習慣の力〔新版〕 ((ハヤカワ・ノンフィクション文庫))

制作 : Charles Duhigg 
  • 早川書房
4.24
  • (52)
  • (41)
  • (16)
  • (3)
  • (1)
本棚登録 : 974
感想 : 42
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (422ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150505424

作品紹介・あらすじ

依存症の治療にも、ヒット商品誕生の陰にも習慣あり! 良い習慣を身につけ、悪い習慣を減らす極意を伝授。新章を収録した決定版。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 「習慣を変えることで人生を変える」というテーマの本は、ビジネス書・自己啓発書を中心に汗牛充棟の観がある。

    本書も、広い意味ではそうした「習慣本」の一つ。私も、「仕事に役立つヒントが得られるのではないか」と思って買った。

    その期待はよい意味で裏切られた。仕事などに役立つ実用書としての側面もあるものの、もっと奥深い内容だったからだ。

    本書は、ピュリッツァー賞も受賞した米国の一流ジャーナリストが、綿密な取材をふまえ、「習慣の力」を多面的に探ったもの。

    脳科学、心理学などの分野で、科学的に研究されてきた習慣のメカニズム(習慣がどのように形成されるかなど)についても一章が割かれているが、基本的にはノンフィクションである。

    つまり、「論より具体例」――習慣が個人の人生や組織を劇的に変えた事例を通して、その力を探ることにウェートが置かれているのだ。

    たとえば、アルコール依存症を治すための巨大組織「AA(アルコホーリクス・アノニマス)」がなぜ大きな成果を上げてきたのかを、「習慣の力」に焦点を当てて検証している。
    習慣のメカニズムが解明されてきたからこそ、ネガティヴな習慣である依存症から脱出する方途もわかってきたのだ。

    また、大企業や大病院、スポーツチームなどを、習慣の力を利用して立て直した事例も多数登場する。

    一般に、「習慣本」は個人の習慣に主眼が置かれがちだ。それに対し、本書は〝組織の持つ習慣〟にも多くの紙数を割いている。

    〝組織の持つ習慣〟とは、たとえば企業なら「企業文化」「社風」と言い換えられるものだ。

    企業には長年の間に形成された習慣があり、経営者も社員も無意識のうちにそれに束縛されている。
    企業を大きく変えるには、〝組織の習慣〟を変えないといけない。それはたやすいことではないが、成功すれば、あとは経営者が逐一指図しなくても、個々の社員が行動を変えることによって企業はおのずと変わっていく。

    本書には、その具体例がいくつも挙げられている。
    つまり、本書には組織論としての側面もある。「習慣の力」で組織を変える方法を教えてくれる本でもあるのだ。

    さらに、本書は〝社会の持つ習慣〟についても論じている。一つの社会が大きく変わるためにも、「習慣の力」が重要な役割を果たす場合があるというのだ。

    その事例として挙げられているのが、アメリカの公民権運動。一つの章(「第8章 公民権運動の真相――社会運動はどのようにして始まるのか」)を丸ごと割いて論じられている。

    ……そのように、「習慣の力」がさまざまな角度から検証されていくノンフィクションなのだ。

    自分の習慣を変える方法が知りたくて読む人から見ると、「そんな余計な話はどうでもいいから、早くコツを教えろ」と言いたくなるかもしれない。私も最初はそう思った。

    だが、読んでいるうちにそうした気持ちは消えていく。ノンフィクションとしても一級品であり、面白いエピソードの連打で読者をグイグイ引き込んでいくからだ。

    それでいて、読者が習慣を変えるための実用書としても、十分役に立つ。

    日本のビジネス書に多い薄っぺらい「習慣本」など足元にも及ばない、読み応えある習慣本。

  • 習慣を変えるというのは大変なエネルギーを使うと思いますが、「習慣の力」でその後の人生も変えられると思うと、日頃の生活習慣を改めて見直してみようという気持ちになりました。何気ない習慣がその後のベクトルを決めてしまうかもしれないと思うと考え方が変わります。気持ちの入る内容でした。

  • ◼︎ファブリーズ
    自分の部屋が臭いことに人は気が付かない。掃除の後の『仕上げのいい匂い(報酬)』が大事だということに気がつく

    ◼︎ペプソデント
    ピリピリ感やミントなどを入れて、『磨いた感』を演出する歯磨き粉でヒット

    ◼︎ダイエット
    ダイエットを成功させた78%が朝食を食べている。またそのほとんどが特定の報酬(ダイエット後の青写真)を思い描いていた

    ◼︎禁煙
    タバコをカフェインに置き換えることによって習慣を変える

    ◼︎習慣を変える追い風
    『信じる力』(宗教、同じ意思を持った集団の中に入るなど)

    ◼︎アルコア
    ・ポール・オニール
    ・社員の安全性を第一に掲げる

    ◼︎スターバックス
    ・無礼にされるよりも親切にされた
    被験者は、意思決定の権限を持っているという感覚を持つことができ、集中力が増す
    ・ルールも従業員に決めさせる。コントローラブルだと思わせることが大事

    ◼︎医療事故
    ・左の頭蓋骨と誤って右の頭蓋骨を切開。患者死亡
    ・ナースと医者が協力し、気づいたことを話せる環境づくりを実施

    ◼︎マルチンルーサーキング
    『武器を取ってはいけない。剣で生きる者は剣によって滅びる』

  • 習慣は、「きっかけ→ルーチン→報酬」の繰り返しでできている。習慣を変えたければ、代わりのルーチンを見つけること。

    具体的に実行に移すためのガイドとして、付録に書いてあることがわかりやすかった。

    変化の枠組み(フレームワーク)
    1、ルーチンを特定する
    2、報酬を変えてみる
    3、きっかけを見つける
    4、計画を立てる

    ↑の具体例
    1、カフェテリアに行ってチョコチップクッキーを買って食べている
    2、①外に出て周りを歩き、何も食べずにデスクに戻る
     ②カフェテリアに行くが、チョコチップクッキーではなくドーナツかキャンディバーを買って食べてからデスクに戻る
    ③カフェテリアに行き、りんごを買って食べて友達とおしゃべりする
    ④コーヒーを1杯飲む
    ⑤友人のデスクに行って少しおしゃべりをしてからデスクに戻る
    ①から⑤はどのようなことルーチンとなっている行動に自分を駆り立てているのかを見極めるのが目的。毎日デスクに戻った後で、最初に浮かんだ3つのことを紙に書き留める。感情でもいいし、とりとめのない考えでも良い。そして時計のアラームが15分後になるようにする。アラームがなったら、まだクッキーを食べたいと感じているか自分に問う。いくつか違った奉仕を試せば、自分が本当に欲しているものがわかる。習慣をつくり直すには、それが不可欠。

    3、①場所②時間③心理状態④自分以外の人物⑤直前の行動を書き留める。これによって、真に自分が欲しているものがわかる。本当はクッキーが食べたいんではなく、「一時的に仕事を忘れること」がしたかった。

    4、午後3時30分、毎日、友人のデスクに行って10分間話をする。やがてこれが機械的な行動となり、何週間か経つと、何も考えずにこのルーチンを行えるようになった。

    以上が著者の実際にあった習慣化である。

    陰山英男さんが本の最後に「生活習慣、それが全てです」と解説してあったのも面白かった。陰山さん自身の実践の中で、生活習慣は学習習慣に形を変えながら、その重みを実践が深まるほどに感じていた。学力こそ習慣の質によって形成されるもので、「勉強すれば学力がつく」と言うのはまったくの思い込みである。
    習慣とは何か。それは「努力の無意識化」ということである。人間が生活を良くするためには様々な改善の努力を必要とする。しかし、その努力がまさしく努力として特別な重みを持っている間、残念ながらその成果が見えにくい。しかし、それを何度も反復し継続し、その努力が当たり前のものとなった時、その効果は劇的な変化を生んでいく。「歯磨きと同じように勉強しよう」陰山先生は子供たちに言っている。
    陰山先生は、個人や組織の習慣を変えていくにあたり、極めて重要なポイントを挙げていた。それは、習慣化するプロセスの1つとして、人は問題を洗い出し、新たなことを提案し、1つの方向性に結論づける時、何かしらの形で「書く」作業が必ずあると言うことだ。「習慣の力」をより確実なものにしていくために、その過程の中で「書く」と言う作業の内容を高めていくことが必要だろう。また、まず何より、小さくても成功の事実を生み出すということも重要。成功の事実は個人に自信を与え、1つの習慣の改善は、その人の習慣全体の改善と波及していく。

    【以下、おもしろいと思った内容】
    第4章の「アルコアの奇跡」は、企業の習慣についてまとめてあった。アメリカのアルミニウム会社であるアルコアほど古くて規模の大きい企業では、スイッチを1つ入れれば社員がもっと働き、生産性が上がるとは期待できない。最初に手をつけるべき事は、誰もが(組合も管理職も)重要だと認める事柄だと考えた。社員を1つにまとめ、社員の働き方やコミニケーションの取り方を変えることに専念する必要があった。当時のCEOオニールはやらなければならないリストの最初に「安全」と書き、大胆な目標を立てた。怪我人ゼロを最優先すべきこととしたのだ。リストはきちんとした生活を送るための手段。

    キーストーン・ハビットを変える、あるいはさらに進歩させることに専念すれば、他にも幅広い変化を起こせる。「小さな勝利」と呼ばれるものは、新たな習慣を作るのを助け、その変化が周囲に伝わっていくと、そこに文化が生まれる。しかしながら、そうした原則を理解することと、それを実現することの間には溝があり、それを超えるのにはちょっとした工夫が必要。

    水泳選手のマイケルが行っていた習慣興味深い。毎晩優勝するイメージを具体的に持ち、架空のビデオとしてそれを何度も何度も再生するのだ。もしハプニングがあったとしても、そのことも含めてということを予想して勝利を積み重ねていく。
    ちょっとした成功の瞬間に意識を集中して、それを精神的な引き金にすることが1番良い。それを機械的、自動的にできるところまで持っていった。

    子供にピアノのレッスンを受けさせたり、スポーツに参加させたりすることは、とても大切。音楽家に育てるとか、サッカーのスター選手にするためではない。1日1時間の練習や、グラウンド15種の走りを自分に課すことで、自分をコントロールする筋肉を鍛えるのだ。5歳で10分間ボールを追っていられる子供は、6年生になったとき宿題を期限までに終わらせるようになる。

    スターバックスの前社長ハワード・ビハールが「私たちはお客様に飲み物を提供するコーヒーのビジネスではなく、コーヒーを提供してお客様を喜ばせるビジネスをしている」「私のビジネスモデルの基本は、最上の顧客サービスです。それがなければ始まらない」と言っていた。スタバが出した答えは、「自制心を組織の習慣にしてしまうこと」だった。

    親切な対応された学生と、ただ指示に従うように言われた学生とで、12分のテスト時間での集中力が全く違っていた。親切な対応されたグループは、「物事を自分でコントロールしているという感覚」があった。自制心を必要とする作業を頼まれたとき、それが自分自身の望みでもある(自分で選んだと感じられる、あるいは誰かの役にたつ作業なので満足感が得られるなど)時は、苦しいと感じる度合いが減る。

  • これは良い本だと感じています。

    「習慣」(習性、中毒、ルーチン、反復、クセなど...)に関し、その形成、構造、変化、活用等について、様々な実験や理論、実際の例を引用しながら語られている本書。
    また、習慣の主体を、個人、企業・組織、そして社会の、3つに書き分けられています。

    私個人の習慣・クセの改善、仕事上の組織における業務改善、そして社会の動きの背景にある社会習慣の理解。
    それぞれのレベル感で、私の今後の生き方にも影響するであろう本書。

    折に触れて読み直したい一冊です。

  • 実際には、組織や社会を、より良く、安全で、住みやすく、優しいものにするには、理念の共有と徹底が重要だ、という話が多い。もちろん読みやすく、面白い。

  • 強く書かれているのは習慣=きっかけ+ルーチン+報酬という仕組みで、これはイラスト付きで頭に入りやすく書かれている上、誰もが根本的に習慣というものを理解できるようにしてある。
    習慣をどう自分のものとして取り入れるかに関して大事なことはやめたいという気持ちが1番強くなる瞬間いわゆる転換点に自分がどう対処するかを計画することと、きっかけ・ルーチン・報酬を自分の中で紐解き本当にその報酬が必要なものかを考えること。

    「あなが変われると信じる」なら「変われると信じる」を習慣にすれば変化は現実になる、それが習慣の力で、つまり習慣とは自分で選んだものであると気づくこと

  • 「習慣の仕組みを理解するための枠組み」と「枠組みを変えるための手引き」

    本書の巻末には習慣を変えるためのガイドラインがスッキリとまとめられています。ここで紹介されている手順は、すぐに生活に取り入れることができる内容になっています。
    本書の事例は、依存症のケアや社会運動が起こる仕組みなど、馴染みのないものが多く読みやすい部類ではありません。(読み応えはありますが)
    ただし巻末ではあまり触れられていない、習慣が定着するための要素も解説されています。
    まずは巻末のガイドラインを読んでから、本書を読み進めることをおすすめします。

  • 良書です。今から習慣を変えたくなります。
    習慣を変えるためのメソッドや社会的習慣についての記述もとても興味深い。

  • まずは最初の30%くらいで、習慣に関する脳の仕組みを学びます。

    そのあとは、応用編になります。
    ・依存症を止める方法
    ・商品の使用を習慣化させるプロモーション
    ・組織の習慣を作り、組織の業績を高める
    ・犯罪

    などなど・・・

    本当に、最初に読んだ仕組みだけで、応用編が説明できるのかよくわからない部分もあるのですが。よく考えてみようと思います。

全42件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

「ニューヨーク・タイムズ」紙記者。1974年生まれ。イェール大学、ハーバード大学ビジネススクール卒業。ビジネス関連の記事を中心に執筆。これまでジェラルド・ローブ賞、ジョージ・ポーク賞ほか、ジャーナリズム関係の受賞歴多数。講演活動も積極的に行っている。著書に『習慣の力 The Power of Habit』(渡会圭子訳、講談社)。

「2017年 『あなたの生産性を上げる8つのアイディア』 で使われていた紹介文から引用しています。」

チャールズ・デュヒッグの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
リンダ グラット...
出口 治明
アンデシュ・ハン...
ジャレド・ダイア...
J・モーティマー...
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×