大日本帝国の興亡〔新版〕1:暁のZ作戦 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

制作 : John Toland 
  • 早川書房
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本棚登録 : 229
感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150504342

作品紹介・あらすじ

1936年の2・26事件から1945年の敗戦まで、激動の歴史を膨大な資料とインタビューを基に描いたドキュメントの決定版。(全5巻)

感想・レビュー・書評

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  • 日本がいかにして太平洋戦争へ向かい、敗戦へと至るのか、その過程をアメリカの視点で描いたのが本書である。全5巻で構成されており、本書第1巻では、二・二六事件から始まる。最終巻の解説で言及されているが、著者ジョン・トーランドが満州事変ではなく、二・二六事件に目を向けたのが本書の特異点である。太平洋戦争の発端を遡ると、満州事変と国際連盟脱退が原因だと見なされがちである。しかし、著者は二・二六事件で、皇道派の勢いが衰えて、代わりに統制派の勢いが増したことに注目した。これは、日本が満州を手に入れるだけでは不十分で、ソ連の攻撃を想定すると、中国そのものを支配すべき、という考えを持つ派閥である。ここに着眼点を置くのは類を見ないだろう。
     また、二・二六事件の勃発から皇道派鎮圧までの流れは、緊迫感があり、政府首脳が命からがらで逃れたのかが読んで想像できる。なかでも、岡田啓介首相の逃走と、後に首相として、終戦工作に携わる鈴木貫太郎の部分は読みごたえがある。ちなみに、事件が起きた当日、東京の通勤者たちは、その日何が起きたか分からず、警官がバスや市電を止めて、皇居前や官庁街を迂回してる様子を見て、初めて異変が起きてることに気づいたらしい。

  • 2.26事件の丁寧さと狂気のギャップが恐ろしい。

    太平洋戦争に至るまでを読んでいてとても辛かった。

    ほんの少し話し合えれば、英語を、日本語を解釈しようとすれば戦争は避けられたのではないかと、歯痒い気持ちになる。

  • 2015年に買った本で、とてもおもしろかったのに忙しく大変時間を掛けて読んだ。
    旅行に行く時とかに持って行って一気に読んでは放置していた。ほぼ読み終わりかけだったが、たまたまヴォネガットの青ひげを探している最中に見つけ、読了した。
    大変おもしろかった。戦争について勉強せねばならないと感じる。

  • 二二六事件から真珠湾攻撃まで。

    誰もが戦争は避けたいという気持ちを持ちながら、
    猜疑心と誤解が重なり、「避けられない」状態に進んでいく。

    歴史の本を読んでいるのに、そういう気持ちになれない。
    「歴史に"もし"はない」とはよく聞くが、
    どうしても"もしもこのとき"、と考えてしまう。
    読み続けるのは気持ちが辛くなってくるが、
    最後まできちんと読まないと、という気持ちになる。

  • 「追い詰められると一か八かの戦法に出る」と日本人以上に日本人を分析し、圧倒的な国力で太平洋戦前ち圧力かけ続けたかと思っていたが。
    ハルと野村のあまりに人間くさい(不)手際から両国が戦端に向かっていくさまを淡々と記す本書。
    まだ真珠湾まで到達しないのに、すでに第1巻が終了である。

  • [評価]
    ★★★★★ 星5つ

    [感想]
    大変に面白い内容だった。
    この時代に関する内容は難しくなりがちなんだが、この本は大変に読みやすかった。
    特に日米交渉のようすは他の本でも読んだ通り、開戦を回避する方向に心の中ではまとまっているのに実行することが出来ないジレンマがよく書かれており、当時の政府首脳の苦しも様子がよく書かれている。
    この本を読むと政府が軍部を統制出来ていないということが、致命的な問題であることがよく分かる。また、国民が新聞などに煽られて自らの思考を停止してしまったことも政府に少なからず影響を与えているように思う。
    現代では戦争に至るようなことはないよ思うが、戦争以外でもマスコミの報道内容をそのまま信用してしまうことはよくあるように思うが、そのようなことがないように国民が十分に気をつける必要があるね。

  • 第1巻は、二・二六事件から真珠湾攻撃の前夜まで。
    いくらでもアメリカとの戦争を回避する可能性はあったのに、それが互いの先入観や誤解、要職にある者のパーソナリティなど、様々な要素によって戦争へと突き進んで行く。その過程が、まるでドキュメンタリーの映像を見ているかのような迫真の記述によって語られている。膨大な資料と証言の積み重ねなくしては、このような記述は不可能であったろう。訳もいい。第2巻以降が楽しみである。

  • 歴史書は苦手なのであまり手出ししていなかったのだが、なかなか面白く読めた。この巻は真珠湾攻撃直前までだが、続きを読まねばならない。昭和陛下が戦争をさせまいとしておられたことや、高い城の男が着想されたであろう背景が分かった。

  • もう少し個人名がでてても良かったんじゃないかなぁ。
    一部の頭の悪い人とか、頭は良いんだけど見栄を張りたいような人とか、そんな人が政治の中枢にいると、こんなに簡単に戦争になるんだなぁという、残念感。
    しかも、あきらかに多くの人はアメリカと戦争したって勝てないと思っていたのに、なぜに戦争しようと思ったのか。
    共産主義の脅威との戦いって言っても、味方を間違っちゃねぇ。
    若い世代こそ読んだ方が良いんじゃないかな。
    次の戦争になる前に少しは考えて行動できるようになるような気がする。

  • 2・26事件から太平洋戦争開戦直前を描いた本である。
    一言でいうと「非常に良い」。

    この本を書くにあたって、著者は日本・アメリカ双方の戦争関係者約500人に取材したというだけあり、内容は非常にリアルで分かりやすい。

    誰も戦争を望まないなか、日本の指導者たちがどのような経緯をたどって開戦という決断を下すに至ったのか、一方のアメリカ側の動きはどのようなものだったか、がとても緻密に描かれている。

    この本を読んでいると、誰も抗うことのできない太平洋戦争開戦に向けた大きな時代の流れのようなものがあるのを感じた。

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著者プロフィール

(John Toland)
1670-1722年。アイルランド生まれの思想家。名誉革命の動乱期にスコットランドのグラスゴー・カレッジで学んだ。ロンドンにやってくると、非国教徒内の同盟を推進する長老派ダニエル・ウィリアムズを支援して、その著作をジャン・ル・クレールの雑誌に紹介した。これによってオランダでの勉学の機会を与えられ、ベンジャミン・ファーリ、ル・クレール、フィリップ・ファン・リンボルクなど大陸の自由主義的プロテスタントとの交際を得た。帰国後、反三位一体論争のさなか『秘義なきキリスト教』(1696年)を匿名出版した。多数の反駁が書かれ、イングランドではミドルセックス大陪審の告発、アイルランドでは大陪審の告発と議会下院による焚書と逮捕・起訴が決議された。逮捕を逃れてロンドンにもどると、時事的な政治的著作・パンフレットの出版や、ジョン・ミルトンやジェイムズ・ハリントンなどピューリタン革命時の共和主義者たちの諸著作を編集出版し、「コモンウェルスマン」として活動した。後に『セリーナへの手紙』(1704年)、『パンテイスティコン』(1720年)などで唯物論的自然哲学を展開した。

「2016年 『セリーナへの手紙 スピノザ駁論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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