五匹の子豚 (ハヤカワ文庫 クリスティー文庫 21)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (412ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151300219

感想・レビュー・書評

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  • かなり前に111108さんに教えていただいたポアロおすすめ作品から、ようやく読む。

    これ、今まで読んだポアロ作品の中でも1、2位を争うくらい好きかも。
    読んでいて、誰も犯人には思えなかったけど、発言の裏側に潜む意味が解き明かされると、動機も含めすごく腑に落ちる。最後の一展開、今回もまんまと騙された。
    遠い夏のセピア色の思い出を振り返る回想殺人形式も好きだし、ラストの余韻も良い…。
    111108さん、教えていただきありがとうございました!

    • 111108さん
      ロッキーさん、ついに読みましたね!
      お気に召したようで嬉しいです♪よく考えたらちょっとツッコミどころもあるのですが、「セピア色の思い出を振り...
      ロッキーさん、ついに読みましたね!
      お気に召したようで嬉しいです♪よく考えたらちょっとツッコミどころもあるのですが、「セピア色の思い出を振り返る」というロッキーさんのレビュー読んだら恩田陸さん風でもあるなぁと思いました。
      2024/01/20
    • ロッキーさん
      コメントありがとうございます!!
      確かによく考えたらツッコミどころは多々ありそうです笑
      恩田陸さん味のある作品(恩田さんがクリスティーに影響...
      コメントありがとうございます!!
      確かによく考えたらツッコミどころは多々ありそうです笑
      恩田陸さん味のある作品(恩田さんがクリスティーに影響受けてるとは思いますが)が好きなのかもです。
      2024/01/21
  • ≪あらすじ≫
    カーラという若い女性がポアロのもとを訪れ、16年前に起きたある事件を調べ直してほしいと依頼する。その事件とは、カーラの母カロリンが父アミアスを毒殺したとされる殺人事件で、カロリンは有罪判決を受け投獄された。彼女は獄中で死の直前に娘のカーラにあて手紙を書いた。「自分は無実だ」と。カーラは自身の結婚を控え、母が本当に無実なのか、事件の真実を知りたいと願っているのだ。
    ポアロは、当時クレイル夫妻と親密だった5人の人物からそれぞれ事件の証言を得た。
    ①アミアスの愛人エルサ
    ②アミアスの親友フィリップ
    ③フィリップの兄で夫妻の友人メレディス
    ④カロリンの妹アンジェラ
    ⑤アンジェラの家庭教師ウィリアムズ先生。
    事件前後のクレイル夫妻の状況が5人の視点から詳細に語られる。アミアスがビールに毒を盛られて殺されたこと、夫の不倫に悩んでいたカロリンが明らかに不審な行動をとっていたことは事実だ。ただし、アミアスとカロリンの人物像や夫婦関係については、語る人間によって微妙に様子が違ってくる。さらにポアロは5人全員に事件の手記を書くよう請う。5人分の証言と手記をもとに、ポアロは、そして読者は、この事件の真犯人を見極めることができるのか。

    ≪感想メモ≫
    ●普段、ミステリを読みながら積極的に謎解きにトライする方ではなく、探偵による鮮やかな謎解きや人間ドラマを、へー!とかほー!とか眺めているだけのことが多いのだけど、この『五匹の子豚』はそうはいかない。事件関係者の証言と、さらには手記までずらりと揃えてこちらに提示されるのだ。「ただ見てないであんたも謎解きに参加しなさいよ」と言わんばかりの構成だ。
    とは言うものの、証言と記録の穴や矛盾を丹念に掬い取り真犯人を見つける頭脳は、残念ながら私にはありません(ーдー)「結局カロリン真犯人」パターンでないことを信じるなら、彼女が自分の人生と引き換えに庇うのはこの人物しかいない。しかし小説がそれですんなり終わるとも思えないので、カロリンすら知らない真実・真犯人がいるにちがいない……くらいは予想しながら読み進めるものの、あとは全員特に不審な言動はなさそうだし、疑い出すと誰も彼も怪しく見えてくる。結局、へー!とかほー!とかになってしまう。なんとなくの印象で「この人か?」と思っていた人物は見事にハズレました♪

    ●カロリンという女性は、芸術家であるアミアス以上に多面的で人の心を良くも悪くも刺激する魅力があったようで、実像がなかなか見えてこない。証言から浮かび上がるのは、むしろそれを語る証人自身の人間性であるのが面白かった。

    ●証言が積み重なるにつれ、夫妻の周囲の微妙な人間関係や場のパワーバランスの詳細が明らかになってくるが、それでも事実は大岩のように覆らない。と思いきや、ポアロが持たらす視点により事件の見え方が一気に変わる。急に奥行きができたように人間関係の見通しが良くなり、1つ1つの言動の意味合いがくるくるとひっくり返り、事件がパタパタと片付いていく。まだラストを迎える心の準備できていませんっ!と、途中でちょっと休憩を入れてしまったほどの鮮やかさ。

    ●物語としては、胃がキリキリしそうな愛憎劇がそのまま鬱々と終わってしまい、ちょっとしんどい読後感。ドタバタ騒がしいヘイスティングズがいないのが何となく寂しく、彼の存在のありがたさを実感した。

    ●真犯人の最後の言葉はあまりにも憐れで、気持ちが沈む印象的な台詞だった。だけど、台詞すら与えられなかったアンジェラの胸のうちは…?心から信じていた姉が自分のことを殺人犯だと思っていた。このことを知った彼女が気の毒でならない。
    周りからずっと軽い存在として扱われてきたカーラにも幸せになってほしい。

    ●「五匹の子豚」というインパクトある題名はマザーグースにちなんだもののようだが、これを読んでいる間「五匹の子豚とチャールストン」がずーーっと頭の片隅で流れ続けて困った。あんな明るく楽しそうな歌が、というより明るい歌であるがゆえに、かえってホラー味が……。

    • 111108さん
      ゆたこちさん

      スーシェのドラマ、NHKのBSで水曜夜9時(だと思います。地方によって違うかも)やってますよ!今日はたしか『白昼の悪魔』やり...
      ゆたこちさん

      スーシェのドラマ、NHKのBSで水曜夜9時(だと思います。地方によって違うかも)やってますよ!今日はたしか『白昼の悪魔』やります。衣装とか車とか邸宅とか、けっこう凝っていて面白いです♪結末が違うことが時々あるので、それも楽しいですよ。

      『ポアロ登場』は短編集のでしょうか?初期の頃はヘイスティングズかなりへっぽこに書かれてますね(^ ^)
      2023/05/17
    • ゆたこちさん
      111108さん

      お返事ありがとうございます(^-^)スーシェのドラマ、U-NEXTでも全シリーズ見れるのですが、字幕放送のみなので、吹替...
      111108さん

      お返事ありがとうございます(^-^)スーシェのドラマ、U-NEXTでも全シリーズ見れるのですが、字幕放送のみなので、吹替派の自分は興味はあっても後回しにしてました。見てみます!結末違いも楽しみですね(私、気付けるかな)

      はい『ポアロ登場』は短編集のです。予告なくAudibleに入っていてテンション上がりました( ノ^ω^)ノへっぽこヘイスティングズと嫌味炸裂のポアロの関係を楽しんでます♪
      2023/05/17
    • 111108さん
      ゆたこちさん

      U-NEXTで全シリーズやってるんですね!ぜひぜひご覧ください。私は字幕派なのでBSも英語で字幕にして見てます。
      スーシェポ...
      ゆたこちさん

      U-NEXTで全シリーズやってるんですね!ぜひぜひご覧ください。私は字幕派なのでBSも英語で字幕にして見てます。
      スーシェポアロがよく「ノン、ノン、ノン、ヘイスティングズ」と言うんですけど、もう読んでてもその声思い出しますよ♪
      2023/05/18
  • ***ネタバレしてます!***



    "「あなたには、まだまだ学ばなければならないことがたくさんあるからですよ」
    「それはなんですか?」
    「いろいろな大人らしい感情です——人に対する哀れみとか、同情とか、理解の感情です。あなたが知っているのは愛と憎しみだけなのです」(p.404)"

     クリスティー中期を代表する傑作。
     彼の女史は、『オリエント急行殺人事件』や『アクロイド殺し』で見られるような華々しいトリックでも有名だが、特に中期以降は、人物の「語り」、あるいは心理の動きに強い関心を持って作品を書いたミステリー作家だと、個人的に思っている。
     本書では、殺人事件が起こったのは16年前である。司法的な手続きはとっくに終わっていて、物的証拠はもはや手に入らないし、当時犯人として捕まった人物は獄中で亡くなってしまっている。真相に迫るには、当時の関係者たちのもとを訪ね、話を聞いて回るしかない。しかし、この「話」というのが厄介な代物で、そもそもが主観的なものである。同じ行動であっても、その人物に対して良い感情を抱いているか悪い感情を抱いているかで見方は容易に変わり得るし、流れた長い月日のために記憶が捻じ曲げられているかもしれない。ポワロは、そのような「語り」を手掛かりとして事件を再び組み立て直し、16年のあいだ埋もれていた真実を明らかにする。複数の光源から投射された光が宙に図形を浮かび上がらせるように、生きた人物たちが繰り広げた、過ぎ去りし日々の秘められたドラマが眼前に立ち上がってくるのだ。

     本書の見どころは、2つあると思う。
     1つは、人物を複数の証言を通して多面的に描いた点である。16年前、夫殺しで逮捕された妻のカロリンは、ある人に言わせれば"敗北者であり意気地なし(p.73)"であり、またある人にすれば"美しい夢"、あるいは"ごくあたりまえの淑女"であって"感情の起伏のはげしい女"。この何れも、ある意味で「真実」を語っている。ただ、証言者たちの経験や価値観、そしてカロリンへの感情が違うだけなのだ。また、証言が常に「本音」を語っているとは限らないのも勿論である。例えば、ある人物を敢えて殊更悪く評することは、そこに意図的なもの(ズバリ言えば、その人物への好意を隠そうとする意志)を読み取るべきであるのは、よく分かる話だろう。
     もう1つは、魅力的な真犯人の人物造形だ。自分の欲しいものを手に入れるのに誰よりも貪欲でありながら、自分の若さ・未熟さゆえに望みを遂げられず「敗北」することになる彼女の姿は、哀れを誘う。ラストシーンは実に印象的で、見事である。
    "「カロリンもアミアスも、二人いっしょに、わたしの手の届かないところに行ってしまったのです。結局、二人は死ななかったのです。死んだのはわたしでした」
    エルサは立ちあがって、ドアのところまでいってからまたいった。
    「わたしが死んだのです……」
    廊下にでると、エルサの前を、これからともに生活をはじめようとしている若い二人が通って行った。(p.406)"

  • 画家の父を毒殺した疑いで裁判にかけられ、獄中で死んだ母。大きくなった娘のもとに自らの無実を訴える母の手紙が届けられる。ポアロは母の無実を信じる娘の依頼にもとづき、過去の事件を洗い直す。

    16年前の事件である。娘には婚約者がいて、彼女の過去を知ったうえで変わらず愛してくれている。関係者はすでに新しい生活を送っており、どれだけの証拠が残っているのかもわからない。犯人は母で間違いないことが裏付けられるだけなのかもしれない。それでもなお母の無実を信じる娘のために、ポアロは捜査を開始する。

    第一部はポアロによる関係者への聴き取り、第二部は事件に関わった5人の人物の手記で構成されている。16年前のことなどもう記憶があいまいなのでは、と思うが、そこはクリスティのうまいところで、関係者それぞれに墓場まで持っていこうとした秘めた思いがあることが明らかになってくる。また、手記という形を取ることで、対面で話しているときには繕っている相手への感情が知らず知らずのうちににじみ出てくるのも面白い。

    この話のイメージはどこかセピア色である。事件直後の生々しさはなく、関係者の思いにうっすらとフィルターがかかっている。そして、もう時間は巻き戻せない、という確かな現実に、ほろ苦い感情がわきおこる。
    状況証拠が中心とはいえ、ポアロの推理に無理はなく、ミステリとしてももちろん面白い。被害者である画家の父、魅力的な女に目がなく、自分の芸術を何よりも優先する自己中心的な男の描写もリアルで存在感がある。
    再読するごとに味わいが増していく忘れがたい作品である。

  • ドラマ版では一番好きな作品です。なのでかなり楽しみで読みました。いやーでも、回想物なので本だと静かすぎてちょいちょい眠くなってしまった(^-^;。
    最後の犯人のセリフは何かグッと来たな~。殺人犯だけどなんか憐れみを感じてしまった。
    ドラマだとアミアスが色気があってひどい奴だけど引き付けられるものがあるんだけど、本だと本当にヤな奴です。

  • ポアロシリーズを読む度、いつもいつも展開に驚いてばかりの私も、今回ばかりは途中で「犯人が見えたな」としたり顔だったのですが、今回も見事屈服しました。
    16年前の殺人事件を、加害者の娘の依頼で紐解くポアロ。ひとつの事柄を、複数の関係者からの手記という多角的視点、しかも各々自分の思惑に沿って書いた、100%鵜呑みにはできない供述を読み比べるのが面白かったです。

  • ラストが切ない。

    今まで読んできたポアロシリーズの中で
    私の中で1、2を争うフェイバリット作品。
    もう一つのフェイバリット「ひらいたトランプ」が
    「楽」の方でナンバー1であるのに対し、
    こちらの「五匹の子豚」は「哀」の方でナンバー1。

    ポアロが関係者を前に謎解きをする場面、
    そしてある人物と会話して別れる場面、
    ついに明かされた衝撃的な真相の残酷さ、
    そしてそれに対し述べたポアロの厳しくも優しい、
    独自の信条、哲学に従った言葉。

    構成するもの一つ一つに筆者ならではの丁寧な仕事が光り、
    この作品の素晴らしさを大いに楽しむことが出来たが、
    読み終えた後、 まるで自分の心の中に冷たい風が
    吹いているような「寂しさ」「哀しさ」を感じている。

    物語は、大変美しい娘がポアロを訪問する所から始まる。
    その女性はとんでもないことをポアロに依頼するのだ。
    16年前に起こった自分の両親の事件の真相を探ってほしい。
    本当に母親は自分を裏切って
    他の女性へと走った父を殺したのかと。
    娘の懸命な願いに、ポアロは過去の殺人の真相解明に乗り出す。
    裁判に関わった数人の関係者とやり取りした後、
    当時夫婦の周りにいた人物(=5匹の子豚)を絞り出し、
    ポアロはこの5人に直接会って事件当時の話を聞き出していく。

    やはり、嫉妬に狂った夫人が夫を殺したのか。
    それとも良心の呵責に悩んだ夫が自ら命を絶ったのか。
    それとも夫を殺した真犯人が他にもいるのか?
    そこに隠された男と女の愛の真実とは何だったのか?

    良質なミステリーとしてだけでなく、
    ドラマチックな恋愛小説としても楽しめる作品。

    ある一つの同じ出来事を見ても、それを見た人間の数だけ
    「視点」があり、時に己の都合の良いように
    解釈してしまうということ。

    世界にたった一人しかいない、無二の存在であるはずの
    人間に対しても、自分の置かれている立場や抱えている利害、
    相手との関係次第でその人物がどんな人間であるかといった
    印象の切り取り方は違うということ。

    たとえ自分にその気はなくても、
    人は無意識に真実を歪めてしまうこともあるのだということ。

    そして男と女の仲は、他人の目にどう映るか関係なく、
    所詮あくまでも当人達にしかわからないのだということ。

    著者クリスティーが沢山のメッセージを込めた作品だと思う。
    一人でも多くのファンに読んでもらいたい名作。

  • 傑作かも!

  • 姉から妹への想いが切ないけど、話して確認できなかったのかなぁ。夫の愛人に同情するし、お人好しすぎてもどかしい。16年も前の証拠隠滅をポワロが断定するのも違和感。
    タイトルは童謡由来らしいけど話の内容にあっていないし好きになれない。戯曲版タイトルGo Back for Murderもパッとしない。

  • クリスティーといえば、「そして誰もいなくなった」「オリエント急行の殺人」あたりがよく知られているところだけど、ここに傑作といっていい作品に出会えたことがとても喜ばしい。

    16年前に夫を毒殺したとして有罪判決を受け獄死した夫人の娘が、真実を知りたいとポアロに調査の依頼をすることから物語は始まる。
    ポアロは当時の弁護人や警視に会い、被害者と深く関わっていた五人の重要人物に会う。誰が見ても夫人が犯人、なのに、読み方を変えてみるだけで、これほどにまでに違う真実がみえてくるのかと脱帽。 クリスティーの最高傑作の一つと間違いなく言える。

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