君のためなら千回でも(上巻) (ハヤカワepi文庫 ホ 1-1)

  • 早川書房
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感想 : 71
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  • Amazon.co.jp ・本 (305ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151200434

作品紹介・あらすじ

「君のためなら千回でも!」召使いの息子ハッサンはわたしにこう叫び、落ちてゆく凧を追った。同じ乳母の乳を飲み、一緒に育ったハッサン。知恵と勇気にあふれ、頼りになる最良の友。しかし十二歳の冬の凧合戦の日、臆病者のわたしはハッサンを裏切り、友の人生を破壊した。取り返しのつかない仕打ちだった。だが二十六年を経て、一本の電話がわたしを償いの旅へと導く-全世界八〇〇万人が涙した、衝撃のデビュー長篇。

感想・レビュー・書評

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  •  「君のためなら千回でも!」唇裂の凧追い、ハッサンの声が耳に蘇る。
    だがわたしはハッサンに酷い仕打ちをした。それから26年後の2001年、アフガニスタンからアメリカに脱出していたわたしに、父の親友からかかってきた電話が告げる。「もう一度やり直す道がある」


    2021年、アフガニスタンではタリバン政権が樹立。私は中東情勢の基本をわかっていないのでこちらの本を読んでみた。
    上下巻で、1960年代王政時代、1978年共産主義者のクーデター、1979年のソ連侵攻、1989年ソ連撤退のあとの、北部同盟やタリバンによる支配、そして年月は流れ2001年アメリカ同時多発テロ事件とアメリカのアフガニスタン侵攻までの時代に渡っている。
    アフガニスタンの生活状況や、アメリカでのアフガニスタン人社会など、かなり読みやすい小説で、時代の流れとも少しわかってきた。


    小説の語り手であるアミールは、アフガニスタンの都市カブールで裕福な家に生まれた。祖父は尊敬されていた検事で、父のババは成功した事業者だった。母はアミールを生むとすぐに亡くなっていた。大きな屋敷の庭の隅には召使いのアリとその息子のハッサンがいる。ババとアリは共に育ち、そしてアミールとハッサンも共に育った。
    ババは、裕福で人望があり大胆で誇り高い。アミールはババの関心を買おうと一生懸命だが、ババにはスポーツにも商売にも関心がなく勇敢さにもかけるアミールが物足りない。ババの親友ラヒム・ハーンは、アミールにとっても友人で、アミールに物書きの才能があることを応援してくれている。

    アミールの子供時代はアフガニスタンは王政だった。この頃のアフガニスタンは割と平穏だが、民族同士の差別も見られる。
    アミールたちはスンニ派のパシュトゥーン人で、アリとハッサンはシーア派でモンゴル系のハザラ人。
    パシュトゥーン人はハザラ人を迫害して弾圧していたので、アリやハッサンは差別の対象になる。だがババは母のいないハッサンにアミールと同じ乳母を付け、誕生日を祝い、家族の大事な集まりにも同席させていた。アリは「同じ乳を飲んで育った者たちには兄弟の絆があると言われています」と言う。
    アミールとハッサンは子供の頃は常に一緒にいた。アミールは字の読めないハッサンに本を読んだり、自作のお話を聞かせる。だがアミールにとってハッサンは、ババを独り占めしたい気持ちもあり、あくまでも召使いの子供で”友達”とは言えない気持ちを持っている。

    ある冬、アミールはハッサンを決定的に見捨てる。
    そして罪悪感からハッサンを遠ざける。そのためには更に酷い仕打ちまでする。

    その後は激動の時代になだれ込む。
    1978年共産主義者のクーデター、1979年のソ連侵攻によりすっかり混乱したカブールから、ババと18歳のアミールは身一つで脱出する。

    アミールとババとの複雑な父子感情、アメリカのアフガニスタン人社会での様相、アミールの結婚の話、アミールのハッサンへの罪が、多くの暴力に晒されて荒廃する社会を背景に書かれる。

    アメリカで作家になったアミールが、電話を受けてアフガニスタンに向かうことにしたところで上巻終わり。

    下巻はこちら
    https://booklog.jp/users/junsuido/archives/1/4151200444

    • 奇跡の木さん
      淳水堂さん。

      こんばんは。
      私は、「カイトランナー」のタイトルでこの本を読みました。
      今でも心に残り、こんなに心に残る本はないのではないか...
      淳水堂さん。

      こんばんは。
      私は、「カイトランナー」のタイトルでこの本を読みました。
      今でも心に残り、こんなに心に残る本はないのではないかと思いました。そして、泣きながら読んだ記憶があり、この作家さんの他の本も同じく心に残ってます。一つだけまだ積読ですが…
      2021/09/12
    • 淳水堂さん
      奇跡の木さん
      コメントありがとうございます!

      これは一気読みに近かったです。
      映画化されているようですが、かなりキツい場面も多かっ...
      奇跡の木さん
      コメントありがとうございます!

      これは一気読みに近かったです。
      映画化されているようですが、かなりキツい場面も多かったので、映画は観られないかなあ(+_+)

      検索しましたら、「カイト・ランナー」は一冊にまとまっているのですね。
      題名は「カイト・ランナー」のほうがあっているのかな、という気もします。
      2021/09/13
  • (上下巻合わせての感想)アフガニスタンから米国へ亡命した主人公が、かつて裏切った友人のため、タリバン政権が支配する祖国に戻るという贖罪の話。同名で映画にもなった。

    アフガンやタリバンと聞くと身構えてしまいますが、基本的には感動ストーリー。物語の運びからみても、終盤に向けて「感動させられる」ことがわかってしまうけれど、それでも感動する。やはり危険を承知で友のために……というテーマは、下手なラブロマンスよりもよっぽど良いですね。特にタリバン政権下という現実的な脅威がページを繰る手を止めませんw

    そんな荒れた祖国に戻ってからはエンタテイメント色が強くなりますが、ひとつの作品としてみると、厳しい背景と相まって、「すばらしかった」と言うほかありません。

    しかしながら許せないのは、タイトル。原題「カイト・ランナー」をなぜ変えた。「君のためなら千回でも」って……安っぽすぎて泣けてきます。「凧を追う」というタイトルだからこそ、ラストもより一層意味深くなるというのに……、映画に合わせてライト層を取り入れようとしたのでしょうが(それが悪いとは言いません)、文学として見ると非常に残念です。

  • これ感動した。ストーリーもよかったけど、近代的な価値観の主人公が、はじめて神に祈るところがめっちゃよかった。
    人の信仰みたいなものは極限状態から芽生えるんだなって。

  • アース(映画)の冒頭での映画紹介によって、私はこの本と出会った。この本を読み終えた今、映画としては駄作としか言いようのないアースに、この出会いを与えてくれてたことを感謝している。 本書は、アフガニスタンの裕福な家庭に生まれた主人公アミールの半生の物語である。アミールの父ババは、経済的成功者で、厳格、スポーツ万能、且つ誰からも尊敬を受けるような類まれな人物である。幼少期、アミールは、この父の才能を引き継いでいない自分が、父から愛されていないのではないかという恐怖にさいなまれていた。というのもアミールの一つ年下のハッサンという召使の子をババが非常に可愛がっていたからだ。アミールとハッサンはお互いに友情を感じつつも、父のハッサンに対する態度や、出生時に母を失ったという事情がアミールのハッサンに対する感情を複雑なものにした。 あるとき、ハッサンは悪ガキどもに、人種差別から来る辱めを受ける。アミールはそれを知りながら、恐怖心に負け、ハッサンを助けることが出来なかった。このことが、さらにアミールの感情を歪ませ、遂にはハッサン一家をババ家から追い出してしまう。この一件がアミールのこの後の人生に重くのしかかることになる。 この後、アフガニスタンでの政変、ソ連進行により、アミールは父とアメリカに亡命。二十数年が経過する。幸せな家庭生活を送るアミールに一本の電話がかかってくる。「もう一度やり直す道がある」。電話の主は、ババの旧友。アミールは、この声に導かれるように、自分の罪を償うべく、再びアフガニスタンへ。絶望的事実が待ち受けようとしていることを知らずに。 ここから先は、要約することが難しいので、ご自分でお読みください。読んで悔いなし。

  • 冒頭で姿を消すハッサンというキャラクターが非常に印象的で、そのハッサンをずっと心に抱えた主人公アミールが寂しくも愛おしい。
    後半でより濃く描かれるアミールとその父ババの関係は、大昔から続いてきた父子の難しい絆そのものだ。大きすぎる存在が故に、息子を一番苦しめ、縛ってきた。それはアフガニスタンという秩序も。そういった、現代では見直そうとされている伝統的な家族関係が、長い時を経てどう許されていくのか、解されていくのか。
    アフガニスタンという異国の話とは思えない、読者の友の物語だ。

  • 4.01/672
    内容(「BOOK」データベースより)
    『「君のためなら千回でも!」召使いの息子ハッサンはわたしにこう叫び、落ちてゆく凧を追った。同じ乳母の乳を飲み、一緒に育ったハッサン。知恵と勇気にあふれ、頼りになる最良の友。しかし十二歳の冬の凧合戦の日、臆病者のわたしはハッサンを裏切り、友の人生を破壊した。取り返しのつかない仕打ちだった。だが二十六年を経て、一本の電話がわたしを償いの旅へと導く―全世界八〇〇万人が涙した、衝撃のデビュー長篇。』


    原書名:『The Kite Runner』
    著者:カーレド・ホッセイニ (Khaled Hosseini)
    訳者:土屋政雄
    出版社 ‏: 早川書房
    ペーパーバック ‏: ‎305ページ(上巻)

    メモ:
    死ぬまでに読むべき小説1000冊(The Guardian)「Guardian's 1000 novels everyone must read」

  • 数年前に完読したが、アフガニスタンの緊迫した情勢のニュースを受け、感想を投稿。

    上巻では、主人公が少年期を過ごしたソ連侵攻前後の時代と、アフガニスタン脱出後に移住したアメリカでの青年期まで。

    幼少〜少年期を美化することなく、主人公の中で幼い頃から渦巻いていた劣等感や卑劣な行為が描かれている。
    著者自身が投影されている主人公をそのように描いた点において、著者の誠実さを感じた。

    アフガニスタンの風習による格差や差別に胸が痛むが、訪れる時代に台頭する武力は、あらゆる格差の人々に関係なく襲いかかり、喪失と悲劇がもたらされる。。

  • 2020.5.10

  • 君のためなら千回でも(上巻) (ハヤカワepi文庫)

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