ハーバードの個性学入門:平均思考は捨てなさい (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150505370

作品紹介・あらすじ

身長や年収、家族像や幸福感まで、人の行動を縛る「平均」という概念。その問題点と、個性を発揮するための3原理を示す最新研究

感想・レビュー・書評

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  • ハーバードぉ?
    はいはい、どうせ私なんて勉強もスポーツもイマイチで何にも秀でてないし……。
    はい!ちょっと待ってください!

    著者の経歴はこうだ。
    昔から勉強ができる方ではなく、18歳のときに大学入学資格試験はDマイナス評価で高校中退。
    生活保護を受けながら21歳の時には妻子(子供二人)を養い、時給6ドル45セントで働いていた。
    簡単に言うと、地位も名誉も金も学歴もなかったわけだ。
    そこからどうして超名門校の研究者となったのか?
    それは「個性」に着目し「平均」を排したからだ。
    一体どういうことか?

    赤ちゃんの発達の例(175頁〜)がわかりやすい。
    ハイハイは必ず通るステップ、と思い込んでいる人は多いだろうが、特殊な文化、つまり西洋文明で人工的に作られたものである。
    ハイハイに至るステップは何十種類もあり、なんだったら別にしなくてもいい、ものらしい。
    最近はそのことを記載している育児本も増えてきたが、親たちは、「●ヶ月になってもまだしない」に縛られ、孤独な育児のなかテキトーなことを書いているスマホの情報に惑わされる。
    発達は、速度も、順序も、「標準」すらないなんて、誰が教えてくれただろう?!
    (ただし、心身に本当に医学的介入が必要な場合もあるので、その際はネットや友達ではなく、「専門医」に相談を!)

    スピードと学習能力の間に関連性がない、としたら。
    君は自分が思っているほど「バカ」でも「落ちこぼれ」でもないとしたら?!
    190頁を読んでほしい。

    決められた時間に何かをなすことの重要性を否定はしない。
    ただ、もはやそれだけが評価の基準ではいけない。
    確かに、物差しは一つの方が便利だ。
    だから著者は卒業証書ではなく、「資格証明書」の発行を提言する。
    確かにそれなら時間内に素早くできる子も、時間を掛けて何かをなせる子も、特技に合わせて一定の評価が得られる。

    機会均等について述べた第九章では私の思い込みが露見した。
    「平等なフィットだけが、平等な機会を生み出す」(262頁)

    本書は発達障害の当事者や保護者、支援者(特に当事者が幼い子供なら尚更)、教員、人材育成に関わる全ての人、そして、自信を無くした人に読んでほしい。
    個性とは、フィットとは、平等とは。
    新しい時代の教育は、ここにヒントがある。

  • 工業化を進めるうえで限られた資源を効率的に使うために考案された平均とランク付け。
    縁故と血筋が評価基準だった当時は、わかりやすく、平等で画期的な考えとして、全員の生活水準の底上げにとても役立った。
    ただ成熟した平均の時代、それは管理のための管理が目的となり、人々から個性と決断する能力を奪ってしまうように。

    これを読んで、「私、定時で帰ります。」を思い出す。
    モーレツ社員、過労死、機械の歯車のような働き方…
    テイラーのベストセラー「科学的管理法 マネジメントの原点」の言う通り、個性を重視しない平均主義を用いて、無駄を系統的に解消することが発展につながるという主張が社会に浸透した結果なのだと思った。

    特に人間に関わることに対し、すべてが平均値に当てはまる人はいない。
    存在しない「ノーマ」(アメリカ女性の平均値を具現化した体形の女性)と比較して自分は劣っている、ココが駄目だ…と落ち込んだり、平均と比較して自分は上だと架空の数字に一喜一憂する人のなんと多いことか。
    まさかそれがゴルトンという一人の学者の思い込み優性論が元になっていたなんて…。

    今では、才能のかけら同士に相関性はないということが実験で分かっており(ピアノと数学の相性がいいなど、脳のつかさどる領域が関係することもわかっている)、ゴルトンのすべてが優れている人間がいる、という優性論は根拠なき説である。

    GoogleやMicrosoft社がランク付き評価制度を捨てたように、業務を厳密に分業化して個々にランク付けをしていては、革新的なアイデアは生まれない。

     ◇ランク付け評価制度を放棄した年
      2006年:Google社
      2013年:Microsoft社
      2014年:デロイト社
     (Microsoft社はランク付け評価していた直近を失われた10年と評している)

    高ランクの人を雇えなかったコストコの社長の発想の転換も素晴らしい。
    大企業だからそんな選別して採用できるという話でもないことが分かる。

    以前受けたプロジェクトマネジメントの研修で、
    リーダーに求められる資質は…上司に信頼され、部下をうまく成長させ、同僚を鼓舞して、他部署やお客様へのネゴシエーションもできる人脈を持っている人…そんなスーパーマンいるか!!と思った記憶がある。

    技術の発展とITの登場で、個人でも大量の情報を扱うことができるようになった。
    これからは偏差値、出身校、処理速度、といった一次元的な見方ではなく、才能を多方面から評価し、個人の強みが発揮できるやり方とペースで学びながら発展していくことができるはず。

    世界に一つだけの花のヒット、YouTuberの台頭、、、平均主義のほころびはもう隠しきれない所まで来ていて、組織が個人より優先される時代が終わりつつある。
    国はインボイス制度なんかで頑張ってつぶそうとしているけどね…。

    物事に関連した情報を一次元的に知りたいのであれば平均値は有効だけど、
    特に自分に関することは、いちいち平均値と比べるのではなく、どうしたいのか、どのやり方が自分に合っているか試行錯誤して経験することが大事なのだと思った。

  • 平均値と比べる習慣はやめましょう。他人と比べず自分の達成したい目標に向かってマイペースに生きることが大切。
    成功への道は複数あるということを忘れてはいけない。

  • これは神本です!

    まさに目から鱗的な読書体験。

    私は平均という世界で生きていることを改めて思い知らされました。

    ヒトの才能にはバラツキがあるって当たり前の事実をもっと意識して生きようと思います。

    どうしても学校だったり職場ではある一側面だけの評価で優劣が決められている気持ち悪さに本書を読んで気づきました。

    そんなんです、みんな違うんです。
    全部が平均より上の人なんて存在しないんです。

    ただ社会は何かと平均を指標とすることでシステムの効率化を図っているのは致し方ないでしょう。

    私も子育てをしていて子どものできることできないことにとても敏感になっていました。

    けど、本書を読んでそれは杞憂であることがわかりました。

    人間の能力はさまざまである。
    それを知れただけでもとても価値のある読書体験でした。

  • パイロットの話はマシューサイドの多様性の科学でもあった
    平均的な人などは存在せず人それぞれ異なる
    平均とは産業革命時代に仕事を効率的に進めるためにできた
    合わせて多様性の科学を読むのがオススメ

  • まさに日本人が見落としがちな視点だと思う。また、これからの時代に適した考え方だと思う。近代化から脱却が今必要で、インターネットにより自分のペースで学べる時代が来ている。これは、個性を尊重することができ自分のことを理解できている人確実にゴールに近づいていくことができる。
    平均、一元的思考、本質主義は、集団をまとめて大量生産し民主主義の土台を作ることには向いていた。しかし、今の時代にはこのやり方は個性を阻害し創造性や体系的、有機的思考を作れない。また、不登校生などは今の学校教育の一元的基準による評価では改善されない。不登校は、一元的基準による評価が最大の原因だから。

  • なぜ平均が世に浸透したのか、平均は個人を評価するのに正しくないと暴いていく歴史が、ミステリー小説みたいで面白かったです。

  • 個性という概念が一般化しているが
    そもそも個性とは何か?
    個性はどのような歴史的な背景から生まれたのか?
    ということがわかる一冊

    人の個性を活かす仕事をしている全ての人に読んでほしい

  • 集団同士を比較するには平均などの統計量は有効だが、個人を見る場合には適してない。
    個人は個人ごとに判断が必要。
    また個人の中でもコンテキストによって性向は変わりうる(シチュエーションにより外交的やら内向的やら)

    システムの開発(戦闘機のコクピットのように)も、平均に合わせるのではなく、個に合わせる必要がある。

  • かなり名著。本書で指摘されている誤りを
    なんとなく違和感は持ちながらも、今もほとんどの人がしている。

    つまり、平均値を個人に当てはめること。
    成功している人は朝食を食べる傾向がある、みたいな統計的な平均値を持って、朝食を食べていないから成功しない、と断言する愚かさ。
    この理由がわかる。

    人には個性がある。個性とはただ一つのことで総合的な評価ができるものではなく、さまざまなパラメータがあり、高い低い、強い弱いがある。
    さらにはそのパラメータは固定ではなく、文脈(コンテキスト)によって大きく変わる。

    さらに、ある到達点に辿り着くまでの道順は人がいればそれだけのパターン(迂回路)がある。
    赤ちゃんは平均して何ヶ月目にはずり這いして、その後ハイハイして、という平均値を基準に自分の赤ちゃんを見るとミスリードされる。

    つまり複数パラメータ×コンテキスト×迂回路が個性である。
    これだけ複雑なものを平均値などというまとめたものと比較する意味は薄い。

    平均値はあくまで集団と集団を比べるためのもの。
    個人と比較するものではない。

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著者プロフィール

心理学者。誰もが活気ある社会で満ち足りた人生を送れるような世界の実現を目指すシンクタンク〈ポピュレース〉共同設立者・代表。ハーバード教育大学院心理学教授として〈個性学研究所〉を設立したほか「心・脳・教育プログラム」を主宰した。著書に『ハーバードの個性学入門――平均思考は捨てなさい』(早川書房)、『Dark Horse――「好きなことだけで生きる人」が成功する時代』(共著、三笠書房)がある。

「2023年 『なぜ皆が同じ間違いをおかすのか 「集団の思い込み」を打ち砕く技術』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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