ルポ 消えた子どもたち 虐待・監禁の深層に迫る (NHK出版新書)

  • NHK出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140884768

作品紹介・あらすじ

一八歳まで自宅監禁されていた少女、車内に放置されミイラ化していた男の子-。虐待、貧困、保護者の精神疾患等によって監禁や路上・車上生活を余儀なくされ社会から「消えた」子どもたち。全国初の大規模アンケート調査で明らかになった一〇〇〇人超の実態を伝えると共に、当事者二三人の証言から悲劇を防ぐ方途を探る。二〇一四年一二月に放送され大きな反響を呼んだ番組取材をもとに、大幅に加筆。

感想・レビュー・書評

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  • 学校がある昼間に、公園で一人遊んでいる子どもを見かけた。
    年齢は、小学生高学年だろうか。

    もし、様子がおかしいようなら声をかけるかもしれない。
    でも、たとえ痣があるように見えたとしても近くから怖い父親が出てくるかもしれない、と思ったら声をかけることもできないかもしれない。
    あなたは、声をかけられますか?
    そこで踏み出す一歩が、もしかしたらその子の明暗をわけるかもしれないのです。

    義務教育が完備されたこの日本で、教育を受けられない子どもがいる。
    社会から孤立してしまった子どもがいる。
    厚木児相の例のように、白骨化されて発見された子どものニュースは、どうやら氷山の一角のようです。
    行政を、親を、教師をただ責めるのは簡単かもしれないけれど、そうではなく、同じことを繰り返さないために、どうしたらいいのか。それこそが今求められるものでしょう。

    もちろん行政でも再発防止のための検討会は開かれたようだし、報告書も上がっている。
    でも、そこには浮かび上がってこない悲痛な声を救い上げたのが本書です。協力した子どもたちもまた、同じ子どもがもう出ないように…との想いから協力をしてくれたとのこと。報道の持つ力の強さを感じました。
    行政が児童を保護するような権限が必要なときもあれば、里親や養護施設の職員が寄り添うような優しさが必要なときもあるし、広く社会に現状を伝える報道の力だってきっと欠かせない一助なのでしょう。

    読んで改めて感じたのは、早期発見の重要性。
    子どもには、なにせ未来がある。
    私たち大人はそれを、守らないといけないんだと思います。実際のところ、誰がどこまで何をするかというのは難しいところがある。
    体調が悪くて学校に行けていない、と本人なり親が言えば、学校に行けていない現状を確認できたとしても引き下がるしかない。無理に立ち入って完全に拒否されてしまう方がリスクが高い。
    マニュアルにはできないような、個別で非常にデリケートな問題だと思うのです。だからこそ、完全な解決策はないのかもしれない。

    けれど、1つ言えることがあるとすれば、諦めないことが子どもを救う唯一の鍵になるんじゃないかということです。
    日々の生活の中で他人を気に掛ける余裕はなかなかないかもしれないけれど、少なくとも、諦めないことで救える命があるんじゃないか、と信じたい気持ちになりました。

    この本が世に出たことの意義は、非常に大きいものだと思っています。そしてこの内容が放映されたこともまた、ものすごいことです。
    デリケートな問題である故にきっとたくさんの壁があったでしょうが、こうして形にしてくれたことで私の意識が変わったように、影響を受けた人は少なくないはずです。
    プロジェクトチームの皆さま、本当にお疲れさまでした。忘れられない1冊となりました。

  • 虐待や監禁によって心身ともに傷を負った子供達の話や、なぜ親が虐待に至ったかといった話。取材を元に書かれている。
    こういう本を読むと残酷な現状を嘆くだけで何もできない自分の無力さに気づくが、まず今何が起こっているのか「知る」ことはとても大事だと思う。
    「消えた子どもたち」の背景にあるのは親だけでなく自治体、学校、施設などさまざまだ。根本的な原因や絶対的な悪は存在しないし、虐待してしまう親側にも親なりの理由があるのだろうとは思った。(例えば親自身が昔虐待されていた、とか経済的な問題とか精神疾患とか)ただ、彼ら自身の人間性が100%悪ではなかったとしても彼らがした行動は明らかに悪だ。被害者である子供たちからしたらどんな理由があろうとも傷つけられ、その後の人生のトラウマになり続けかねないことは否定できない事実なのだ。親から子への虐待に関する裁判ではなんらかの理由がつけられてかなり罪が軽くなることもあるが、子どもの人生を大きく変えてしまった以上、果たして適切な判決なのだろうかと感じることも多々ある。
    そして、親、自治体、学校、施設が単独でいくら努力したからといって一連の悲劇を止めるのは不可能だと再認識した。国の制度や社会全体の向き合い方を変えていく必要があるが、とても難しい問題だ。まずは第一歩としてこうした現状を多くの人が「知る」ことが重要な気がする。

  • 感想を述べるのが難しい。

  • 3.81/312
    内容(「BOOK」データベースより)
    『一八歳まで自宅監禁されていた少女、車内に放置されミイラ化していた男の子―。虐待、貧困、保護者の精神疾患等によって監禁や路上・車上生活を余儀なくされ社会から「消えた」子どもたち。全国初の大規模アンケート調査で明らかになった一〇〇〇人超の実態を伝えると共に、当事者二三人の証言から悲劇を防ぐ方途を探る。二〇一四年一二月に放送され大きな反響を呼んだ番組取材をもとに、大幅に加筆。』


    目次
    はじめに
    第一章 一八歳まで監禁されていた少女
    第二章 「消えた子ども」一〇〇〇人超の衝撃
    第三章 貧困のせいで子どもがホームレス、犯罪に
    第四章 精神疾患の親を世話して
    第五章 消えた子どもたちの「その後」
    第六章 自ら命を絶った「元少女」
    第七章 「消えた子ども」の親の告白
    おわりに


    冒頭
    『 はじめに ――なぜ「消えた子どもたち」は放置されるのか

    白骨化していた男の子
    二〇一四年五月末の土曜日。自宅で夕食の準備をしていた私は、流れてきたテレビのニュースに、手が止まった。
    「神奈川県厚木市のアパートで、五歳くらいの男の子と見られる白骨化した遺体が見つかりました。死後七年以上も放置されていたと見られています」』


    『ルポ 消えた子どもたち 虐待・監禁の深層に迫る』
    著者:NHKスペシャル「消えた子どもたち」取材班
    出版社 ‏: ‎NHK出版
    新書 ‏: ‎232ページ
    発売日 ‏: ‎2015/12/9


    メモ:
    『「車の後部座席でミイラ化していた男の子」
     「ケージに入れられていたため、両足の発達が未熟」
     「社会との関係を一切断たれた家庭内監禁状態。社会常識が全く身についておらず、雨が降ったら傘をさすことを知らなかった」
     「ネコの糞やオムツなどのごみが大人の腰の高さまで積み重なった隙間で幼児が眠っていた」
    衝撃的な言葉の数々――。これが、この国で起きていることなのかと、目を疑った。』60p

    『あなたが暮らす集合住宅に、隣近所に、ずっと閉じ込められている子どもが絶対にいないと言い切れるだろうか。平日の昼間に公園で遊ぶ子どもを見かけたことはないだろうか。社会にいる子どもは、自分自身も含めて社会全体で育てるという意識を持ったとき、見えるSOSがそこにあるのではないだろうか。』214p

    虐待が疑われる事案の連絡先:
    ・児童相談所全国ダイヤル
    ・24時間子供SOSダイヤル
    ・匿名通報ダイヤル
    ・子どもの人権110番

  • 18歳まで親に監禁されていた「博多事件」の壮絶な環境に言葉を失う

    なんとか自力で逃げ生き延びることができたが 彼女の心の傷はあまりにも深い

    「姿が見えない子ども」を生まないためにはどうすればよいか」

    周囲の大人の気づきや学校や行政の連携も重要だが 児童相談所だけで対応することに限界がきているのではないだろうか

    警察の早期介入により救われる命があると思うし 子どもの未来も大きく変わるとあらためて感じた

  • これは重い。虐待、ネグレクトなどで社会との接点がなくなってしまった子供達を追跡ルポ。親自身が精神疾患を持っていたり、貧困だったり、社会の闇の深さ。子供や親からのSOSの早期発見、対応が大事。見て見ぬふりがよくないなぁと反省。マイナンバーカードも一つの手なのかな。

  •  NHKスペシャルで育児放棄をされた子供たちを取り上げた特集があったようで、その取材の様子をより掘り下げて本にしている。読んでいると、こんなにひどい目にあった子供たちがいるのかと、驚いてしまう。具体的なケースを数例取り上げながら、みんなが無関心になってしまうことがいけないと説いている。

  • NHKドキュメンタリー番組の調査班が調べた、「消えた子どもたち」の実態。
    実際に虐待からのサバイバー少年少女や、子どもを隠匿した親の証言インタビューなど、当事者の生々しい声も集めている。
    しかしこうやって語ってくれるのは、救い出されある程度自分の体験を言語化し客観的に社会化することが出来た人たちである。
    年端もいかない子、死んでしまった子などは語ることもできない。
    児相の人たちも、学校の教師も、親に遠慮があるし。また施設も一杯だし、措置保護したら親との係争が続くので腰が引けている。

    はっきりしているのは、県や自治体を超えて家族を

  • 仕事柄、思い当たる箇所がいくつかあってどきりとした。
    親が子に依存してしまって登校できなくなるケースは、ままある。

    東京都文京区の取り組みが素晴らしい。6つの部署から所在不明児童へアプローチしていけるらしい。
    ただこれも、財政状況とか人口規模とか絡むんだろうなと難しさを感じた。

    個人にできることは限られているって無力感と、一歩踏み出すのは個人しかいないという有責感が残った。

  • 図書館で借りた本。学校に来ない子どもの追跡状況をルポした内容になっている。児童養護施設に保護された子ども達は、どうやって保護に至ったか?そこには貧困やDV、ネグレクト、親が精神疾患など理由は様々。一度も学校に通えなかった子もいた。心身の影響も負の意味で大きく学習も大変になりその後の人生に大きな痛手となる。子は親により環境が選択されてしまう悲しい現実。

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