マルクス思想の核心 21世紀の社会理論のために (NHKブックス)

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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140912379

作品紹介・あらすじ

二十世紀に「死んだ」と言われたマルクス思想が注目されている。資本がすべてに優越する状況が、十九世紀と似てきているからだ。しかし富の分配や「格差」の是正は、本質的な問題ではない。それよりも、富とは何か、それはどのように生み出されるのか、どのような形で蓄積されるのかを探究したのがマルクスだった。賃金労働は生物としての人間の本質を損なう性質を持つとして資本主義の問題点を鋭く見抜いたマルクスの視点を踏まえ、国際資本が国家から個人までも翻弄する現状を打破するための条件を提示する。仕事に追われるすべての給与生活者、必読!

感想・レビュー・書評

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  • シュトレーク、ピケティ、ドン・デリーロ『コズモポリス』、フォイエルバッハ『キリスト教の本質』、進化論

  • 現代においてマルクスの哲学と経済学がもつ意義を、わかりやすく解説している本です。

    著者はまず、ヴォルフガング・シュトレークの『時間稼ぎの資本主義』とトマ・ピケティの『21世紀の資本』を取り上げ、新自由主義の問題が顕著に現われつつある現代の状況についての概観をおこなっています。その上で、資本主義は格差問題よりもさらに深刻な問題を孕んでいると指摘し、そのことを明らかにしたのがマルクスの疎外論ないし物象化論だという主張が展開されることになります。

    その一方で、ホッブズやロックの社会契約説、ヘーゲルの国家論などについても検討をおこない、従来の社会理論や経済理論が、社会や経済の仕組みを因果的に解き明かそうとする「科学的次元」と、規範的な目的論的観点から社会と経済の進むべき道を考察する「哲学的次元」に引き裂かれていると主張します。そのうえで、おなじ困難を内包しているマルクスの価値形態論をとりあげ、具体的な個々人の交渉によって成立する相対的価値形態から一般等価形態ないし貨幣形態への飛躍のうちに、交易関係が十分に成熟しているという現実的条件が存在していることを指摘し、そこに個人から出発して社会関係を科学的に解明するという「実在的な抽象性」が生まれ出たと論じています。最後に、そうして与えられることになった社会の新たな見方をより包括的に考察するために、現代の進化論的認識論の概要が論じられることになります。

    「まえがき」で「全体の議論はマルクスをまだ一度も読んだことのない読者を念頭において進めたい」と書かれているように、議論をわかりやすくしようとする工夫はうかがえます。ただ、社会契約説やヘーゲルの国家論、さらには進化論的認識論など、あつかっている内容が広範にわたっているため、大風呂敷を広げているという印象も受けます。

  • 発売日 2016年01月26日
    価格 定価:1,512円(本体1,400円)
    判型 B6判
    ページ数 288ページ
    商品コード 0091237
    Cコード C1310(哲学)
    ISBN 978-4-14-091237-9

    「格差」よりずっと深刻な問題がある!
    マルクスが見抜いた19世紀イギリス社会の問題は、現代日本にも存在し続けている。労働と賃金を引き換えることの本質的な問題とは? 欧米が奉じる「自由主義」の本来の目的とは? なぜ人間は貨幣を崇めるのか? 『資本論』はじめテクストを忠実に読み、資本主義が危機に瀕した現状とその根本問題を明らかにする。
    https://www.nhk-book.co.jp/detail/000000912372016.html


    【目次】
    まえがき――マルクス [003-008]
    目次 [009-014]

    第一章 マルクスはいかに受容されてきたか――四つの断面 015
    第二章 現代資本主義の危機 045
    第三章 近代社会哲学の出発点 083
    第四章 自由主義批判と疎外論 119
    第五章 賃金労働の本質 153
    第六章 実体論から関係論へ 189
    第七章 現代社会理論の条件 245

    参考文献 [281-282]
    あとがき(二〇一六年初春 鈴木直) [283-285]

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著者プロフィール

鈴木 直(すずき・ただし):1949年東京生まれ。東京大学大学院比較文学比較文化博士課程退学。東京医科歯科大学教授、東京経済大学教授を歴任。専攻はドイツ思想史。

「2024年 『資本論 第一巻 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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