人類の未来―AI、経済、民主主義 (NHK出版新書 513)

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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140885130

感想・レビュー・書評

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  • 知りたいことを、かじりたい時
    便利な入り口としての新書。

    世界の賢人はどんなこと考えてるんだろう?
    と思って読んでみました。
    真逆な意見が載っていたりして
    難しい…けど、それぞれに真剣なのは
    伝わってきたかな。

    『リングワールド』のアイデアのもと
    ダイソン・ツリーを提案した
    ダイソンさんの話が興味深かったです。

  • 国際関係、グローバル経済、テクノロジーから建築や気候変動モデルまで、ノーム・チョムスキー、レイ・カーツワイルなど5人の識者へのインタビューで構成された現状分析からの未来展望、温暖化やシンギュラリティなどその見解に識者の間でも見解が違うのが興味深いところです。と言いつつもこれで未来の方向性をはっきりと打ち出しているわけでもなく、分かったのは先の見えない不確実性の時代であるということ、努々分かりやすい物語で感情に訴えて来るやつを信用してはいけない、丹念に事実を拾い集めて自分で考えるしかないのだな。

  • すごく面白い、チョムスキー以外

  • キンドル月替りセールで安くなっていたので購入。
    象を調べるアリの1番先頭にいる何人かの著名な人物に象について聞く本。細かな理論ではなく、何をどう考えているかをわかりやすい言葉で説明されており、内容以上に分かりやすいし、気付きも与えてくれる。科学者である方々が、文学やビジネスについても敬意を持って語っている点はありがたい。

  • 冒頭「2016年のアメリカ大統領選挙の結果は、東海岸や西海岸そして都市部の多くの人々にとって、晴天の霹靂とでも言うほどの驚きだった。」
    末尾「ですから、子供たちには、サイエンスをやるためにはある種のスーパー人間である必要などまったくなくて、普通の人がやれるんだと思ってもらいたい。」

    『知の逆転』、『知の英断』に続くシリーズ第三弾。『知の英断』は政治家とか文系な感じだったけど、今回はまた科学者たち。

    カーツワイルの、指数関数的な成長という考え方は、当てはまるものも当然あるのだろうけど、かといって話のすべてを受けつけらない。モデルや論理に含まれていないものがあるだろうと思ってしまう。

    チョムスキーやダイソンの方が好感が持てる。

    世界を代表する賢人たちの言葉に触れて、とても刺激になる。たとえば「シンギュラリティは来るのか?」に対しても意見が全然正反対だったりして興味深い。

    やっぱりこのシリーズはいい!

  • 吉成真由美さんの対談シリーズ?第三弾かな。
    今回もまた示唆に富んだ様々な示唆やファクト、最先端事情に触れることができる。
    日常生活を送る上で知る機会がなかなかない最先端の巨匠たちの意見に触れられるので、なかなか興味深い。興味が出たらそこから深掘りしてけばいいように思う。

    P.63 チョムスキー
    日本がNATO軍と共に「集団的自衛権」と呼ばれるものを講師するということは、すなわちイラクや中東の国々を破壊するということを意味するのです。リビアの破壊や、中央アメリカの国々の政府軍によるテロ行為などに加担するということになります。「自衛」とは言っていますが、そんなことを言い出したら、なんでも「自衛」でしょう。
    ヒトラーがポーランドを侵略した際に使ったのが、「自衛」という理由でした。「無謀なポーランドのテロ行為」からドイツを「自衛」するということだった。チンギス・カンもおそらく、自分の行為は「自衛」だと言ったでしょう。「自衛」という言葉は無意味です。単なる侵略と暴力のことだ。

    P.66 チョムスキー
    過去の外交関連の機密文書を調べてみればわかることですが、非常にハッキリしているのは、政府は、国民から自分達を守るために、監視と眺望活動を行なっているということです。国家の機密を守るというケースも無きにしも非ずですが、活動のほとんどは、政府が国民から自分たちを守るために行われているのです。
    ペンタゴン・ペーパーズ(国防長官ロバート・マクナマラの指揮のもとに作成された、一九四五年から六七年にかけての、ベトナム戦争の詳細な経緯の記録)の例を見てみましょう。あれがニューヨーク・タイムズにリークされて、機密漏洩だと糾弾されたわけですが、あの中に記録されていたことはすべて、民主主義国家であるならば、決断を下すための判断材料として、アメリカ国民が当然知っておくべきだった。ところが、国民には秘密にされていました。ロシアや中国や北朝鮮に対して秘密にしておくべきことは、何も書かれていなかった。自国民に対して秘密にしておきたことが書かれていたのです。

    P68 チョムスキー
    「正当な戦争」というのは、勝者の論理です。勝者は自分たちの犯罪を償う必要がなくて、敗者は償わなければならない。
    東京裁判は、言及するのもばかばかしいほど完全なる茶番ですから、まったくの論外ですが、例えばニュルンベルク裁判の例を見てみるとーーあれはおそらく、最もリーズナブルな国際裁判であったと思いますがーー、そこで糾弾された犯罪はなんであったのか。これは非常に盟約です。もしドイツが罪を犯して、連合国側がその罪を犯していなかった場合は、それは犯罪である、と。しかし、もしドイツが罪を犯して、われわれも同じ罪を犯していたら、それは犯罪にならない、と。これがニュルンベルク裁判の論理でした。(中略)当時のアメリカの検察側弁護士テルフォード・テイラーは、「戦争犯罪とは、自分たちがおこ朝津、相手側が犯した罪のことである」と皮肉を込めて言っていますが、これが「勝者の正義」と呼ばれているもので、常識なのです。

    P.69 チョムスキー
    イスラエルの歴史家ユヴァル・ノア・ハラリによると、われわれはおそらく最後のホモ・サピエンスであり、あと一〇〇年ないし二〇〇年しないうちに、われわれは自らを滅ぼすか、あるいは、テクノロジーを使って無期的なポスト・ヒューマンに発展していくだろう、と。
    過去四〇億年、生物は「自然選択」によって進化してきて、生命は有機的(オーガニック)な存在にとどまっていたけれども、今後は初めて、インテリジェント・デザイン(創造説が説くような「万能な存在」というものになった人類が、自らをデザインすること)によって進化行くことになり、ホモ・サピエンスとポスト・ヒューマンとの合田には、越えることのかなわぬ差が生じていって、約五〇%にも上る人間が職を失い、役立たずになるだろう、と彼は予測しています。

    P.83 カーツワイル
    人と人のつながりや、自然に親しむことが人間を最も幸せにしてきたのだとしたら、ポスト・ヒューマンは果たして幸せになれるのだろうか。貧しければパン一枚で、至福の時を手に入れることができるが、生活が豊かになれば、もうそれでは十分幸せにならない。かといって、貧困から脱出したら幸せも遠のいてしまうかといえば、まったくそんなことはなく、今度は違った幸せを手に入れることが加納になる。だから、ポスト・ヒューマンになれば、現在はまだ予想ができないような、まるで異なるそれなりの幸せというものが出てくるのかもしれない。あるいは「将来人間は本当に幸せになれるのだろうか」という問いかけそのものが、感情がコントロールされたポスト・ヒューマンにとっては、無意味なものになっていくかもしれない。

    P.86 カーツワイル
    すべてのテクノロジーではないですが、情報テクノロジーに関して言えば、価格と能力については、将来が非常にハッキリと予測できる。わかったのは、それが指数関数的に変化していくといことです。
    最初に作ったグラフは、コンピュータのコストパフォーマンスのグラフでした。(中略)非常に予測可能なスムーズな線を示すことになりました。しかも第一次世界大戦や第二次世界大戦、大恐慌、といった歴史上の一大事がグラフに何の影響も与えていない。二〇〇八年の経済危機で、この成長がスローダウンしたかというと、まったくそんなことはないんですね。何があっても非常にスムーズな傾きを維持している。

    P.115 カーツワイル
    マービン・ミンスキーによると、「ディープ・ブルー」や「ワトソン」が、それぞれチェスチャンピオンやジェパディ!のチャンピオンを破ることができたのは、それらが非常に領域特定的なタスクであったからで、人間にとっては難しいけれども、コンピュータにとっては比較的やさしいだったからだと。
    逆に、例えば枕を枕カバーに入れるといった人間にとって容易なタスクは、コンピュータにとって苦手なことなのだと。

    P.141 カーツワイル
    数千年前といわず、わずか数百年前でも、人間の生活は悲惨なものでした。文学や哲学書を紐解けば一目瞭然です。トマス・ホッブス(一七世紀半ばに『リヴァイアサン』を緒したイギリスの政治哲学者)は、人間の生涯は短く惨めで、災害が多く、疾病が蔓延し、貧困にみまわれていた、と記しています。細菌感染が起こっても抗生物質などなく、社会保障もないので、一家が破綻して離散の憂き目にあうのが常でした。人生は悲惨だった。
    まだすべての病や苦難が校区服されたわけではないですが、テクノロジーの発達によって多くの障害を克服してきました。もちろん武器開発など、テクノロジーのネガティブな面が拡大することも確かですが、私自身は、テクノロジーのポジティブな面がネガティブな面を上まっていると考えています。ポジティブ面を伸ばしながら、同時にネガティブな面を縮小していくことが、これからの課題です。

    P.153 ウルフ
    スイスのダボスで開かれた世界経済フォーラム(二〇一六年)で、世界経済を俯瞰して公平に語れる人は誰か、といく人かのエコノミストに尋ねてみると、一様に名前が挙がったのがウルフ氏だった。同時に、経済モデルは予測にまるで役立たないし「経済は錬金術であって、サイエンスじゃない」と彼らが口にするのも聞いた。

    P.163 ウルフ
    「浅い統合」と「深い統合」のジレンマがあります。単に参加国が集まって、話し合いによって様々な規則についての多国間協定を結ぼうとしても、国々の規制基準がばらばらでは、もう何も決まらなくなってきているため、このような「浅い統合」ではなく、地域を限定して、その中では規制基準をしっかり統一しようという「深い統合」を目座右掌になってきたのです。しかし「深い統合」をするには国の壁が障害となる。
    大戦後われわれは、標準的な国境措置として、関税障壁を低く抑えてきました。ただ一つの例外は、日本でよく知られている通り、農業です。他の産業では従来の関税障壁はほぼほとんど取り払われています。
    ますます重要になってきているサービス分野では、従来の良いでの国境障壁は存在してきませんでした。あったらサービスが提供できなくなってしまいますから。その代わり、サービスも含めたあらゆる分野で、交易の障害となってきているのは、規制です。これらの規制はそれぞれ妥当な理由で設定されているわけですが、国によってまちまちで、それが交易の大きな障害になってきた。
    ではどうするか。「相互承認」(mutual recognition)と「規制の緩和」(regulatory harmonization)という二つのアプローチがあります。「相互承認」というのは生産国の規制基準に見合う外国製品は受け入れるということです。この場合の規制基準は、自国の法律で決めたものではないから(他国が決めたものを受け入れることになって)民主主義と相いれないですね。他方で「規制の調和」とは、共通の基準で合意することです。

    P.173 ウルフ
    アルゼンチンが実際に破産したかどうかというのは、興味深い問題です。破産というのは法律で決められたある状態を指すというのが私の理解です。契約上の負債を払わない、あるいは払えない状態を指す。ですから、主権国家が破産するという場合、彼らは本当の意味で支払い不能になったということではないですね。どうしてもというなら払えるんだけども払わない、つまり政治的な判断です。(中略)そうなると普通次に起こるのは交渉です。

    P.198 ウルフ
    世界的に見ても主権国家の分裂がパターンとなっているでしょう。人々はある程度自分たちに似てる人たち、自分達を代表してくれる人たちによって統治されることを望ので、世界のほとんどのちいきにおいて、小国ができてくることになり明日。民族をもとにした政治的視点をもって国を作ると、それぞれの国はとても小さくなる。日本にように、大きな国でほぼ単一民族というケースもあります。中国はもっと複雑ですが、似たようなケースです。(中略)小国は大国に比べて有利な点があるか、ということですが、民族的にわりあい同質の国は、政府の正当性を受け入れやういですね。これは国の大きさというよりも、国内の人々がどれだけ多様性をうまく処理できるかにかかっています。
    大きければいいというものでもないことは明白です。文化的に同じような水準のヨーロッパの国を比べてみれば、大きな国が小さな国より豊かだということはないどころか、小さな国が交易や国際分業などによって見事に繁栄することは、十分に可能でかることがわかります。(中略)小国が成功するにはいくつかの条件が必要です。まず一つ目は、世界市場へのアクセスがあること、世界のオープン・システムの一部になっていることです。ですからもしグローバライゼーションが崩壊した場合、小国は国外市場に頼らざるを得ないため、被害がより大きくなります。
    二つ目は安全保障の確保です。小国は小さすぎて、自国の独立を守るための安全保障を、自ら十分に確保することができない。

    P.203 ウルフ
    ツキジデスが指摘したように、民主主義は脆弱で、特に経済が弱っている時には、先導的な文言に左右されがちになり、デマゴーグの台頭を許してしまう傾向にあります。今日、人々はツキジデスの時代よりはるかに高い教育を受けていますが、それでも(デマゴーグを排除するには)十分ではない。メディアにも大きな責任がありあす。われわれの憲法制度には、古代アテネにはなかった厳格なチェック&バランスの機能があります。今後一〇、二〇、三〇年の間に民主主義が時代の流れにうまく適応していけるかどうか見守っていきたい。

    P.258 ダイソン
    「私は異端者であることを誇りに思っている。世界は、通説に挑戦する異端者を常に必要としている」と語るダイソン氏は、通説やドグマに惑わされず、様々な問題に対して常に独自の視点を提唱してきた。
    例えば、気候変動問題については、気候変動があることは認めるが、気候モデルが脅すほどひどくはないし、何より気候変動研究がファナティックかつ政治的になってしまって、いかなる批判的研究も受け入れないという状態であることに対して、強く批判している。気候変動については、モデル構築ではなく地道な観測研究がなされることが重要であると。

    P.271 ダイソン
    宗教は、サイエンスよりもずっと深いルーツを持っていると言えるでしょう。歴史的に見ても、はるか昔から人間に浸透しています。宗教はそれぞれの時代のモラル形成に重要な役割を果たしてきました。われわれには、何らかのルールに沿った、その時代の合意に基づく行動のパターンというものが必要です。宗教は、ルールを提示するための、強力な方法でした。一方で、(宗教関係者や王族・貴族といった)宗教と結びついた個人に過大な権力を託すことにもなってしまいましたが。
    善と同時に、多くの悪も宗教に結びついてきました。全体としてみれば、宗教はおそらく悪よりも善のほうが上回ると言いましたが、だからと言って悪がなかったことにはなりません。私自身は、宗教とは私たちの本質に深く根差した考え方である、と捉えています。私たちは計算機ではありませんから、事実よりも、物語や伝説やファンタジーというものに強く反応します。

    P.272 ダイソン
    あなたは、「世界を見る一つの窓がサイエンスで、もう一つの窓が宗教である。物事のメカニズムはサイエンスの問題であり、物事の意味は宗教の問題である」とおっしゃっていました。

    P.274 ダイソン
    あなたはバートランド・ラッセルを引いて「サイエンスは組織化された顧問センスで、哲学は組織化されたたわごとだ」とおっしゃってましたね。

    P.288 ダイソン
    過去、最も効果的に行われた軍縮は、交渉などせずに、「これらの武器は不要だから廃棄する」と言って、一方的に実行してしまうという方法です。これは一九八九年に南アフリカ共和国でなされたもので、最も成功した核軍縮のケースです。(中略)アメリカで軍縮に最も成功したのは、お父さんのほうのブッシュ大統領でした(一九九一年九月)彼は実際、アメリカの核軍備の約半分を廃棄したのです。

    P.298 ダイソン
    いじめはひどい問題です。(中略)解決策としては、子供たちをなるべく大人と一緒にいるようにして、大人たちと面白いことを一緒にやるようにする。そうして、子供同士でいじめる機会がないようにするのがいいのではないか。

  • とても示唆的な内容で面白い。
    難しい言葉もあったけど。

  • それぞれ意見の合う人、合わない人もいたが、概ね興味深く読めました。

  • 知的好奇心には溢れているが、未来のかたちはちっとも見えてこない。

  • 直感に頼らず証拠を基に考えることが大事。マーティン・ウルフ

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著者プロフィール

ノーム・チョムスキー(著) 1928年生。言語学者、批評家、活動家。アリゾナ大学言語学栄誉教授。『統辞構造論』(1957年)において言語学に「チョムスキー革命」をもたらし、その後も生成文法研究の発展を牽引し続けた。エドワード・ハーマンとの共著『マニュファクチャリング・コンセント』(1988年)では自由民主主義社会における思想統制のメカニズムを分析した。またベトナム反戦運動では中心的な役割を担い、それ以降も各地の独立メディアと協力して様々な草の根運動に協力し続けてきた。主に自国アメリカの国内外での強権主義に対して、アナーキズム思想と大量の歴史的資料に基づいて重厚な批判を展開している。存命中の学者としては世界で最も多く引用されている。ウェブサイト:https://chomsky.info/

「2021年 『気候危機とグローバル・グリーンニューディール』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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