これからの本屋読本

著者 :
  • NHK出版
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本棚登録 : 662
感想 : 40
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140817414

作品紹介・あらすじ

個性的な本屋が、全国に生まれている。本書は、その最前線にいる著者が、人を引き寄せる本屋を分析し、そのこれからを展望する。本とは何か。本屋とは何か。その魅力の原点に立ち返りながら、本と本屋の概念を一変させ、その継続のためのアイデアを鮮やかに示す。本を愛する人が、本を愛する人のために何ができるのか? 本と人とをつなぐ本屋の可能性を照らす、著者の集大成。「本の仕入れ方大全」も収録。

「本書は、本の仕事をしながら、本屋についてこの15年間にわたってぼくが調べ、考えてきたことを、いま、本と本屋を愛する人たちに伝えておきたいと思って書いた本だ」

感想・レビュー・書評

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  • 上辺の左右のコーナーを思い切って切り取り、六角形にした本。
    何これ?と驚いたあとで、すぐに気が付いた。
    これは、家の形(この場合本屋さんだ)を模したデザインだ。
    更にタイトル部分がそれはカッコいい。
    一見エンボス加工のように見えるが、シルバーの文字の中に凝った花が描かれている。
    ブックデザインとカバーイラストを手掛けた方に、心の中で賛辞を送った。
    そしてその内容も、本当にカッコいい。
    内沼さんの、本を愛し愛してやまない気持ちが、行間に溢れかえっている。

    これは、ビールが飲める本屋「B&B」を下北沢で運営している内沼晋太郎さんの本。
    様々なゲストを招き、連日のようにイベントを開催しているらしい。
    その実践から得た知見を、これから「本屋」になろうという人、あるいはその迷いの中にいる人に向けて書かれた本だ。
    本の中ほどには、紙色をグレーに変えて「本の仕入れ方大全」まで載せてある。
    その最終ページには「出版取次一覧」まで紹介している親切さ。

    序盤は、本と本屋の魅力について、客の視点と本屋の視点から考えている。
    そして、小さな本屋を続けるための考え方。
    生計を立てていくためには「ダウンサイジング(小さな本屋を目指す)」と「掛け算(雑貨・飲食・教室・読書会等々とのコラボ)」が良いとの提案をしている。

    こんなにも明確に信条と実践方法まで語っているということは、もしや私などが読む本ではないのかなと自信喪失しかけながら読み進むと、こんな箇所があった。
    「本屋」とは「本をそろえて売買する人」と「本を専門としている人」と定義している。
    売買抜きで「本を専門としている人」とはなんだろう。
    著者は発想を拡げて、こう述べている。

    『本を紹介するブログをやっている人も、ボランティアで読み聞かせをしている人も、みんなその時間は「本を専門としている」と言える』
    『「本を揃えて売買する人」や、「本を専門としている人」がいなくなれば、それこそ「本」はどんどん弱っていってしまう』
    『どう「本屋」を人生に取り入れるか。それを前向きに考え、実践する人が増えることは、バリエーション豊かな「本屋」を生むことになり、結果的に「本」を愛する人に返ってくるはずだ』

    ブク友さんたちのレビューや私のレビューも、本と本屋の未来に何かしらお役に立てているのかもしれない。そう思うことで、少しだけ勇気が出る。
    本屋に行かずとも本はもっと簡単に手に入れられる。
    そう言われる方も多いだろう。
    それでも機会をとらえてこの本を紐解いてほしい。本に対する気持ちが変わる。
    そして、「本屋」を人生に取り入れるという言葉が、皆さんの背中をそっと押してくれるだろう。

    本書は書籍の形ではフィニッシュの形態だが、ネット上では今も更新し続けている。
    このタイトルで検索すれば、いつでも誰でも無料で読める。ああ、なんてカッコいいんだ。

    • 淳水堂さん
      こんにちは。
      「B&B」は一度読書会イベントで行ったことがあります。
      近年は本屋さんで各種本のイベントを行ったり、
      ブックバーやブック...
      こんにちは。
      「B&B」は一度読書会イベントで行ったことがあります。
      近年は本屋さんで各種本のイベントを行ったり、
      ブックバーやブックカフェも多様化していますよね。
      しかしなかなか普通の本屋さんには私のほしい本がなく…(T_T)
      小説コーナーが少ない、海外小説ハードカバーなんてコーナーすらない(T_T)
      新古書店などはなかなか楽しいのですが、多様化しすぎて探しずらくなってしまっている感じも…。
      私は基本的に図書館で借りて、買うのは生涯取っておきたいものだけになっています。所有できない分こちらでレビューしています。
      結果的に返ってくるように役立てているかなあ。
      2020/02/19
    • nejidonさん
      淳水堂さん、こんにちは(^^♪
      コメントありがとうございます!
      まぁぁ、こちらに行かれたことがあるのですね。それは羨ましい。
      そんなに...
      淳水堂さん、こんにちは(^^♪
      コメントありがとうございます!
      まぁぁ、こちらに行かれたことがあるのですね。それは羨ましい。
      そんなに離れていないのに、私はまだ行ったことがないのです。
      今度ぜひ足を向けてみますね。
      本屋さんの現況、一般的にはまさにその通りなんですよね。
      欲しい本が置いてない。紀伊国屋かジュンク堂あたりなら手にはいるのですが、毎度毎度は行かれません。
      なので私は、図書館でまず読んで、気に入ったら本屋に注文しています。
      本屋って、つまるところ「選書」次第なんですよね。
      Amazonでは、払い込みしたら売り主からキャンセルされるということが何度かあって、すっかり嫌になりました。
      ネット書店は、Amazon以外に頼っています。
      結果的に返ってきているかどうかは目に見えませんものね・笑
      でもどなたかが読んで心に留めてくださるはずです。
      私は淳水堂さんのレビューでお気に入りした本がたくさんありますよ!
      2020/02/19
  • 学生の頃から本屋が好きで、何軒もハシゴしていろんな本を見て回ったことを思い出した。ワクワクもあったし、自分にとっての居場所にもなってくれていたんだと思う。
    自由に見て回れるので、大きな本屋がすきだが(自分が住む地域にはもう大きな本屋しかないが)、他業種との掛け合わせによる本屋が地方でも出来るのなら。。
    学生の頃とはまた違ったワクワクを持てるかもしれない。

  • 本を取り巻く状況が厳しくなるにつれて、意識的に本そのものを題材に扱う本が多くなってきました。そしてそういう本を読む人は基本相当な本好きだと思う。
    知らないうちに著者の内沼氏の関わった書店に行っていおりました。
    下北沢のB&B、長野上田のNABO。特にNABOについては2回行きました。上田という町自体が何故か書店が妙に多くて、文化的な香り漂う大好きな町であります。

    さて、この本は本屋になりたいと願う世の中の本好きの心をちくちくと刺激する本です。本屋というものの定義は彼にとってとっても広く、本を売らなくとも本を人に勧めていくだけでも広義の本屋と思ってくれているようです。僕も出来れば、音楽演奏と読書の勧めを一緒にする事が出来ないかなといつも思っています。
    色々なものと掛け算できるのが本であるという言葉には胸が熱くなります。そうか、どんなものでも書物のつながりが有るという事は、掛け合わせることによって相乗効果が見込めるのか。僕にとってはそれは音楽にあたるよなあきっと。

    大資本でないと従来型の書店としてはビジネスとして成り立たず、小規模で特色のある書店を目指している人達が増えているようです。僕としても大型書店とセレクトショップ的な書店の存在意義は別なのでどちらも変わらず是非発展して頂きたいものです。
    それにしても彼のような生き方というか、本との関わりを生きていく糧に出来ているっていうのはすごい事だ。ある意味出版危機である今だからこそ求められているのだろうと思います。頼むぞ内沼晋太郎。

  • 下北沢で本屋B&B筆者の本屋を始めたい人向けの指南本。

    筆者が本屋への愛で満ち溢れているところが良いです。

    厳しい現実もきちんと見つめた上での現実的な情報、戦略が書かれているところも、本屋を開業したい人にとってはありがたいでしょう。

    本屋の売り上げは1996年をピークに2018年は半分になっているとのこと。またamazonなどのネット書店の隆盛によりリアル本屋は次々になくなっている。

    そんな中、あえて本屋を始めるとはどういうことかがリアルに書かれている。その中であえて本屋をはじめるために、はじめ方の様々な可能性を含め教えてくれる。

    前半は本屋という形態にたいする哲学的ともいえる色々な考え方が書かれている。

    これは、何故自分は本屋をやるのか?を突き詰めるために必要な考え方なのだと思う。
    昔のようになんとなく本屋を開いても、amazonなどにはかなわなく、月の最低限の売り上げも上げられず、つぶれてしまうから、

    後半は本屋の様々な形態を紹介。
    ダウンサイジングと掛け算というのが筆者のキーワードとしてなるほどと思う。
    いかに個性的な店を作り、自分が実現したいことを第一に、利益を出すことは目的とせずに実施していく。

    後半の本屋さん同士の対談、本の仕入れ方の別冊などが特に面白い。

  • 儲かるわけではないのだ、想像の通り。
    しかし「儲からないからやめておけ」の結論が直ちに導かれるかというと違う。
    この時代に本屋を営んでいく情熱を保たせ、軌道に乗せ、走らせる言葉がこの読本にある。万歳!本屋やるぞやるぞ!と勇み足になるような煽り文句は一切盛り込まれていないが、それでも悲観せずに「自分が本屋をやるとしたら」を一定の強度を持たせたまま想像しつづける確かな推進力を与えてくれるだろう。

    先日、筆者の内沼さんが営む下北沢の本屋B&Bを訪ねて感激した。
    そこまで大きくない店舗(しかも建物の2階にある)でも本が活き活きする仕掛けが隅々まで作動していて、『読本』のもつ説得力を再確認した。
    そこまで大きくないからこその敏捷さ、柔軟さを誇って歩んでいけると学ばされた。

    独特な装幀の紙版書籍もおすすめだが、内沼さんが文章投稿サイトnoteに全文を無料公開してもいるのでそちらを参照するのを勧めたい。
    内沼さんの太っ腹な行動には、これまで連綿と続けられてきた読書と書店という文化を受け継いでいこうとする気概をつくづく感じる。

  • 本屋への熱意の詰まった一冊。ライフワークとしての本屋への向き合い方がわかる。

  • まさに「本と本屋を愛する人へ」読んで欲しい!
    読書の本と本屋への愛を感じる本。
    心からときめいてしまった。
    そしてとても勉強になる。

    本の旅は百人百通りだから読み違えてもいいし
    完璧な読み方というのは存在しない。
    この言葉に心が楽になった。

    また明日からも本を読もう。

  • 下北沢で本屋B&Bもいとなむ、内沼晋太郎さんの本屋をやりたい人にむけた一冊。
    取次とお付き合いするには?書店経営のやり方とは?と、わからないことが、丁寧にかかれています。

    出版イベントにも参加したのですが、造本としもおもしろく、めずらしい形だったり、ノンブルもおもしろく仕掛けがあり、本棚においておきたい一冊となっています。

  • TBSラジオ「アフター6ジャンクション」にて、
    筆者内沼晋太郎氏が出演し、まさにこれからの本屋の在り方を語っていた回を聞き、購読。
    購入した本屋には「本屋および本」に関する棚があり、最近のトレンドでもあるのかなと感じた。

    第一章の「本屋のたのしみ」には様々な引用がされながらその魅力が語られる。
    自分も同意する事ばかりだった。

    例えば、一つの本屋には人生で読み切れない量の本が置いてあり、店内を一周するだけで世界を一周することに似ているという筆者の意見に改めて、その途方も無さに本屋に魅力を感じていたのだなと思った。

    「読みきれなくても買う」という部分。
    積読状態の本が増えていくと若干の後ろめたさもあったが、
    本屋で本と出会い、その本から開かれる別の世界に対して一歩踏み出すような気持ちで今日も本を買おうと思う、というくらいにこの個所を読んでいると気持ちを持っていける。

    そもそもちゃんと読んで次に行くというのは不可能だ。
    「本を読む」というのは最初から最後まで読み、完璧に理解するという事ができるという幻想がある。

    佐々木中著『切りとれ、あの祈る手を<本>と<革命>をめぐる5つの話』(河出書房新書)では、もし本を「完璧」に理解し、わかってしまったら気が狂ってしまう、と言っている。
    「本を読むということは、下手をすると気が狂うくらいのことだ」(29頁)と。上述の本の中で「読む」という行為のある種狂信的な側面、信仰ともいえる「読む」という行為の極北を示している。

    一方で「本を読まなく」ても、本について語る事ができるという意見もある。
    ピエールバイヤール著『読んでいない本について堂々と語る方法』(ちくま学芸文庫)では、本はある文脈やその人の環境によって、さまざまに読まれうる、そもそもその本について知っているということ自体がその本を読んでいるという事にも成り得るという主張だった。確か。

    そうした定義の話だけでなく、本の仕入れ方や、本屋になる方法などノウハウとしての部分も非常に面白く、勉強になる事ばかりだった。
    本書は、本屋にも本にも非常に愛があり、これからの可能性に真摯に向き合ってきた筆者の情熱を感じる。
    素晴らしい本だった。

    あと、細かいところで言えば、本書のページの表記(全317ページ)は手書きのフォントだ。
    最後にその部分が筆者の関係者の手によるものが判明する。
    また、判型が家?の形をしていたり、面白い試みをしているなあと思った。
    とはいえ、筆者のこれまでの経緯を知れば、「なるほど」と思わされる。

  • ”内沼晋太郎さんの本屋本 最新刊。「はじめに」の最後の言葉にしびれて購入。
    広義の「本屋」として生きることを考えている身にとって貴重な本。これをもとに実践したい。

    <抄録(抜き書き)>
    ・本屋の書いた本なんてもう読み飽きたよ、という声が聞こえる気もする。けれど、本書はたぶん、網羅性と実用性という点において、過去のどんな本とも違っている。
     不十分であっても、見渡せる地図が、立ち戻れる教科書があるべきだ。若輩者が畏れながらも目指したのは、そういう本だ。(はじめに)

    <きっかけ>
    内沼さんの本屋本は買い!”

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著者プロフィール

1980年生まれ。ブック・コーディネーター、クリエイティブ・ディレクター。NUMABOOKS代表、下北沢「本屋B&B」共同経営者。著書に『これからの本屋読本』(NHK出版)、『本の逆襲』(朝日出版社)など。

「2018年 『本の未来を探す旅 台北』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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