タングステンおじさん:化学と過ごした私の少年時代 (ハヤカワ文庫 NF 472)

  • 早川書房
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本棚登録 : 220
感想 : 14
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  • Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150504724

作品紹介・あらすじ

かつて夢中で探索した周期表の世界を甘美なる追想で綴る自伝的エッセイ、待望の文庫化

感想・レビュー・書評

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  • 脳神経科医のオリヴァー・サックスの14歳に至るまでの自伝。恵まれた環境のもと、優秀な親族に囲まれ、知的好奇心を存分に発揮しながら、類い稀なる才能が開花していく有り様がつぶさに綴られている。化学への深く掘り進んでいく探究心や、歴史をなぞるように自己体験していく執拗さには、早熟さという言葉ではおさめられない驚きを感じる。青年期以降の自伝も書き著しているので読んでみたいと思う。

  • 夏に、理科的なものを読みたくて新刊で買ったけど、結局読み終えれずに秋になりました…

    続きは来年の夏にまた読もうかな!

    エッセイです。

    原子や分子、化合物…なんてロマンチックなんだろう。

  • 学校で習った元素周期表(水平リーベぼくの船…)とか
    理科室で実験した水分解とか
    当たり前に習ったけど、それを発見するのにたくさんの科学者が
    いろんな仮説たてて実験してめちゃくちゃ時間かけてたんだなあとしみじみ。
    つぎつぎと解明されていく元素の事実を、科学にのめり込んだ少年の目線で読んでいると自然と自分も楽しくなってきます(難しくてよくわからないところも多々ありましたが)
    新しいなにかが発見された当時の世間の反応が新鮮だったり怖いなと思ったり。
    X線が発見された当時、見透かされることを恐れて鉛の下着が売られたり。
    放射能の危険性がまだ十分に議論されておらず、放射能は治療効果があるといわれ、医師が処方してたり。(こわい…)

    科学のこと以外でも、著者が過ごしていた少年時代のことや家族への思い(タングステンおじさんは叔父のこと)など温かい目線で語られていてとても面白い読み物でした。

  • 脳神経科医のオリヴァー・サックスが幼少期に夢中になったのは化学だった。医者の両親と電球を開発していたおじたち、植物に造詣の深いおばや年の離れた兄たちに見守られながら、化学の化学の実験に明け暮れ、先人たちの発見に心躍らせた少年時代を振り返る、ジュブナイル小説のような回想エッセイ。


    サックスの家はユダヤ教徒で、子どもの教育に熱心だった母方の祖父とその子どもたちは化学に親しんで育った。用途の違うランプの特許をとった祖父を受け継ぎ、おじさんたちは〈タングスタライト〉という会社を経営していた。このうちの一人、デイヴおじさんがフィラメントに使われる金属・タングステンにぞっこんで、〈タングステンおじさん〉と呼ばれていたのがタイトルの由来である。
    子どもの「なんでなんで」を邪険にしなかった外科医の母に紹介されたタングステンおじさんとの出会いによって、少年オリヴァーは化学に目覚めた。だが、疎開先の学校で理不尽な体罰を受け、一度は心を閉ざしてしまう。そんなときも、彼を癒してくれたのはおばが土いじりをしながら教えてくれたフィボナッチ数列であり、さまざまな鉱物の名前を覚えることだった。
    疎開から戻されると、両親の許可を得て家に実験室をつくり、兄たちと一緒に実験に明け暮れた。ミニチュアの火山をつくって噴火させたり、アルカリ金属を水に放り込んで爆発させたり、カメラで撮った銀版写真を自分で現像したり。街にでれば原子記号と番号が揃った切符を集めたりした。
    推論から実験を組み立てていくその的確さはとても小学生の年齢とは思えないのだが、全体としては無邪気さといたずら小僧の入り混じるジュブナイルのようで、ロアルド・ダールの『少年』にとても近い読みごこちだった。ボーイスカウトにセメント入りのパンを持っていくところとか(笑)。贅沢品になってしまった〈戦前の日常〉に対するノスタルジーを、恨み節にならずに爽やかに書いていて、この人は本当に好感度が高い。
    少年オリヴァーは主に19世紀以前の化学の本を愛読したという。自身が辿った興味の変遷に沿って、錬金術が近代化学になり現代化学に移り変わる歴史を解説しているのだが、これがものすごく親切でわかりやすい。
    錬金術の深遠な語彙ではなく、誰でもわかる言葉で記述し、実験を再現可能なものにした17世紀のロバート・ボイル。質量保存の法則、元素の定義、代数的な化学言語などを整備し、真の燃焼理論を完成させたが、フランス革命でギロチンにかけられた18世紀のアントワーヌ・ラヴォアジェ。『ロウソクの科学』のファラデーの師であり、メアリ・シェリーやコールリッジにも影響を与えた詩人化学者ハンフリー・デイヴィー。少年オリヴァーがときめいた化学者を教えてもらうと、こっちも一緒にときめいてしまう。
    しかし、オリヴァーの探究心は量子学の登場と原子爆弾の脅威によってだんだんと薄れていく。両親・兄ともに医師というプレッシャーもあったのだろう、なぜか一瞬海洋生物学に寄り道してから(気持ちはわかる)、医学の道に進むことになる。
    本書の面白さは、少年オリヴァーの興味がとても子どもらしいところにありながら、原理を深く理解して実験に挑むところ、そして〈タングステンおじさん〉を通じて常に実用化学に敬意を払うというところにあると思う。世界の成り立ちを知る術であると同時に、ビジネスの道具にもなり殺戮兵器にもなりうる化学。その可能性すべてを幼くして目の当たりにしたからこそ、オリヴァーは人類の謎である〈脳〉に興味を移したのかもしれない。
    私のような化学門外漢には入門書としてもうってつけだったし、ユダヤ教徒の祭りの様子や、ユニークな家族の空気感までも伝わってくる優しい本だった。

  • 文学

  • "学ぶことの喜びがじわじわと伝わってくる。脳神経外科である著者の子供時代、戦争の惨禍を経験しつつ、科学の世界に足を踏み入れる。彼の周りには歩く百科事典のような人たちにあふれており、恵まれた環境にあったことは確かだが、それでも、あくなき好奇心を持って学ぶ喜びを育んだのは彼天性のものであろう。
    オリヴァー・サックスさんの本をすべて読むことにした。
    映画にもなった、レナードの朝という著書もある。あとがきで知ったが、すでにお亡くなりになっていた。残念でならない。
    本書には注釈が各パートの後ろについている。こちらも読み逃しないように。
    こちらもとても興味深い逸話が多々登場する。
    子供のころ夢中になって読んだ本はキュリー夫人の本をポロニウムとラジウムの発見100年を祝う講演で紹介していたら、会場になんと著者その人がいたらしい。出版から60年の時を経て、著者にサインをしてもらったという逸話もある。
    なぜ?どうして?という疑問つことが、学ぶ一歩になることがよくわかる。"

  • タングステンおじさん:化学と過ごした私の少年時代 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

  • 短い25番目の章が悲しくさみしいけれど、本当の感じ。このようにして心ははなれてゆくし、感覚は失われ、意識して取り出すことはできなくなる。

  • 元素が大好きな方に特におすすめ。

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