NHK出版 学びのきほん 「読む」って、どんなこと? (教養・文化シリーズ NHK出版学びのきほん)

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  • NHK出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (120ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784144072550

作品紹介・あらすじ

作家生活40年、初の読書論!

誰もが学校で教わった「文章の読み方」。私たちはそれを疑いもせず身につけることで生きてきた。ところが、学校で教わった読み方だと「読めない」ものがある!? 小説、詩、エッセイ、ノンフィクションーー。作家・高橋源一郎が好きな作品を一緒に読みながら、「読むきほん」を学びなおす、大人のための授業を開講!
はじめに:誰でも読むことはできる、って、ほんとうなんだろうか                               1時間目:簡単な文書を読む                                                2時間目:もうひとつ簡単な文章を読む                                           3時間目:(絶対に)学校では教えない文章を読む                                      4時間目:(たぶん)学校では教えない文章を読む                                      5時間目:学校で教えてくれる(はずの)文章を読む                                     6時間目:個人の文章を読む                                                おわりに:最後に書かれた文章を最後に読む

感想・レビュー・書評

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  • てっきりNHKでの放送をまとめた本かと思っていた。いや、コレをNHKがテレビじゃなくても良いからラジオでも放送してくれたら、「日本は変わった」という事になります。勿論、良い方に。勿論、現代のNHKは「こんなもの」を決して放送したりはしません。百万円賭けたっていい(そう思っていたら、高橋さんはNHKラジオでゲストを呼んで本を紹介する番組を持っていた(飛ぶ教室)。今のところ、伊藤比呂美、ヤマザキマリ、しりあがり寿とかが呼ばれている。ホントに賭けて良いのか?いや、大丈夫。きっと)。

    どうやら、NHK出版仕様の岩波ブックレットみたいなものらしい。何事も業書の始まりには名作がラインナップされている。志ある編集者が志ある著者に依頼し、志ある事を張り切って書くからである。「学びのきほん」シリーズ。あと他も読んでみようかな。

    NHKが決して放送しないようなことって、一体何を読んだの?
    それは目次を見たら少しはわかると思う(^^)。

    はじめに:誰でも読むことはできる、って、ほんとうなんだろうか
    1時間目:簡単な文書を読む
    2時間目:もうひとつ簡単な文章を読む
    3時間目:(絶対に)学校では教えない文章を読む
    4時間目:(たぶん)学校では教えない文章を読む
    5時間目:学校で教えてくれる(はずの)文章を読む
    6時間目:個人の文章を読むおわりに:最後に書かれた文章を最後に読む

    これを読んで驚いた方は相当いたようだが、私はほとんど驚かなかった。
    「つまり、問題山積みで、できたら近づきたくないような文章、そういうものこそ、「いい文章」だ、とわたしは考えています」
    という様な高橋源一郎さんの意見は、長い人生で掴んだ私の教訓と、以下の様なことで似通っていたからです。
    「世の中の意見が二分するような事柄の中にこそ、世の中で大切にしなければならない核心がある」
    防衛問題しかり、死刑制度しかり、生活保護問題しかり、嫌韓問題しかり。

    ただ、第5時間目の武田泰淳「審判」には、少し驚きました。 
    中国戦線における、一兵士の中国人農夫射殺の心理を描いた作品。晩年において武田泰淳は、コレは自らの体験だったと告白したらしい。
    私は堀田善衛の文章や「史記」論に寄せた武田泰淳の知識人としての誠実な姿を知っている。
    俄には、コレは信じがたいことだった。
    高橋源一郎は、Twitterでこのように言っている。
    「武田泰淳は『審判』で「知的訓練のない」兵士(庶民)がどんな思考回路で中国農民を虐殺するかを書き「知的訓練がある」(自分のような)兵士がどんな思考回路で農民を殺すかを「内側」から書いたが、本当に恐ろしいのは、この小説を読んでいると我々日本人はまたきっと同じことをすると思えてくることだ。(2019/08/03)」
    その通りかもしれないが、正に恐ろしいことだ。

    しかし、それを見つめることの中にこそ、「世の中で大切にしなければならない核心がある」。

  • 1時間目「簡単な文章を読む」の中で、オノ・ヨーコさんが書かれた文章を初めて読みました。
    ジョン・レノンのパートナーであることしか知りませんでした。やっぱり何かの才能がある方だったのだろうと思いました。
    こんな文章が載っていました。
    「想像しなさい。
    千の太陽が
    いっぺんに空にあるところを。
    一時間かがやかせなさい。
    それから少しずつ太陽たちを
    空へ溶け込ませなさい。
    ツナ・サンドウィッチをひとつ作り
    食べなさい。」 他
    オノ・ヨーコさんが「やる」ようにいっていることは、この社会では、「無意味」で「無価値」なものばかりですが、なんだかやってみたくなります。そのつづきを書いてみたくもなると作者はおっしゃっています。

    2時間目の『もうひとつ簡単な文章を読む」
    日本を代表する哲学者で批評家であられた鶴見俊輔さんの文章。
    (亡くなられる直前の文章が載っています)
    著者の高橋さんは鶴見さんの文章の静けさ、究極の「読む」世界ということをおっしゃっています。

    6時間目「個人の文章を読む」では藤井貞和さんの詩「雪、nobody」を取り上げています。
    (全文を載せたかったのですが、長いのでご興味のある方は本書をお読みください)
    詩人が「nobodyがいたよ」ということばから触発されて、考えたことは、この詩には書かれていません。なぜなら、それを考えるのは、この詩を「読む」読者の仕事であることをこの詩人は知っていたのです。-と解説されています。

    詩や文章を読むのはじっくりこのように考えていると興味の深いことだと思いました。

    おわりには「最後に書かれた文章を最後に読む」
    加藤典洋さんが最後に発表されたキャッチボールについての文章が取り上げられています。

    キャッチボールは投げるときには、相手をしっかり見て受け取るときには真剣にそのボールを見つめていなければならない。それは真剣に、自分に向かって投げられたボールなんだから。-という著者のことばは、この本で一番印象に残りました。

    ※間違えて非公開で登録してしまったので、自分でいいね!おします。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      まことさん
      リンクだけ、、、

      こぼればなし(2019年8月号) - 岩波書店
      https://www.iwanami.co.jp/...
      まことさん
      リンクだけ、、、

      こぼればなし(2019年8月号) - 岩波書店
      https://www.iwanami.co.jp/news/n30923.html

      鶴見俊輔 没後三年記念出版 2018年8月下旬刊行 鶴見俊輔『敗北力 Later Works』増補版|編集グループ〈SURE〉
      http://www.groupsure.net/post_item.php?type=books&page=180517ZouhoHaiboku
      2020/10/12
    • まことさん
      猫丸さん。
      リンクありがとうございます!!!
      お二人の著作は、当分、読めないと思うので(^^;リンクの内容を読まさせていただいたことでよ...
      猫丸さん。
      リンクありがとうございます!!!
      お二人の著作は、当分、読めないと思うので(^^;リンクの内容を読まさせていただいたことでよしとしておこうと思います。
      今のところ…。
      2020/10/13
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      まことさん
      にゃ〜ん
      まことさん
      にゃ〜ん
      2020/10/13
  • さまざまなタイプの文章を題材に、「読む」ということについて考える本。
    学校の授業のように、1時間目から6時間目まで、単元に分かれている。

    冒頭、国語の教科書に書かれている「読み方の手引き」小学校1年生から6年生の分が掲載されている。なるほどね、違和感はない。

    1限目「簡単な文章を読む」の題材として挙げられているのは、オノ・ヨーコ『グレープフルーツ・ジュース』。なんだろう、どう読めばいいのかわからない。読み解こうとせず、感じることが大切なのだろう。

    2限目「もうひとつ簡単な文章を読む」では、鶴見俊輔『「もうろく帖」周辺』を読む。
    「静謐な」という言葉がぴったりな文章。くどくど分析するのではなく、ゆっくりと味わいたい。

    3限目「(絶対に)学校では教えない文章を読む」では、永沢光雄『AV女優』。
    自分のこれまでの経験や培ってきた価値観では理解できない考え方。共感できない。けれどそれでもいいのか。問題山積みの文章ほどいい文章、なのだそうだ。

    4限目「(たぶん)学校では教えない文章を読む」では、坂口安吾『天皇陛下にささぐる言葉』。
    乱暴で、決して整った文章ではない。でも、必死さが生々しく伝わってくる。

    5限目「学校で教えてくれる(はずの)文章を読む」の武田泰淳『審判』。
    手引きに沿って読もうとすると「なんか違う」。何で違うのだろう。その理由を考えることが「読む」ということ。

    6限目「個人の文章を読む」では、藤井貞和「雪、 nobody」という詩と、ウィリアム・サローヤン『ヒューマン・コメディ』を紹介した荒川洋治『霧中の読書』の「美しい人たちの町」。「nobodyがいる」って、素敵な表現だな。

    おわりに「最後に書かれた文章を最後に読む」。批評家、加藤典洋『大きな字で書くこと』 。

    教科書の手引きのような読み方ができるものもあるけれど、そうでない文章もたくさんある。
    自分のちっぽけな経験の範囲で分析できるもの、共感できるものだけを読み、そうでないものを排除してこなかったか。
    「感じる」読書をしたい。

    • たなか・まさん
      永沢光雄の本、昔読んだよ。
      永沢光雄の本、昔読んだよ。
      2022/04/10
    • b-matatabiさん
      読むのはなかなかハードそうな本ですね。
      読むのはなかなかハードそうな本ですね。
      2022/04/10
    • たなか・まさん
      うん。しんどい。そして皆、育った環境が似ているのに驚いた。
      うん。しんどい。そして皆、育った環境が似ているのに驚いた。
      2022/04/10
  • スラスラと読める本でしたが、とても深い内容で、考えさせられました。
    「読むとはどういゆことか?」という真髄を、突き詰めて考えさせられるいい本でした。
    ぜひぜひ読んでみて下さい。

  • 『「読む」って、どんなこと?』書評 危険な文章が持つ人を変える力|好書好日
    https://book.asahi.com/article/13760252

    NHK出版 学びのきほん 「読む」って、どんなこと? | NHK出版
    https://www.nhk-book.co.jp/detail/000064072552020.html

  • 私は国語の授業が嫌いだったけど、学校でこんな授業を受けられたら、もっと早く読書の魅力に気づいていたと思う。
    引用してある文章も、いろいろ考えさせられる余白のある文章で、とても面白かった。


    特に学生さんにおすすめしたい一冊です。

  • 本の読み方など、考えたこともなかった。小学校で習ったことも、すっかり記憶から抜け落ちてる。改めて学べて良かったと思う。
    坂口安吾の昭和天皇に向けた文章には驚いた。当時、あんな文を発表できたなんて…。
    『審判』も重い。『無言のがいせん』も、胸が苦しくなった。
    考えさせられる文ばかりだった。今まで本を読むとき、何も考えていなかったような気がする。今後は、少し立ち止まって考えながら読むようにしよう。

  • んまー、げんげんったら!
    というのが読後の心中の第一声だったのだが、よくよく考えると高橋源一郎の本を読むのは初めてだった。それなのに彼について謎の愛称まで出てくるほど妙に知った気になっているのはなぜかといったら、テレビやtwitterでの、“人を右か左かで分けるなら明らかに左”な発言をよく見ているからに他ならない。
    いわく、「読み方」を教える学校の国語の授業は、国家や社会に都合のよい人間を作る装置である。問題が山積みで、読む人に考えさせるような文章、読む人を変えてしまうような文章が良い文章である。そういう文章は教科書には載らない。とのこと。
    人の世は油断ならぬ。

  • 出版されたのは知っていたけど読もうか迷っていて、書店で実際にパラパラめくってみた結果、必読と思い入手に至る。作者の書評は、折につけ目にすることがあり、その着眼点の鋭さには感服させられることしきり。そんな彼が、読書そのものについて論じている訳だから、それが退屈な訳がない。もちろんただの読書術論に終始することはなく、国語教育からひいては学校教育に対する疑義提示へと話は広がっていく。特に国語なんて、決まった答えがある訳もなく、でも正解ってのは存在して、それは結局、誘導尋問みたいなもんなんだな。

  • 著者、高橋源一郎さん、どのような方かというと、ウィキペディアには、次のように書かれています。

    高橋 源一郎(たかはし げんいちろう、1951年1月1日 - )は、日本の小説家、文学者、文芸評論家。明治学院大学名誉教授。

    散文詩的な文体で言語を異化し、教養的なハイカルチャーからマンガ・テレビといった大衆文化までを幅広く引用した、パロディやパスティーシュを駆使する前衛的な作風。日本のポストモダン文学を代表する作家の一人である。

    4度の離婚歴と5度の結婚歴がある。子どもは5人。

    なかなかの方のようです。


    で、この本の内容は、コピペですが、次のように書かれています。


    作家生活40年、初の読書論!

    誰もが学校で教わった「文章の読み方」。私たちはそれを疑いもせず身につけることで生きてきた。ところが、学校で教わった読み方だと「読めない」ものがある!? 小説、詩、エッセイ、ノンフィクションーー。作家・高橋源一郎が好きな作品を一緒に読みながら、「読むきほん」を学びなおす、大人のための授業を開講!
    はじめに:誰でも読むことはできる、って、ほんとうなんだろうか                               1時間目:簡単な文書を読む                                                2時間目:もうひとつ簡単な文章を読む                                           3時間目:(絶対に)学校では教えない文章を読む                                      4時間目:(たぶん)学校では教えない文章を読む                                      5時間目:学校で教えてくれる(はずの)文章を読む                                     6時間目:個人の文章を読む                                                おわりに:最後に書かれた文章を最後に読む

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著者プロフィール

作家・元明治学院大学教授

「2020年 『弱さの研究ー弱さで読み解くコロナの時代』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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