4歳の僕はこうしてアウシュヴィッツから生還した

  • NHK出版
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感想 : 30
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  • Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140817384

感想・レビュー・書評

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  • 以前に一度読んだことがあったことを、読み始めてから気がついた。
    ただ、『アウシュビッツの図書係』の後に読んだことで、重なる部分を違う視点で見ることができて、より立体的なユダヤ人迫害像に迫ることができた。
    この本の前半は住んでいた街でのゲットーの始まりからアウシュビッツでの生活に至るまでを描き、後半ではアウシュビッツを出てからの生活を描いている。
    アウシュビッツを出てからの生活についてはあまり読んだことがなかったので、興味深かった。
    また、この本の冒頭で述べられていたように、すでにこの経験から長い年月が経っており、記憶していることが、本当のことなのか、そのように想像していたのか定かではないため、あまり話したくなかったという点では実に誠実な対応に感心する。この本はそれが思い込みでないことを証明するため、さまざまな資料に当たりながら書かれたものだ。信頼に値する立派な体験記である。

  • ポ-ランド生まれの4歳の男の子(マイケル)は、ユダヤ人であるが故にアウシュヴィッツ強制収容所に送られました。解放されるまでの過酷な体験を語るにも、幼児期の記憶には確証がありませんでした。40数年後、当時のソ連軍が解放後に撮影した映像を見て、生存していた子どもたち中の自分を発見します。やがて〝ホロコ-ストはなかった〟と主張する輩が出現するにおよび、実娘の協力を得て調査が重ねられ、悲愴な事実が表れたのでした。マイケルの母ソフィ-の帰還、ソフィ—の姉(オラ)と杉原千畝など、次々と明かされる真相に驚かされます。

  • 若い世代向けに書かれているが、すべての世代におすすめできる心揺さぶるノンフィクション。

    著者の1人、マイケルはごく幼いころにアウシュヴィッツに送られ、奇跡的に生き延びた過去を持つ。マイケルがサバイバーとなれたのは、いくつかの偶然の所産だが、その陰には、一族の強い絆と、家族の深い情愛があった。

    長年、過去について沈黙を守ってきた彼だが、1枚の写真との出会いをきっかけに、アウシュヴィッツの証言者となることを決意する。
    当時4歳と幼かったマイケルのおぼろげな記憶を掘り起こし、裏付けたのは、同じ苦難を乗り越えた同胞のユダヤ人や家族の証言、そして丹念な文献調査だった。
    ジャーナリストであるマイケルの娘、デビーは、マイケルの話や他の人々のエピソードを再構成し、読みやすく、心打つ物語にまとめている。

    ユダヤ人コミュニティに迫るナチスの手、アウシュヴィッツでの残酷な出来事ももちろん胸に迫る。
    だが、それらに加えて、この物語を力強いものにしているのは、帰還後のマイケル一家の姿だ。何もかもを失い、ゼロから、いやマイナスから始めることになった彼らは、手を取り合い、挫けずに生き延びていく。
    「これもいつかは過ぎていく(ガム・ゼ・ヤ・ヴォール)」
    父の口癖であったこの言葉は、一家を支える灯となる。
    全員が命を長らえることはかなわなかった。けれど、亡き人々の思いもまた、次の世代につながれていく。


    これは、ユダヤ人としての民族の歴史にとどまらず、すべての人に響く普遍的な物語だ。
    理不尽な運命に負けず、毅然として立ち向かった庶民の歴史を生き生きと描く本書は、多くの人の心を捉えることだろう。


    * NetGalley(ネットギャリー)https://www.netgalley.jp/という、出版前の本のデジタル版ゲラが読めるサイトでいただいた本です。Amazonの書誌事項が登録されたようなので、こちらにも投稿します。

  • とても読みやすいが、とてつもなく重たい話だった。ユダヤ人というだけで気まぐれに殺されていく描写。人は人に対してここまで残酷になれるのか。奇跡、運、金、コネに恵まれアウシュヴィッツを生き抜いた4才のマイケル。アウシュヴィッツを出ても幸せにはならない。なぜユダヤ人というだけでこれほど憎まれるのか純粋に分からない。が、読めて良かった。

  • ユダヤ人の主人公ボーンスタイは、4歳の時に「死の収容所」と呼ばれるアウシュヴィッツから奇跡的に生還した。過去を語ることを避けていたが、ホロコースト否定論者たちに幼少期の写真が使われていると知り、証言を残そうと決意する。本書は、彼の断片的な記憶を、家族・親戚の証言や歴史資料で補強しながら、一つの物語として展開していく。

    彼はナチス支配下のポーランドのゲットーで誕生した。父がユダヤ人社会の有力者であったことから、当初は収容を免れていたが、終戦近くに収容所に移送された。子どもや女性たちが移送後すぐに命を奪われる中、祖母が彼を守り抜き、奇跡が重なったことで命をつなぐことになる。

    戦争の意味さえ知らない純粋な子どもの目線で、収容所生活の戸惑いや悲しみ、ひもじさが語られており、より胸に迫るものがあった。戦争がいかに弱者を傷つけ翻弄するのかを痛感させられた。

    深い傷を抱えた収容者たちにとって、収容所からの解放は、新たな試練の始まりを意味していた。生活を立て直す過程で、さらなる迫害や困難に直面した。ホロコーストの悲しい歴史を綴るとともに、第二の人生を力強く築いていったボーンスタイ家の人々の意志の強さに心を動かされた。杉原千畝との関係も記されており、日本とのつながりも感じられた。

  • 1940年にドイツ占領下のポーランドに生まれたマイケルは、ゲットーや収容所暮らしを余儀なくされたのち、わずか4歳でアウシュヴィッツに送られた。なぜ、子どもが次々に殺されていった収容所で、彼は6か月も生き延びられたのか?悪や絶望がうずまく世界の中で、ひたむきに前を向いて生きたマイケル一族の姿が胸を打つとともに、家族の絆や、希望を失わずに生きることの大切さをあらためて教えてくれる良質なノンフィクション。

  • 1940年にドイツ占領下のポーランドに生まれたマイケルは、家族の愛を一身に受けながら成長するも、状況は悪化し、わずか4歳でアウシュビッツに送られた。
    労働力にならない子供や老人は真っ先に殺されていったなかで、彼は6ヶ月後、奇跡的に生還を果たした。運もさることながら、母親や祖母、まわりの大人たちの、必死な努力での生還。
    幼子の目に映った収容所でのむごい出来事、生還できたとはいえ、そのすさまじい体験は一生背負って生きることとなる。
    今年もまた、もうすぐ敗戦の記念日がやってくる。
    余所事とか、他人事ではなく、ひとりひとりが考えていただきたい。

  • 【請求記号:936 ボ】

  • めっちゃながいけどあ読んでて意味のある本。知らなきゃいけないことだと思う。

  • ホロコーストの話は、「アンネの日記」から、映画や本をたくさん見たり読んだりしてきましたが、この作品が違うのは、解放後のサバイバーたちが、いかに困難な中を不屈の精神で生きてきたか、まざまざと見せてくれるところです。
    信仰の力も溢れてる。

    とりわけ、ヒルダおばさんの
    「前を、前だけを見て進むのよ」という言葉は、
    おそらくすべてのサバイバーたちが胸に秘めた思いでしょう。

    この作品にでてくるロシア軍は、ナチスからユダヤ人を救うヒーローたちで、今のウクライナ状況と真逆な中、複雑な思いが残りました。

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