古文書はいかに歴史を描くのか フィールドワークがつなぐ過去と未来 (NHKブックス)

著者 :
  • NHK出版
3.50
  • (4)
  • (2)
  • (4)
  • (0)
  • (2)
本棚登録 : 92
感想 : 8
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140912362

作品紹介・あらすじ

蔵の長持や屋根裏の古箪笥の中で埃に塗れ、今まさに廃棄されようとしている"古文書"。襖や屏風、衝立の下張りに使われていた"古文書"。実はそこには、豊かな歴史が眠っているかもしれない。甲州早川や信州秋山等でのフィールドワークを通して、歴史研究の舞台裏としての史料調査とは何かを明らかにし、古文書の調査・整理方法について具体的に論じる。埃を払い、修復された古文書から、いかにして隠された歴史を繙いていくのか。その方途を、長年の現場経験から明かす。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 貸し出し状況等、詳細情報の確認は下記URLへ
    http://libsrv02.iamas.ac.jp/jhkweb_JPN/service/open_search_ex.asp?ISBN=9784140912362

  • 村に残されたいわゆる村方文書による在所での歴史の掘り起こし方法がテーマ。在所で発見・発掘され整理した資料から歴史を読み解く。

    著者の実体験とそこから見いだされた資料調査と記録の方法が語られる。また、著者がフィールドワークにより構成した歴史の一端も語られる。

    キーワード
    ・学際研究のフィールド
    ・地元への成果還元
    ・多分野共同研究の醍醐味

  • 【書誌情報】
    『古文書はいかに歴史を描くのか――フィールドワークがつなぐ過去と未来』 (NHKブックス)
    著者:白水 智[しろうず・さとし] (1960-) 日本中世史。山村史、海村史。
    発売日 :2015年12月24日
    価格:1,620円(本体1,500円)
    判型:B6判
    ページ数:320
    商品コード:0091236
    Cコード:C1321(日本歴史)
    ISBN:978-4-14-091236-2
    https://www.nhk-book.co.jp/detail/000000912362015.html

    【目次】
    目次 [003-007]

    序章 知られざる歴史研究の舞台裏 009
      忘れられた大震災
      古文書が人の世に光を当てる
      歴史は身近にあるか
      研究の舞台裏と身近な古文書
      歴史を知るもう一つの意味
      本書で伝えたいこと

    第一章 古文書とは何か 021
    一 歴史と史料 022
      書き替えられていく歴史
      歴史をたどる手がかりとしての史料
      活字史料の恩恵
      かけがえのない実物史料
    二 失われた史料・たまたま残った史料 032
      日々廃棄されている文化財
      時間との戦い――昨日ゴミに出してしまいました
      時間との戦い――失われゆく山村史料
      廃棄史料はなぜ残されてきたか
      廃棄史料の特徴
      京都古刹から見つかった襖裏張文書
    三 和紙という素材 046
      虫が喰い、ネズミが囓り、湿気が襲う
      いろいろな修復
      できるだけ避けたい修復

    第二章 史料調査の日々――フィールドワークの重要性 057
    一 歴史学とフィールドワーク 058
      各時代史のフィールドワーク事情
      「切り身」の活字史料の背後にあるもの
    調査の始まり
      怪しい者ではありません
      簡単ではない調査意図の説明
      所蔵者の姿勢を変えたもの
      相互の信頼関係が基本
      集団調査と個人調査
    二 これまでの調査履歴から――駆け出しの頃 077
      初めての調査経験
      必ず起きる「偶然」
      五島列島へ
      日本常民文化研究所の調査
      激論の日々から
    三 これまでの調査履歴から――ライフワークとなる調査の開始 089
      中央大学山村研究会の調査
      調査方法の変化
      毎年活動成果を刊行
      「歴史学の現場」に身を置くこと
      信越国境秋山の調査
      古文書を訪ねて
      八年かけて秋山関係の古文書を調査
      土蔵まるごとの文化財調査
      猛暑の中の土蔵調査
      学際研究のフィールドとして
      地元への成果還元とメンバーのつながり
      多分野共同研究の醍醐味――江戸時代の鉱山跡を探る
      次々見つかる手がかり
      江戸時代の森林が甦る――歴史学と林学とのコラボレーション
      調査経験から得たもの

    第三章 史料の調査と整理を考える 131
      研究か史料整理か
      史料整理は「雑務」なのか
      最初にしか採れない情報――現状記録の重要性
      「ともにあること」の史料的価値
      内容と形態による整理方式は適切か
      史料内容の豊かさを生かすには
      形態別整理の問題点
      現状記録に意味はあるのか
      現状記録の重要性
      一体化する配置と記憶
      未来に備える
      何をどこまで採るか
      専門家でなくてもできる現状記録採り
      史料調査自体の記録を

    第四章 史料の具体的整理方法 165
      現状記録を採ってみよう
      史料利用のための調査と目録づくり
      調査や目録の深度――概要調査と精細調査
      簡易な目録づくりも重要
      史料IDをつける
      史料自体をどう整理するか
      近世史料に合わせた目録仕様の不都合
      目録編成の考え方
      形態情報とイメージ情報の有効性
      パソコンを利用した目録の作成
      史料をどう撮影するか
      デジタルカメラとマイクロフィルム

    第五章 発掘・整理した史料から歴史を読み解く 205
    一 断簡文書が明かす歴史 206
      謎だらけの古文書
      江戸城に提供されていた早川入の材木
      危険を冒しての運材
      垣間見える山地の重要性
      教科書に書き加えられる山の産業
    二 襖張文書が明かす奥能登の記憶 221
      今に残る船道具
      裏張文書に残されていた証拠
    三 衣装の中に古文書があった 227
      襟裏張文書の発見から追跡まで
      裏張文書を剥がしてみる
      裏張文書の内容を探る
      袴の中からも古文書が
      現地へ飛ぶ
      見えてきた背景
    四 裏打ちで甦った史料から 241
      山村に残された狩猟関係史料
      犬を使った狩猟の実態
      猟師が投げかけた疑問
    五 冷凍保存された地名発音 252
      文字に音声を聞く
      小若狭村と小赤沢村
      発音と表記の間に横たわる溝
    六 遠のいた海の話 262
      青方氏の拠点はどこにあったか
      海際にあった殿山

    第六章 歴史史料と現代――散逸か保存か 267
      身に迫らない歴史
      滅びようとするムラの前で歴史学は何をするのか
      地域を元気にする歴史学
      「三〇〇年後に小滝を引き継ぐ」
      「これまで」 があって「これから」がある
      史料を整理する職務の必要性
      史学カリキュラムにも史料整理やフィールドワークを
      地域に史料を遺せる環境を

    終章 長野県北部震災を経て 291
      震災と文化財救出―― 三・一二の大震災
      「まるごと調査」の土蔵はどうなった?
      文化財救援組織「地域史料保全有志の会」の結成
      フィールドワークの経験が生きた現場
      文化財の保全から活用へ――地域への還元の始まり
      文化財保管施設のリニューアルへ
      「人文学の現場」であること
      確かな未来は確かな過去の理解から始まる


    あとがき(二〇一五年一一月一五日 白水智) [317-318]

  • 歴史

  • ふと書店(ふたば書房八条口店)で見つけて購入した。寝る前に1節か2節ずつ読み進めていたので、読了まで3ヶ月ほどかかった。おもしろかった。歴史自体の話ではなく歴史をどうやって調べていくのかが語られている。先日、細見美術館で春画展を見た。本の体裁をとったものには手書きの文章もある。なかなか読めないのだけれど、ひらがなやカタカナをいくらか判別することができる。これらがスラスラ読めたらおもしろいだろうなあと思う。さて、本書に登場する古文書、出所はふすまの裏張りだったり、かみしもの裏張りだったりする。そんなところにあるものを、なんとかうまくはがして解読する。興味深い。何が出てくるのか。その中身についての詳しい記述はないが、そうやって調べるうちに、いままで言われていたことが間違いだったと気づくこともあるのだろう。なぜ歴史を研究するのか。純粋に「知りたい」という気持ちが強いのだと思うが、「知りえたこと」を未来に役立てていくこともできる。科学技術は大幅に進歩したけれど、人間の脳自体が大きく変わったわけではない。昔も今も同じような問題に出くわし、同じように悩み、同じように打開策を考えてきたはず。ならば先人の考えに耳を傾けてもよい。温故知新。それが、歴史学の役目の一つであるのだろう。そんなことを本書を通して感じた。

  • 160319 中央図書館
    震災のあと取り壊される古民家の古ふすまの下張りから、発見される古文書など、歴史学者の苦労を。

  • 歴史好きは世の中多くても、歴史資料が好きな人というのは少ない。よしんば居たとしても、それは「お宝」とよばれる歴史資料への関心であったりする。だとすれば、お宝的価値のつかない、しかし日本全国に多く残されている近世から近現代の歴史資料には、どのような意味があるのだろうか。ないのだろうか。

    本書は、そのような問いを立て、そして筆者の様々な経験から市井に残された歴史資料の歴史的価値のみならず社会的意味を考えていく。同時に、そのような歴史資料にめぐりあうためのフィールドワークの意味、東日本大震災を経たうえでいっそう強く認識されるようになった歴史資料と地域の関係などが語られていく。

    ただ、歴史資料整理の方法論の箇所は、一般人にはわかりにくいのかもしれない。しかし、歴史資料整理の方法論を一般書に載せようという試みそれ自体が、歴史資料整理の「意味」をとらえ返す挑戦だと考えるべきだろう。

    フィールドワークという「現場」で鍛えられた著者の文章には、他では得られないような「強度」が込められており、読み手に迫ってくるものがある。内容はもちろん、その「強度」も含めて、類書のない好著といえるのではないだろうか。

全8件中 1 - 8件を表示

著者プロフィール

1960年、神奈川県生まれ。現在、中央学院大学法学部教授。 ※2018年11月現在
【主要編著書】『知られざる日本―山村の語る歴史世界』(日本放送出版協会、2005年)、『新・秋山記行』(編著、高志書院、2012年)、『古文書はいかに歴史を描くのか―フィールドワークがつなぐ過去と未来』(NHK出版、2015年)

「2018年 『中近世山村の生業と社会』 で使われていた紹介文から引用しています。」

白水智の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×