人類の選択: 「ポスト・コロナ」を世界史で解く (NHK出版新書 632)

著者 :
  • NHK出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (227ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140886328

作品紹介・あらすじ

コロナ禍を歴史的に分析し、今後の国際情勢を予見する「分析家・佐藤優」の集大成!

連帯か孤立か、独裁か民主主義か──人類はコロナ禍を経て、どんな選択をしていくのか。各国を襲った新型コロナウイルスの影響で、世界はいま、さまざまな局面で転換点を迎えている。本書ではまず、感染症が時代をいかに動かしてきたかという観点で、世界の現状と歴史を比較・類型化し、詳細に検討していく。そして、その歴史的知見を手掛かりに、インテリジェンスに長けた著者ならではの視点で、アメリカ、中国、ロシア、英国、EU諸国、イスラエルなどを中心として、日本を含む今後の国際情勢を予見する。危機の時代の宗教や哲学など、人間の内面的変容にも言及しつつ、これから来るべき人類の未来を解いていく。

感想・レビュー・書評

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  • ほとんど同時期に刊行された朝日新聞出版『危機の正体
    コロナ時代を生き抜く技法』を一週間前に読みました。
    佐藤優さんのコロナ禍新刊をずっと楽しみにしていて
    どちらもとても面白かった。
    もちろんほんの少しは重なった内容もありますが
    それでも、本当にすごい、さすが。
    (だけど、焦っていたのかな?
    35頁ギリシアがギシリアになっていました。)

    まずアナロジカルな視点を重視して、
    感染症が歴史に及ぼした影響を概観。
    アナロジー的思考とは、類似性に着目すること
    すなわち、ある状況を、別の時代・別の状況との類比に基づいて理解することです。
    それが「ポスト・コロナを世界史で解く」の意味です。

    それに対してタイポロジー的思考というのがあります。
    タイポロジーとは「類型」のことで
    複数の状況を典型的なタイプに分けて理解することが
    タイポロジー的思考です。

    ここで、「リスク(予見可能な不都合な出来事)以上クライシス(予見が難しく、生き死にに直結するような危機)未満」の危機という補助線を引くことで、各国の対応をタイポロジカルに考察する視点を獲得できるのです。
    一見、多様で比較するのが困難に見える事象群も、適切な補助線を引くことで類型的に考察できるわけです。

    わかりにくい説明になってしまいましたが
    しかし、この本ではこの数か月私たちがテレビや新聞で目にしていたさまざまなニュースを佐藤優さんが明快に解説していきます。

    コロナはもちろん、「白人警官によるアフリカ系アメリカ人殺害事件」「ロシアで第二次世界大戦終結の日がこれまでの9月2日から一日遅れの9月3日になったこと」「GAFA対国家の行方」「中国による香港への国家安全法制導入」など。

    そして私たちのすべきこと。
    本を媒介にして、他者と対話し、他者の固有性を尊重しながら、自分の世界や内面を見つめ直していく。
    一人ひとりの中に友愛をつくっていく。
    友愛があってはじめて、自由と平等をともに人びとが享受できる制度が機能する。
    個のレベルで人間関係を構築することで
    立ちどまって考える機会を増やしていく。

  • 筆者は、このコロナ危機は『本当の幸せとは何か』『人生の意味は何なのか』を問うよい機会だという。そして、その考察は人間の内面に向かうものであり、そのよりどころは哲学、宗教、歴史であろうとも言う。本書は問題提起とともに、哲学、宗教、歴史のエッセンスを盛り込んだものであり、1冊で学べることが非常に多い貴重な1冊である。

  • 2021-1-4 amazon 399-2021/09/18 読了

  • 元外交官の佐藤優が、文字通りポスト・コロナをどう生き抜くかについて分析した一冊。

    過去の歴史に照らし合わせて分析してるのは、今までの本と違って腑に落ちた。

  • 大変為になる鋭い考察が書かれていた。
    最近のニュースは、”自己の心を覗きこみ過ぎると魂がインフレーションを起こし、ロマン主義的なナルシシズムや暴力が生まれてしまう”という記述の通りだと思う。

  • 2021/11/04
    歴史において感染症がもたらした様々な影響を振り返るとともに、それらの経緯を踏まえつつ現在の問題点と近未来への選択について論じた内容。
    感染症という危機によってその当時の世界の問題が浮き彫りにされ、それに対する為政者の対応で世界の歴史が動いた様子がいくつかの事例で語られるとともに、為政者のあるべき姿が平時と危機の場合とでは異なっていることも示される。
    それを踏まえて現代を見るとやはり世界・社会が抱えていた歪みや問題点がコロナ禍によって顕在化して、それらへの対応が国によって異なることも明らかになった。
    連帯か孤立か、民主主義か全体主義か…後者の方へとうごめいてきた歪みをコロナ禍を機にどうとらえるべきか、識者の意見も含めて語られているが民主主義と全体主義が決して矛盾するものではないことも説明がなされている。
    振り子が加速するのか減速するのかは判らないし、どちらが正解かも判らないが、まとめの部分でそのとおりと感じた内容を記録しておく。
    …思考停止に陥らない事、そのためには「立ち止まって考える」こと…

  • 【琉球大学附属図書館OPACリンク】
    https://opac.lib.u-ryukyu.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BC01981415

  • 読書メモ

    感染症が世界史に及ぼす影響をアナロジー的な思考で、政治や国家のあり方という文脈から解釈や気づきを与えてくれる。

    全体主義と民主主義の対立
    全体主義と情報化社会の親和性

    感染症により浮き彫りになる新帝国主義

    内面性の爆発
    個を深堀りしたところに、地下水脈のように皆がつながっているのか

  • 博覧強記な著者の手になるコロナ論。リスクとクライシスの間ってのは言いえて妙。各章末の関連図書紹介も参考になる。

  • ●ポストコロナの世界情勢は大きく変化する。従来の国際協調体制を維持することはできなくなる。しかし、その具体的イメージについては現時点では何も語れないだろう。いずれにせよ、司法権、立法権に対して行政権が優越し、人工知能技術を用いた国による監視が強まることは間違いない。
    ●コロナの封じ込めや被害の度合い、経済回復への着手と言う点で、現時点では中国に分があります。アメリカ国内に深刻な文化を抱えてしまっている。こうした点を踏まえると、被害が相対的に小さく済んだ中国は、今まで以上に勢力の拡大に拍車をかけていくでしょう。
    ●現在のEUは、ナショナリズムの抑制と言う理念と、ドイツの経済ナショナリズムと言う現実のシステムとの齟齬が露呈している状況が続いています。
    ●一国ニ制度の行方。逃亡犯条例改正案を早期に成立させた理由は、新型コロナのためどの国も内政に関心が集中するようになり、この時期なら、国家安全法制を成立させても、国際批判は少ないと考えたわけです。
    ●スウェーデンの政策。予見可能とされているリスクとは何か。高齢者の死亡率が高いと言う事です。逆に言えば福祉国家を支える生産人口は相対的にリスクが低い。生産人口の維持を優先するスウェーデンの政策は、ソフトな優生思想と言えるものなのです。
    ●新型コロナウィルスの危機は「リスク以上、クライシス未満」と言う性格

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著者プロフィール

1960年1月18日、東京都生まれ。1985年同志社大学大学院神学研究科修了 (神学修士)。1985年に外務省入省。英国、ロシアなどに勤務。2002年5月に鈴木宗男事件に連座し、2009年6月に執行猶予付き有罪確定。2013年6月に執行猶予期間を満了し、刑の言い渡しが効力を失った。『国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて―』(新潮社)、『自壊する帝国』(新潮社)、『交渉術』(文藝春秋)などの作品がある。

「2023年 『三人の女 二〇世紀の春 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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