メデューサとの出会い (ザ・ベスト・オブ・アーサー・C・クラーク 3) (ハヤカワ文庫SF) (文庫) (ハヤカワ文庫 SF ク 1-48 ザ・ベスト・オブ・アーサー・C・クラ)
- 早川書房 (2009年10月30日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (528ページ)
- / ISBN・EAN: 9784150117306
感想・レビュー・書評
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小説はすべて早川の短編集に収録されている。エッセイ4編を新たに加えた。
「五感以上」がおもしろい。子供の頃コウモリが波長で空飛ぶ虫などの獲物を捕らえるのを知り、では石を投げたらどうなるかと思い投げてみたところ、石を獲物と思いぶつかったということが書いている。コウモリはまさか石が空を飛んでいようとは思わないだろう、と。
「バック・トゥ・2001」 「2001年宇宙の旅」は早川書房で版を重ねているが、文庫版での「決定版」という版に印刷されている。映画製作と小説執筆の興奮が伝わってくる。
「グレート・リーフ」(初出The Treasure of the Great Reaf1964)
「五感以上」(初出Report on Planet Three1972)
「バック・トゥ・2001」(初出ROC edition of 2001:A Space Odyssey 1993)※日本版では早川書房の「2001年宇宙の旅ー決定版」に訳出されている
「信条」(初出Living Philosophies1990)
2009.10.25発行 図書館詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
SF。短編集。
エッセイは興味ないのでスルー。
短編のテーマは"太陽系めぐり"とのこと。
SF短編のお手本というような、本格的でかつ分かりやすい、良作揃い。
「メイルシュトレームII」「太陽からの風」「地球太陽面通過」「メデューサとの出会い」など、情景描写が印象的な作品が多い。
特に「メイルシュトレームII」の主人公の体験は非常に刺激的。傑作。
この一冊の中では雰囲気の違う「憎悪」も個人的には好きな作品。 -
メデューサとの出会い (ザ・ベスト・オブ・アーサー・C・クラーク 3) (ハヤカワ文庫SF) (文庫)
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買い損ねていたので購入。
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アーサー・C・クラークの傑作短篇集第3弾。第1弾と第2弾に比べれば、多少の落穂拾い的な印象は拭えませんが(以前読んだ「10の世界の物語」からの再読作品が多かったことも影響してるかも)、作品のクオリティが下がるわけでは、もちろんございません。
全3巻の本傑作短篇集では、豊潤な科学的知見をバックグランドに宇宙開発の現場や宇宙生活のありよう、技術者たちの生き様といったものを描く作品がちらほら収録。こういった作品は、物語の節々で科学的な説明が施されているため、(もちろん理解を超える説明もありますが)遠く離れた宇宙の出来事なのに、どこか身近な世界に感じられるのです。これまで読んできたクラークの作品は、宇宙の謎を楽しみ、フロンティア精神を掻き立てる物語が多かったためか、こういった宇宙をより身近に感じられる作品には新鮮さを味わえただけでなく、科学者として、というよりも技術者としてのクラークの宇宙愛を強く感じるのでした。
ところで、クラークの作品はしばしば「詩情ゆたか」と形容されるようで、訳者かつ編者である中村融氏は、その由来を「科学」と解説しています。先に述べた宇宙を身近に感じる作品では、科学的な描写がその助けとなっているだけでなく、茫漠な宇宙を舞台に描かれるスペクタクルの支えでもあると感じるところ。たとえば、本書収録の「土星は昇る」や表題作の「メデューサとの出会い」は、それぞれ土星と木星が舞台の作品。これらの作品からは、(科学的な描写の助けも借りて)美しい造形をなす土星や寥廓たる木星への畏怖を感じられ、そこに中村氏の指摘する「詩情ゆたかさ」を痛感するのです。とりわけ、表題作にて描かれる木星内部のスペクタクルは、ただただ圧倒されるばかりなのでした。
ところで本書収録の「ドッグ・スター」はなんとも哀愁漂う作品で、「憎悪」はなんとも後味の悪い作品。これらは、クラークの作品としては少し異質に感じられるところがあって、ちょっと新鮮。というのも、クラークの作品は、宇宙や自然の広大無辺さに起因するドラマはあれど、人間そのものをバックに描かれるドラマは、あまり見られない印象を持っていたからなのでした。 -
2009年10月25日 初、カバスレ、帯なし
日本版オリジナル短編集
2014年3月8日 伊勢BF -
表題作が一番面白い!月、火星と生命の存在は否定されてきたが、木星はどうなのだろうか?我々の想像を超える世界に生命がいるとしたら、それはどんな生物なのだろうか?夢は尽きない。
表題作の他だと、日系人がソロバンで軌道計算する(そんなバカな)という話が印象に残った。 -
宇宙メイン、あとは海、山
こういう世界が待ってますというのが精緻に描かれている。説得力のお手本みたいな本
話の筋は、宇宙で事故が起こって危機からの生還、というパターン。正直ワンパターン。
だけど、舞台、事故にバリエーションがある。そしてバリエーションに説得力を持たせて各話違うものにしている
メデューサとの出会いは、クラークにしかかけない風景。最後の仲介者というのは唐突だが。
人物に人間的厚さを感じない話が多いが、「憎悪」はクラークってこんな話も書けるのかー、とクラーク自身についても新発見。悪意にぞくりとくる -
最終編。借り出しの都合で2番目に読んだ。
作品そのものは既読がほとんどなんだが、ハッピーエンドの「イカルスの夏」、ソロバン活躍の「彗星の核へ」、あくなき夢の「土星は昇る」、火星年代記っぽい「未踏のエデン」、暗くてなんか皮肉っぽい「憎悪」、小粒の「ドッグ・スター」、密室殺人ノリの粋な解決「メイルシュトレームII」、未来に知能を持つのはイカであるという予測を思い出させる「きらめく生きもの」、素晴らしいオチが全編を引き締める「秘密」、これこそ夢「太陽からの風」、これまたブラックっぽい「神々の糧」、少しわかりにくい「無慈悲な空」、美しいがラストがイマイチの「地球太陽面通過」、木星でのファーストコンタクト「メデューサとの出会い」、あとはエッセイへと続く。
訳にもよるがいずれも光の表現が素晴らしく映像的であることが特徴だ。これこそクラーク節なんだろう。
収録作品は以下の通り。
イカルスの夏
彗星の核へ
土星は昇る
未踏のエデン
憎悪
ドッグ・スター
メイルシュトレームII
きらめく生きもの
秘密
太陽からの風
神々の糧
無慈悲な空
地球太陽面通過
メデューサとの出会い
グレート・リーフ
五感以上
バック・トゥ・2001
信条