インビクタス 負けざる者たち

  • NHK出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140814062

作品紹介・あらすじ

1995年、ラグビーワールドカップ。南アフリカチーム、奇跡の優勝の陰には、ネルソン・マンデラがいた。彼の真の目的は…。マンデラの全面的な協力を得たジャーナリストによるノンフィクションの傑作。

感想・レビュー・書評

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  •  ノンフィクション。ネルソン・マンデラの伝記とも言えそうだし,南アフリカ共和国の歴史の本とも言えそうだし,南アフリカ共和国のラグビーチーム・スプリングボクスを巡るお話とも言えそうな,不思議な本でした。本書をもとに,クリント・イーストウッド監督が映画を作っています。このことはこのブクログでも先に紹介しました。その映画を見たから,本書を読んだんです。
     アパルトヘイトという人種差別を法律で規定しているという前近代的な国だった南アフリカ共和国。反政府活動をしたネルソン・マンデラは数十年収監されていたにもかかわらず,わが国に民主主義を実現するという意志はとても固かった。希望を失わずにいたというだけでも,すごい人物です。
     国際的な世論に対応するしかなくなった当時の白人大統領は,秘密裏に獄中のネルソンマンデラに会い…。
     と,あらすじを書いていくと切りがないので,ここらでやめよう。

     とにかく,これまで差別する側だった白人たちが,多数派の黒人が支配者になることを極端に恐れていること,反対に,これまで差別されてきた黒人たちが,白人たちに仕返しをしようとすること。この両方は,至極もっともな気持ちだと思います。しかし,これが現実になれば,南アフリカ共和国はまたまたぐちゃぐちゃの世界になるだけです。
     そこを,黒人初の大統領ネルソン・マンデラはどうしたのか。恐れる白人たちにどのように働きかけ,これまでの鬱憤を晴らそうとする黒人たちにどう働きかけたのか。それが本書の主題です。
     こんな大統領がいたのか!と思うほど,素敵です。
     ビックリです。
     現在の南ア共和国には何も問題がないわけではありません。黒人間の貧富の差も大きいと聞きます。仕事にあぶれた白人もいるようです。
     しかし,ネルソン・マンデラが打ち立てた新しい国は,しっかりと歩んでいくことでしょう。
     いい本を読みました。久しぶりに,「早く先を読みたい」と思うような本でした。

  • 後半は流し読み。
    ネルソン・マンデラが、スポーツをどう政治に生かしたかが興味深かった。

  • 南アフリカとマンデラについて、人種差別を克服する奇跡を巻き起こした大きな要因の一つであるラグビーワールドカップに焦点を当て書かれたノンフィクション。ノーベル賞受賞者マンデラの人間性を理解できた。印象に残るフレーズを記す。
     すぐれたおとぎ話に欠かせない条件が2つある。内容が面白いことと、得た教訓がいつまでも色あせないことだ。
     「頭に訴えてはいけません」「心に訴えることです」

  •  クリント・イーストウッドが監督した同名映画の原作にあたるノンフィクションである。仕事の資料として読んだ。映画もよかったが、本書もていねいな取材をふまえた力作だ。

     1995年のラグビー・ワールドカップで南アフリカ・チームが成し遂げた奇跡の優勝と、そこにネルソン・マンデラ大統領が果たした役割を追った作品。
     アパルトヘイト撤廃後も、南アの黒人と白人の間に依然としてあった深い溝――。マンデラはワールドカップを、その溝をなくすための突破口にしようと考えた。そして、並外れたリーダーシップと人格の力で、その計画を見事成功させたのである。

     マンデラが大統領になったとき、黒人たちを虐げ、自らを27年間も牢獄に追いやった白人たちに、報復することもできた。そうしたほうが、黒人たちの共感は得やすかっただろう。しかしマンデラはそうせず、かつては敵だった白人たちと手を携えて国を動かしていく道を選んだ。

     そして、その選択のシンボルとして、ワールドカップにおける南アチーム「スプリングボクス」を用いたのである。アパルトヘイト時代、ラグビーは白人たちのスポーツであり、黒人たちの関心は薄かった。しかしマンデラは、自らが率先してスプリングボクスを応援することで、国中を熱狂の渦に巻き込んでいく。

    「スポーツには、世界を変える力があります。人びとを鼓舞し、団結させる力があります。人種の壁を取り除くことにかけては、政府もかないません」(ネルソン・マンデラ)

     もちろん、ワールドカップを通して南アが一つにまとまったのは、マンデラというたぐいまれなリーダーがいたからこそである。本書は、マンデラの行動を通してリーダーのあるべき姿を語ったリーダー論としても読める。

     『インビクタス』に先行してマンデラを描いた映画に、『マンデラの名もなき看守』があった。あの映画においてもそうであったように、マンデラという人は、敵を打ち倒すのではく、敵をも味方に変えてしまう「ソフトパワーのリーダー」なのである。本書の著者も、マンデラを「プレジデント・オブ・ヒューマニティ」と評している。

     映画『インビクタス』のストーリーに対応しているのは本書の後半で、前半ではそこに至るまでのマンデラの歩みが語られている。前半もよくまとまっているのだが、たんに映画の原作が読みたいという人は後半だけ読んでもよいかも。

  • 友人から借読。返却済み。斜め読みしか出来なかったので読了にはしない。

  • あの頃、ソビエト連邦の解体、ベルリンの壁の崩壊などの世界の構造があれよあれよ、と変わっていく流れの中で、気づいていたら南アフリカのアパルトヘイト政策も終わっていました。その後21世紀に入り、BRIC’SのSは南アフリカということで高度経済成長が喧伝されたり、2010年にサッカーW杯が行われたり、どんどん普通の国として国際社会の中に位置づけられています。エディ・ジョーンズの日本代表の南ア戦の時もラグビー強豪国としてしか認識していなかったし…でもネルソン・マンデラ釈放の1990年から1995年のラグビーW杯南アフリカ大会までいかにありえないような劇的な革命が起こったのだということに驚きました。とにかくマンデラの人を魅了する力がすごい。まるで魔法みたいに次々と敵対する側から尊敬を得ています。それは本書の題名であるインビクタス、負けざる者たちの由来になっている強い信念によって生まれるパワーなのかもしれませんが、自分とってはインビクタスというよりトレランス、度外れた寛容性に度肝を抜かれました。BREXIT、トランプ、シリア難民、あまりに世界を覆うイントレランス時代に、あまりに美しい態度です。それが夢想的な美学なのではなく、現実的な解決の方法論なのがすごい。これはマンデラという傑出した人物だけが成し遂げられる奇跡なのか?それとも敷衍できるメソッドなのか?そして、もっと知りたいのが27年間の獄中で輝きを増したリーダーシップについてです。不在の存在感はいかにして発揮しえたのか?今度、映画も見てみます!

  • マンデラとラグビーかあ…しかも映画原作かあ…あんまり興味わかないなあ…と結構な気乗り薄で読んだんだけど、何しろ全然マンデラの事も南アの事も詳しく知らないこともあって結構ぐいぐい読めた。ワールドカップの映像見てみたい。

    ただちょっといくら偉大な人物だったとしても神格化し過ぎてないか?というのが流石に気にはなった。

  • 住宅、教育、水道、医療など人間として最低限必要なものも黒人には与えていなかった。

    マンデラは「デクラークはノーベル平和賞受賞に値しない、この賞は自分とANCに与えられるべきものだ」と考えていた。デクラークは、アパルヘイトによって南アフリカの黒人が不当な目にあっていたことを述べなかった。

    マンデラの秘密兵器はであった人をみな好きになれるという自信。さらに自分も絶対に好意をもたれると思っている。その過剰な自信は相手に寄せるあからさまな信頼と対になっており、この魅力的な結びつきには、敵を武装解除させるほどの力があった。

  • 映画がとても良かったので、原作本も読んでみました。
    本を読むと、映画はかなり端折っているのがわかります。本ではマンデラの政治家としての手腕がより良くわかるし、南アフリカの複雑な状況、白人でもアフリカーナと呼ばれる人やイギリス人など人種が様々で階級に分かれているし、黒人もカラードと呼ばれる混血や、言葉もアフリカの言葉が喋れない人もいたりと、かなり複雑です。
    そんな南アフリカで闘ってきたマンデラは、かなりの策略家でもあるし、日本語でいうとひとたらしとでもいうのでしょうか、会った人の心を捉える力を持っていたようです。
    ラグビーのワールドカップは、この本では最後の方でそんなに枚数はさかれていないのですが、やっぱり感動して読んでて涙出ます。
    ナショナルチームの持つ力、ある意味魔力とも言える力があるんだなとつくづく思いました。

  • 原題はPlaying the enemy (仇を参加させる?)ということで、南アフリカの白人支配の象徴だったラグビーで国民が一体感を待つ話。映画化されたそうだ。
    1994年にマンデラが大統領になり、1995年に南アフリカでラグビーワールドカップが開催された時、実は黒人と白人の溝は全く埋まってなかった。スプリングボクスの優勝と国民の一体感の感動的な話。
    最後の盛り上がりななかなかなのだが、前半のマンデラの半生記の部分が結構長い。人名、組織名が交錯し、読むのが辛い。マンデラが人間として魅力で白人指導者達を陥落させていく様子も、神格化されているようで、説得力に欠ける。
    スポーツがもつ力はあると思うが。

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