黄金比はすべてを美しくするか?―最も謎めいた「比率」をめぐる数学物語 (ハヤカワ文庫NF―数理を愉しむシリーズ)
- 早川書房 (2012年1月5日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (431ページ)
- / ISBN・EAN: 9784150503772
作品紹介・あらすじ
無限小数を用いた1:1.618…は、最も美しい比率「黄金比」と呼ばれ、古代からさまざまな芸術作品に用いられてきた、とされる。この比率は、古くから数学者たちの注目を集め、幾何学の基礎を作ったユークリッドまでさかのぼる歴史を持つ。オウムガイの殻のでき方やヒマワリの種の配列のような自然の事物、音楽や文学、はては株価推移のグラフをも支配するという、この神出鬼没の黄金比の魅力と真実に迫る、決定版数学読本。国際ピタゴラス賞及びペアノ賞受賞。
感想・レビュー・書評
-
第19回アワヒニビブリオバトル「鍵」で発表された本です。
2016.11.08詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
数学、宇宙、科学が好きな人にとっては至福の本だと思う。
何度でも読み返したくなるほど知的好奇心が刺激される。 -
黄金比というのは、「1:1.618…」という比率のことで、これに則った美術品や建築が最も美しいとされ、ピラミッド、ギリシャ建築からダ・ビンチの作品、果てはデジタルカメラにまで採用されている・・・という触れ込みの数学的神秘なのである。
これは、黄金比の秘密に迫ろうという本であり、結論的には、黄金比が使われていると言われて来たピラミッドや歴代の名画に見られる比率は、大体のセンとしては合っていても必ずしも黄金比なんかぢゃない、とスカっと切り捨ててくれる本なのである。
確かに黄金比がガチで美をもたらすんだったら、世の中のデザインというデザインにもっと明確に使われていることだろう。
ただ、話は黄金比だけでは終わらない。
黄金比が数学的に美しい構造を持っているのは確かなようで、このように数学が美しいのは宇宙普遍的なものなのか、それとも単に人間が紡ぎ出したものだから人間にとって美しいのか、その数学の本質にまで迫ろうという野心的な本でもあるのである。
なかなか知的好奇心満足。 -
450円購入2013-04-15
-
原書名:The golden ratio
1 φへのプレリュード
2 音程と五芒星形
3 星を指すピラミッドの下に
4 第二の宝
5 気だてのよい息子
6 神聖な比例
7 画家と詩人はどんな思い切ったこともやってよい
8 タイルから天空まで
9 神は数学者なのか?
国際ピタゴラス賞、ペアノ賞 -
数理を楽しむシリーズのなかの一冊
このシリーズ、数字にあまり強くない自分にとっては、
むずかしいことを説明してくれるのでとても感謝してます。
黄金比はすべてを美しくするか、という問いかけに対して、
数学の歴史からさまざまな例を用いて説明してくれます。
黄金比がさまざまな芸術作品に使われているという都市伝説について、
手取り足取り教えてくれます。
また黄金比をキーワードにして、
数字の不思議な性質について解説してくれておもしろかった。 -
新書文庫
-
BOOK DATE:
無限小数を用いた1:1.618……は、最も美しい比率「黄金比」と呼ばれ、古代からさまざまな芸術作品に用いられてきた、とされる。この比率は、古くから数学者たちの注目を集め、幾何学の基礎を作ったユークリッドまでさかのぼる歴史を持つ。オウムガイの殻のでき方やヒマワリの種の配列のような自然の事物、音楽や文学、はては株価推移のグラフをも支配するという、この神出鬼没の黄金比の魅力と真実に迫る、決定版数学読本
ISBN 978-4-15-050377-2
C0141 ¥840E -
とにかく時間が掛かった。
そして自分の中で消化するのもとても難しい。
とは言え、中身は面白い。
フィボナッチ数列が出てきてからはぐいぐい読み進める。
そこまでは苦痛でもあるが。。。
人の心を魅了し、経済活動、芸術作品、自然の中でさえ突如として現れる無理数、黄金比。実に不思議である。
黄金角というものがあることはこの本で初めて知った。
最後のほうの、「数学」に対しての人類の考え方もなかなか興味深い。
もし他の惑星で全く違う次元をもった知性がいるとしたら、違う言語で法則を記述したのだろう。いつかそれが明らかになる日がくるのか。 -
著者は宇宙物理学者だが、基本的に数学史上の「黄金比、φ」をめぐるトピックを並べた読み物である。
黄金分割についてはさまざまな噂があるが、この本は意外にも、そういった「神話」を突き崩していく。古代ギリシャのパルテノン神殿、エジプトのピラミッド、多くの西欧絵画に黄金比が利用されている、といった過去の言説に対して、根拠が曖昧でこじつけ的なものとして批判を浴びせる。
そうした「黄金比神話」のまやかしを批判しながらも、「φ(ファイ)」が数学においてしばしば突然出現する、やはり不思議な無理数であることを強調している。
「黄金比が数学、科学、自然現象といった多くの領域で重要な存在だとしても、私としては、人間の形にしても、芸術の試金石としても、それを美観の絶対的基準とするのはやめるべきだと思うのである。」(P.310)
これが著者の主張の核心だ。
この本には載っていないが、ドビュッシーのあるピアノ曲が黄金比に基づいている、という噂を私も聞いたことがある。これも怪しげな「神話」であったろう。実際のところ、1.618...という黄金数を創作に持ち込んでもあまり意味はないと思う。
「数」が世界の根源を解明する鍵だというピタゴラスの思想は、実際そこから西欧の「偉大な」自然科学の歴史を生み出したが、ある数を取りだして神話化してしまう姿勢はまったく「科学的」なのではない。
わからないものはわからないと考えた方がよい。芸術や文化には無理に神秘を持ち込む必要はないだろう。