ホーキング、宇宙を語る―ビッグバンからブラックホールまで (ハヤカワ文庫NF スティーヴン・ホーキング著)

  • 早川書房
3.55
  • (55)
  • (109)
  • (163)
  • (19)
  • (4)
本棚登録 : 2013
感想 : 118
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (268ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150501907

作品紹介・あらすじ

この宇宙はどうやって生まれ、どんな構造をもっているのか。この人類の根源的な問いに正面から挑んだのが「アインシュタインの再来」スティーヴン・ホーキングである。難病と闘い、不自由な生活を送りながら遙かな時空へと思念をはせる、現代神話の語り部としての「車椅子の天才」。限りない宇宙の神秘と、それさえ解き明かす人間理性の営為に全世界の読者が驚嘆した本書は、今や宇宙について語る人間すべてにとって必読の一冊である。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 筋萎縮性側索硬化症という難病を抱えながらも、宇宙の謎を追求し、世界に影響を与える程の知識の深さは尊敬する。自分がいかに恵まれている環境下なのに努力を怠り、誰かに良い影響を与え、何らかの結果を出し切れていないのが恥ずかしくなる。

  • 単行本発売の頃は、テレビの解説番組はいくつかあったけれども、本を読むほどの関心はなかった。文系人間としては当然の反応だろう。文庫本発売の時は時期が悪かったと思う。阪神大震災とオウム事件の真っ最中であって、文庫本が出たことすら知らなかった。今回氏の死去の報を受けて、やっと私はこの本を手に取った。

    数式のない理論物理学の本。氏が出来得る限りわかりやすく書いた本。しかしだからと言って、物理の点数が50点より上に行ったことのない私に理解出来たかと言うと、否、というしかはない。それでも驚いたことがある。「たいへん愉しめた‼︎」ということである。

    この本は私流に一言で言うと「宇宙の歴史書」である。だとすると、私の守備範囲だ。

    文献歴史学はとりあえず置いておいて、考古学視点から日本史を見ると、歴史を一年に換算すると、大晦日の午後に文献史が始まる。人類史を見ると、大晦日の紅白歌合戦の辺りで文献史が始まるだろう(と、いかにも物知りのように書いたが根拠調べていない。だいたいそんな所というだけ)。地球史で見れば、果たしてどうなるのか?戦争なんて細かいことをしているのは、今さっき始めたことだから、気の迷いだったと言えるだろう。

    ホーキング氏は、さらに進めて宇宙の始まりから語り初めて、宇宙の終わりを予測する。そこから更に進めて「我々はなぜここにいるのか?」という根本問題に答えようとする。

    解説者池内了氏は「ホーキングは、優れた現代神話の語り部」だという。私もそう思う。弥生時代の農民が、見たこともない金属を振り上げた巫女の言葉を、その言葉の意味をわからぬままに有り難がり信じたように、ホーキング氏の、この長い祝詞は、ちょっとした古代体験だった。

    2018年4月7日読了

  • ホーキング氏逝去と映画『博士と彼女のセオリー』観賞をきっかけに読書。

    「一般層向け」と謳いながらも内容は相当難解(かの有名な「E=mc2」以外数式を排しているのは有難いところか)。素人にとってはその分読み応えがあり知的好奇心がくすぐられる。ハードSFの理論的元ネタ満載だ。

    宇宙創成に関する相対性理論の「古典的理論」の理論破綻に対して、エントロピーといった熱力学の思考も援用しつつ、無境界時間や虚時間の概念を発想し、量子力学への論理的帰結させ、ビッグバンという大いなるロマンを生み出した理論物理学者たちの頭脳にはただただ感嘆するばかりだ。しかもこれを数式を持って説明していると思うと頭がクラクラする!

    ホーキング氏は特異点定理でその名を知られるが、そこに至る相対性理論と量子力学、熱力学その他諸々の背景知識の豊富さはやはり天才の名に相応しい。相対性理論と量子力学の統一理論が発見されるのは相当先であろうが(そもそも両理論の誤りが指摘され刷新の可能性もあるが)、人間の知への飽くなき好奇心と探求心そして可能性にワクワクさせられる本であった。

  • ホーキングが一般向けに宇宙を語った初めての本。訳者あとがきや書評によると、天才の力量で難解な宇宙の理論を明快に解き明かしているとのことだが、やはり難しい。結局、全て読み込むのは諦めてしまい、最後は斜め読みになってしまった。それでも、宇宙が始まりを持つ存在で膨張していることの論証、完璧な正確さで粒子の位置と速度を観察することはできないという不確定性原理、全ての質量が中心に引き寄せられ最終的には密度および重力が無限になる天体崩壊の仕組みなど、部分的にでも興味深い知見は得られた。

    ホーキングは、宇宙が「どのように」できたのかに留まらず。宇宙が「なぜ」できたのか、存在するに至ったのかという科学が未だ応えられていない存在理由の問題に究極的には取り組もうとしている。やはり、宇宙の法則と我々の存在には不可分な関係がある。自分も願わくば宇宙の理論を突き詰めた上で、我々の存在意義・理由を問う哲学に昇華したかったものだと改めて思った。自らの才能や性格的にその道は選べなかったが。かのウィトゲンシュタインも、宇宙理論と我々の存在の不可分な関係、その宇宙理論の難解さを感じていたようで、「哲学に残された唯一の任務は言語の分析である」と述べているらしい。彼でさえも宇宙理論に立脚した哲学を諦めていたのだ。ホーキングのいうように、今やアリストテレスからカントの時代とは違い、宇宙理論は専門家でない哲学者には理解が困難なところまで高度化・精緻化してしまった。専門家でない我々はもはや蚊帳の外なのだろうか。しかしホーキングは、完全な宇宙の統一理論を見いだせれば、それは専門家だけでなく多くの人に理解されるものになるであろうと述べる。そしてその時、宇宙がなぜ存在するのか、我々はなぜ存在するのか、という哲学の究極命題が解き明かされ、創造主の意思に辿り着き、人間の理性は完全な勝利を収めるだろうと。

  • 希代の天才物理学者、スティーブン・ホーキングによる理論物理学の入門書。
    専門外の人にもわかりやすく説明するという著者のコンセプト通り、理論物理学のメインテーマがこれ以上ないくらいに易しく解説される。数学的な解説もないため、かなり親しみやすい内容となっている。
    それでも馴染みのない概念ゆえに理解の難しい部分がある。こんなにも自分の知らない世界があるのかと思わされる。

    自分と同じ世界に生きて同じ現象を観察しているはずなのに、著者をはじめとした物理学者たちはまったく視点を異にして世界を見ている。
    その捉え方を理解することは並大抵のことではないが、彼らがどう世界を見ているかを少しでも知ることで視野を広げることができると思う。

  • 高校時代に落第点を取っていらい物理にはトラウマがあって、80年代にこの本が刊行されて平積みになっていた頃はスルーしました。ホーキング博士が亡くなった時に意を決して購入したものの今日まで放置。
    食わず嫌いしていたことを激しく後悔しました。若い頃に読んでいたら、少し違う人生を歩んでいたかもしれないと思うほど面白かった。
    こんな私でも楽しめたので、きっと誰でも楽しめます。

  • 天才物理学者の本が理解できるか不安だったけど、すごく分かりやすかったです。ホーキングは無神論者だと思っていたけど、思ったより神という言葉が出てきたのが意外でした。

  • 20年くらい前に読んだ本の再読。当時より知識もあるおかげか、当時より理解は進んだ。すでに20年以上前の本だが、最近の宇宙論とほぼ同じ内容に驚き(単に私が本当に最新の宇宙論を知らないだけかもしれないが。。。)。とにかく相対性理論と量子力学が相反するものであり、その統合こそが究極の理論となるということが分かった。そしてそれが実現したとしても量子力学の不確定性のために「ラプラスの魔女」は現れないということも。たまに出てくる科学以外の比喩を読んでいると、本当の天才科学者は一般教養も頭抜けているというこがよく分かり、流行の小説を読んでいるよりもよほど面白い。

  • ご冥福をお祈りいたします...

    スティーブン・ホーキング氏が死去、76歳 - BBCニュース
    http://www.bbc.com/japanese/43395742

  • 初版が出たのは98年らしい。その頃に買って読みました。難しかったなあ。
    先日、ホーキング博士の元妻の本が、ベースになった映画「博士と彼女のセオリー」を観て久しぶりに読みたくなりました。
    前半はなんとなくわかる。後半はヤッパリ難しい。

全118件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

スティーヴン・ウィリアム・ホーキング
1942年1月8日-2018年3月14日
イギリスのオックスフォードで生まれる。1957年、物理と化学を学ぶためにオックスフォード大学ユニバーシティカレッジ入学。大学卒業後はケンブリッジ大学大学院、応用数学・理論物理学科に入学。大学院入学後の1963年に「筋萎縮性側索硬化症」(ALS)と診断され、当時あと2、3年の命と宣告されたが、途中から病の進行が弱まったこともあり、精力的に活動を続けてきた。
1963年にブラックホールの特異点定理を発表し世界的に名を知られた。1967年論文「特異点と時空の幾何学」でアダムズ賞受賞。1974年に 「ブラックホールの蒸発理論」発表し、同年に史上最年少でイギリスの王立協会会員(FRS)となった。1977年ケンブリッジ大学の教授職を務め、1979年にはケンブリッジ大学のルーカス記念鋼材教授職に就任。1991年にタイムトラベルの不可能性などを説いた「時間順序保護仮説」を提唱。
1990年、1993年、2001年と度々来日して大きく報道されており、日本で最もよく知られる世界的科学者の一人でもあった。

スティーヴン・W.ホーキングの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×