アメリカのジレンマ 実験国家はどこへゆくのか (NHK出版新書)

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  • NHK出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140884645

作品紹介・あらすじ

「貧困大国」「格差大国」等、アメリカをめぐる言説はどこまで的を射ているのか。これからの外交政策、日米関係はどうなるのか。そしてオバマはどんな歴史を紡ごうとしているのか。戦後70年を機に、アメリカ研究のトップランナーが、「歴史認識」「政治」「社会」「外交」からアメリカ社会が抱えるジレンマもろとも、その実相とダイナミズムを鮮やかに描き出す。

感想・レビュー・書評

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  • 戦勝国・アメリカにとって第二次大戦とはなんだったのか。敗戦国・日本の「戦後民主主義」をより良く理解するためにも振り返ってみようというのが本書の趣旨。

    アメリカでは保守とリベラルで政府の役割に対する認識はほぼ真逆。総じて言えば「市民による積極的なガバナンスを重んじる保守」と「政治による積極的なガバナンスを重んじるリベラル」という構図がある。

  • アメリカのリベラル、保守の歴史、傾向等がわかる。読むほどに複雑な社会と考えさせられる。

    単一民族の日本人とは全く違った難しさがあり、トランプ政権の今後が非常に気がかりに感じた。

  • 2015年刊。著者は慶應義塾大学SFC教授。

     オバマが政権から去ろうとする中、アメリカはどこに向かおうとしているのか。善悪・好悪に依らず、オバマ政権下のアメリカの今を解読するべく、前史(現代史だが南北戦争まで遡る場合あり)と、大衆意識の変遷を概説しつつ、政権の個々の政策の実態を明らかにしようとする。
     具体的には、製造業不振=超資本主義の亢進、国内の格差拡大・二極化亢進。米国の内向き志向と国内対立の先鋭化などだが、この程度なら、米国の近現代政治・経済史と現代米国の病巣に関する既刊書読破で代替可能なもの。さほど新奇な内容でもない。

     精々、オバマの受動的外交の問題くらいが新奇ネタか。
     例えば、イラク撤退による空白化と治安悪化。イラン台頭の手助け?。中東に手を取られていた間、中国のアジア浸透が顕著で、米国のアジア再帰の道は遼遠。あるいは化学兵器保有問題で、シリア・アサド政権に強硬姿勢の取れなかったオバマはロシアの後塵を配することになったなど、これらは多少新奇な事実だ。また、保守化(経済自由の徹底と、文化・宗教面での締め付け)はカーター政権の減税と産業の規制緩和からスタート、というのも意外なところ。

     また、ショービジネス化が極端な選挙を支える法人献金も問題が多いな、という印象。禁止すべきと想うが、仮にそうしないなら低額で上限を画する必要があるだろう。政策を左右してしまう。

     ところで、正直、本書のこの内容では新聞・雑誌記事に毛が生えた程度で、全く食い足りず、コストパフォーマンスも悪い。ただし、あとがきをみるに、著者もそれを承知のような気がしないではない。

  • オバマ政権など最近のアメリカについての述べている。
    アメリカ外交の4つの伝統的な性格。
    1.国際通商をとおしてしたたかに発展することを重視する。(ハミルトニアン)
    2.アメリカの安全と繁栄を重視し、そのためには威圧的手法も辞さない(ジャクソニアン)
    3.他国にとっての模範となることで理想の普及を目指す(ジェファソニアン)
    4.普遍的な理想の普及によって世界を先導しようとする(ウィルソニアン)
    アメリカは世界の消費の最後の砦となって世界に貢献。現在の体制の構築(アメリカの国益になってもいるが)として世界に貢献。

  • アメリカについては、わかっているようで、実は「群盲象をなでる」になりがちだが、等身大のアメリカをコンパクトにまとめた良書。
    内政・外交ともに議論を展開するが、国の成り立ちから「保守」「リベラル」を読み、変貌していくアメリカを解説したくだりは深みがあったが、外交はやや一般的であったように感じた。

  • アメリカに関する書籍として、現在、最良である。前著のアメリカンデモクラシーの逆説にも衝撃を受けたが、本書は更に外交と歴史的な観点が加わった鋭い視点で書かれており、当にジレンマを表現しきっている。
    氏のあとがきにもあるとおり、アメリカという国はいつも目が離せない。自分では到底整理出来ないが、これからも著者のアメリカ論をフォローしたく、何年後かの次作を期待する。

  • アメリカの特異な点とその背景を解説した本。
    わかりやすい。
    1章では、日本との関係が書かれおもしろい。
    日米も、日米中韓の関係、も冷静な分析でわかりやすい。

    いくつかメモ

    中韓のディスカウントジャパン。
    日系アメリカ人の立場。


    アメリカの歴史の短さ=少なさ。南北戦争とまだまだ影響ある。
    アメリカは低調になるとすぐ、衰退と言われ、好調になると覇権と、、絶えず批判の対象。
    アジアへのリバランシング。
    多様性と差別。





    目次


    第一章 アメリカの「歴史認識」――日本像から見る
      (1) 不可解な日本の「保守」
      (2) なぜ右派が警戒されるのか
      (3) 更新される「歴史認識」
      (4) 「ディスカウント・ジャパン」への反応
    第二章 アメリカの「戦後」――保守とリベラルの相克
      (1) 「自由社会の盟主」はいかにつくられたか
      (2) 「黄金の五〇年代」を起点とするアメリカ現代史
    第三章 戦後社会の変質――自由大国のジレンマ
     (1) 「個人化」する社会
      (2) 保守化する経済、拡大する格差
      (3) 超資本主義化する政治
      (4) 新自由主義的「自治」の加速
      (5) 社会のリベラル化
    第四章 オバマ外交の現実――「世界の警察官」からの退却
      (1) アメリカ再建への要請
      (2) アジアへの「リバランス」
      (3) 転機を迎える日米関係
      (4) 中東をめぐる混迷
    第五章 「アメリカの世紀」は終わったのか――親米/反米を超えて
      (1) アメリカ衰退論を検証する
      (2) アメリカの自画像
      (3) アメリカへのまなざし

  • 親米でも反米でも時代錯誤の罠に陥りかねない、という筆者の言葉が印象的だった。アメリカ例外主義は、アメリカをアメリカたらしめているあまりにも重いイデオロギーである→なるほど、ジレンマの根幹をなす考え方なのだ。共和党と民主党、保守とリベラルの構造に関しては、一読しただけでは、まだ掴みきれなかったが、本書はバランスのとれたアメリカ論で貫かれており、読む価値のある著作と考える。

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著者プロフィール

渡辺靖

慶應義塾大学SFC教授。1967年(昭和42年)、札幌市に生まれる。97年ハーバード大学大学院博士課程修了(Ph.D.)。オクスフォード大学シニア・アソシエート、ケンブリッジ大学フェローなどを経て、99年より慶應義塾大学SFC助教授、2005年より現職。専攻、アメリカ研究、文化政策論。2004年度日本学士院学術奨励賞受賞。著書に『アフター・アメリカ』(サントリー学芸賞・アメリカ学会清水博賞受賞)、『アメリカン・コミュニティ』『アメリカン・センター』『アメリカン・デモクラシーの逆説』『文化と外交』『アメリカのジレンマ』『沈まぬアメリカ』『〈文化〉を捉え直す』など。

「2020年 『白人ナショナリズム』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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