外務官僚たちの太平洋戦争 (NHKブックス)

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  • NHK出版
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本棚登録 : 83
感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140912324

作品紹介・あらすじ

内閣中枢や軍部と比較すると、太平洋戦争における外務官僚たちの動向は、ややもすると等閑視されがちである。だが、一九二〇年代に始まった外務省内の「改革」は、開戦から終戦に至るあらゆる場面に影響を与えることとなった。外務省内において、対米開戦はいかに決定されたのか。数多の終戦工作は、なぜ実を結ばなかったのか。白鳥敏夫、東郷茂徳、松岡洋右、重光葵、佐藤尚武…。外務官僚たちの動向を中心に据えて、数々の史資料を精緻に読み解きながら、太平洋戦争の諸相を捉えなおす。

感想・レビュー・書評

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  • 太平洋戦争の少し前から、終戦まで、外交を中心に近代史を振り返った本。
    外務省とはどういう組織なのかからはじまり、キーとなる人物・グループなどを解説ののち、三国同盟、アメリカとの関係、ソ連との関係、終戦工作について論じる。
    政治史や軍事史、総体としての歴史書は多いが、外交官を中心としたものは珍しく新鮮だった。
    近代史の基礎的な知識を有した状態で読みたい。
    外交の読み間違い、組織として外交が誤った方向にいってしまう、などなど、現代で政治外交を考える上でも有益な知見が盛りだくさん。

    特に、アメリカやソ連とのやりとりと、日本の外交・政治の内側の読み間違い、というのは興味深かった。
    軍事的な衝突が起こることになるなんてことを考えずに、超重要な政治的決断をしているようなところが多々ある。
    これは、現代にも未来にも当てはまるだろうな、と思った。
    近現代史好きにはオススメの一冊。
    なお、著者は日本近現代史、外交史がご専門。

    ——以下、ツイッタ、アドレスは2023/08/26ー

    読了本。佐藤元英の「外務官僚たちの太平洋戦争」 https://amzn.to/45gQVZ4 太平洋戦争前史から終戦までの近代史について、外交を中心に振り返った本。この視点の本はあまりなくておもしろかった。この時代の歴史をある程度知らないと読めないかもしれない。 #hrp #book #2023b

  • 8月になると毎年、戦争特集が放送され、その悲惨さを強調するものが大半であるが、悲惨さを自覚すれば、二度と戦争を起こさないものだろうか?本書をはじめとして史料に基づく戦争に関する書物を読めば、以下に戦争回避が困難であったか、情に訴えて回避できるほどの生易しいものでないということが理解できる。本書は外務官僚に焦点をあてているが、「昭和陸軍秘録」「昭和陸軍諜報秘史」同様の組織(本書では外務省)の統制が取れていないことは驚くべきことであり、幹部に情報が上がっているにも関わらず、適時、適切な決断がいかに困難であったかを認識できる。

  • 【悲惨な犠牲を伴う戦争を決断するのも、戦争を早期に終結させる道を探るのも外交である】(文中より引用)

    軍部の影響力が強まる中,外務官僚が太平洋戦争前後でどのような外交を試みようとしたかを研究した作品。外務省として一枚岩でなかった当時の状況を垣間見るとともに,時の外交当局がどのような世界認識を抱いていたかを明らかにしていきます。著者は、外務省外交史料館編纂官などを歴任した佐藤元英。

    幣原喜重郎を始めとする欧米派の外交潮流から革新派と呼ばれる潮流に至るまで,幅広く外務官僚の動向を視野に収めながら,当時の情勢の推移を緻密に記した意欲作。陸軍や海軍を始めとするアクターとの間で,外務省がどのように影響力を確保しようとしたのかについても記されており,大変勉強になりました。

    少し読みづらい面もあったのですが☆5つ

  •  登場人物は閣僚クラス、それに多少の大使がほとんど。他にも天皇の意向や参謀本部、米英ソの動きにもかなりの幅を割いており、書名のイメージとは違った。自分の知識不足もあるが、より時期又はテーマを絞った方が読みやすかったと思う。
     外務省革新派については、「戦争決断の意思決定を左右したわけではない」とする点は戸部良一の中公新書と同評価だが、「革新派による無通告開戦指導」との言葉もあり、政策文書立案者としてはさも政策プロセスに影響力があったようにも書かれている。今一つ評価がはっきりしない。しかも本書後半は全く登場しない。
     なお、著者は在米大使館の不手際で開戦通告が遅れたとの通説に異を唱える。この対米最後通牒「覚書」は宣戦布告というには不十分で、12月8日の昼前に出された「詔書」が宣戦布告である、東郷外相も含め無通告開戦やむなしと考えていた、とする点が目新しい。
     目を引かれたのが、日清戦争以後の国際関係の評価だ。一面大陸侵略、一面英米(政治的、経済的)従属という「二重構造」。そして中国を取り巻く利権獲得競争の中での英米協調依存と、拡大された日本の勢力は必然的に英米競争対立を招くという矛盾した「二面性」。これら「二重構造」と「二面性」がもたらす、英米協調・現状維持派と英米対決・現状打破派という相反する「二つの対外路線」。

  • 開戦宣言が米大使館の不手際で事前通告されず、真珠湾攻撃が無通告開戦なったと理解していたが、そもそも通告そのものが国際法上不十分なものであり、もともと無通告開戦を企図していた可能性が高いとは!このことは、もっと広く知られるべきである。

  • 151219 中央図書館

  • 第一次世界大戦後の外務官僚の動向が書かれているが、最後の方は、読めずじまいでした。
    昭和天皇の憂慮も、革新外務官僚の独走で、戦争に突っ走ってしまいました。
    私のつたない感想ですが、明治維新後、ヨーロッパの戦争まで深読みするノウハウ・能力が日本に蓄積されていなかったのでは・・・

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著者プロフィール

中央大学文学部教授

「2016年 『日本外交のアーカイブズ学的研究 II』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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