子育ての大誤解〔新版〕下――重要なのは親じゃない (ハヤカワ文庫NF)
- 早川書房 (2017年8月24日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
- / ISBN・EAN: 9784150505066
感想・レビュー・書評
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子供への影響は遺伝と非共有環境という上巻の仮説だが、それでは、どのような非共有環境がどのように子供に影響を及ぼすか、そして非共有環境に対して親はどのように対処すべきか、を解説したのが下巻。
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「子どもは勝手に育つ。子どもの性格や人格形成に最も影響を与えるのは友人と仲間である。親は子どもが愛おしいから可愛いがるってのでいいんだ。」という論旨。
著者はいわゆる早期教育的なものはあまり意味が無い、と説く。しかし仲間や友人が重要だからこそ、良い仲間ができるコミュニティに居住したりそういう学校に入学させたいというよくある親の行動に対して一定の合理性を与える。
橘玲の「言ってはいけない」で紹介されていたので読み始めて5年。上巻を読んだのが2018年5月。たまのバス移動の時のKindle読書にしていたら下巻の読了に4年かかった。長かったので詳細は忘却の彼方だけど。
我が家の子供たちも「勝手に」育っているなと実感する今日この頃。
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子供sj風団が成立すると、その集団固有の文化が自然発生する。親が移民同士で、共通言語を持たない子供同士でも、子供集団が成立し、新しい文化・言語が成立することがある(新しい手話言語の自然発生など)
ジェンダーの差は、大人社会が子供に押し付けるものではなく、子供集団において自然発生する。男の子集団と女の子集団が成立すると、ジェンダーの差が発生する。女子校のように女の子だけの場合は、ジェンダーの差は大きくならないし、逆に集団が小さすぎて女の子だけのグループが成立しない場合もジェンダーの差は発生しにくい。
固有の子供集団が成立すると、その集団は他の集団からの違いを際立たせる方向に集団文化を発達させる傾向がある。多数の白人と黒人が交じる学校では、黒人だけ、白人だけのグループができて、黒人グループでは、勉強をしないという文化が生じる傾向がある。黒人だけの学校の場合や、黒人の人数が少なすぎて黒人だけのグループが成立しない場合には、そのような傾向はない。
部族社会では、ティーンエイジャーも働き手として大人社会に属する。そのため、10歳位までの子供集団と、それ以上の大人集団しかなく、ティーンエイジャーグループが成立しないために、ティーンエイジャー文化も成立しない。工業化社会では、ティーンエイジャーは、働き手とならないために、独自のグループを構成し、独自の文化を生じる。
両親が揃っていない事自体は、子供の精神的成熟に悪影響を与えない。問題発生の原因になるのは、離婚する親の性格的問題点が遺伝すること、シングルマザーの経済的状況が悪いために、問題を生じやすい子供文化が根づいている地域に住む傾向があること。
親にできることは、良質な子供文化がある地域で子供を育てること、頻繁な引っ越しによって子供を集団から何度も切り離さないこと、それが無理な場合には子供の数を増やして、家族内だけで子供集団を成立させそこに良質な文化を作らせること。親子で共有する時間はそれほど重要ではない。
出生順位は、子供の家族内での態度には影響を与えることがあるが、子供の社会での性格にはほとんど影響を与えない。
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個人の主観によってではなく、根拠が統計的にちゃんと統制をかけているかを吟味した上で子供の社会性に影響を与える要因は何か、を真面目に考えた本。
子供の全てを親がコントロールできるなどと慢心せず、いい意味で育つように育つと考えていくのがいいのかもしれない。
直接要因のみでなく、関節要因としてどのような環境を子供に用意できるのか(住む地域、付き合うことになるであろう友だち)も。
あくまでこの分野は何が正しいのかが極めて曖昧であることも意識しておきたい。