ファスト&スロー(上) あなたの意思はどのように決まるか? (ハヤカワ文庫 NF 410)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150504106

作品紹介・あらすじ

直感的「速い思考」と論理的「遅い思考」による人間の意思決定メカニズムを徹底解剖。

感想・レビュー・書評

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  • システム1とシステム2という脳の働き。
    これを知れることが本書がもたらす最高のパラダイムシフトで最大の魅力。

    自分が実験台になりながら、その認知を獲得できる所が実に面白い。

    例えば、
    顔をしかめて口を半開きにした女性vs 17×24
    この問いでシステム1・システム2を体感できる。

    上巻だけで長い一冊だったが、
    脚注と牽引が15%を占めていたのは最後にひと笑い。それも含めて有益な一冊。

  • 2002年、ノーベル経済学賞受賞のダニエル・カーネマンによる大作。

    前々からこの本の評判は聞いていたものの、
    内容が重厚そうで中々チャレンジできなかったのですが、
    学校の指定教科書になってしまったので、強制的に読む機会を得ました。
    結果としては、大満足のとても面白い内容、
    もっと早く読んでも良かったと思わせてくれる本でした。
    内容の割には読みやすく(決して簡単で軽い本ではないですが)、
    一度読み始めると次の展開が気になって仕方なくなってしまう本でした。

    簡単に内容を紹介すると、著者は人が頭の中で思考するとき、
    速い思考(「直観」のようなもの)と遅い思考(「熟考」のようなもの)の
    2パターンがあると主張しています(主張というより、比喩を用いて説明しているという感じ)。
    この2つはときに、人の決断・判断を誤らせることがあり、
    どういったときに人は間違った決断・判断をしてしまうのかを
    様々な心理学の実験や統計的な知識を用いて解説してくれます。
    代表的なものが色々なところで言われている
    ヒューリスティック・バイアスでしょう。
    この本を読んで実践できれば、そういった間違いを減らす可能性が高まるでしょう。
    (といっても、実践するのは結構難しい。。)

    欲を言えば、彼の主張を脳科学の観点から補足できれば、
    より魅力的な&知的好奇心を刺激される内容になったと思われます。
    (誰か脳科学者の方に本の解説をしてもらいたいです。)

  • 直感や感覚の早い判断であるシステム1と、思考と論理の遅い判断であるシステム2。それぞれの効能やエラーを証明していく。人間が理解しておいた方が良い本。

  • ◆この本の一貫したテーマ
    認知的錯覚。
    直感的に信じてしまう認識の誤り。

    ◆全体としての感想
    ・正しい選択をしているようで、していない自分が絶対にいることを知った。
    ・自分が意思決定する際に、いかに自分を”俯瞰的”、”客観的”に見るかが、大切かということを学んだ。
    ・どんだけ実験したんだよ。もはや怖い。相当な年月を踏まないと完成しない本

    ◆学んだこと
    ①意思決定にはシステム1(早い思考)と2(遅い思考)が存在する。
    システム2で熟考しても、色々なバイアスがかかり、正しく判断できない場合も。
    例:バットとボール、感情ヒューリスティック、認知的容易性(クジ、白玉赤球)
    ②人間の記憶は、経験よりもよっぽど強い(2つの自己)
    ・コンサートのラスト音源が聞こえなくなる
    ③確実に得をするときは確実性を選び、確実に損をする時はリスクを負ってでも勝負。
    ギャンブラーの特徴。実体験がありすぎて、印象に残りました。笑


    ◆どう使えそう?
    人は普段から正しいと思っていても、間違った選択をしている時もあるんだよ。
    それはこんな時に、こんな理由から生じるんだよ。
    といった事実や現象を知っているだけでも、いい勉強になりました。
    要は、自分をさらに俯瞰的、客観的に見る力が身に付く本かなと感じました。

  • 人間は自分が思うほど、自分の意思決定について理解していない。プライミング効果、アンカリング効果、ハロー効果、バイアス、ヒューリスティクス等さまざまな影響を大いに受けて意思決定はなされている。

    直感的予測は平均回帰を無視しており、バイアスがかかるので、必ず修正が必要だということは忘れずにいたいと思う。

    基準率→直感的予測→平均回帰(基準率に寄せていく)

  • 人間の行動がいかに非合理的で環境からの影響を容易に受けてしまうのか、そして人間の思考がインスタントな因果関係に飛びつきやすく、統計を扱うのに向いていないかを示す名著中の名著。本書に書いてあるバイアスを全て回避することは難しいが自分の下した判断がいかに即時的で揺らぎやすいものかを知るだけでも価値のあることだろう。何度も読み返して、血肉化したい。
    高度な専門的知識を持ってしても未来は不確実性が多すぎて、因果関係では到底説明がつかないことばかり。であるなら、統計の力に頼り、チェックリストを活用することによって、バイアスから少しでも解放される努力をした方が良い。

  • ホームズの思考術にあった速い思考と遅い思考(ホームズシステムとワトソンシステム)の元ネタはダニエル・カーネマンのファスト&スローだよなあ、と思い本棚から取り出し出だし少し読んでみた。ワトソンシステムの例が書いてある。考えてみれば普段の生活はほとんどワトソンシステムに任せている。だから、思いもしない事があると、自然な対応が出来ずミスしてしまう、という事になるんだな、と。ホームズは「見る事と観察する事は違う」と語っているけれど、少し日常を観察する事を意識してみよう。

    ↓以下、丸ごと引用
    『近所の人がスティーブのことを次のように描写しました。「スティーブはとても内気で引っ込み思案だ。いつも頼りにはなるが、基本的には他人には関心がなく、現実の世界にも興味がないらしい。物静かで優しく、秩序や整理整頓を好み、細かいことにこだわる」。さてスティーブは図書館司書でしょうか?それとも農家の人でしょうか?
    スティーブの性格が図書館司書のステレオタイプとピタリと一致することは、誰もがすぐに思いつく。だがこの質問に答えるためには同じくらい重要な意味を持つ統計的事実があるのだが、こちらはまず間違いなく無視される。
    あなたはアメリカでは男性の私を1人に対して農業従事者は20人以上いると言う事実を思い出したであろうか。農家の人がこれだけたくさんいれば物静かで優しい男は図書館で座っているよりもトラクターを運転している可能性の方が高い。ところが実験の参加者はこうした統計的事実を無視し、ステレオタイプと類似性だけを問題にした。彼らは難しい判断を下すにあたり、似たものを探して単純化ヒューリスティック(大げさに言えば近道の解決法)を使ったのだと考えられる。このようにヒューリスティックに頼ると答えには予測可能なバイアス(系統的エラー)がかかることになる。』p15

    何か問題や課題が与えられた時、いかにすでに自分の脳内にある、取り出しやすい、慣れた材料で物事を判断しているか!って事ですね。単純化!サポメ課題本の失敗の科学にも単純化の例が書いてあったし、先日ひっつじーさんが紹介してくれた【心配学】でのリスクとリターンの見積もり間違いの話にも通じるなあ。今日は自分がどれほど単純化しているか、意識してみよう。

  • 資産運用等に携わる上で知っておかなければならない行動経済学
    人にはシステム1とシステム2があり、
    システム1の直感をシステム2で修正していくことも必要

  • あなたの意思はどのように決まるのか?
    サブタイトルの通りの本だけれど、内容は直感に反するかもしれない。

    思考を、無意識に一瞬のうちに行われる直感的なシステム1、意識的に行われる論理的に検討するシステム2の2つにわけ、それぞれの特徴がまずは述べられる。
    意思決定の際に使われるのは、本書でいうシステム2ではないかと思っていたが、実際には、システム1が主役で、システム2は省エネ主義なので、特に問題ないと思ったら、システム1の結論をそのまま使うこともあれば、そもそもの判断がシステム1による思考を出発点としているらしい。

    さらに、システム1には様々なバイアスがあり、それについても詳しく解説されている。

    自分自身のデバイアスのために、定期的に読みたい本であるし、
    また、人間の意思決定のクセを知るのにとてもよい本だと思う。

  • 人間がいかに判断し、判断を誤るのか、いかに先入観が役だったり邪魔したりするのか、日頃感じていた疑問に答えてくれそうと思い読み始めた。

    組織内で他人がした判断の背景を考えるきっかけになるだろうし、自分が夜ひとりでふと思いついたり、上司や同僚、子供の一言を受けて何気なく発した言葉の背景を分析するフレームワークになりそう。

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著者プロフィール

心理学者。プリンストン大学名誉教授。2002年ノーベル経済学賞受賞(心理学的研究から得られた洞察を経済学に統合した功績による)。
1934年、テル・アビブ(現イスラエル)に生まれへ移住。ヘブライ大学で学ぶ。専攻は心理学、副専攻は数学。イスラエルでの兵役を務めたのち、米国へ留学。カリフォルニア大学バークレー校で博士号(心理学)取得。その後、人間が不確実な状況下で下す判断・意思決定に関する研究を行い、その研究が行動経済学の誕生とノーベル賞受賞につながる。近年は、人間の満足度(幸福度)を測定しその向上をはかるための研究を行なっている。著作多数。より詳しくは本文第2章「自伝」および年譜を参照。

「2011年 『ダニエル・カーネマン 心理と経済を語る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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