日本SF傑作選1 筒井康隆 マグロマル/トラブル (ハヤカワ文庫JA)

著者 :
制作 : 日下 三蔵 
  • 早川書房
4.29
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本棚登録 : 168
感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・本 (778ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150312893

作品紹介・あらすじ

「お紺昇天」「東海道戦争」「ベトナム観光公社」「バブリング創世記」ほか傑作短篇20篇を精選。詳細な著作リスト、解説付き。

感想・レビュー・書評

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  • 筒井康隆『日本SF傑作選1 筒井康隆 マグロマル/トラブル』ハヤカワ文庫。

    日本SF誕生60周年記念企画 。第1期・全6巻の第1巻。700ページを超える第1巻には、懐かしい筒井康隆の初期作品25編を収録されている。 いずれも既読なのだが、読み返してみても面白い。現代でも十二分に通ずる諷刺の効いた作品に、筒井康隆の偉大さを再認識した。高校時代に筒井康隆にハマり、角川文庫や新潮文庫、中公文庫の著作を読み漁っていたものだ。

    『お紺昇天 』。今で言うところのAIや自動運転技術が描かれているが、この短編が描かれた頃はSFテーマの夢物語であった。

    『東海道戦争 』。マスコミに踊らされて始まった東京と大阪の戦争。最後はお得意のドタバタ劇。今から50年も前の短編なのに、現代でも十二分に通ずる諷刺が効いていて面白い。我々は50年もの間、成長していなかったのだろうかと考えると愕然とする。

    『マグロマル』。文化の違いは世界規模でさえ大きいのに、宇宙規模では…まるで落語のようなオチ。

    『カメロイド文部省 』。カメロイド人の操る無茶苦茶な日本語がおかしい。ラストはドタバタ劇。

    『トラブル 』。普通の日常の風景の中のちょっとしたトラブルが予想をもしない事態に。お得意のスラプスティックSF短編。

    『火星のツァラトゥストラ 』。高校時代に、この短編を読み、ニーチェの『ツァラトゥストラ』にも手を出した記憶がある。様々なメディアに強制的に作り出された流行は現代でも同じ。

    『最高級有機質肥料 』。筒井康隆がこの短編を書くにあたり、実際に物を皿に載せ、ナイフとフォークで切っているのを家人が見て、ついに気が狂ったのかと思う逸話を思い出した。

    『ベトナム観光公社 』。商売のための戦争、人口緩和策としての戦争。筒井康隆は50年も前に人間の本質を見抜いていたのだろう。

    『アルファルファ作戦 』。アルファルファなる野菜の存在を初めて知った短編。

    『腸はどこへ行った 』。記憶に残る短編。初期の筒井康隆にはSFという形式を取りながら、こういうドカンとしたオチが多かった。お気に入りの短編。

    『たぬきの方程式 』。トム・ゴドウィンの『冷たい方程式』のパロディ。当時は同様の作品が多く見られたように思う。

    『郵性省 』。大好きな短編。オナポート(^_^)

    『おれに関する噂 』。これも大好きな短編。くだらないゴシップを報道するマスコミ、くだらない報道を楽しむ人びと。筒井康隆の痛烈な諷刺が面白い。最後の一言が全てか…

    他に『近所迷惑 』『人口九千九百億 』『わが良き狼 』『フル・ネルソン 』『ビタミン 』『デマ 』『佇むひと 』『バブリング創世記 』『蟹甲癬 』『こぶ天才 』『顔面崩壊 』『最悪の接触』を収録。

  • スーツのポケットに入らないほど分厚い短編集
    言葉遣い、現在のいわゆる放送禁止用語が自然とでてくる
    あたりに時代も感じるし、必要か否か疑問かスカトロ
    表現もあるが、シニカルに世の中をおもしろく
    引っ掻きまわしたら、というような作品なのかな?
    世間ではへそ曲がり、と呼ばれるような観点も。
    つまり、普通の人では気づかない見方
    切り口で世の中やその時代を切りとり
    ちょっと違った形であらわした、ものなのかも。

  • グロもエロも頂点の文学が扱えば一級品なのさ。

  • 筒井康隆のベスト短編集。

    なお、現時点で「日本SF傑作選」として星新一の巻が無いのは、「新潮社との独占契約のため他社で新規の文庫版短篇集が出版できない為」だそうである。

    この短編集に含まれる「蟹甲癬」の題名は、もちろん、小林多喜二の小説「蟹工船」の題名のパロディ。

    内容は、架空の、大人限定で治療法のない、徐々に痴呆化する風土病「蟹甲癬」を描いている。小説末尾の、痴呆化した大人が、わけもわからず、ただただ、子どもの未来を案ずる姿が心を打つ。親(世代)の、子(世代)に対する愛情の一つの極北は、こういったもの(無条件に相手の幸せを願うこと)なのだろう。

  • 2018.9.12
    巻頭から読み進めていくことに。スローペースなのは仕方がない。
    まずは最初の2作品を読んだ。お紺昇天(SFマガジン1964年12月号)、東海道戦争(SFマガジン1965年7月号) 1965)2018.9.10
    マグロマル(SFマガジン1966年2月号)、カメロイド文部省(1966年4月号)2018.9.11

  • 「東海道戦争」中のマスコミ批評や「ベトナム観光会社」の流行に対する視点が、今現在にも通じるところがあるなぁ、と読んでいて驚く。
    先見の明と驚けばいいのか、1960年代後半から変わっていないことに驚けばいいのやら。半世紀と少々では変わりはしないのかしら。あくまで、個人の趣味嗜好なんだろうね、どうかしてるぜと思うのは。

    「最高級有機質肥料」は痰壺描写でギブアップ。いかれたどこでもドアの「近所迷惑」。「デマ」のチャート図は、そのまま企画書だな、と思っていたらオチもそうでした。
    「郵性省」は企画ものAVにありそうだ。狂気に支配されている「佇むヒト」。
    「バブリング創世記」って何なの?ゲシュタルトが崩壊する。流れに身を任さればいいんだろうか?

    とまあ、思いつくまま簡単な感想。
    初めて読むものばかりで、新鮮で興奮しきり。久しぶりにページをめくる手が止まらない。次の話を読むのが待ちきれない、という感覚になりました。もちろん、それぞれに好き嫌いはあるのだけどね。

    いやいや。レジェンドはレジェンドたる理由があるんだな、と。
    おもしろいもの。

  • 現代日本SF誕生60周年記念の企画本。その第一弾。
    筒井さんの作品は全集や自選傑作集、コレクション等、形を色々変えながら出版されているので、この本の収録作も何度も目にした事がある物ばかりだった。
    それでも今、改めて読むとやはり凄いな。面白さ、怖さ、猥雑さ。それらが縦横無尽に混ざり合う何ともパワフルな筒井ワールド。中学や高校の時に夢中で読んで大笑いしていたっけなあ。久々に読めて懐かしかったし、今なお色褪せない作品群だった。

  • 中高生の頃昔の筒井康隆作品はかなり読んだのに、このアンソロジーは初読のものが多かった。ほとんどが40年近く前の作品なのに今の日本に普通に当てはまってしまうのが少し怖くなった。

  • オビに第1期と紹介されているが、2期にも期待。
    豊田有恒、石原藤夫、横田順彌、栗本薫…とかとか

  • 筒井康隆の代表的な短編小説のアンソロジー。主に60〜70年代の初期傑作25篇。強力であり強烈、しかも斬新な作品集。長編以外はこの一冊でも充分。

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著者プロフィール

小説家

「2017年 『現代作家アーカイヴ2』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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