迷惑な進化 病気の遺伝子はどこから来たのか

  • NHK出版
4.16
  • (74)
  • (68)
  • (33)
  • (6)
  • (0)
本棚登録 : 665
感想 : 83
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (283ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140812563

作品紹介・あらすじ

私たちの遺伝子には、さまざまな危機的環境を生き延びてきた歴史が蓄積されている。もしあなたが糖尿病なら、それはおそらく17世紀の短い氷河期に端を発している。急に訪れた極寒状況で血糖値が高いために生き残った人びとの子孫であることを意味するのだ。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • おそらく原文が良く,翻訳も良いため,どんどん引き込まれ,読み進む.訳者あとがきでわかったが、共著者はクリントン大統領のスピーチライターだそうで,人心をつかむのは得意中の得意のようだ.多少用語の使い方に難があるが(誤訳?),それがあったとしても末梢のことで,面白さが勝っている.点と点をつなぎ,遺伝子の歴史をデータを駆使しながら紐解いていく様は,その推論が事実か否かの証明は困難であることを差し引いても痛快.理系じゃない人にも楽しめる内容だと思う.

  • 図書館で予約していて、半年くらい待ってようやく読めました。

    これから健康に過ごすために知っておきたいこと
    をテーマに読んでみた。
    =====
    ①鉄分の摂取について
    不足する→貧血や息切れ
    多すぎる→ヘモクロマートシスという病の可能性も。
    人間にとって必須成分であるが、細菌や病原菌にとっても鉄は必須成分。過剰に鉄を投与することで、細菌の手助けをすることにもなる。

    ②太陽光の影響について
    コレステロールは、太陽光(紫外線:UVB)にあたるとビタミンDを作り出す。
    サングラスは、体のバランスをおかしくし、余計に紫外線を吸収する恐れも。
    ※目から入った日光は視神経を通じて、ホルモンバランスをとる。

    紫外線は葉酸(ビタミンB9)を破壊する。
    黒人のほうが紫外線を吸収しにくい。白人は吸収しやすい。
    日光から葉酸を守るための進化。

    ③動物を媒介にした感染
    動物のふんにいる細菌を手で触ることに、人間の体内に入る。
    ねこのふんにいるトキソプラズマは、統合失調症の可能性が指摘されている。
    人間に感染しないと思われていたものも、突然変異により進化する。

    ④遺伝子は進化する
    生殖可能な年齢まで残ったものが強い。
    強い遺伝子のみが残る→進化。

    ⑤親から引き継ぐもの
    エピジェネティクス(後成遺伝学)…
    妊娠初期の食生活が胎児に影響する。
    もともとオフになっていた遺伝子のスイッチをオンにするイメージ。
    もともと持っていた遺伝子をオフにして「発現」させない
    成分があることがわかった。
    ※DNAのメチル化

    母親自身が妊娠に気づいていない妊娠初期が重要。
    ジャンクフードは、高カロリーなのに栄養成分がなく悪い。
    栄養分が乏しい体験をした胎児は、節約型の代謝になる。

    一生分の卵子は生まれた時にすでに作られ持っている。
    すでに母親の影響を受けているということ。祖母の影響も受ける。
    ※メチル化をおこす可能性があるので、妊娠期の薬は慎重に。

    いい時代には男児が多く、つらい時代には女児が多く生まれる傾向がある。

    水中出産にはメリットがある。
    人類はかつて水中生活をしていたという、人類の起源「アクア説」に基づく。

    =====
    私はこれまで、「進化」というものを正しく理解していなかった
    ということにこの本を読んで気づいた。
    淘汰され、生き残ったものが強い。
    この繰り返しが我々の世界を形作った。

    遺伝子と進化についての理解が深まったことにより、
    子供が生まれることの神秘と責任感が増すとともに、
    これからの人生を細菌や病気とどう付き合うか、折り合いをつけていくか、
    考え方の参考になった。

  • 進化について、久々にめっちゃくちゃ面白い本に出会いました。
    多くの病気が遺伝的な要素を持っているけれど、じゃあなんでそんな遺伝子を持った人たちが生き残ったの?と。
    鉄分、糖尿病、アルコール分解能力に高血圧、みんないろんな「体質」を持っていて、自分と異なる体質を羨ましく思ったりもするけれど、そもそもなんでそんなに違いが出るんでしょう、と。

    人類はいままで多くの困難にさらされ、多くの病気に罹り、多くの死者を出してきた。その中で生き残った人たちは、当時は「特殊」な遺伝子プールを持った人たちで、「たまたま」生き残ったために、スタンダードに成り上がった。
    一個体の寿命が長い人類という種の比較的少ない世代交代サイクルの中でこれだけ進化論がうまく適合されることは正直驚きます。
    奴隷貿易と高血圧など、地球・生物の歴史で見たらごく最近の話がすでに遺伝子プールに影響しているんですね。

    新しく、興味深い発見に満ちており、同時に「僕らはいつか壊れる、だから今の健康に感謝すると同時に、次の世代に引き継ぐ準備しといてね」という明るいメッセージが素敵。読んでください。

  •  進化とは本来、自分の生存と種の保存に役立つ遺伝形質を好むはずなのに、なぜこれほど多くの「病気をもたらす遺伝子」が多くの人に受け継がれ、広まってきたのか……という謎を進化論から説明する、ユニークな論考。
     著者自身が「ヘモクロマトーシス」という遺伝性の病気の持ち主。放っておくと体の中に鉄が蓄積して、肝臓やすい臓にダメージを受け、ついには死に至る。この遺伝子は西ヨーロッパ人の30%以上が保有しているという。
     なぜこんな遺伝子が、これほどまでに広まっているのか……。〈40年後にかならず死ぬとわかっている薬をあなたが飲むとしたら、その理由はなんだろう? 答えはひとつ。それはあなたが“明日”死ぬのを止めてくれる薬だからだ〉 じつは、ヘモクロマトーシスの人は、伝染病に強い白血球の持ち主でもあった。14世紀のヨーロッパで人口の3割を死に至らしめたペスト禍を生き延びた人たちに、この遺伝子の持ち主が多かったのは必然だった。
     このほか、糖尿病をもたらす遺伝子は「氷河期を生き延びるためだった」説や、肌の色がビタミンD生産と紫外線の害のバランスで決定されてきたという話、ヨーロッパ人がアジア人に比べてアルコールを分解する酵素をいっぱい持っているのはなぜか……みたいな話もおもしろい。統合失調症の原因が、もしかしたらトキソプラズマ(ネコに寄生したときだけ症状を起こすとされている脳内寄生虫だが、人間にも寄生する)が影響を及ぼしているのかもしれない、という話はネコを飼うのが少し恐ろしくなるね。
     人間がいかに「いきあたりばったりに進化してきた」かということ、そしてその進化が現在の環境とミスマッチなせいで多くの病気がもたらされているということが平易な文章で要領よく書かれている。大学時代の生物の講義で「鎌状赤血球」の話を聞いたことを思い出す。あれは赤血球が変形しているせいで悪性の貧血にかかるのと引き替えに、マラリアに強くなるという話だった。この本を読んで、鎌状赤血球のような事例が「特殊事情」ではないこと、むしろ世界中のあちこちで無数に行われてきた結果、いまの人類ができあがっていることが理解できた。
     本書のすべてが「正しい」かどうかは異論あると思うけれど、読み物としてはすっごくおもしろい。

  •  私達が常に悩む「受け継がれていく病気」(高血圧であること、血糖値がもともと高いetc.)などは、迷惑なものである。しかし、そのような進化は、自然淘汰されてもおかしくないはず。そもそも、何故このような遺伝子が後世まで続いていくのか?それには、過去に我々の祖先が受けた遺伝子の「進化」が関係しているのである・・

     ということで、非常に面白い進化論。「進化とは発展的なもので我々をよくするものである」という常識を一掃してくれる、深化とは何か、そして大きなスパンでの生命論を伝えてくれる、非常に科学的ウィットにとんだ本。

  • GUEST 062/漫画家・内田春菊:スミスの本棚:ワールドビジネスサテライト:テレビ東京 http://www.tv-tokyo.co.jp/wbs/blog/smith/2012/08/post133490.html

  • 進化というと、良い方向に変わる、進むことを想像する。
    しかし、周りを見れば難病に苦しむ人は世界中にいる。

    本書では、我々が苦しめられる病気の中には
    人間が進化した結果、存在するものもある
    という事が書かれてあります。
    私はなるほどなぁと本当に楽しく読めました。
    「今」だけを見ると必要の無い症状も
    「過去」には必要だった。
    ロマンがあるわぁ。

    理系文系問わず、楽しく読める内容だと思いました。

  • 生きるために進化した話。
    読み物としておもしろい。

  • ぐんぐん読ませる楽しい科学「風」読み物。あくまで「風」です。
    本書をそのまま受け売りすると、スケプなヤツとかメッドな人から憐憫の眼差しを注がれてしまいます。
    相手を選び面白さを伝えたほうがいいです。

    脳みそトリビア本に売れ筋を奪われたとはいえ、遺伝子様のご威光、いまだ健在。
    環境適応と進化は一緒くた、獲得形質は遺伝子(しかもDNAに!)刷り込まれ、あの難病もこの容姿もDNAに組み込めば、ぜーんぶ説明がついちゃうのさ!…なんだそうです。…まあ、楽しくて前向きな科学「風」読み物には、違いないです。

  • h10-図書館2017.12.6 期限12/20 読了12/10 返却12/11

全83件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

■シャロン・モアレム(Sharon Moalem MD, PhD)
受賞歴のある科学者、内科医、そしてノンフィクション作家で、研究と著作を通じ、医学、遺伝学、歴史、生物学をブレンドするという新しく魅力的な方法によって、人間の身体が機能する仕組みを説いている。ニューヨークのマウント・サイナイ医学大学院にて医学を修め、神経遺伝学、進化医学、人間生理学において博士号を取得。その科学的な研究は、「スーパーバグ」すなわち薬が効かない多剤耐性微生物に対する画期的な抗生物質「シデロシリン」の発見につながった。また、バイオテクノロジーやヒトの健康に関する特許を世界中で 25件以上取得していて、バイオテクノロジー企業2社の共同創設者でもある。もともとはアルツハイマー病による祖父の死と遺伝病の関係を疑ったことをきっかけに医学研究の道に進んだ人物で、同病の遺伝的関係の新発見で知られるようになった。希少疾患や遺伝病への深い洞察は、本書においても大きく活かされている。

「2020年 『DNA再起動 人生を変える最高の食事法』 で使われていた紹介文から引用しています。」

シャロン・モアレムの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
デールカーネギ...
J・モーティマー...
村上 春樹
フランツ・カフカ
シーナ・アイエン...
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×