なぜ皆が同じ間違いをおかすのか 「集団の思い込み」を打ち砕く技術

  • NHK出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140819395

作品紹介・あらすじ

ハーバード教育大学院の心理学者が「みんな同じ」に潜む危険性と脱却法を解説

なぜ日本人男性の育休取得は進まないのか。移植用腎臓の10%が廃棄される理由は何か。乗客が起こした飛行機墜落事故の真相とは。ありもしないことを皆で信じる「集合的幻想」は社会や組織、個人にいたるまで大きな弊害を及ぼす。自身も思い込みを体験してきた心理学者が、多くの事例をもとに幻想にとらわれる過程、打破する方法を解説。正しい認識やぶれない思考を身につけるための必読書。

感想・レビュー・書評

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  • SNS上の分断と罵り合いに、心を痛め、無力感を味わっている。それでもこの本により、少しは希望を持ってもいいのかな、と思った。複数の集団に所属すること、少しだけリスクを取ること、を心がけて暮らしていこうと思う。

  • SNSに支配されて、模倣に走る人類。最近ではChatGPTや生成AIなど崩壊する人類のSFの世界が近付いているようだ。この本も真実に関係なく、また多数派とは限らない声に、人間は支配されているという。そこには人間本来の性質とともに過去の支配者が利用していたパターナリズム(慈善や保護を理由に個人の自由を侵害する習慣)が蔓延っている。最たるものがテイラー主義。今、話題になっているビッグモーターの経営もまさにこの主義だと思うが、まさに権力者の思うがままに個人が食い物にされている。
    我々が取るべき対策として管理に拘らず信頼ゲームをしてみようという。特効薬ではないが、個々の信頼が増すことが自己一致を生み出して、フェイクに騙されない自分をみつけられる。取り組んでみる価値のある考えだと私も思う。

  • 本著の紹介文「ありもしないことを皆で信じる『集合的幻想』は社会や組織、個人にいたるまで大きな弊害を及ぼす。」とのこの一文だけで、要旨をクリアに表現しているようにも思いますが、ハーバード教授の心理学者による集団心理に関する1冊です。
    どちらかと言うと、空気を読んで発言しない…とかこういうのは日本特有の現象だと思っていたんですが、アメリカでも普通にあるんですね。
    「私たちは知らないうちに主要価値の大半を共有しているのだ」という文章が本著内にありましたが、こう思うと国民性のジョークですら「集合的幻想」の一種なのでは?とも思ってしまいます。

    私は人間として慎重性を著しく欠いてまして(日本人っぽくないですねw)、相当な額の紙幣+免許証+クレジットカードが入った財布を落としたコトがあるのですが、無事に戻ってきました。
    普通、道で金目のモノ拾ったら自分のモノにしちゃうだろと思ってしまうのですが、私の場合は実体験とともにそうでないコトが証明された訳です。(まぁ日本だから、と言われるかもしれませんが…)
    本著の主張を敷衍すると、「周りの人たちは、自分と同じくらいに良い人」となるのではと思います。

    で。世の中には「こうさせないシステム」があるのかも?という分析まで、本著ではしている訳です。
    パターナリズム(あなたのため、として個人の自由と自律を奪うやり方)的な人を信用しないやり方が広まった結果、間違ったゼロサム思考が蔓延して、社会における信頼が低下していったと。
    足元のアメリカの状況とか大丈夫なのか?と思ってしまいます。「フィラデルフィア」とGoogleで入力すると、一番上に「フィラデルフィア ゾンビ」と出る有り様で…。
    集合的幻想として本著で取り上げられている「なぜ日本人男性の育休取得率は低いのか」も確かに大事ですが、例えば「企業は、とにかく株主第一主義で株主還元を頑張らないといけない」も、足元でBlackrockのラリー・フィンクが新しい資本主義に賛同しているのを見ると、受け手の機関投資家ですらそう思ってないぞ!と。

    その上で、我々はどうすれば良いのか?について、本著ではチェコスロバキアのビロード革命の事例を挙げている訳です。
    スマートに、楽しく、やっていく必要があるんでしょうね。
    周りに呑まれがちな方(私もですが…)は一読する価値のある一冊。良著です。願わくば、日本からも同趣旨の発信が続いても良いのではと。

  • 少し内容とはズレるけどこの本を読んでの考察は、人間はひとりひとりが細胞みたいなもので、脳がホメオスタシスの作用によって多数派集団に流そうとする。その報酬としてオキシトシンドバドバ出して脳を喜ばせる。流れに逆らおうとすると、手軽な報酬も無いしストレスを与える。
    脳の稼働を極力少なくし、何も考えずに生きればそうなるシステムなんだろうなぁ。それががん細胞であっても。

    興味深い事例が初っ端の「恥への恐怖は罰金より効果的」はこれは全てに使える最強の理論かもなぁ。
    結局恥をかきたくないために集団側に行くんだろうし。

  •  本書の問題意識は、どうすれば私たち一人一人が集団的幻想を打破出来るか、ということに尽きる。集団的幻想というのは、私たち(集団)の多くが集団に対して誤った想像(幻想)をすることであり、集団的幻想に基づいた選択によって「実は誰も望んでいない行動」が多くの人々によって支持されてしまう危険がある。
     私たちが想像以上に他人の考えについて誤った認識をしてしまうのは、人間が社会生活上の情報処理を省略するために、模倣や同調によるバイアスが働くからである。その解決の第一歩は、自分自身が傷つく覚悟を持って他者を信頼することであり、沈黙の螺旋ではなく信頼の螺旋を作り出すことである。そうして自分自身を取り戻すことが、自分自身のなかにあるバイアスの存在に気づくためには欠かせない。その気付きこそが集団的幻想に対抗する原動力となる。そして一つの集団に依存するのではなく、複数の所属集団を持ち、模倣や同調圧力の働かない環境を作ることで、異論を唱えやすくする、ということらしい。
     それを気障ったらしく言えばこうなる。リアルを生きよう。傷つく覚悟を持って他者を信頼してみよう。そして、自分に正直に生きよう。世の中は、思った以上に美しい。第二第三のジョー・コーネルは、世の中にたくさん居る。

  • 集合的幻想について。同調世界の闇、仲間のためなら嘘もつく。多数派の恐ろしさ…など人は人と群れることに特化して進化したんだと再認識した。

  • タメになったねぇ〜〜
    ほんとに言いたいことも言えないポイズンだよ。

  • 日本には同調圧力という独自の文化がある。それは周りに合わせておけば安心で間違いないと思い込んでいるからだ!しかし実際、集団は往々にして間違いをおかす。ではなぜ集団から抜け出せないのか、集団から抜け出すにはどのようにすればよいか。そんな事がわかる本です。

    情報コース1年

  • 読了

  • 集団でなければ、生き残れない種、人類。
    色んなバイアスがあるに違いない。

    後から考えて、頭で理解した気になるのが精一杯で、打ち砕く、のはまぁ無理だろうな、と改めて思った。

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著者プロフィール

心理学者。誰もが活気ある社会で満ち足りた人生を送れるような世界の実現を目指すシンクタンク〈ポピュレース〉共同設立者・代表。ハーバード教育大学院心理学教授として〈個性学研究所〉を設立したほか「心・脳・教育プログラム」を主宰した。著書に『ハーバードの個性学入門――平均思考は捨てなさい』(早川書房)、『Dark Horse――「好きなことだけで生きる人」が成功する時代』(共著、三笠書房)がある。

「2023年 『なぜ皆が同じ間違いをおかすのか 「集団の思い込み」を打ち砕く技術』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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