- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784140057285
作品紹介・あらすじ
小泉八雲とセツ。2人の奇跡の出会いが、異文化を乗り越え、『怪談』を生みだした。
ギリシア生まれのジャーナリスト、ラフカディオ・ハーンと上士の血を引くセツ。2人の宿縁の出会いと文学作品に結実するまでをドラマチックに描く。日本に憧れ東京に上陸したハーンは、英語教師として松江に赴任、誤解からヘルン先生と呼ばれるようになる。版籍奉還により生家は財産を失い、働く場も失ったセツは旅館に滞在中の異国人の女中として奉公する。はじめは会話にも不自由するが、ハーンの日本男性にはない優しさ、セツの武士の娘である毅然とした佇まいに互いに惹かれあうようになる。あるときセツの語る説話にハーンが高い関心を示した…。こうして奇跡的に出会った二人が愛を育み障害を乗り越え、『怪談』を世界に発表する。
感想・レビュー・書評
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松江の美しい情景が目に浮かぶような描写の数々。
さすが脚本家だなと思わされた。
ドラマを見ているように章が展開していき、とても読みやすかった。
異国からやってきて、ここまで日本を深く愛し理解してもらっていることがありがたい。
同時に、日本という国にもっと誇りをもってもいいんじゃないかという気持ちになった。
自分の中での小泉八雲像より、かなり陽気な人物として描かれていて親しみがわいた。
いつか映像化されたらいいなぁ。 -
小泉八雲とその妻セツの話。
まず、とても読みやすかった。歴史物、史実ものは人が練ったプロットではないので、展開があまりなかったり、状況説明続いて眠くなったりするのに、これはサクサク読めて、そこに感動した。NHKの篤姫や江の脚本を書かれた方だそうで、状況見えるような話の流れに大河の脚本家かぁ、と納得しました。…とここまで書いてからググったら、これもNHKでドラマ化されてました。
小泉八雲の生き方を全く知らなかったので、勉強になりました。明治維新の頃の武士の生活も垣間見れます。
ちょっと難しいのと、妾という単語でてくるので、中学校以上。児童向け小泉八雲伝記をよんでみたくなりました。
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小泉八雲の妻セツの幼少期から始まる物語。小泉八雲になる前のラフカディオ・ハーンがセツと出会い結婚し、出雲から転居するまでを描く。江戸が終わり、明治維新を経て激動の時代を生きた女性を描く視点は「おしん」に通ずるところがあり、まさにNHKドラマの脚本仕立て。事実をもとにしたフィクションだが、脚色の上手さに脱帽です。
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セツさんとヘルンさんが出会うまでが丁寧に書かれていて、興味深かった。続きもぜひ本にしてほしい。
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ヘルンはラフカディオ・ハーン=小泉八雲、セツはハーンの妻の小泉節子です。二人の生い立ちから出会い、結婚、松江での新婚生活までを描いた作品です。全21章とかなり細かな章立てになっています。
それにしてもこの二人の生涯のなんと波乱万丈なこと。その波乱ぶりの一つ一つを各章で竹を切るようにバッサリと明快に描きます。そしてそれらが積み重なって物語が形作られて行きます。判り易くてワクワクします。
読了後、奥付の著者紹介を見て納得。NHKの大河ドラマ「篤姫」などを手掛けた脚本家なのですね。各章が放映一話分、一話ごとに盛り上がりがあって終わる。如何にもそれらしい造りの物語です。そしてビジュアル。
私の中でラフカディオ・ハーンは『怪談』しかなく、どことなく暗いイメージなのですが、ここで描かれるハーンは気さくで日本を愛し、その文化を世界に発信し続けた人として描かれています。教師として松江に赴任したハーンは、世界に追いつこうと躍起になる学生たちに、鎖国によって日本の優れた文化が破壊されなかった、日本人は優秀ですぐに世界に追い付き追い越すだろう。しかし、その先で悩むことになるだろうと語ります。物語の半分を占める没落士族の娘・セツの生き様も見事です(というか、士族の男どもの情けない事)。
これが本当のハーン像かどうかは分かりません。しかし、なかなか痛快で清々しい物語でした。 -
明治という新しい世になったころ、島根県松江の武家の家に生まれたセツ。別の武家の家に養子に出されるも、生家も養子先も、身分制度の廃止により、没落してしまう……。
一方、アメリカで物書きとして働いていたラフカディオ・ハーンは不運が重なり、それから脱却するために、日本という未知の国へ行き、紀行文を書くことにする……。
まず、人々の話す出雲弁がどうにも心地よい。改めて、この時期の士族の大変さを感じたが、元武士とかいう男どもが情けなさすぎて腹が立つ。
そして、この時代の外国人に対する偏見もひどいものがある。ハーンと直接知り合っていない人に限って差別しようとするのだから、これも腹が立つ。
それに対してのハーンの正しさよ。好きな女に告白するために売れてやろう、という野心もりもりで日本に来たところはどうなんだろうと思ったが、日本、そして日本人に対しての見方がすばらしい。うれしくなる。しかし、ハーンが美点と感じる日本人の忠義や
勤勉さは、現代ではどうなのだろう。特にセツの働けるだけ幸せ、という言葉はちょっと現代にもってきてはいけないかも。
会ったことはないのにセツに世話になり、だんだんと気になっていくけれど自分のその気持ちに気づいていないという、なんともいえない想いが良い。
生徒に愛されているハーンの様子を読むと、東大でもやめるときに学生が大反対した(後任の漱石が可哀想)エピソードを思い出した。
本作はハーンが熊本に行くところまでで終わっているが、その後の人生も気になる。
作中に出てくる地名の多くが現在も松江にあるので、ぜひ見に行ってもらいたい。私もヘルン旧居を何十年かぶりに訪れたくなった。『怪談』読もう。
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明治初頭の元武士の生活の変化は大変だったと思う。
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最初は、二人が別々に書かれているので(当然ですが)ちょっと、戸惑いましたが、ハーンが日本に来てからは、スムーズに読めました。
ハーンは小説家なのかと、ぼんやりと思っていましたので、びっくりしたのと同時にとても日本を細かく抒情的に表現していることに感動していました。
外国に人だからこそ出来ることなのか、とも感じました。
この二人が出会うまでのお互いの人生の、何と波乱万丈なことにもびっくり。
「日本の面影」も併せて読んで、ラフカディオ・ハーンという人に興味がわきました。
終盤、「小泉八雲」という名前についてのくだりが、とても良かったなと思いました。