バートラム・ホテルにて (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

  • 早川書房
3.41
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本棚登録 : 640
感想 : 75
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  • Amazon.co.jp ・本 (414ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151300448

作品紹介・あらすじ

大都会ロンドンの一画に、エドワード王朝時代そのままのたたずまいを保つバートラム・ホテル。だが、その平和で静穏なムードの裏でも、事件の影はうごめいていたのだ。常連客の牧師が謎めいた失踪をとげ、やがて霧の夜、恐るべき殺人事件が!ホテルで休暇を過ごしていたミス・マープルが暴く、驚愕の真実とは。

感想・レビュー・書評

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  • ミス・マープルものと言うより古き良き雰囲気のホテルに滞在してる人達の群像ミステリー。さまざまな人物達が語る形式で進む物語は面白いが、真相まで残りページこんなで大丈夫?と心配になった。おやじさんことデイビー主任警部がいい味だしてた。



  • 推理小説としてのプロットはかなり緩いし、犯罪シンジゲートの描き方はかなり雑で現実味がない。しかし、ビートルズが登場し、古き時代の英国が失なわれていく中で、何とかしてかつての「雰囲気」を描こうとしたのか。全てに古色蒼然とした魅力をたたえるバートラムホテルと個性豊かな登場人物たちは健在。

  • ミス・マープルもの。

    舞台はロンドンにある、クラシックな佇まいを保つバートラム・ホテル。
    この古き良き英国を彷彿させる高級ホテルに滞在中のマープルさん。ロンドンでのお買い物などを楽しみつつ、ホテル内外での人間観察も怠りません。
    一方、ロンドン警視庁では、最近頻発している大掛かりな列車強盗等の犯行グループを追っているのですが、これらの犯行とバートラム・ホテルとの関わりは・・?
    滞在客の牧師の失踪、霧の夜に起こった狙撃事件・・数々の点が終盤に見事に集約され、驚きの大仕掛けが明らかになるさまは圧巻です。
    今回、真相解明するのはデイビー主任警部で、マープルさんはその協力者のようなポジションでした。勿論マープルさんも真相にたどりついていましたし、彼女の観察力あってこその証言により捜査が大きく進展したのですけどね。
    狙撃事件の真犯人の処遇について、結局どうするのか曖昧なままだったのですが、それが却って余韻が残る終わり方だなと思いました。

  • 長編なのに最初からミス・マープル出てる!と思いきやあまり活躍は見られずラストも後味があまり良くないけれど、舞台となったホテルの売りが古き良きイギリスだからと常連の宿泊客はお年寄りばかり…でも実は、という設定が予想外で良かった。マープルさんとおやじさんの会話とか映像で観てみたい。BBCとかでドラマになってないかしら、、と調べたらあった(笑)

    • miyacococoさん
      111108さん、いいね&コメントありがとうございます
      111108さん、いいね&コメントありがとうございます
      2023/01/14
    • miyacococoさん
      (コメント投稿が途切れてしまったのでもう一度)今はhuleで観られるようです!
      (コメント投稿が途切れてしまったのでもう一度)今はhuleで観られるようです!
      2023/01/14
    • 111108さん
      なるほど〜ありがとうございます♪
      なるほど〜ありがとうございます♪
      2023/01/14
  •  ロンドンの片隅にある老舗のバートラム・ホテルは、創業当時の地味で目立たない上品さを保ち、上流階級の人々に長く愛されているホテル。
     そんな格式高いホテルに、姪の計らいで宿泊することになったミス・マープル。ゆっくりとロンドン旅行を楽しむつもりだったのだが、隣室の牧師が突然の失踪。さらにドアマンが何者かに殺されるという事件まで起きて……。
     捜査にあたる警部から協力を求められたミス・マープルは真相究明に乗り出すが。

     古き良き時代の英国を思わせるホテルを舞台に、謎めいた登場人物が繰り広げる不可解な行動……と舞台設定はばっちり。美味しい紅茶(もちろんブラックティーで)をいただきながらの読書がおすすめです。

  • アガサクリスティー。ミスマープルシリーズ。
    古き良きバートラムホテルにて神父の失踪事件がおこり
    ついでドアマンが殺され事件が起こる。
    ミスマープルはあくまで宿泊客のひとりという立ち位置で
    物語はデイビー刑事が引っ張っていく
    マープルの出番が少なく、いつものセントメアリ・リードの推理方法が見受けられないのでマープル好きには物足りないと思った

  • 不満はあるけど……ええい!
    大負けに負けて、大傑作です。すばらしい!

    まずこの大トリック。
    七十代にもなって、よくこんな大胆なトリックを
    思いついたものです。驚倒するほかありません。
    本来なら20年代にやっておくような大ネタなのに……
    稚気があるにもほどがあります! さすが天才。

    そして苦いあきらめ……。
    ミス・マープルは今まで果敢に老いと闘ってきました。
    老いの自覚は『予告殺人』において表面化し、
    『魔術の殺人』で前哨戦が行われ、
    『鏡は横にひび割れて』で最高潮に達する。
    しかし懸命な抵抗もむなしく、
    本作でとうとう敗北宣言をするのです。

    「あらためて悟りました――人は過去へもどることも、また過去へもどろうとしてもいけないこと――人生の姿は前へ進むことだということ。ほんとに、人生って“一方通行”なんですね?」

    名探偵が己の無力を痛感する、悲しくも美しい台詞です。
    「ミス・マープル老いのサーガ」はこうして終焉にむかう。
    私は深くため息をつくのです。

    本作はミス・マープルの祈りで終りますが、これは
    P・D・ジェイムズ『死の味』を連想させます。
    この人はよくセイヤーズの嫡流といわれますが、
    描写はともかく、物語の構造はむしろ
    クリスティーに近いような気がします。
    この厳しさが、いいんだな。

    また、こんな素敵な一節があります。

    「「ジェーンはなかなか親切な娘でしてね……と申しましても、もう娘とはいえませんけど」とミス・マープルは、もはやジェーンはかれこれ五十ではなかろうかと、少々気がとがめながら思いおこしていた」

    さらに、こんな一節も。

    「「まったく変った娘ね」とセリナ夫人がいう。夫人にとっては、ミス・マープルにとってもそうだが、六十歳以下の女はみんな娘なのである」

    六十歳以下はみんな娘……なんとすばらしく大雑把な区分けなのでしょう。


    ではなにが不満なのかって?
    「名探偵みなを集めてさてと言い」の場面です。
    実は、本作でのミス・マープルは謎解きをしない!
    デイビー主任警部とかいう無礼者がしゃしゃりでてきて、
    真相究明の特権をとっぱらってしまうのです。

    ああ、なんという悲劇!
    あのミス・マープルが一証人に甘んじてしまうなんて。
    ええい、こちらにおわす御方をどなたとこころえる!
    デイビーのおたんこなす! すっとこどっこい!


    さて、気をとりなおすとして……本作は
    「例の髪を長くしたビートルズとか何とかいった連中」
    にちらっと言及していることでも一部で有名です。
    御大はビートルズなんて大嫌いだったに違いないけど、
    意外なところで交錯しているんですよね。

    この1965年、ロンドンにはビートルズの「ヘルプ!」
    が流れていたはずです。
    リバプールの不良は有名人であるがゆえの鬱屈を歌い
    ミステリの女王は命の衰えを嘆いていた。
    ビートルズが「HELP!」と叫んでいたとき、
    アガサ・クリスティーも「HELP!」と叫んでいたのです。
    ポール・マッカートニーもリンゴ・スターも、
    今なら彼女の気持ちが分るかもしれません。

    実際こんな文章を読むと、どきっとしてしまう。
    「彼女の人生の多くは、やむを得ないことだけれど、
    過去の楽しかったことを思いおこすことで費やされている」
    ミス・マープルでも、そうなのか……と。
    この小説は一種の貴種流離譚でもある。
    高貴な主人公が流される先は辺境ではなく、老境です。
    「ミス・マープルでも老いに苦しめられるなんて。
     ああ、おかわいそうに……」
    と読者に思わせるようになっています。
    名探偵の地位を奪われた事実はそれに拍車をかける。
    「ミス・マープルでも名探偵ではなくなるなんて。
     ああ、おかわいそうに……」
    となるわけです。
    してみると、ミス・マープルが謎解きをしないという
    異例の展開は、本作の虚しさ哀しさを倍増する効果を
    あげている、ということになるようです。

    ごめんなさいデイビー主任警部、
    これまでの暴言は忘れてください。
    あなたがでしゃばってくれたおかげで
    『バートラム・ホテルにて』は成功したのです。
    大負けに負けなくても、大傑作です。すばらしい!

    旧版は乾信一郎さんの訳者あとがき。
    ミス・マープルの年齢鑑定。
    作中、1909年に十四歳だったとあるので
    七十歳になっているはずだという。
    そんなに若いとは思えないのですが……。
    最後に「うわさによれば“マープルもの”が
    もう一作残されているともいうのだが」とある。
    『スリーピング・マーダー』のことかな?
    それとも<ネメシス三部作>幻の三作目?
    こういう混乱が没後まもなくという感じでいい。

    ところで、乾さんの翻訳は少し杜撰な気が。
    ラスコム大佐は姉と暮していたはずなのに、
    別の箇所では妹といたことになっています。

    新版は佳多山大地さんの解説。
    1965年、『バートラム・ホテルにて』の
    年末商戦のライバルはビートルズの「ラバー・ソウル」
    だっただろうと推測。にくいこと言いますねえ。
    ラストは居心地のよい場所を断念したのだという。同感!
    新版の勝ちです。

  • 犯人がそこそこカスな上に捕まっていないので、読後感がスッキリしない。ホテルの対応にホクホクしながらも、裏にある邪悪さを感じ取って少しづつテンションが下がっているマープルが可愛い。牧師さん生きてて良かった。

  • 牧師の失踪

    バートラムホテル←強盗事件

    射殺事件
    って感じで話しがすすんでいって、あまりにも話しが散らばってて「これ最後までどうなるの??」って思ってたら全部つながった。
    残りのページが少なくなっても何が起こってるのかよく分かんないままだった笑
    ミスマープルが脇役だった。

  • バートラム・ホテルという魅力的な場所で、様々な人物が錯綜する。そこにミス・マープルも絡んで。これまでのマープルものと比べて後味が悪い感じがした。それも今作の魅力だろう。

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