- Amazon.co.jp ・本 (720ページ)
- / ISBN・EAN: 9784140814284
作品紹介・あらすじ
クリックひとつで戦闘準備完了。ハイテクは、戦争のスタイルを根本から変えた。今後、技術開発はどこへ向かい、人類にどんな影響をもたらすのか。軍、産業、政治、それぞれの思惑が複雑にからみ合う現状と、新しい戦争がつくり出す難問の数々を、安全保障問題の専門家が初めて明らかにする。
感想・レビュー・書評
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「戦争請負会社」や「子ども兵の戦争」のピーター・シンガーが、現在の戦争の最先端であるロボット兵器についてその現状やそこから生じる社会的な変化、倫理的な問題について600ページに渡りまとめあげる。
上空を飛ぶUAVから地上を走る武装ロボットまで、イラク戦争以降いかに無人兵器が量、種類共に増えているかに驚かされる。人命を危険にさらさない為の兵器の無人化は指数関数的なテクノロジーの進化によってかつてない勢いで戦争の形を変えている。
戦争のハイテクノロジー化は何を生むのか。それが非常に多岐に渡り書かれているのがこの本の魅力だ。戦争の敷居を下げる問題、相手の憎悪を招く問題、指揮や責任の不明瞭さ、ロボットへの愛着、ロボットの反乱の可能性などなど、この本に書かれている今現在実現している新しい戦争の形とそれが引き起こす問題は本当に衝撃的だ。
テクノロジーの爆発的な進化は社会を大きく変え、それを見ようとする人も見まいとする人も大きく巻き込んで今までなかった倫理的な問題を生んでいく。おそらくそれはこの本に書かれている戦争というものに留まらないだろう。
前二作を上回るシンガーの最高傑作。
シンガーの書籍は戦争について書かれた本だが、広く社会、現代を考える上での必読書でもあると思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
新しい技術が生まれる戦争。そんな戦争にロボットはうってつけだ。
戦争へのロボット技術導入に関して、様々な当事者とそれぞれの思惑がうまく記載されている。
これが進展すると、今度どうなるのか。倫理面についての考察もしっかりとされている。 -
一生懸命読んだ。ロボットを使うメリット、デメリット。そもそもロボットとか戦争とか関係なく、情報へのアクセス性が向上することで、管理職がマイクロマネジメントを始めてしまう、という話が面白かった。
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社会
軍事 -
SFではない。軍事用ロボットの世界を描いたノンフィクションである。
日本のロボット開発は民生・産業用に限られているが、米国では軍事用ロボットこそが主流となっている。たとえば、人気の掃除ロボット「ルンバ」のメーカーも、主に軍事用ロボットを開発している企業なのだ。
著者は米国の大手シンクタンクの研究員で、安全保障問題の専門家。
一般向け著作の第1作『戦争請負会社』では、国の軍務を代行する民間軍事企業の台頭を描いた。第2作『子ども兵の戦争』では、各地の戦場で子どもたちが兵士にされている悲しき現実を描いた。“21世紀の戦争が、過去の戦争と比べてどう変容しつつあるか?”が、著者の一貫したテーマなのだ。
この第3作もしかり。4年を費やしたという綿密な取材をふまえ、ロボットが戦争のありようを根幹から変えつつあることを浮き彫りにしている。
本書が描く最先端の戦争の現実は、恐るべきものだ。たとえば、米軍は一昨年の時点で5300機もの無人飛行機を所有しており、米国からの遠隔操作でイラクやアフガニスタン上空に飛ばすことができる。
また、すでにイラクでは1万台以上の地上用軍事ロボットが米兵を補佐している。自律型のロボット兵士が人間抜きで戦うSF的世界も、やがては現実となろう。軍事用ロボットを製造している国も、約40ヶ国にのぼるという。
そして、著者は後半で、軍事用ロボットの普及の先に何が起こり得るかを多角的に展望していく。
軍事用ロボットは使う国の戦死者を減らすが、一方でさまざまな危険をもたらす。誤作動や暴走による惨事、テロ組織が軍事用ロボットを入手する可能性、ロボットに殺される側の貧しい国における憎悪の増大……。兵士たちの心も変容し、殺人への抵抗感が薄れる。それらのことをふまえ、著者は軍事用ロボットの普及で戦争がいまよりも起きやすくなる、と予測している。
グロテスクな現実と未来を活写して、戦争や科学技術のもつ意味についての人類史的考察に読者を誘う、衝撃の大著。 -
すでに戦争はロボットとAIが主役になっていること、また、その変化によって戦争に関わるあらゆる側面、人や組織、戦略やテロリストまで、変化していることを詳細に書き連ねてある。
驚くべきとこはこの著作自体は何年も前の内容であることで、今の現場ではさらに進んでいることが推察され若干悪寒を覚えた。
かなりの厚さだが読みやすかった。全体を抑えかつ詳細に書いてあるので戦争の今を抑えるのに必読だと思う。 -
ある意味とても人間的な営みである戦争の場に、機械が介入することの影響。直接自分の体を張ることなく、前線から遠い街中のオフィスで戦争することができる。殺人への恐怖やためらいが減ることと、軍人としてのアイデンティティの希薄化。
技術のお陰で、戦争がプロフェッショナルのものではなくなり、非熟練者や戦闘能力の低い年配者でも戦えるようになる。技術革新の一般的な傾向ではあるが、他の分野と異なり、戦争とは本質的に人を傷つける技術。素人でもできる戦争とはテロを意味する。しかもプロフェッショナルと異なり、テロリストに国際法や人道的配慮は無い。技術進歩は伝統的な暴力装置より、テロリストを利することになるかもしれない。
本書で何度も登場するロボット掃除機ルンバについて、家庭内の地図情報を外部に販売するというニュースが最近あった。アイロボット社は本来兵器を作る企業であったこと、そして本書でこれからの戦争では都市戦が中心になると考えられていることを重ねて考えると、むしろ当然予想されたことだったのか。
ロボットが戦争で人を殺した場合、責任があるのは司令官か、出荷したメーカーか、プログラマか。手段は違えど[ http://booklog.jp/item/1/4140810106 ]にやや通じる倫理的な課題。著者は技術に倫理が追い付いていない状況を指摘しつつ、生命工学分野における倫理の議論が先例となるかもしれないと示唆する。
人間が介入しなくなることで人間性が失われる一方、ロボットと一緒に戦う兵士たちはロボットに愛称をつけ、仲間意識を覚えるようになるという現象が面白い。人間は一緒に仕事をする相手に対し、なんらか人格を期待せずにいられないのか。
ところで本書は2010年の刊行。2005年の愛知万博で、日本のロボット工学は最高と評価された旨の記述がある。その評価は今やどうなっているのか、と危ぶんでしまうことが悲しい。 -
もし書店でこの本を手に取れたら、634ページからの「解説」を最初に読むといいだろう。紹介文として書こうと思ったことはほぼ全てここで語られている。
前半では戦場で使われるロボットや無人機の歴史と現状が語られる。現状と言っても2007年頃に取材しているので、今ではさらに進化しているだろう。その展開スピードの速さも重要なポイントだ。そして後半はロボットや無人機が戦争に使われることで戦争や軍隊のあり方がどう変わりつつあるかを解説している。
前半のテーマに興味があって読み始めたが、より強く印象に残ったのは後者だった。無人機の導入は自国兵士の死傷者を劇的に減らす。しかし安全な場所からリモコンで爆撃機を操縦しているパイロットは本当に軍人として戦争をしていると言えるのだろうか?敵を殺すことができるが殺される危険はほとんどゼロという彼らは、軍人としての誇りや尊敬を得られるだろうか?
9.11で幕を開けた21世紀は非対称戦争の時代と言われてきた。だが実際はそれ以上に大きく「戦争」の姿が代わりつつある。無人の荒野で自律型ロボット同士が戦う日が来るのも、そう遠くはないだろう。はたしてそこは、戦場と呼べるだろうか。
また、しばしば戦 争に反対する理由として挙げられるのは自分や子供たちが死んだり傷ついたりする危険だ。では自分たちの安全は確保されていて、海の向こうにいる悪 い奴らをやっつけるだけなら、反対する理由がなくなるのだろうか。いや、そうではないはずだ。殺されることだけでなく、殺すこともまた忌むべきことであるはず だ。もし自分の大切な人は決して殺されたりしませんと保証されても、どこかで誰かが殺されるなら、やはり私は反対したい。 -
湾岸戦争の真の主役は今考えるような無人システムではなく、新しい誘導式のミサイルや爆弾、いわゆるスマート爆弾だった。
アメリカ軍は特にハッキングに弱い。
これからの戦争はロボットが行うようになると、人間の心理的な負担は軽減されるだろう。