「産業革命以前」の未来へ―ビジネスモデルの大転換が始まる (NHK出版新書 550)

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  • NHK出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140885505

感想・レビュー・書評

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  • 野口悠紀雄の本は、ハッとさせるものが多くある。
    この本は、マクロ的に見て実に 痛快な本だった。
    ビジネスモデルと社会的な要因が深く関連しているということが、
    明快に 切り取られていて、面白いのである。

    鄭和の大航海が、コロンブス、マゼランよりも
    優れた技術を持っていながら、その頃 世界の先端にあった中国の
    社会に影響を与えなかったのか?
    その頃中国は、印刷技術、火薬の技術、羅針盤などの一流の技術があった。
    マゼランも、コロンブスも、金儲けを企てて、航海に出た。
    そのために、略奪もしたのだ。
    鄭和は、皇帝の使節として、朝貢を目的とした。
    鄭和の船が 120m近くあり、数十隻で、3万人から4万人を運んだ。
    コロンブスもマゼランも 20mくらいの小さな船だった。
    生命をかけて、リスクを犯したことが、大きな意味を持っている。
    スペインが、海外との交易で、お金を集め、大きな船団を作った。
    しかし、イギリスは海賊行為で、スペイン船から収奪していた。
    そのほうが、効率的だったのだ。
    そして、イギリスが 世界の覇者になったという分析は、
    流石に ジェントルマンを名乗るイギリスらしい取り組みだ。
    アヘン戦争なるものも、イギリスの横暴が良くわかる。

    日本は、「ものづくり」を最優先に考え、会社も教育もそれに対応する。
    評価は、いかにいい品質のもを作るかが全てだった。
    そのための人材教育が、いまだに主流である。
    集権的、垂直統合、大組織のビジネスモデル。
    カンバン方式などは、その最たる方法論でもある。
    しかし、アップル、マイクロソフト、グーグル、アマゾン、Facebookは
    分権的、水平統合ーファブレス、小組織の展開と
    大きな組織になっても、研究開発費を惜しみもなく使っている。
    これからは、フリーランスが重要なのだが、
    日本の税制では、会社員の方が優遇されていて、
    フリーランスは、不利な状況にあるという。
    これからは、フリーランス連合みたいなものがいるのかもしれない。

    今の中国のダイナミックな動きは、日本と比べて
    明らかに優位に立っている。
    なぜ、中国が そこまで輝くようになったのかは、
    十分に検討する価値があると思われる。
    いやはや、この本は 目からの鱗の 経験を味わうことができた。

  • 産業革命以降は、スケールを活かした大企業モデルへが成功の鍵であったが、ブロックチェーンという革新的な技術のおかげで、個人個人がダイレクトにつながりビジネスを展開する時代になる。日本は相変わらず産業革命モデルで成功するための社会構造から変換できておらず、このままではさらに停滞、後退が進む可能性がある。
    著者のデータに基づく論理はいつも明解で、日本がデジタルトランスフォーメーションに遅れていく現実をあらためて認識させられた。働き方改革なんかも中途半端だし、モリカケ問題や官僚の不祥事のニュースなんかをみていても、こんなことやっている場合じゃないのに、って思います。

  • 2018.8.5 amazon 399円

  • 開発目標9:産業と技術革新の基盤をつくろう
    摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB50100388

  • AIやブロックチェーンなどの技術革新によりビジネスモデルの大転換が起こっていることを説いた本。

    組織が大規模化や統合することで効率化を図ってきた「産業革命以降のビジネスモデル」から、小組織や個人への分権化が進む「産業革命以前のビジネスモデル」への先祖返りが起きるのではないかと、本書は推測しています。

    先祖返りのキーワードとなるのが、AIやブロックチェーンなどの技術革新です。
    これからの世界は技術革新によってどのように変化していくのかを分析し、日本は大変化にどう対応すべきかを示しています。

  • <目次>
    はじめに
    第1章ビジネスモデルの先祖がえりが始まった
    第2章産業革命は何を変えたのか
    第3章IT革命がフロンティアを生みだした
    第4章GAFAという勝者たち
    第5章ユニコーン企業は次の勝者になれるか
    第6章未来をきずくAIとブロックチェーン
    第7章中国ではすべての変化が起っている
    第8章では日本ではどうすべきか

    P21大航海時代から学ぶことができるのは、まず何よりも、
     未知のフロンティアを探しだそうとするパイオニアたちの
     熱意と努力だ。
    P47GAFAは~モノを作っているわけではない
    P109やりたいことはたまたま社会の求めていることに
     合致しそれが豊かさを生んだのだ
    P117アイデアは、簡単に出てくるわけではない~個人の
     創造性を引き出す労働環境を整備することが、重要だ

    未来を開く鍵は、産業革命よりも前の時代に見出すこと
    ができる

  • 世界は産業革命以前の社会へ 「大航海時代」官僚制組織より個人がリスクを取る社会
    1.中国は世界一の超大国・・・技術・経済・軍事 官僚制組織が確立ゆえに停滞500年へ
      ヨーロッパも、ポルトガル・スペインは資源収奪、
      イギリス・オランダは株式会社 通商による産業発展へ

    2.産業革命 蒸気機関を用いた鉄道によるフロンティアの拡大 海と陸→空→情報
      大規模組織 垂直統合型 鉄道 鉄鋼業 石油産業 自動車産業 
    3.IT 電信 電話 無線 コンピュータ PC
    4.GAFA Google Apple Facebook Amazon
    5.ユニコーン企業 シェアリングエコノミー フィンテック
    6.AI ブロックチェーン
    7.中国では全ての変化が同時に進行している
    8.日本 産業革命には対応できたが 
         IT革命以降には立ち後れ

    Appleのビジネスモデル 製造業とサービス業が曖昧に(101)
    労働者の在り方の変化(119)
     軍隊兵士(製造業)から創造者(AI)へ 画一性から多様性へ
    シェアリングエコノミー 
     稼働率を引上げることにより社会的効率が高まる
     管理部門が不要になる コスト効率化 中抜き exタクシー会社不要
     参入規制 既得権保護 社会の停滞

    スマートコントラクト
     エストニアはブロックチェーンによる公証サービス

    ブロックチェーンは労働ではなく、管理・経営を代替する(186)
     この変化を日本のエリートホワイトカラーは受入れられるだろうか?
    日本の閉塞感 旧世代の没落を許容できるか
     アベノミクスは結果的に富裕層を没落させる

  • その時代のフロンティアに挑んだ人たちが大きな富を得た。大航海時代の船、産業革命時代の垂直統合型大企業、IT革命時代の素早い水平分業企業。大企業による組織の時代から、フリーランサーの時代へ。フロンティアで力を発揮できる経済システムを作り上げたところが勝つ。

    ビジネスモデルもそうだけど、何が良いかという意識も、日本はまだ産業革命型企業にあるということを再認識しました。変わりつつある時代を意識すべし、だ。

  • この逆説的な書名の示すところは、ダニエル・ピンクの「フリーエージェント社会の到来」における「人々は、組織から離れ、独立自営業となり、肉屋と燭台職人の時代になるだろう」から来ている。

    イノベーションについて産業革命以前から歴史に沿って紐解いていく。大航海時代にイギリスはなぜスペインを追い抜けたのか?産業革命で鉄道から始まる、鉄鋼、石油、自動車というアメリカの「金ぴか時代」。電信、電話からコンピューターの発明とIT革命。インターネットはGAFAの時代を作り、ビジネスモデルは大きく変わり、ユニコーンが生まれる。そしてAIとブロックチェーン。中国の発展。こうして歴史を追うと大きな流れが見えてくる。結局成功するのはその時代時代に合わせてビジネスモデルを変えることができた企業だ。

    日本が取り残されている要因は社会制度にある。企業においても教育においても、システムが時代に合わせて変わっていかなければならなかったのに、成功体験、抵抗勢力が要因となって変革できていない。

    今必要なのは、一人ひとりの変化だ。そのためにはまず今起きていることの本質を正確に把握すること。自分にしかできない価値をいかに生み出すかを考えることだ。

  • 全体を俯瞰

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著者プロフィール

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業。64年大蔵省入省。72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授(先端経済工学研究センター長)、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て2017年9月より早稲田大学ビジネスファイナンス研究センター顧問。専攻はファイナンス理論、日本経済論。ベストセラー多数。Twitterアカウント:@yukionoguchi10

「2023年 『「超」整理手帳 スケジュール・シート スタンダード2024』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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