森林飽和 国土の変貌を考える (NHKブックス)

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  • Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140911938

作品紹介・あらすじ

緑の木々に覆われた山を歩きながら、私たちは、そこが五十年前にはげ山であった姿を想像できるだろうか?山の地肌が消え、土砂崩れが減り、川から砂がなくなる-これら二十世紀におきた変化は、日本史上初のものだった。変化は副作用をもたらす。サルやクマの人里への出没、海岸の道路を崩壊させる"砂浜流失"、そして花粉症。各地で起きる問題の根源に山地の変化があることを見抜き、土砂の流れを分析して私たちの誤った思いこみを次々と覆す。自然環境と災害について発想の転換を迫る提言の書。

感想・レビュー・書評

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  • 日経ビジネスオンラインで著者のインタビュー記事を読み、日本の森林の現状や機能について、これまで漠然と信じていたこととのあまりの認識ギャップの大きさに愕然とし、改めて本を読んできちんと勉強することにしました。
    かなり固い内容で、正直読むのがやや大変だったのですが、高度成長期以後エネルギー革命や工業化、輸入木材などのために日本の林業が産業として成り立たなくなり、森林が放置されてしまっているという認識はあったのですが、それが「森林飽和」とさえいえる状況となっており、むしろ森を積極的に伐採して利用しないと国土の荒廃につながってしまうのが現実というのは、全く認識していませんでした。
    「山林保全」というのは、森林を手つかずで残すこととは全く逆で、なんとか利用を図らねばならないということなのだということが、よくわかりました。
    TPP参加で、農業の産業高度化についてはよく議論されるようになりましたが、林業の再生というのも、これからの日本社会の持続可能性にとって極めて大きな課題だと言うことが、深く理解できました。
    まだまだあまり話題になっていませんが、重要な問題提起です。

  • 古き良き日本の原風景なんて言葉を聞くと、鬱蒼と生い茂った里山の光景を思い浮かべてしまう。でも日本の里山はつい最近まで千年以上もの間、過度の森林伐採によりハゲ山だらけだったらしい。

    確かに石炭も石油も無い時代にほぼ唯一の燃料として、また建材や農業資材など幅広く木が使われてきたのだ。おそらく日本中のおじいさんが山で柴を刈りまくっていたのだから、よく考えてみれば当たり前なのかもしれない。

    現代では逆に森林が回復した事により、山から流出する土砂が減りすぎてしまい、結果として海岸線が浸食されてしまうという深刻な問題が発生している。
    エネルギー源の変遷、そして安いからと言って木材を輸入材に切り替えたところ、自国の国土を減らしてしまうという皮肉な結果になってしまったようだ。

    環境のことを考える時いつも思うのだが、このまま行くと人間はきっと、地球史上もっともワガママな生物、として汚点を残す事になるハズである。

    人間はもっと謙虚に暮らすべきだよね。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「山から流出する土砂が減りすぎて」
      う~ん、何が良いかは簡単に判断出来ないのが難しい。。。最近は何でも白黒つけちゃうけど、エエカッコし過ぎ...
      「山から流出する土砂が減りすぎて」
      う~ん、何が良いかは簡単に判断出来ないのが難しい。。。最近は何でも白黒つけちゃうけど、エエカッコし過ぎなのかも。。。
      2014/04/03
  •  世の中では、森林は、いろいろな多面的機能があって大事にすべきと言われている。

     基本的にはあたっているが、著者によれば、渇水時に水を保全する機能はないとのこと、渇水時のような水がないときには木も水をすってどんどん蒸発させるから、当然といえば当然か。

     また、大事な視点として、江戸時代から明治まで、日本の山林はほとんどはげ山で砂の流出が多かった。これは多くの災害をもたらしたが、現在は、戦後の植林で山は青々としているが、かえって砂の流出がすくなくなって河川床がさがったり、海岸線が後退しているという。

     そもそも、確かに、江戸時代の浮世絵をみるとバックははげ山ばかりだが、そんなにはげ山になっているとはしらなかった。確かに、燃料が木材しかなかった時代には、製鉄、塩、陶磁器の製造に大変な木材を使った訳で、そのように説明を受けると納得できる。

     また、森林は、この前の紀伊半島であったような、深層崩壊には役立たないというのも、考えればそこまで木の根が届かないから当然だが、なんとなくびっくり。

     世の中の常識に厳しい指摘をしている本。どこまであっているかわからないが、説得力あり。

  • SDGs|目標15 陸の豊かさも守ろう|

    【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/58335

  • 森林についての最新知見を得ることができた。森林による影響は正負とも国土に大きく与えている。

  • 上念司〈じょうねん・つかさ〉が『ニュース女子』で紹介していた一冊。上念の著書を読む気はないが内容を知ってピンときた。日本の国土は「約70%が山岳地帯で、その約67%が森林である」(Wikipedia)。ともすると「自然豊かな日本」という思い込みがあるが実は違う。戦前はハゲ山だらけだったというのだ。
    https://sessendo.blogspot.com/2021/04/blog-post_7.html

  • 江戸時代より日本の多くの山は、禿山だった。

    それに至る文化や制度、歴史的な変遷をこの本はまとめています。それに付随して、土砂災害がどのように発生してきたのかを論じてもいます。

    また、禿山(木材の過度の利用)の反省からの治山の考え方がまとまった後で、現代の山の様相についてもまとめています。

    分かりやすかった。

  • 我々の分野でも森林について学ぶことは大切だと痛感できます。

  • 結局、人間がいる以上、すべてをコントロールしなければいけない。

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著者プロフィール

東京大学大学院教授、日本林学会会長

「2002年 『地球環境時代の水と森』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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