子育ての大誤解〔新版〕下――重要なのは親じゃない (ハヤカワ文庫NF)

  • 早川書房
4.08
  • (14)
  • (14)
  • (8)
  • (0)
  • (1)
本棚登録 : 257
感想 : 13
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150505066

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 子供への影響は遺伝と非共有環境という上巻の仮説だが、それでは、どのような非共有環境がどのように子供に影響を及ぼすか、そして非共有環境に対して親はどのように対処すべきか、を解説したのが下巻。

  • ・スキナーの行動主義が強かった時代には、泣いている赤ちゃんを抱き上げるという行為は抱き上げることで泣くという行為を強化する、として戒められていた。今は全く逆のことが言われている。

    ・そもそもこうした社会科学の研究ではコントロールを置くこともできないので因果関係を立証することは甚だ困難だ。親が叩くから難しい子になるのか、難しい子だから叩かれるのか、はっきり立証されないまま一般的に正しい意見とされていることが非常に多い。

    ・人の心理的特徴はその50%が遺伝の、50%が環境の作用による。環境には家庭などの共有環境と、友人関係などの非共有環境がある。しかし1970年代にはアメリカの心理学は行動主義の影響下にあり、遺伝の影響を認めない傾向が強あった。政治的にも生まれながらの相違点の存在を認めず、遺伝の影響を否定する傾向があった。

    ・Dunn & Plomin(1990)によると、出生順位と性格傾向についても関係はない。長男はこういう性格、、、などというステレオタイプな見方は間違っている。家の中では出生順位と性格の関係はあるかもしれない。第一子は支配的で責任感が強い。しかし、こうした出生順位との関係は家庭内にほぼ限られている。仲間との付き合いにおける社会的生活能力は子供の中に存在するのではなく、それぞれの人間関係の中に一つずつ存在する。

    ・親よりも環境が重要な証拠として、非行少年たちも(家族同伴で)転居するだけで問題行動が減るという。孟母三遷の教えはやはり正しいのだろう

    ・IQも労働者層の親に育てられるよりも中流階級の養父母に育てられた方が12ポイントほど上昇するという。ただし、養父母に育てられた養子二人のIQの相関は幼少期には強い。これはおそらく各家庭の環境によるものだろう。しかしこの相関は大学入学ぐらいの年令になると消えてしまう。血のつながりのあるきょうだいに近いIQになり、12ポイントほどの優位は7ポイントほどに小さくなる。

  • ふむ

  • 「子どもは勝手に育つ。子どもの性格や人格形成に最も影響を与えるのは友人と仲間である。親は子どもが愛おしいから可愛いがるってのでいいんだ。」という論旨。

    著者はいわゆる早期教育的なものはあまり意味が無い、と説く。しかし仲間や友人が重要だからこそ、良い仲間ができるコミュニティに居住したりそういう学校に入学させたいというよくある親の行動に対して一定の合理性を与える。

    橘玲の「言ってはいけない」で紹介されていたので読み始めて5年。上巻を読んだのが2018年5月。たまのバス移動の時のKindle読書にしていたら下巻の読了に4年かかった。長かったので詳細は忘却の彼方だけど。

    我が家の子供たちも「勝手に」育っているなと実感する今日この頃。

  • 上に書かれていた内容と同様に、ここでも引き続き社会集団仮説が唱えられている。子供は親の影響よりも、共有している仲間集団の影響を強く受ける。ということだ。文化の継承においても同様のことが言える。例えば、家では正直者なのに、外では不誠実になる(仲間の影響)ということもある。親が家庭内でどれだけ丁寧に子育てをしても、家庭の外においてもその影響が続くとは限らないのだ。
     ジェンダー論においても興味深い主張がされていた。(私は性差別者ではないです笑)筆者の主張では、やはり男女は異なる。実際に偏見と言われていることは正しいことが多い。女の子はおままごとをし、男の子は電車の模型で遊ぶ。ただ、勘違いしてはいけないのは、おままごとが好きな男の子もいる。ということだ。確率の問題なのである。私は、女性が不当に差別される社会は望んではいない。が、変に男女平等にするのもおかしいと思う。
     ここでは、学校に関する興味深い話もされている。クラスの集団は基本的に分裂する。例えば、頭の良い・頭の悪い、の二つに分かれたとする。すると、その差は時間を経るにつれ顕著になる。運動ができる・できないでも同様だ。ここで、教員は、分裂させないことが肝になる。全員を、運動ができて、勉強もできる集団に参画させるのだ。つまり、均質化は有効な手段になる。女子校や男子校が良い成績を収められるのは、性別的な部分で均質化が行われているからかも知れない。
     問題児。これを見ると、親のせい。と考えたくなる人もいるかも知れない。しかし、遺伝的な要素も排除しきれないし、上記同様に仲間集団からの影響も受けているので、どこまで親が悪いのかがわからないのだ。実際に、体罰をする親に介入をしたとして、体罰をなくしたとしても、その子供の社会での振る舞いが大きく変化することはない。

    この本を読んで、自分が教育者(そして、将来持つであろう子供の親)としてできることは限られていると、改めて感じた。だからって、全て投げ出すわけではない。自分にできる範囲を定めて、自分に矢印を向けて、生きていきます!


  • 子供sj風団が成立すると、その集団固有の文化が自然発生する。親が移民同士で、共通言語を持たない子供同士でも、子供集団が成立し、新しい文化・言語が成立することがある(新しい手話言語の自然発生など)

    ジェンダーの差は、大人社会が子供に押し付けるものではなく、子供集団において自然発生する。男の子集団と女の子集団が成立すると、ジェンダーの差が発生する。女子校のように女の子だけの場合は、ジェンダーの差は大きくならないし、逆に集団が小さすぎて女の子だけのグループが成立しない場合もジェンダーの差は発生しにくい。

    固有の子供集団が成立すると、その集団は他の集団からの違いを際立たせる方向に集団文化を発達させる傾向がある。多数の白人と黒人が交じる学校では、黒人だけ、白人だけのグループができて、黒人グループでは、勉強をしないという文化が生じる傾向がある。黒人だけの学校の場合や、黒人の人数が少なすぎて黒人だけのグループが成立しない場合には、そのような傾向はない。

    部族社会では、ティーンエイジャーも働き手として大人社会に属する。そのため、10歳位までの子供集団と、それ以上の大人集団しかなく、ティーンエイジャーグループが成立しないために、ティーンエイジャー文化も成立しない。工業化社会では、ティーンエイジャーは、働き手とならないために、独自のグループを構成し、独自の文化を生じる。

    両親が揃っていない事自体は、子供の精神的成熟に悪影響を与えない。問題発生の原因になるのは、離婚する親の性格的問題点が遺伝すること、シングルマザーの経済的状況が悪いために、問題を生じやすい子供文化が根づいている地域に住む傾向があること。

    親にできることは、良質な子供文化がある地域で子供を育てること、頻繁な引っ越しによって子供を集団から何度も切り離さないこと、それが無理な場合には子供の数を増やして、家族内だけで子供集団を成立させそこに良質な文化を作らせること。親子で共有する時間はそれほど重要ではない。

    出生順位は、子供の家族内での態度には影響を与えることがあるが、子供の社会での性格にはほとんど影響を与えない。

  • 親がどんなに頑張っても子供に与える影響はほとんどない、という。
    だから、子供のために、ではなく、自分が楽しいから一緒に過ごす、一緒に笑う、でいいんだよ、ということでした。とはいえ、大事なのは子供がどのような仲間と一緒に過ごすことになるのか、であるので、それをある程度コントロールできるのは大人である親なんだろうなぁとも思う。犯罪やいじめのない場所に引っ越したり、学校を選んだりする、とか。

  • 個人の主観によってではなく、根拠が統計的にちゃんと統制をかけているかを吟味した上で子供の社会性に影響を与える要因は何か、を真面目に考えた本。
    子供の全てを親がコントロールできるなどと慢心せず、いい意味で育つように育つと考えていくのがいいのかもしれない。
    直接要因のみでなく、関節要因としてどのような環境を子供に用意できるのか(住む地域、付き合うことになるであろう友だち)も。
    あくまでこの分野は何が正しいのかが極めて曖昧であることも意識しておきたい。

全13件中 1 - 10件を表示

ジュディス・リッチ・ハリスの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×