文明を変えた植物たち コロンブスが遺した種子 (NHKブックス)

著者 :
  • NHK出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140911839

作品紹介・あらすじ

一四九二年、コロンブスが大西洋航路を発見したことをきっかけに、さまざまな植物がヨーロッパ大陸に伝来した。そのいくつかは、世界の発展になくてはならないものであった。なかでも、ジャガイモ、トウモロコシ、カカオ、トウガラシ、ゴム、タバコの六種の存在は、私たちの生活を、豊かで潤いのあるものに激変させたといえる。その伝播の軌跡を縦軸に、食文化や政治、産業などを横軸として、小さな種子たちが、私たちの文明を大きく押し上げ、現代の社会や文化を築いてきた歴史をひもとく。

感想・レビュー・書評

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  • 一気読み。
    ジャガイモ、ゴム、チョコレート(カカオ)、トウガラシ、タバコ、トウモロコシの6種について、「新大陸」におけるその歴史と「旧大陸」への伝播、与えた影響について概説している。勝因はまず何よりも、テーマをこの6つに絞り、1つ1つに1章を割いて丁寧に綴ったこと。そして、その際の朴訥と言ってもいい筆致だろう。
    著者は大手製菓会社で開発部長まで昇りつめ、関連会社の社長も経験した人で、現在の肩書きは「食文化史家」。大学などへの勤務歴はないようなので、それこそ「道楽学者」なのだろう。
    それかあらぬか、文章が非常に読みやすい。といっても「面白い」ところがあるわけでなく、書きぶりはむしろ真面目である。真面目に、淡々と、丁寧に、事実関係を綴っていく。その合間に著者の意見が差し挟まれているのだが、これが非常に「地に足ついた」と言おうか、いかにも企業で大成した人らしい抑制された良識と常識が感じられるのだ。結果、本書はとても読んで楽しく——かつ、読んでいていやな気持ちにならない良書になっている。文句なしにお薦めである。

    2017/7/21読了

  • コロンブスが歴史の教科書に残る理由が理解できた。

    その理由とは、コロンブスのアメリカ大陸到達によって、世界が明らかに変わり始めたからである。

    つまり、時代の転換点だと言って良い。

    ジャガイモしかり、ゴム、タバコ、梅毒、奴隷貿易しかり。今に至るまで影響を与え続けている。

  • ☆ジャガイモ、ゴム、チョコレート、トウガラシ、タバコ、トウモロコシ
    ☆思ったよりいい本。いろいろ観点から調べてある。

  • 1492年黄金とスパイスと求めて航海していたコロンブスの新大陸発見により、多くの植物がヨーロッパに運ばれました。
    ここでの主役は『じゃがいも』『ゴム』『チョコレート』『唐辛子』『タバコ』『トウモロコシ』です。

    それらはヨーロッパで、歴史に翻弄され、文化をつくり、その土地ごとにアレンジされ、ヨーロッパのみならずアフリカや東南アジアで栽培され、移民とともに北米にわたりその子孫がアメリカの大統領になったりもしました。

    酒井信雄さんは1935年生まれ、明治製菓の偉いかたで、食文化史研究家です。
    この10月~12月NHK第二の『カルチャーラジオ歴史再発見』という番組で『新大陸の植物が世界を変えた~コロンブスは何をもたらしたか 』というテーマで語っているのをたまたま聞いて面白かったのでこの本を読みました。ほとんど同じと思われます。読むのが大儀なら、ぜひラジオをお聴きください。優しいおじいちゃんという感じ。http://www.nhk.or.jp/r2bunka/ch02/index.html

  • k

  • ジャガイモ、ゴム、チョコレート、トウガラシ、
    タバコ、トウモロコシの歴史。
    チョコレートとタバコの項目が面白かったです。

    フランスで始まった嗅ぎたばこ
    嗅ぎたばこは細かい粉を鼻から吸い込むからくしゃみが出るらしい。
    だから当時は相手への嗅ぎたばこの勧め方から、最後のくしゃみまでの
    一連のしぐさを優雅に行うための作法があったと・・
    くしゃみに優雅もなにもあるのかと思わず笑ってしまった。

    引用、参考文献にもいろいろ興味深い本がありました

  • コロンブスはイスラム文化圏を通らずにアジアからスパイス類や黄金類を持ち帰るために西へのルートで航海し、アメリカ大陸に到達した。その大陸からさまざまな植物がヨーロッパ大陸に伝来した。世界の発展に貢献したジャガイモ、トウモロコシ、カカオ、トウガラシ、ゴム、タバコについて学んでみませんか。

  • 新大陸からもたらされた植物がヨーロッパの栄養状態を改善し、数々の文化が花開くようになっていく。

  • 中南米から欧州に渡り、欧州の近代を変えたジャガイモ、トウモロコシ、カカオ。特に、肉の生産はトウモロコシとジャガイモなしには成立しなかった。近代の成り立ちを教えてくれる。

  • 新大陸から持ちこまれた6つの植物がヨーロッパをはじめとした旧世界にもたらした影響がテーマ。改めて、アメリカ大陸の植物が人類の生活に果たした役割が大きいことを知らされた。そして、トウモロコシがアフリカでは主食として、先進国では飼料として利用されているという実態に考えさせられる。

    ヨーロッパでは、ジャガイモによって、家畜を越冬させるための十分な餌を確保できるようになった。そのため、秋の終りに一斉にブタを殺して肉を塩漬けにする必要がなくなり、季節を問わずに新鮮な肉を食べることができるようになった。ジャガイモは寒冷地でも育ち、同じ面積の畑から得られるエネルギーは、麦類の4倍以上ある。

    天然ゴムの樹液が採取されるパラゴムの原産地はアマゾン川流域。19世紀までの取引の中心だったマナウスは世界で最も豊かな街だった。パラゴムの種子はイギリス政府の要請を受けた探検家によって密かに持ち出され、東南アジアに栽培された。天然ゴムの80%はタイヤに使われており、飛行機のタイヤとコンドームは合成ゴムが敵わない分野。

    カカオの木の原産地はアマゾン川上流域。カカオ豆をローストして砕き、殻と胚芽を除いたものがカカオマス。ココア粉は、カカオマスに含まれるカカオバターの3分の2を絞りとったもの。カカオマスに砂糖とバニラを混ぜ、カカオバターを加えたものが固形チョコレート。

    トウガラシは、BC8000〜7500年頃にペルーのアンデス山脈で栽培されていた。世界に広がったアンヌーム種はメキシコが原産。ブラジルで栽培されていたアンヌーム種をポルトガル人がアフリカやアジアに伝え、それ自体にうま味が欠ける野菜の多い貧しい人々の食生活にアクセントをつけるものとして広がった。中国料理の中でもトウガラシが好まれているのは、昔からカラシやサンショウなどの辛味が使われていた四川料理。タバスコ・ソースは、岩塩と穀物酢を加えて長期間熟成させたもの。日本にも16世紀半ばには伝わった。しかし、素材の味を生かすために、ねぎ、セリ、シソ、ミョウガ、ミツバなどの味や香りが控えめな香辛料を好む食文化を持っていたため、なかなか入り込めなかった。

    ペストの流行時には、タバコが特効薬であるという説が広まり、子どもも吸うことを強いられたほどだった。

    トウモロコシは、デンプンや繊維質の生産性が非常に高い。種子の量に対する収穫量も高く、一粒の種子から800粒を収穫することもできる。様々な気候に適応しており、広い地域で栽培可能。ただし、含まれているタンパク質のアミノ酸価は低いため、副食でタンパク質を補う必要がある。アフリカでは、新大陸に運ぶ奴隷たちに船内で与える食料を得るために栽培が始まり、地域の人々にも広がった。アメリカでは、生産量の45%が家畜によって消費されている。日本でも、輸入トウモロコシの70%が家畜や家禽向けの配合飼料の原料となっている。残りの22%はコーンスターチ(水あめ、異性化糖、ブドウ糖)の原料、7%はコーングリッツ(醸造、製菓)。配合飼料の50%前後がトウモロコシで、ダイズ粕13%、コーリャン5%が続く。日本人は、米と小麦を合わせた量とほぼ同じトウモロコシを肉に変換して消費している。青刈りトウモロコシの植物体すべてを裁断して、サイロで1か月くらい乳酸発酵したものがサイレージと呼ばれる飼料。

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著者プロフィール

1935年 神奈川県に生まれる。1958年 東京大学農学部農芸化学科卒業。明治製菓(株)食品開発研究所室長、同食料生産部長、愛媛明治(現四国明治)(株)社長を歴任。現在 食文化史家 ※2019年2月現在
【主要編著書】『文明を変えた植物たち コロンブスが遺した種子』(NHK出版、2011年)

「2019年 『日本人のひるめし』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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