自閉症の脳を読み解く どのように考え、感じているのか

  • NHK出版
4.08
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感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140816318

作品紹介・あらすじ

これまで自閉症は、「行動の特徴」をもとに研究や療法が進められてきた。コミュニケーションがうまくとれない、ひとつのことに執着するといった、いわゆる問題行動に対処する手法だ。しかし、その行動の生物学的な「原因」を知ることができたら、自閉症に対するイメージや姿勢は一変するだろう。なぜ公共の場で適切な振る舞いができないのか、なぜ突然癇癪を起こすのか-すべての原因は脳の中にある。最新の脳画像研究、当事者たちによる自己報告、さらに著者自身の体験から、自閉症への科学的知見と深い洞察が導き出される。自閉症者として体感したことを、科学者として分析するという著者独自の手法で、自閉症の人の本質を新たにとらえなおし、その強みや思考パターンまで解き明かしていく。自閉症研究の粋を結集させた待望の書。

感想・レビュー・書評

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  • 自閉症の当事者であり、動物学博士のテンプル・グランディンが自らの体験談もふまえて自閉症の世界を読み解いていく本。自閉症という一言では到底括れないこの症状は、人間ひとりひとりの脳がすべて違うように、症状もひとりひとりすべて違う。自分の症状を声に出して説明することが出来ない人達が沢山おり、まだまだ謎の部分が多いのが現実。そんな中でこの本はとても貴重だと感じる。皆が見えている線が自分には見えない、毛布の小さな繊維も棘で刺されているように感じたり、時間の流れがゆっくり過ぎてじっとしていられない。など。もちろん科学的な面からも沢山の解説がある。この本を読めば、不思議に思えた自閉症の方々の行動にも、寄り添って考えられる気がする。

  • 自閉症当事者の作者による、自閉症の脳の特徴や働き、思考パターン、その活かし方などについて書かれている。難しい内容も含むがとてもわかりやすく書かれており、自閉症側の視点から理解することに役立つ。何度か読み返したい。

  • 当事者が書いた分かりやすい本だ。自分のキャリアを考えるティーン、見直したい20代は、先ずは目を通すべき。貴方が自閉症スペクトラムと診断されてなくても。
    画像で考える、言葉・事実で考える
    、パターンで考える。自分の強みを理解し、まずは成果を出す。そのためのヒントの本である。また、診断名は役に立たない場合があることも述べている。
    自分は診断名は無いだが、イロイロと当てはまる。画像で考えるタイプなのだが、他の人もそうなのだと信じて疑うことは無かった。今になってみると、絵を描く練習をみっちりやり、アニメーションの世界に入り、コンピュータが得意なことを活かして3Dアニメに進むのが自分の転職だったと思っている。まぁ、当時は全く思いつかなかったけど。
    他の本だと、視覚優位、聴覚優位、音楽優位とでも言うところを、画像、言葉、パターンと置き替わっている。本書の定義の方が自分の強みを考える上では分かりやすいと思った。
    ティーンにはアスペルガーの診断を受け、仮にその傾向が出たら、自分のライフワーク、ライスワークは自分の得意から選ぶことを勧める。好きだからと言って苦手を選べば苦労だけでいいことは無い。
    一生の仕事は慎重に選びたい。

  • テンプルさんの脳画像! テンプルさんの描いた設計図! テンプルさんの年齢!
    それが目から鱗でした。
    内容は、科学的なところスキル的なところ半々、特に科学的なところが興味深かった。

    杉山さんの解説、最後のところの疑問になるほどなあーと、専門家の動向に注目。

    原著は2013年。
    ほんやく出版の速さがうれしい。
    比較的中堅どころの本屋さんでも見かけます。
    たくさんの人が興味をもって読んでくれるといいなと思いました。

  • 原著は2013年刊行だが、自閉症スペクトラムの人の脳画像を使って、発達している機能を探っていくという点で、今でも興味深い内容になっている。自閉症の入門書の1冊として、お勧めです。

    印象に残ったのは、次の2つ。
    1つは、自閉症スペクトラムは脳や遺伝子に関係があること。苦手な部分があれば、脳はそれをカバーするため代償的に他の機能を発展させる。テンプル氏の場合は、優れた画像処理能力で、動物にやさしい家畜施設を設計し、成功を収めている。
    もう1つは、自閉症スペクトラムの人は①画像、②パターン、③言語・事実の思考のいずれかで情報処理する志向性があること。

    自閉症の人が関心あるテーマを見つけて、①〜③の処理能力に適した教材や道具を使えば、他の人には真似できない凄い仕事ができるのだと分かった。
    また、既存の義務教育は、大多数の処理能力に寄せて、文字(視覚情報)をメインに教科書やテスト問題が作られている。だから、自閉症の人には合理的配慮が必要なのは明らかだとも思う。

  • 3.4

  • 493

  • ふむ

  • DSM-5の変更点に対する考察とそれらの特性に対して、広範に情報をまとめた本。診断名ではなく、その特性に注目すべき、という主張と根拠が著者の伝えたい事だと思うし、内容には納得感があります。

  • 実際に著者自身が自閉症という診断を受けていた方で、自閉症における脳がどうなっているかなど、非常に意欲的で、示唆に富んだ本。自閉症スペクトラム(スペクトラムというのは連続性という様な意味です)という言葉に表される様に、『自閉症』と俗に言う『健常者』という明確な境界線はあるのかなど、非常に考えさせられる良書です。

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著者プロフィール

1947年生まれ。世界各地の家畜施設を設計する動物科学者。コロラド州立大学で教鞭をとり、自閉症関連の講演や執筆でも活躍中。著書として『アスペルガー症候群・高機能自閉症の人のハローワーク』(ケイト・ダフィーとの共著、梅永雄二監修、柳沢圭子訳、明石書店、2008年)、『我、自閉症に生まれて』(マーガレット・M・スカリアノとの共著、カニングハム久子訳、学習研究社、1994年)、『自閉症の才能開発』(カニングハム久子訳、学習研究社、1997年)ほか多数。

「2009年 『自閉症スペクトラム障害のある人が才能をいかすための人間関係10のルール』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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