エネルギー論争の盲点 天然ガスと分散化が日本を救う (NHK出版新書)
- NHK出版 (2011年7月7日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784140883563
作品紹介・あらすじ
3・11後、にわかに高まる原発廃絶の声。しかし、コストが高く安定性の低い再生可能エネルギーで原発を無理に代替すれば、日本経済の崩壊は免れない-。エネルギーの安定供給とCO2削減を両立するカギは、天然ガスと分散型のスマートエネルギーネットワーク。巷に溢れるエネルギー論争の陥穽を検証し、歴史とデータから問題の本質を説き起こす、本物のプロによる啓発の書。
感想・レビュー・書評
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今年(2015)の正月の天気は例年にも増して寒いようで各地で大雪が降っている様ですね。FB友達の新年風景に綺麗な雪の写真が多くみられます。
雪国エリアでないので綺麗な雪景色と言っていられますが、これが雪国なら凄い雪になっているのではないでしょうか。寒い日が続いているせいか、それとも私の興味が薄れてきたせいか分かりませんが、最近では地球温暖化という言葉を聞くことが減ってきた気がします。
しかしながら温暖化ガスを発生する化石燃料は、エネルギー源としては依然として減らす動きがあると認識しています。
この本は日本のエネルギー源は今後、天然ガスを有効活用していくべきと結論づけていますが、私が印象に残ったのは、一・二章に書いてあった内容です。化石燃料の素晴らしさ(エネルギー密度の高さ)が、産業革命や今に至るエネルギー革命を支えてきたという事実です。
私はこの内容を初めて知りました。他の部分も素晴らしい内容はありますが、最初の二章に書いてあった内容は、私としては初めて見た内容でした。
今後はエネルギーについて論じる場合、今までの経緯を踏まえた上で行いたいと痛感しました。
以下は気になったポイントです。
・猿人から人類への大きな進化と、それに伴う人口増大には、薪という外部エネルギー源利用による「料理」が決定的な役割を果たしたと考えられる(p15)
・家庭でのエネルギー消費というのは、全エネルギー消費の1割程度、電力消費は全体の25%程度(p19)
・社会経済問題としてのエネルギーは、人間の生存や活動に役立つ熱源と動力源である。具体的には、食物・薪炭のような熱源、あるいは水車・風車・帆船などの動力源、また牛馬のように、草が本来持っている化学エネルギーを体内で変換して、人間が動力として利用でいる存在もある。(p25)
・歴史的には過去に二回の人口爆発がある、最初は紀元前8000年前から紀元前後頃までの農業開始の時期、二回目が産業革後の19世紀半ば。人口爆発が起きたのは出生率上昇ではなく、死亡率が急減したから(p30、34)
・死亡率低下の本質的な要因は、公衆衛生の徹底と、工業化による民衆の「暖衣飽食」である、医療で明らかに救える病気は、細菌感染症中心で、癌・ウィルス性疾患等の治療効果は限定的(p36)
・廉価な大量の繊維製品によって、清潔で多様な衣服が供給されて、体温維持効果と清潔さが向上したことが最も重要なこと(p37)
・加熱調理を始めたホモエレクタスは、火という外部エネルギー源を道具として利用することによって、消化器官の負担軽減、縮小が可能となり、その余裕で脳の大型化に初めて可能となった(p39)
・産業革命以前は、エネルギー使用量は、食事で得るエネルギーの2-3倍レベル、それが産業革命により、5-10倍になった。これが産業革命の本質(p41)
・産業革命は、英国において勤倹貯蓄・知的思考型の文化が社会に浸透したこと、新たな機械の発明だけによって発生したのではない。安価で効率良い石炭という化石燃料を人類史上初めて大量使用したことによって革命は実現した(p43)
・石炭が画期的だった理由は、石炭の掘削が、石炭自身を用いた蒸気機関を利用した動力機械によって行われ、拡大再生産が可能になったから(p44)
・英国ではほぼ森林が消滅して価格高騰で木炭が使えなくなった製鉄業が存亡の危機になったので、やむなくそれまで存在は知られていたが「汚い」と打ち捨てられていた石炭の本格使用を思いついた(p47)
・日本も出雲地方で同様なことが起きた、土壌流出と大洪水により、元来島であった島根半島と本土の間を埋めて現在の宍道湖をつくった、中国山地は放牧地として草地のままだが大半は森林が復活している(p47)
・19世紀の英国では、350万頭の馬が年間400万トンの穀物と干し草を食べて、それに必要な農地面積は6万平方キロ(英国面積の3割)であったので人口は急増しようがなかった(p49)
・ダイムラーは内燃機関を1886年に実用化した、当初アルコールを燃料としたが、出力を高めるためにガソリンに変更して実用化した、これは石炭利用の蒸気機関より効率が良かった(p62)
・石油が使われるようになったのは、1)重量体積当たりのエネルギー量が大きい、2)使い勝手が良い、常温で液体、揮発性高くない、3)石炭比較で環境負荷が低い(p69)
・最も重要なのは、産出された石油の持つエネルギーと、石油を産出するのに必要なエネルギー比率が、100倍以上で良いこと(p70)
・最終エネルギー需要ベースで電力化率が2割程度なのは、現在の根幹を支える大量の基礎物質の製造と、鉄道以外の大半の輸送には電気で対応不可なので(p80)
・高効率、高密度、すなわち低エントロピーエネルギー(石油)を大量に外部から注入し続けない限り、高度な文明、過密にして巨大な人口を維持することはできない(p88)
・生物であれば、食物エネルギーが不足したり、廃物・廃熱処理がうまくいかなくなると細胞内のエントロピーが増大して(無秩序となり)死んでしまう。高度に秩序化された大人口型の社会システムも一種の散逸構造である。(p96)
・約5兆トンの炭素が化石燃料として地球内部に閉じ込められている、これは石油換算で40兆バレル、これは陸上植生に含まれる炭素量、大気中に含まれる炭素量の10倍。これに対して人類が使用してきたのは2兆バレルで5%使用した(p105)
・1970年代の石油危機は一般的には誤解されているが、石油価格の暴騰であり、石油供給量が不足したわけではない(p195)
2015年1月1日作成詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
良書。今までモヤモヤしていたものが、何だかふっきれた感じ。「そもそも、人類はその誕生の瞬間からして、その存在を外部エネルギー源に依存している生き物である。」
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新書文庫
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現在、リチウムイオン二次電池に関する仕事をしてます。「電池はエコ」という意識がありました。貯蔵可能、数千回繰り返し使用可能、夢のようなデバイスではないかと。この本を読むまでは。
確かに、製造にかかるコスト、エネルギーを考えれば、電池はそれほどエコではないかもしれません。車に関して言えば、車の総コストの50%を電池が占める、と聞いたことがあります。作ってからが経済的でも、作るまでが不経済であれば、電池のメリットが帳消しです。本書でいえば、電池のエントロピーはかなり高いのかもしれません。
10年後には、結構な数の車がEV系に置き換わると思っていましたが、そうは問屋が下りないようです。 -
天然ガスが次世代エネルギーの本命らしい。火力発電でつくった電気で車を走らせるぐらいなら、最初からガソリンで走らせたほうがロスがない。自動車の業界人ほど、電気自動車には懐疑的で、天然ガスから水素をつくって走らせる燃料電池を本命と思うそうです。ほんとうは、どうなんでしょうか?
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エネルギー選択における、現在のベターな選択
天然ガスの積極活用、エネルギー源と地域の分散化と多様化 -
真っ当なエネルギー政策に関する一冊
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結局
今後何百年かかけて
人口を減らしていくしか方法がない
とするところにこの本は信じていいなと思った
チャーチルの言葉だったか
1に分散化、2に分散化、3に分散化
が頭に残る
とても誠意ある本だとおもったけど
目からウロコな本ではないので★4
家庭の省エネなど微々たるものだ・・・