遺伝子医療革命 ゲノム科学がわたしたちを変える

  • NHK出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140814550

作品紹介・あらすじ

私たちはまさに医療革命の前線にいる。「サイズの決まった既製服を押しつける画一的な医療」から、「遺伝子レベルでの個人の違いに合わせる医療」へと、大きく転換していく流れの先頭に-癌、心臓疾患、アルツハイマーなど、私たちを脅かすリスクについて事前に知ることができるとしたら、傍観者のままでいられるだろうか?個人個人の遺伝子を解析し、それぞれに適した治療や薬を処方する「パーソナルゲノム医療」時代は、もはや始まっている。国際ヒトゲノム・プロジェクトを率いたトップ・サイエンティストが、遺伝子医療の未来をユーモアたっぷりに解き明かす、希望にあふれたサイエンス書。

感想・レビュー・書評

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  • 2010年時点での本

    現時点では家族の病歴を調べるのが最も効果的
    医者はまだ遺伝子医療に詳しくない
    遺伝子検査は明確な答えは出せないが意識改革にはなりうる
    遺伝子の問題が発現するには環境の影響も大きい

    消費者直販の遺伝子検査について
    現在検出可能なリスク因子は病気への影響力として大きくなく、大抵のリスク変動は小さい
    家族情報を考慮していないので気をつける
    致命的でも一般的でない遺伝子変異は検出しない。家族にいるなら特化して検査すべき。
    リスク予測は将来の調査で変わるので長期的に見直しが必要
    検査会社によって解釈は変わる
    研究対象の出身地域でリスク解釈は変わる
    対策が確立していないリスク予測への心構えが必要
    糖尿病や心臓病、高血圧など一般的なリスクへの対策はありきたりなので検査の必要があるか考えるべき。
    得られた情報を誰かに伝える場合、保険などで不利になる可能性もある


    感染症と遺伝子検査
    感染症へのかかりやすさとワクチンへの反応は個人のゲノム情報が有用
    いろいろな病気に体内の微生物群系マイクラバイオームが関わる、腸内フローラが肥満に関わる

    状況反応性うつ病や各種依存症には遺伝因子が関わるが環境要因が大きいため、環境を変えてリスクを下げる目的で使われる
    性格などは予測ができないし成人に対しては性格診断テストの方が有益

    薬理ゲノム学の課題
    遺伝子の差が薬の応答に影響するのは確実だが下記の理由から研究が進みにくい
    一部の人への有害性を調べるのは困難だし、製薬会社の利害にも合わない。コストをかけて適用範囲を減らすようなもの
    医者がやりたがらない
    遺伝子検査の結果が出るのに往復で数日かかるので、緊急時に間に合わない
    コストを負担する機関がやりたがらない

    解決策としてはあらかじめ個人の全ゲノムを記録しておいて必要に応じて引き出せるようにすること

  • 2003年のヒトゲノム全解読はどういう風に医療に影響を与えるのか。
    グーグルの共同創始者サーゲイ・ブリンは妻から個人相手のゲノム(遺伝子情報)検査会社23&ミーを創業するにあたって最初の被験者になってほしいと頼まれ調べた結果80才までにパーキンソン病になるリスクが74%と言う結果に衝撃を受ける。彼はブログに「自分がその病気になる前にその病気を支援する行動を起こすこともできる。ぼくはとてもラッキーだ。何十年も前から心の準備をしているってことだ」と書いた。

    個人の遺伝子を調べてわかることはどういう病気にかかりやすいかの統計的なリスクの情報であり、実際に病気になるかどうかは環境因が大きくてわからない。できることは自分の遺伝的な傾向から生活習慣を変えることなのだがその内容は例えば、タバコをやめる、バランスの良い適量の食事をとる、適度な運動を心がける、規則正しい生活をする・・・と実はゲノム検査をしなくてもアドバイスの内容は変わらない。実際のリスクを意識することが行動を変えるきっかけになるかどうかと言う違いのようだ。

    一方で病気になった際の薬の選択ではゲノム情報は有益である。薬の機能はある生理的な反応を助けたり、抑えたりするのだが生理的な反応の設計図は遺伝子に書かれている。そのため薬の効果や副作用の個人差はゲノム情報を知ることで効果的になり効果が薄く、副作用ばかりが大きい治療を避けることができるようになる。

    遺伝子の病気の代表ががんだ。傷ができときに修復するために細胞増殖を進める信号や抑える信号があり通常は遺伝子によりこの信号のオンオフが制御されている。細胞分裂の旅に遺伝子はコピーされるのだが実は毎日ミスコピーは起こっているが、DNAには修復機能があり問題にならない。分裂を繰り返すとだんだんと修復されない遺伝子が増えて行き中には細胞増殖の信号を出しっぱなしにする遺伝子がある、あるいは抑制する信号がでない場合も。つまりアクセル踏みっぱなしやブレーキが無い細胞があり増殖を繰り返すと腫瘍になり最後にがん化する。たぶんがんの転移と言うのはこの壊れた情報を持つ遺伝子が別の組織中に引っ越しすることだ。

    以前に読んだ立花隆の「がん生と死の謎に挑む」ではがんは治らない病気だったが特定の遺伝子と薬の組み合わせでは治療が可能なケースが増えてきている。他の病気も含めてパーソナル医療の時代が始まろうとしているようだ。しかし癌のリスクを高める点で喫煙に匹敵する遺伝的な因子は見つかっていないということからは遺伝的な要因以上に環境因や生活習慣の重要性が高い。

    原題は「The Language of Life」内容的にはこちらがあってると思う。しかしインパクトを考えると邦題もまあいいんじゃないか。今年の100冊目は遺伝子医療の入門書でした。

  • バイオインフォの先生が勧めていたので、読んでみた。
    コリンズさんはとても説明上手である、専門的な話も、具体例やたとえ話をうまく使って説明してくれるので、すらすら読めた。


    DNAの個人間の差が、いろんな病気に対する発症の差になったり、薬の効きづらさに関わっている事を知った。

    それが、わかる時代がやってくるときあなたはそれを知りたいと思うか。(これにはBRI方程式 [知りたい度=リスク×負担×介入] が目安となるらしい)


    今後遺伝子パーソナル医療の時代がやってくることをヒシヒシと感じた。そして、遺伝病が自分とは無関係ではないことも。


    「ヒトはみなミュータント(変異種)である。」
    これも、言われないとなかなか気づかない。
    自分は普通だ。スタンダードだ。と思い込んでしまっている。



    あと、衝撃的だったのは日本とアメリカの医療に対する個人の価値観の差。これを読む限りアメリカでは個々人の「リスク管理」の意識がかなり定着しているように感じた。


    一方日本では、そういう「リスクコントロール」の精神がまだそこまで育っていないのではないだろうか。(と思う)

    機会があれば、リスクについての本を読んでみたいと思った。


    遺伝的病気のリスクを考えるには、まずは家族の病気を調べるのが、現在でもかなり有力な方法らしい。おそるおそるだが、やってみたいと思う。


    (現在日本人の1/2がガンにかかり、1/3がガンで亡くなるらしい!!)

    個人のDNAを利用した医療には、大きな倫理的問題も存在する。
    が、それを克服して、ガンなどの病気も解決に向かうことを信じたい。



    機会があれば、リスクについての本を読んでみたいと思った。

  • ヒトをヒトたらしめているのは、DNAにほかならない。そして我々は、自分たちのDNAの配列情報を知った、初めての生物種である。未来が記述された指示書とでも言うべきゲノムを、自分自身が知るということは、どのような変革をもたらすのか?本書は国際ヒトゲノムプロジェクトを率いたトップ・サイエンティストによる遺伝子医療の最前線をレポートした一冊。まだ先の話だと思っていた遺伝子医療は既に始まっており、我々は、これまでの常識を覆す医療革命の時代へと突入しているのだ。

    ◆本書の目次
     序章 もう、知らないではすまされない
     1章 未来はとっくにはじまっている
     2章 遺伝子のエラーがあなたに出るとき
     3章 あなたの秘密を知るときがきた?
     4章 癌はパーソナルな病気である
     5章 人種と遺伝子
     6章 感染症と遺伝子
     7章 脳と遺伝子
     8章 老化と遺伝子
     9章 あなたの遺伝子にふさわしい薬をふさわしい量で
    10章 一人ひとりが主役の未来へ

    DNAの配列情報は、人種によって驚くほど似ているという。ヨーロッパ系、アフリカ系、アジア系の人びとのDNA配列を比べてみても1000文字に4文字程度の違いしかないのである。そしてこのDNA、どういう運命のいたずらか、ミススペルとも言うべきエラーをたびたび引き起こす。それが癌をはじめとする、さまざまな病となるのである。

    このDNAの解明によってもたらされる変化は甚大だ。本書では、世界中の情報アクセスに革命をもたらせた有名企業の創業者によるエピソードが紹介されている。彼は自分の遺伝子検査を行ったところ80歳までにパーキンソン病になる確率が74%と診断された。当人は、その可能性を少しでも減らすような暮らし方を選べると前向きに捉えていたが、皆が皆このような受け入れ方をすることができるのだろうか?

    もとい、この種の情報を知りたくないという人もいるだろう。ちょっと早めの癌告知のようなことをされて、誰もが前向きに生きることができるのかどうか。多くの人にとってその知りたい度は下記のような方程式であらわすことができるそうだ。

    知りたい度=リスク×負担×介入

    そのほかにも、問題は多岐にわたる。例えば、個人情報を管理するセキュリティの問題。遺伝情報による差別の問題、保険料の概念はどのように変化するのか。また、遺伝子による特許を取得している企業もあり、その是非が問われている。

    その一つ一つの問題や限界を慎重に提示しながらも、本書の姿勢はどこまでもポジティブである。間違いなく言えるのは、時代はすでに動き始めているということだ。我々は自分の体の中に埋め込まれたタイムカプセルを、開ける時が来たのだ。その読み方を学び、人生に活かす方法も、ひょっとするとDNAに記述されていた情報なのかもしれない。

    運命づけられた受動的なものなのか、能動的に接することができるものなのか、病気や死への新たな向き合い方を考えさせられる一冊である。

  • 遺伝子医療と言っても、単体遺伝子の疾患に関しては発見があるかもしれないが、複合的遺伝子要因かつそれ以外にも絡んでくる場合は、まだまだこれからといった感じの感想。ただ遺伝子検査による、治療の選択、服用する薬を個別にカスタマイズできることが可能になるのは、良いことである。遺伝子検査で今後起こりうる病気もわかるわけだが、そこで大事になるのが個人の選択権。
    病気の予防や治療をほかのだれかにコントロールされるのではなく、自分でコントロールすること。
    これが今後問われることになるのかなと思う。

  • 全10章。遺伝子検査によって病気のなりやすさを知ることが、私たちの人生にどのような影響があるのか。また、遺伝子のバリアントを知ることによってより個別化医療が進んでいくこと。概括すればそういった内容だが、具体例が示されることで一層好奇心が掻き立てられた。
    これからの世界を生きていく中で、読んでおいて損のない良書だと思う。

  • 楽しかったきがする
    RNAワクチンとかの話とかもなかったっけ?
    バリアントの話もあったっけ?

  • ふむ

  • 私たちはまさに医療革命の前線にいる。「サイズの決まった既製服を押しつける画一的な医療」から、「遺伝子レベルでの個人の違いに合わせる医療」へと、大きく転換していく流れの先頭にー癌、心臓疾患、アルツハイマーなど、私たちを脅かすリスクについて事前に知ることができるとしたら、傍観者のままでいられるだろうか?個人個人の遺伝子を解析し、それぞれに適した治療や薬を処方する「パーソナルゲノム医療」時代は、もはや始まっている。国際ヒトゲノム・プロジェクトを率いたトップ・サイエンティストが、遺伝子医療の未来をユーモアたっぷりに解き明かす、希望にあふれたサイエンス書。

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