基地はなぜ沖縄に集中しているのか

  • NHK出版
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140815014

作品紹介・あらすじ

本土から沖縄へ。軍用地主と交渉担当者が語る、基地移転・集中の真相とは。

感想・レビュー・書評

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  • これは、面白かった。
    基地反対派が熱く言っていることを、ある意味冷静に主張しているだけかも知れないけど、「ある意味冷静に」ってところがポイント。

    日本国内の米軍基地が沖縄に集中していく歴史の読み解きも面白かった。
    というか、地政学上とか軍事的にとか、本土に基地を置かなくてもいい「理由」が、単に「言い訳」であることは、沖縄本島に住んでいても気付かないかも。

    基地反対派、容認派、関係者、当事者。その取材対象は広範で種々様々。
    海外の基地内に取材に入れるあたり、さすがNHK。行動力と権威があるなって感じもしますが、だからこそ「偏らない取材」となり得るのでしょうね。

    沖縄に生まれ育った者としては、基地の有り様は「差別」以外の何者でもないのですが、それを本土に伝えるためには、これほどの紙幅が必要なのか…

  • 沖縄出身者として、内地で仕事をしていると時々言われるのが基地問題について。「大変だよね」と言われることが8割、「でも基地なくなったら困るでしょ」(安全保障的な意味も、経済的な意味も含めて)と言われるのが2割という感じだが、基地問題というのは沖縄人にとっても非常に複雑で、軽々に「賛成」「反対」ということも難しい。かといって、たらたらと琉球処分から沖縄戦、土地収用や女児殺害事件のことを語っても場がしらける。結果、「けっこう複雑ですよ」といって流すことが多い。
    しかしそれではいけない。あまり知識はないけど大変だよねと思っている人たちに対して、これだけは伝えたい!ということを自分の中で準備しておかなければならない、と思っている。この本は、NHKらしく客観的に沖縄米軍基地のこれまでの経緯や現状を分析していると思う。沖縄の海兵隊基地は実際は内地から移転してきた部隊も多い、内地と違って民有地の割合が高い、米軍は世界戦略の中で沖縄基地も位置づけている。できれば多くの人に、この本と、直木賞の「宝島」を読んでほしいところ。日米地位協定の話があまりなかったのが残念な点。

  • 沖縄の米軍基地から大規模出動するような戦争のないなか、米兵たちは何を想定してどんな訓練をしてるのだろう。朝鮮半島有事?

  • 海兵隊、軍用地主、政府関係者、地元自治体関係者など、多角的に基地問題に対する沖縄の声を見つめていて、沖縄の基地問題に対する視野を広げてくれる。

  • 2013年春にはじめて沖縄に行って、そのときは前知識ゼロでまっさらなまま見たものを吸収した。そして今夏、二回目の沖縄。普天間も辺野古も、沖縄戦の様子が描かれた美術館も行って、沖縄国際大でセミナーも受けて、この本を読んで。知識を得ながら、なんて複雑な問題を抱えた場所なんだろうと何度も驚愕したし、なにも知らなかった自分に戦慄した。沖縄ではあらゆる利害関係が複雑に絡まり合い、どこから解していけばいいのかわたしにはとてもわからない。あらためて、多様な個人の集合体としての社会運営は、政治は、なんて難しいのだろうと。内地の人間である自分を振り返り、おそろしいほどの当事者意識の希薄さや、隅に隅に問題を追いやっていくことの残酷さや、個人の無力さや、なんだかもう、やりきれない。

  • 軍用地をめぐる紛争は知らなかった。タイトルの答えは過去の経緯という訳だけど、嘘つかれて土地を召し上げられた気持ちはさもありなん。

  • 沖縄の基地問題の「本質」をよく確認することができました。 本土の住人は、あまりにも安全保障に浸りすぎており、沖縄の基地問題をなおざりにしているのでしょうか。 「本質」は「差別」なのかもしれません。

  • トモダチ同士だからこそ日頃のマナーが大事に《赤松正雄の読書録ブログ》

     先週末に、二泊三日の沖縄調査の旅に出る前に、NHK取材班『基地はなぜ沖縄に集中しているのか』を読んだ。既に放映された二つの番組が基礎になって出版されたもの。私のかねての持論は、沖縄は準国家として扱われるべきということ。琉球民族の誇りを傷つけるようなことがあってはならぬからだ。しかし、日米沖をめぐる事態は仲井真県知事をして「差別だ」と言わしめるように、悪化の一途をたどっている。なまじっか中途半端に差別するよりも徹底して差別せよというのは、究極の逆説かもしれない。つまり、準国家というのは、47都道府県の一つと思うなということだから、とっておきの差別だ。要するに丁寧な関係を日本も米国も沖縄に対して作るべきだということに尽きる。

     沖縄への基地集中の最大の原因は、本土がそれを沖縄に押し付けたからということが、この本を通じてよく分かる。かつて、本土からの米軍基地撤去に熱心に取り組んだ公明党としても反省なしとしない。さらに、今ひとつは、かつては米軍のアジア戦略の拠点であった沖縄だが、今や、世界戦略の一大拠点へと変身している実態がうかがえる。この二点がこの本のエッセンスだ。

     キャンプ瑞慶覧で私がエルドリッジ氏と言い合いをしたことは既に記したが(23日付けブログ)、実は数日後に、防衛研究所での政党講義の際にも、話の中に折り込んだ。すると、最後の質問で、三人いた米国人研修生のうちの一人がやはり、日本人の犯罪に比べれば、米軍人の犯罪は少ないと述べた。東日本大震災におけるトモダチ作戦に見るようにあれだけ日本を支援しているのに、との思いが明らかにうかがえた。しかし、それは沖縄には通用しない。遠く離れた東北の地への支援をして、「沖縄に有り難みを感じてくれ、基地犯罪など矮小なことだ」と言っても無理があろう。

     あの「沖縄はゆすりの名人」発言をしたとして更迭されたケビン・メア元米国務省日本部長が『決断出来ない日本』において「トモダチ作戦は掛け値なしで日本という苦境に陥った友人を助けるという純粋な思いで開始された」と。それはそうだろう。しかし、沖縄ではそれとこれとは別との思いも強い。日本と米国とが手を携えて中国に対抗しようと言われても、それなら尚更日常のマナーをよくして欲しいと言いたくなる。

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著者プロフィール

全米を席巻した「トランプ現象」の実像を彼の選挙戦略から探るため、報道局国際部、政経・国際番組部の記者・ディレクターを中心に結成されたチーム。番組は2018年11月に放送された「シリーズ・アメリカ中間選挙」(前編・後編)。

「2020年 『AI vs.民主主義』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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