- Amazon.co.jp ・本 (270ページ)
- / ISBN・EAN: 9784140910405
作品紹介・あらすじ
世界を巻き込んだ日本、ロシア両帝国の激突。しかし、凄惨な戦闘の陰で両国は捕虜を厚遇した。その真実に秘められた両国政府の思惑とは。世界戦争のはしりといわれる日露戦争が終結して一〇〇年。新たに発掘された一級史料を基に、各種資料を渉猟し両国の旧俘虜収容所を訪ね、日露戦争の意義と影響を見つめ直す。これは、長く膠着した日本とロシアの関係史に新しい光を与え、進路を示唆する新たな日露戦争史である。
感想・レビュー・書評
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日露戦争において、ロシアに囚われた日本人捕虜と、日本に囚われたロシア人捕虜の双方を丹念に追いかけた一書。「労作」と呼ぶに相応しい気合の入った本である。よくもここまで、記録を残した捕虜について調べたものだと感心するほかない。
一言で言ってしまえば、日露戦争で囚われたロシア人捕虜は日本では非常に優遇されていた。なぜ優遇されていたかというと、それが国際法に定められていたからで、日本は国際法の遵守に努めることで文明的であることの証としようとしたからである。
ただし、日本が全ての捕虜を優遇していたかというと、そうでもない、というところまで踏み込むところにこの本の労作たる所以がある。サハリンでの180名の捕虜虐殺にもきちんと触れ、さらに返す刀で、この虐殺事件のみを「曲解」して取り上げて日本の捕虜取り扱いを非難したイワン・コワレンコを論難している。
著者はいわゆる歴史学の出身ではないだけに、日露戦争における捕虜取り扱いの歴史的意義の評価については一般的、という感じもしないでもない。だけど、史料に基いて書き記そうする実証的態度が一貫しているがゆえに、なんというか圧倒されてしまうのである。こういう本が書ける人はすごいな、と思います。