サイレント・アース 昆虫たちの「沈黙の春」

  • NHK出版
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感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140819104

作品紹介・あらすじ

昆虫がいなくなれば、世界は動きを止める。
危機を食い止める具体的な行動指針を示す、現代人必読の書!

レイチェル・カーソンが、『沈黙の春』で「鳥の鳴き声が聞こえない春が来る」とDDTの危険性を訴えたことにより、その使用が禁止されて半世紀。私たち人間は、さらに地球環境を悪化させてきた。本書はまさしく「昆虫たちの羽音が聞こえない沈黙の春」への警告だ。
カーソンの時代の農薬よりはるかに毒性の強い農薬によって、最初に犠牲となるのは小さな無脊椎動物、昆虫だ。
土壌は劣化し、河川は化学物質に汚染されているばかりか、集約農業や森林伐採によって昆虫のすみかは縮小し、加えて急激な気候変動で虫たちの生態環境は悪化し、減少スピードが加速している。
この現象は、虫好きの人の耐え難い悲しみであるだけでなく、虫嫌いの人を含む全人類の豊かな暮らしをも脅かす。なぜか? それは、作物の授粉、他の生物の栄養源、枯葉や死骸、糞の分解、土壌の維持、害虫防除など、様々な目的で人間は昆虫を必要としているからだ。昆虫をこよなく愛する昆虫学者は訴える。「今、昆虫たちはあなたの助けを必要としている」と。
EU 全域にネオニコチノイド系殺虫剤の使用禁止を決断させた運動の立役者であり、気鋭の生物学者である著者が、多様な昆虫と共存することの重要性を訴える渾身の一冊。

「生態学者と昆虫学者は、昆虫がきわめて重要な存在だということをこれまで一般の人々にきちんと説明してこなかったことを深刻に受け止めるべきだ。昆虫は地球上で知られている種の大部分を占めるから、昆虫の多くを失えば、地球全体の生物多様性は当然ながら大幅に乏しくなる。さらに、その多様性と膨大な個体数を考えると、昆虫が陸上と淡水環境のあらゆる食物連鎖と食物網に密接にかかわっているのは明らかだ。……私は、ほかの人たちが昆虫を好きになって大切にしてくれるように、そこまでいかなくても、昆虫を尊重してほしくてこの本を書いた。私が昆虫を見る目で、あなたにも昆虫を見てもらいたい」(本文より)

感想・レビュー・書評

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  • 「サイレント・アース 昆虫たちの『沈黙の春』」デイヴ・グールソン著 藤原多伽夫訳|日刊ゲンダイDIGITAL
    https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/book/315723

    サイレント・アース 昆虫たちの「沈黙の春」 | NHK出版
    https://www.nhk-book.co.jp/detail/000000819102022.html

  • 膨大な文献と研究のもと著した著書だと思う。小生も小学生の頃夏休みになると昆虫採集をしたものだ。標本にし作品を学校に提出した覚えがある。秋には赤トンボが群をなして青空に舞い、夜には松虫や鈴虫を取りに行き甕に泥を敷きその中で飼ったものだ。轡虫やキリギリスを探し虫かごに飼った覚えがある。今はそんな昆虫達を全く見かけない。冬はバケツの水が3センチぐらい凍ったものだ。今は全く凍らない。温暖化が進んだ証しだ。

  • 【配架場所、貸出状況はこちらから確認できます】
    https://libipu.iwate-pu.ac.jp/opac/volume/571414

  • ◎信州大学附属図書館OPACのリンクはこちら:
    https://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BC16599405

  • 昆虫の減少を足がかりとして、生態系の破壊・気象変動・人類の危機を訴え警鐘を鳴らす。その主旨から敢えて最悪なシナリオを選んで書かれているのではないかと思う。人類に未来は無いのではないかと惨憺たる気持ちになるのだが、それがこの本を読んだ感想としては正解なのだろう。やはりどう考えても日本全国何処に行っても同じ味のものが同じ値段で飲み食いできるのはどこか間違っている気がする。このままではこういう未来が来ると示すSF小説のような第4部だけでも読んでみて欲しい。

  • どこで環境に作用しているかわからないという事をあらためて認識できた。面白かった。自然科学系は大好きだけど趣味の図書になるので図書館でレンタル。

  • 昆虫がこんなに減少しているとは思わなかった。想像を遥かに超えるスピードで減少しているようだ。
    農薬が最大の問題ではあるが、犬ネコのノミ駆除剤が回り回って他の昆虫にも大きな影響を与えているとは驚きだ。
    グローバル化が進み、適地生産が進んでいるがその事が、農産物輸出国の植物の多様性を失わせ、昆虫も減少する事につながっている。ブロック化は良くないとしても、農産物については自由貿易任せきりでは世界の環境が守れない。
    理想だけでは解決できない非常に厄介な問題である。

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  • <目次>
    第1部  なぜ昆虫が大事なのか
     第1章  昆虫についての短い歴史
     第2章  昆虫の重要性
     第3章  昆虫の不思議
    第2部  昆虫の減少
     第4章  データで見る昆虫減少
     第5章  移り変わる基準
    第3部  昆虫が減少した原因
     第6章  すみかの喪失
     第7章  汚染された土地
     第8章  除草
     第9章  緑の砂漠
     第10章  パンドラの箱
     第11章  迫りくる嵐
     第12章  光り輝く地球
     第13章  外来種
     第14章  「既知の未知」と「未知の未知」
     第15章  いくつもの原因
    第4部  私たちはどこへ向かうのか?
     第16章  ある未来の光景
    第5部  私たちにできること
     第17章  関心を高める
     第18章  都市に緑を
     第19章  農業の未来
     第20章  あらゆる場所に自然を
     第21章  みんなで行動する

    <内容>
    イギリスの昆虫学者の地球への警鐘の本。レイチェル・カーソンの『沈黙の春』の現代版。確かにいつの間にか昆虫が減っている気がする。蚊にせよ蠅にせよ、蜂などはもっと減っている。著者は「マルハナバチ」の専門家。昆虫の話が多いが、植物から農薬、政治にまで多彩に分析している。第3部では、現状が進んだときの「ディストピア」をしっかりと書いている。昆虫は自分も多くは、イヤなものだが、食物連鎖や土壌、植物の育成に欠かせない存在。しかし研究者が少なく、わかっている種が少ないらしい。そこに付け込んで、農薬などの大企業は批判してくる。おそらくそれは、地球の破滅を早めるだけなのだろう。足元しか見ていない政治家は、これを解決できるはずがない。こうした本(ちょっと厚いが)、しっかりと読んで、知識を身につけて、市民運動から頑張っていかねばならないだろう。昆虫だけではなく、植物や動物、農業や環境問題、すべてが連鎖しているのだから。
     

  • 昆虫
     頭部、胸部、腹部、足が六本で胸部についている
     飛行能力  変態(バッタやゴキブリを除く)
     アリの固体数は世界人口の100万倍、重量は同等

    食用コオロギ
     育てるための飼料や水が牛の10倍以上効率が良い
     共通の病気がない メタン出さない 成長が早い 密集状態で養殖可能

    役割
     昆虫による受粉 植物の87%、人間の作物の3/4
     有機物の分解

    1970年以降 欧州で50%の昆虫が失われた可能性が高い
    1住処の消失
      集約的農場 花や雑草が少ない 殺虫剤散布 保護区の外に出ると生息できない 
    2汚染された土地
      DDT 人工化合物 昆虫の神経を攻撃 ミツバチの減少
      殺虫剤ネオニコチノイド 作物の種子をコーティング
       花粉や蜜に浸透 土壌と地下水に94%流出 2018年欧州で使用禁止
    3除草
      除草剤グリホサート 植物と細菌の酵素を攻撃  昆虫の腸内細菌も
    4化学肥料
      植物の多様性が減少 水生植物へも
    5昆虫の寄生体
      ミツバチの巣箱が世界へ運ぶ  観葉植物に潜む昆虫
    6気候変動?
      火災と洪水 昆虫の移動よりも早い温暖化 イエバエや害虫は増加
    7光害?
      体内時計の狂い
    8外来種
      外来の昆虫、植物、動物による生態系の変化
    9既知の未知と未知の未知
      既知:化学物質、大気汚染、電磁波、GMO

    イギリス政府への請願書 署名が1万人で返答、10万人になると国会で議論

    ティッピングポイント(転換点)
     アイデアや行動が一定水準を超えるとその方向への転換が起き、一気に広まる
     
    農業用地より市民農園 生産性 昆虫多様性 健全な土壌 人々の健康 
    農業補助金 工業型農業から小規模持続可能な農業システムへ

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著者プロフィール

生物学者。1965年生まれ。英サセックス大学生物学教授。王立昆虫学会フェロー。とくにマルハナバチをはじめとする昆虫の生態研究と保護を専門とし、論文を300本以上発表している。激減するマルハナバチを保護するための基金を設立。一般向けの著書を複数出版している。

「2022年 『サイレント・アース』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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