なぜ、脱成長なのか: 分断・格差・気候変動を乗り越える

制作 : 斎藤 幸平 
  • NHK出版
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感想 : 26
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  • Amazon.co.jp ・本 (220ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140818558

作品紹介・あらすじ

地球規模の危機を解決するには、この道しかない。世界ではすでに実践が始まっている!

長時間労働、大量廃棄、貧困、環境破壊……いま資本主義の弊害が露呈している。これを克服する経済社会ビジョンとして注目されるのが「脱成長」だ。欧米で脱成長論を推進する旗手が、その基本的な考え方と実践例を紹介し、ベーシックサービスの導入やコモンズの復権など必要な政策を論じる。『人新世の「資本論」』の著者・斎藤幸平氏が解説!

感想・レビュー・書評

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  • 読みやすい文章で、あっという間に読んでしまった。脱成長がなぜ必要か、どのように実現するか提案されている。
    有名なバルセロナの例も出ている。
    巻末には質問への回答があり、よくある質問に対して分かりやすく答えている。
    入門として、または勉強会のテキストとしてもちょうど良いと思う。
    欲を言えば、もう少したくさん具体例が欲しかったかもしれない。

  • 草の根ネットワークから始まる個人の行動力が必要。
    GDPの成長は格差拡大につながっている。
    成長は必要ない。より少なく生産、少なく消費する生活を指向するべき。
    成長には、循環型、永続型、複利型がある。複利型は永遠には続かない。永続型も自然ではない。複利成長を目指すことはできない。
    物資使用量と市場取引の拡大を止める。成長なしで豊かな生活を送れる制度をつくる。
    成長追及は、負債、不平等、金融危機を生む。新自由主義は、自由ではなく新たなルールを作った。
    成長を求めることが本能、ではない。
    デンマークの自転車通勤。
    グリーンニューディール政策は、緑の成長と繁栄の両方を目指している。

    グリーンニューディール債を発行し、公共事業を行う。
    ユニバーサルベーシックインカムとユニバーサルベーシックサービス。=全員にいきわたるもの。資格認定が必要ない。
    貧困軽減が経済成長の後押しではなく、環境破壊を防ぐ目的として使われる。
    ユニバーサルケアインカム=無償のケア活動に対する保障。

    カリフォルニア州では、大規模な山火事が原因で、パシフィックガス&エレクトリック社が破綻した。

    今は生産性の向上が企業の利潤と株主の配当に回ってしまう。
    炭素税でユニバーサルサービスを賄う。労働への課税はやめる。環境破壊には課税する。
    ニューディール政策のときは累進課税が効果的だった。
    犠牲を強いる緊縮財政ではなく、連帯経済やコミュニティ経済を補強していけるか、がカギ。

    自然界効果、ケアワーカー、子育て中の家族、自転車愛好家、ビーガン、ヒッピー、失業者、気候難民、田舎暮らし、帰納運動、などと相性がいい。

    環境グズネッツ曲線は、統計データによって否定されている。
    資源は安くなると、使用量は増える。これが経済成長の基本。より少ない資源でより少なく生産するべき。
    市場は、汚染に対して正しい値段を付けられない。
    農業から工業、サービスへと移行するにつれ、資源とエネルギーの使用量は増えた。
    GDPは、環境汚染でもその対策をすれば増えるもの。無報酬の働きは計算に入れない。

  • 注目している(惹かれている)斎藤幸平が書いているので手に取った。脱成長こそが私たちの直面する危機を乗り越える手だというのは分かる。スローな社会をつくり人間らしい生き方をしてウェルビーイングを維持することを目指すのは大賛成だ。グリーンな経済成長とかSDGsとかのまやかしは警戒すべきだと思う。難しいことだが人間らしくやさしいところが気に入った。
    ただこの本がNHK絡みだというのが合点がいかん。

  • 脱成長を掲げる人々の問題意識の出発点には通じるものがあります。このまま資本主義社会を続けていれば、社会も地球も壊れてしまうーー。そこからの変革を求める気持ちは一緒だと思います。
    しかし、なぜ資本主義社会だと環境問題を解決できないのか?どうやって社会を変えていくのか?という命題については、わたしはこの著者たちとは違う立場です。

    著者たちの中に、経済学の専門家はいないようです。だからこそ、なぜ資本主義社会では環境破壊を引き起こしてもなお経済成長が優先されるのか解き明かされていませんし、資本主義社会において財界がいかに政治権力を握っているかについての考察もありません。そうした資本独特の運動と権力構造を無視しているため、政治闘争の重要性はかなり低いものとして扱われてしまっています。ようは「個人が変われば社会は自ずと変わる」という論調です。
    著者たちは「まずは個人が変わりコミュニティが変わることで政治も変わっていく」と語りますが、そこには資本主義社会の法則がまだ貫かれているのです。だからこそ、この社会の仕組みを変えるために必要なのは明確な政治闘争なのだと思います。

  • 養老先生のYouTube紹介で読んでみたが、本誌の脱成長の考え方、必要性は納得できた。後半の斉藤幸平氏の解説は秀逸!
    では、じぶんは今から何をしようか。

  • 脱成長
    言行不一致を気にしすぎない。極端になると洞穴で生活しないと何もできなくなる。飛行機を使う人が環境にやさしい活動しても何ら悪くはない。
    加速度的な生産拡大ではなく、資源やエネルギーの消費を抑えて、コミュニティ内で循環できる仕組みに。
    協力と共有をベースに節度ある暮らしを心がける。

  • 「脱成長」、英語ではdegrowthと言う。
    私のような左翼を自任している人間でも、資本主義のなかで生まれ、その価値観に深く影響されていることがあるのだろう。まさしくマルクスが言ったように「存在が意識を規定」している。私自身も、経済成長をストップしたり、減速させようという意見を聞くと、抵抗を感じる。しかし、なんでも疑問を突き付け、「正しさ」の上にあぐらをかいている価値観に揺さぶりをかけるのは、ともかくも「良い」ことだ。
    著者たちは次のように主張する。経済成長を重視する資本主義経済は惑星地球の限界に到達しつつある。化石燃料はいずれ枯渇する。原子力発電もウランなどの特殊な鉱物資源に依存しており有限である。発展途上にある国々の人々がこのまま先進国同様の生活水準を達成すれば資源の枯渇は必然的になる。地球温暖化によって地球環境も変わってきつつある。経済成長は、格差を縮小するのではなく拡大してきた。こうした問題を引き起こしているのは、GDPという指標の絶えざる増大(経済成長)を目指す画一的価値観そのものである。私たちは危機を回避するために、脱成長の価値観に転換せねばならない。
    斎藤幸平さんが解説を書いているように、『人新世の『資本論』』と類似の主張であり、同書を読んでいる人にとっては、目新しさはないだろう。
    薄い本であり、すぐ読み終わる。読んでいるあいだはなるほどと思いつつ読んだが、残るものが少なかったのも事実(これも自分が知らず知らずのうちに資本主義に毒されているからかもしれない)。
    「脱成長」、これが今後大きな運動になるかは未知数だ。とりあえずこのキーワードは覚えておいて損はないだろう。

  • 翻訳特有のちょっと意味が分かりにくい訳はありましたが、過去を振り返るとGDPによる経済成長のイデオロギーによって世界中で資本主義というシステムができ、富裕層によっての植民地化、グローバルサウス問題、不等価交換。これ以上続けないためにはどうしたらよいか。本当に豊かさはまではいきませんでしたが、どんな解決策かが語られていました。脱成長だからいきなりあれダメ、これダメではなく、まずはマイカー規制や、都市部土日昼過ぎだけ歩行者天国を設けたり、ショッピングモールは何平米までとか、ルール作りからはじめたいですね。みんなで協力していきたくなりました。この本はたくさんの人たちに読んでもらいたいです。

  • うーん。意見は同意できるが社会主義、共産主義みたく人類がみな人格者であることが前提の意見になってるんだよなぁ

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著者プロフィール

(Giorgos Kallis)スペイン・バルセロナ自治大学教授。著書『なぜ、脱成長なのか』(共著、NHK出版)


「2022年 『LIMITS 脱成長から生まれる自由』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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