ストーカー (ハヤカワ文庫 SF 504)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150105044

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  • ソビエト時代のロシアのSF作家の兄弟、
    アルカジイ&ボリス・ストルガツキーの共作。
    タルコフスキーによって映画化された『ストーカー』。
    原題はПикник на обочине(路傍のピクニック)。

    地球を訪れ、地球人と接触しないまま去った
    異星人の《来訪》から13年。
    国際地球外文化研究所によって
    厳重に警戒・管理される《来訪ゾーン》に不法侵入し、
    異星人が残した物品を持ち出しては売り捌く
    《ストーカー》の物語。
    タイトル stalker は現在一般的な
    他人に付きまとう者の意ではなく、
    「隈なく見て回る者」「巡回する者」のこと。
    沖縄の人、また、沖縄が大好きな他県民には
    「≒戦果アギヤー」と言えば通りがいいだろうか。

    国際地球外文化研究所ハーモント支所実験助手
    レドリック・シュハルト23歳は、
    副業として《ストーカー》業で稼いでいるが、
    恋人グータが妊娠。
    彼女は彼を当てにしておらず、
    親にも頼らないで出産し、一人で育てると言い張ったが、
    結局、二人は結婚。
    だが、愛娘マリヤの外見は普通の子供と違っていた。
    ノーベル物理学賞受賞者
    ワレンチン・ピルマン博士の考察によれば、
    長期間《ゾーン》と関係する人間は
    遺伝子的な変化を被っているらしい……。

    原題「路傍のピクニック」は、
    地球人とコンタクトしたかったのか、どうなのか、
    はっきりしないまま引き揚げてしまった
    異星人の行為を指している。
    彼らは地球を侵略しようとしたのでも、
    地球人と友好的に交流したかったわけでもなく、
    単に行き掛かった場所でしばしピクニックを楽しみ、
    とてつもないゴミを不法投棄して
    去っただけだったのではないか――という。

    もしかしたら、異星人の目的は、
    膨大で異様な――使い方次第では大いに役立ちもする――
    ゴミの山を巡って右往左往し、争いを起こし、
    重傷を負ったり命を落としたりする地球人の様子を
    宇宙空間から観察することだったのかもしれない。
    案外、単なる娯楽として。
    マクロな視点で見れば、人間の日々の営みなぞ
    這い回る虫の生き様と大して変わらないだろうから。

  • 13年前の「来訪」と呼ばれる、地球外生命体からの接触により、危険区域として隔離されている6カ所の「ゾーン」。そのうちの一つハーモントにあるゾーンの研究所で働くレドリック・シュハルト(通称レッド)は、表向きは正式な職員として専門の研究者を案内しゾーンに入ることもあるが、裏ではゾーンに不法侵入し、異星人が残していったものを持ち出し闇で売りさばく案内人=ストーカーでもある。ストーカー仲間は何人もゾーン内で命を落としており、取り締まりで逮捕されたりもするが、それでも彼らはその仕事をやめようとしない。

    序盤のレドリックはまだ若く独身だが、何度もゾーンへ潜入し逮捕されて刑務所に入ったり、美人の奥さんグータと結婚して可愛い娘が生まれたりしつつ、やはりストーカーを続けて30歳を超え、最終章でついに、まだ噂だけで誰も持ち出したことのない「黄金の玉(なんでも願い事をかなえてくれるという「願望機」)」までたどり着くが・・・。

    タルコフスキーの映画(https://booklog.jp/item/1/B00006RTTS)は昔観ました。ゾーンとストーカーの設定は同じだけれど、映画は小説の最終章の「願望機」にまつわる部分だけをクローズアップ解釈して、ゾーン=願い事の叶う場所にしてあったんですね。タルコフスキーは多分ソラリス同様、「願望が叶う」という部分にだけ反応したんだろうな。そして映画のラストシーンで、突然女の子が超能力を使う場面が、全くちんぷんかんぷんだったのだけど、こちらは原作を読んで納得。ラストだけとってつけたように原作設定に忠実だったようで(苦笑)

    さて観念的だったタルコフスキーの映画と違い、こちらの原作はなんというかちゃんとSF。映画に合わせて改題してあるけれど本来のタイトルは『路傍のピクニック』で、その意味がわかる部分がちょっと鳥肌でした。ファーストコンタクトものSFでありながら、肝心の地球外生命体は一度も姿を見せず、ただ「ゾーン」という「痕跡」を残していったのみ。もしかして彼らにとって地球人なんて虫程度の存在で、とるにたらない地球という星にゴミを捨てて行っただけかもしれない。そのゴミを人類は拾い集めて意味を見つけようとし、実は間違った使い方をしていても気づいていないだけかも。なんて、皮肉な。

    最終的にその黄金の玉とやらに本当に願いを叶える力があるのかどうかはわからない。異星人は神のように人類を試そうとしているのかもしれないし、いろんな解釈が可能だけれど、真相がどうこうよりは、こういうことが起こったときに人はどうするか、という人間ドラマのほうが主軸なんだろう。レドリックはろくでなしの密売人だけど、人間的には根底の部分で正直で善良だ。「なんでも望みが叶う」なら人は何を願うのか、人類代表としてそこに辿り着いたレドリックの人間性を信じるしかない。いろいろ考えさせられる。

  • 映画だとおじさんたちのピクニック、ゲームだとチェルノブイリでドンパチな感じだが
    小説版は宇宙人が散らかしていった残骸(未知のオブジェクト)を漁りに行くトレジャーハント的な内容、蚊の禿やムズムズ、魔女のジェリーなど想像力を掻き立てる未知の現象や品々等読んでいて好奇心をくすぐられる。
    ロシア物にありがちな暗めな雰囲気だが探検物が好きな人は読んで損はないと思う

  • 祝、復刊!序盤のゾーンへの潜入シーン、中ほどのリチャードとピルマン博士の『路傍のピクニック』談義が印象に残りました。ピルマン博士が語る来訪者、ゾーンに対してと、それらが人間の世界に及ぼした影響についての持論は、ゾッとする個所があります。最後、レッドの内的独白には、現代社会でも同じような事を感じる人がきっといるだろうと思うと、ほろほろと泣けてしまいました。レッド…!

  • 再読。作品を知ったきっかけは確かMetro2033と同じくゲームの原作となった作品だから、だったろうか(どちらもゲームは未プレイだが)

    田舎町に突如現れた異星人達。しかし彼らは地球人と接触することも無く消え、後に残されたのは人智を超えた現象や物体が転がる「ゾーン」のみ…。研究が進められる中、ゾーンに不法侵入し異星の物品を盗み取る「ストーカー」達の物語。

    ファーストコンタクトものだが、異星人は現れず残された奇妙な物体や現象に関しても説明はザックリとしていて結果ソレが「何」であるかは殆どが判明しない。主人公のストーカー「レッド(レドリック)」の願いも最終的に叶うのか、何が何だか分からないままだった初読時はイマイチだと感じていたが…。改めて解説まで読み終わり、原題直訳の「路端のピクニック」等の方が作品の意味が通じやすいのでは…とも思ったり。
    人間達のファーストコンタクトであるが、謎解きではない。未知の領域に入り物体に触れるちょっとした冒険と次第に拡がる汚染の予感…。
    ゾーンから物品を持ち帰り研究する人間たちの行動は、例えるならば人の入らぬ森の中、初めて人が入りキャンプあるいはピクニックをしてゴミや道具や痕跡を残していく…そこに現れ初めて「人間の痕跡」を見た森の動物の反応だ。そしてその痕跡は少しづつ森に影響を与え変化が拡がる…豊かさという恩恵の裏で、密かに変異してゆく肉体と感覚。ある意味で異星人と対面でコミュニケーションを取るよりもリアル(?)なファーストコンタクトストーリーな気がする。もし今作で異星人が現れて「実はコレコレこういう事をしたのだ!」と言ってきてもそれはそれで違うよなぁ、とも思う。この静かな不気味さ、分からなさが醍醐味か。
    その一方でストーカー達の人間模様もあり。金の為に命を張る事。スリルと栄誉を求める事。命懸けでも叶えたい願いとは?苦労に見合う、本当に最適な願いは浮かぶのか?これは別題「願望機」としての要素か。

    個人的にチェルノブイリをイメージしていた(ゾーンのモデルだとも思っていた)が、事故の方が後だと知り驚きもある

  • 異星人の残していった謎のエリア。そこには超科学のガジェットが残されていますが危険もいっぱい。ストーカー達は命を懸けてお宝を求めに行きます。でも、登場するガジェットや怪現象の説明はほとんどなし。宝探しの冒険談というよりは、ストーカー稼業に関わる人々の人間模様の話という印象でした。

  • 映画とは違って、アクションやギミックが楽しく、勢いで読めてしまいました。
    ファーストコンタクト物の傑作。

  • こんなに主人公が直球でかっこいい小説だったなんて……。

  • 作画荒木飛呂彦で読みたいなあってずっと思いながら読んだ。足掛け三ヶ月かかった。
    SFに疎い身としては、未知との遭遇をこんな風に描く点は興味深かったが、いかんせん話がどこに行くのかわからず自分には読みづらかった。映画で雰囲気を掴んでから読んだらよかったかも。

  • SF。サスペンス。
    背表紙によるとファーストコンタクトものだそうですが、異星文明が訪れ、去った後が舞台という、特殊な設定。
    "ゾーン"は、『世界の涯ての夏』の"涯て"や、アニメ『Darker Than Black』の"ゲート"を思わせる。
    ストーリー的にはクライム・サスペンス調。
    SF設定も、登場人物の未来も、あまりハッキリしないまま終わった感じ。
    読者を驚かせるような展開が1つ2つ欲しかったような。

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