短編集。
カーター長官からの指示で、<国際探偵事務所>を始める事になったトミーとタペンス。
事務所を訪ねてくる依頼人から持ち込まれる様々な謎を追いかける事になるのですが、ホームズを筆頭に数々の探偵小説を引っ張り出してきて“探偵ごっこ”を始める二人の掛け合いが絶妙で楽しめます。(勿論“灰色の脳細胞”も!)
このようにクリスティーの遊び心あふれる本書なので、謎解きとしては、“なーんだ・・・”と脱力するエピソードもあります。ただ、最終話「16号だった男」ではタペンスが攫われてハラハラしました。
何だかんだで仲良し夫婦のトミーとタペンスは、読んでいて微笑ましいですね。あ、アルバート青年も元気そうで何よりです。 -
トミー&タペンスシリーズはシリーズ通して初めて読んでいるが面白い。今作もやっと手に入り、読めずにとっておいた二作品も近々読むことにしよう。
今作は秘密機関の後、夫婦となった二人の物語どであり、アルバートも彼等に従事してシリーズの登場人物として成長していく。クリスティはスパイスリラーの様な小説も多く、その中でも面白く魅力的なシリーズだ。
アパートの妖精
トミーはトミー、タペンスはタペンスだ(笑)タペンスの冒険への渇望は読者からすれば笑っていられるが、トミーにしてみれば気が気では無いだろう。何より本当に無茶をしかねないタペンスにトミーは振り回されている様だ(笑)
夫婦の元にとある指令が届き、二人の冒険が再開する。長官から既に危険な指令がある訳だが、いったいどうなる事だろうと心配だ(笑)
お茶をどうぞ
探偵事務所を引継ぎ、偽名での事業をスタートした夫婦とアルバート。最初の頃は浮気調査しか依頼が無かったが、数日後、とある人物から人探しの依頼が舞い込む。トミーは探偵として、タペンスは秘書として依頼人と関わり、大袈裟に探偵事務所を誇張しながら依頼を達成する。真相はなんて事ない事件だが(笑)現代では許されないだろうが愛嬌がある作品。各章ごとに有名な探偵をモチーフにして行動する二人も魅力的。
桃色真珠紛失事件
伯爵令嬢のネックレス盗難事件。前回の評判が広まり屋敷内での盗難事件の調査を依頼される。
警察沙汰にはしたくない屋敷の住人達。トリックは古典的だが面白く、懐かしい気持ちになった。じけんじたはなんて事はないものだがトミー&タペンスの生き生きとした姿勢、行動力がとても魅力的だ。真犯人はかなり油断したのだろう。
(ソーンダイク博士)
怪しい来訪者
段々と面白さが増していく。今回は待ちに待った、長官から注意されていた封筒がもたらされる。意気揚々のトミーとタペンスだが、気付かぬうちに事務所に来訪者があり、依頼を受ける。タペンスは罠だと疑い、トミーは乗り込もうとするが、そこに刑事が応援に駆けつけ共に捜査に乗り出す事に。トリックは予想通りだが、面白い作品だった。(オークウッド兄弟)
キングを出し抜く
タペンスの勘が冴え渡る作品。仮装パーティに乗り込んだ二人。新聞上に寄せられていた暗号の送り主を捜査。そしてとある女性がナイフで殺害されるが、死ぬ間際、人物の名前を残す。証拠も証言も一人の男を指し、しかし彼の容疑に納得できない面々。そんな中、タペンスの閃きにより新しい可能性が浮上する。ミステリーに寄った作品。(おしのびマッカーディ)
婦人失踪事件
この事件は確かに二人の探偵の記録として残すべきでは無いだろう。ある意味コメディ作品だ。
冒険家の男が計画より早く帰路に着き、婚約者の元を訪れる。しかし、婚約者は見つからず、彼女の叔母も居所について要領を得ない。後程電報が届きとある地域に向かうとあるが、冒険家は全てを不審に思い探偵事務所を訪れる。現代に同じプロットをら使用すれば馬鹿馬鹿しい作品になるだろう。女性にとって当時からダイエットは課題の様だ(笑)(シャーロック・ホームズ)
目隠しごっこ
トミータペンスの擬装が的に気付かれ始めていると局長から報告を受け、しかし一向に帰る気のないタペンス。合わせてトミーは今回盲目探偵の役柄を演じるため、目隠しをしながら、タペンス、アルバートを巻き込みゲームをする。そのままレストランに食事に出ると、とある大尉を名乗る人物が声をかけてきて、急遽、依頼を受けてくれと促される。それぞれ別々に行動する二人だが、案の定、依頼人は擬装で二人は危険に巻き込まれる。最後、上手くいなした感じだが、もっとどんぱちやって欲しいなあ。 (ソーンリー・コールトン)
霧の中の男
物語の始まりが「ブラントの腕利き探偵たち」の大失敗からスタートする。トミーは神父の格好のまま、タペンスとホテルのバーのカクテルで失敗を慰めていると旧友に遭遇する。彼は有名な女優と一緒におり彼らに紹介する。大女優は店から出る際にトミーに置き手紙をしており、一行は指定された家を訪ねる事に。
とても濃い、先の見えないロンドンの霧、大女優の巻き込まれる事件。怪しい男性。トリックはわかりやすいが面白い作品だ。(ブラウン神父)
パリパリ屋
マリオット警部からの依頼。偽札の出所を探る。
「警察の犬」の話題を冒頭で振りながら、締めで猫を用いており、皮肉があるなと感心してしまう。潜入捜査、怪しい人物の元に潜り込み偽札がどこから出ているかを調べていく。とても美しい女性と父親に嫌疑を持ったトミーだが、そんな彼にとある危険が迫る。もう少しどんぱちあっても良さそう。パリパリ屋のセンスが面白い。
(エドガー・ウォレス風)
サニングデールの謎
クリスティ得意のとあるトリックが冴える。警察でもお手上げ状態だった殺人事件の真相にトミータペンスが挑む。些細な事実が明らかにされていく中、それらの情報を元に新しい仮説を立てて検証する。とある人物が、ゴルフコースの途中で女性と会話、その後、プレイに戻るが動揺し、全く出鱈目なプレーに終始、途中で帰宅後殺害されたとあるが、この一連がトリックで擬装される。最後、マリオットが合流するが、段々と怪しくなってきたなぁ。(隅の老人)
死のひそむ家
ミステリーよりの作品。他のシリーズ通してもクリスティが大量殺人を描く事は珍しい。長編でアレンジしても面白そう。トミータペンスシリーズの魅力は冒険の部分だが、今回は推理小説として描かれている。ただし犯人当ては難しいだろう。
タペンスが看護師をしていた予備知識がある中で見事に推理、解決にいたるが、結末をこの様に解決させるのも古典独特の価値観だろう。 (アノー)(ヴァン・デューセン)
鉄壁のアリバイ
ゲーム的な作品、アリバイトリックを解決させる事。依頼は単純で、二つの地域、それぞれに一人の人物が現れる。そのトリックと謎を解き明かす。結局は古典的なトリックで、現在では「アンフェア」と言われるだろうが、決して本格シリーズでは無いためこれもアリかと納得。確かにそれしか解決はできないだろう。(フレンチ警部)
牧師の娘
タペンスが牧師の娘という事はほとんど忘れていたが。牧師の娘が依頼人となり、隠された財産を探す宝探しの物語だ。暗号を駆使して娘が相続した赤い館の秘密に迫るトミーとタペンス。暗号は翻訳版ではなぞなぞの様だが楽しむ事ができた。
大使の靴
とても不思議な事件。船内にて、大使が持っていた鞄と別の人物が持っていた鞄が入れ替わってしまう。後日、相手の遣いがバックを交換に大使の元を訪れ、大使は不在だったが使用人が確認をした上でバックを入れ替える。後日、相手は政治家で大使と面会する機会があり、大使が鞄入れ替えの件を話題にすると政治家は全く知らないと言う。不審に感じた大使は話題の探偵事務所に依頼する。バックに入っていたものは靴。重要書類や盗まれたものも無し。ただ入れ替えられ、元に戻されただけ。いったい何の目的があったのか。調査を進めると謎の婦人、怪しい男が登場。アルバートの活躍も冴える?
(フォーチュン医師とベル警視)
16号だった男
様々な事件を解決し、それなりの成果を挙げたと納得する二人だが、どうやら本当に危険な人物がいよいよやって来るようだと局長から報告がある。十分に警戒している中、怪しい依頼人が登場、依頼を受け、トミー、タペンスそれぞれが別行動に。そして待ち受ける二人の危機と絶望感。最後はポアロの探偵術(というか、灰色の脳細胞)をフル活用し、16号と対決する。
(エルキュール・ポアロ)
全編通してとても痛快なサスペンススリラーだ。本格では無い為、簡単に読めるしわかりやすい作品だ。シリーズ通して魅力が充分で、作品自体は少ないが、二人が歳をとるまで長い期間の時間軸で描かれている愛すべき作品。 -
アガサクリスティは良い~。短編ばかりだから気軽にサクサク読めて、読みごたえもあり、この間見たのとは偉い差だわ…あんまり、本屋推薦とかに踊らされないようにしよう~。ともあれ、これはさすが。夫婦のコミカルな掛け合いや、その時代の雰囲気等、すべて楽しかった♪
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2004年発行、早川書房のクリスティー文庫。15編。全編が探偵のパロディでできた短編集らしい。元ネタはほとんど分からなかったが、パロディ色が強い作品は大げさにパロディしているので面白がれると思う。多くは探偵ごっこみたいな感じだが、いくつかは結構するどい。でも最終話の初めにあるとおり「つきのある」というのが正しいのかもしれない。軽く読める本というわけでかなりおもしろかった。
録作:『アパートの妖精』、『お茶をどうぞ』、『桃色真珠紛失事件』、『怪しい来訪者』、『キングを出し抜く』、『婦人失踪事件』、『目隠しごっこ』、『霧の中の男』、『パリパリ屋』、『サニングデールの謎』、『死のひそむ家』、『鉄壁のアリバイ』、『牧師の娘』、『大使の靴』、『16号だった男』、解説:『稚気あふれる「探偵ごっこ」』堺三保、 -
トミー&タペンスの冒険者の短編集。
秘密機関のテイストを失っておらず、あくまでトミーもタペンスも素人探偵なんだけど、だけど、だからこそこういう事したよ、という話になっている。探偵事務所自体は流行らないし、自分たちでマッチポンプしてるし、みたいな。ミステリー要素以外にも、トミーとタペンスの掛け合いを楽しむ的な作品。
アガサ・クリスティの冒険モノが好きならいいと思うが、個人的にはそれほどなので、この作品もそれほど、という印象であった。 -
この愛おしい夫婦の探偵ごっこ!
バカミス的なネタですら楽しめてしまうよ。
いつ読んでも変わりなく好きだ。