潮の音、空の青、海の詩

著者 :
  • NHK出版
3.23
  • (2)
  • (7)
  • (8)
  • (4)
  • (1)
本棚登録 : 61
感想 : 11
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140056684

作品紹介・あらすじ

小説という形でしか描けない3.11体験と復興が、ここにある!山本周五郎賞・直木賞受賞作家による、渾身の長編小説!

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 仙河海シリーズ(宮城県気仙沼市をモデルにした架空の町を舞台にしている、大震災の前と後の人々を描いた群像劇)の第四弾。


    四弾目にして今回初めて、大震災そのものを描いた。しかし、始まりは仙台から。津波の瞬間そのものを、主人公に語らせてはいない。それから、故郷に戻るために仙河海に戻り、その時に目にした変わり果てた故郷の姿の描写は、仙台在住の正に作者の体験が反映しているのだと思う。


    そういう形で、かなりリアルな小説が続いたかと思いきや、真ん中の章は一挙に2060年に移る。そこで描かれる未来の仙河海市の状況は少なからずショックだった。アウターライズ大地震という地震のことは実は知らなかった。核廃棄物最終処分場誘致を含む巨大公共事業によってしか、小さい街仙河海市が生き残れないという。その未来を変えるために、著者が胸を痛めていることもわかった。小説としてはかなり変形だけど、著者が書かずにはおられなかった気持ちも、最後でわかる。


    かなり気になっていた​「微睡みの海」​の笑子と祐樹のあの後の運命も分かってよかった。

    2017年9月19日読了

  • 構成が素晴らしい。
    時系列通りのストーリーよりも余韻が残った。
    熊谷達也の本を何冊も読んでいるといろいろなところにこれまで読んだ登場人物やその子孫などが出てきて本当に楽しい。
    明治時代の浜の甚平からの登場人物の子孫も出てくる。
    様々な人生時を経ながらが綿々と続いているんだなあと感じる。

  • 3.11のお話。ただの暗い話と人情話で終わりそうだったので途中でヤメた。

  • 仙河海市が舞台です。力作だと思います。熊谷達也さん「潮の音、空の青、海の詩」、2015.7発行です。読了したあと「微睡みの海」(2014.3」からの見事な連続性に気づきました。このタイトルは、そのままこの作品の3つの章立てになってます。第1章は「潮の音(おと)」、2011.3.11後の仙河海です。第2章「空の青」は、なんと50年後の仙河海の姿が描かれています。3章読了後に深い余韻が残ります。第3章「海の詩(うた)」、早坂希、昆野笑子、川島聡太、3人の友情に幸あれとの思いが~~~!

  • 書名と同じく、3部構成からなり・・
    震災の当日・50年後・震災から3年後の仙河海市(架空)が描かれています。
    仙河海市は、著者が仙台市在住でもあり気仙沼市のと重なります。
    また意図せず、東日本大震災の話となり・・以前読んだ本とかさなり、恐ろしい感覚となりました。
    沢山の問題があり、考えさせられてしまいます。

  • ん?
    あれ?
    …。

  • 『微睡みの海』や『リアスの子』と同じ仙河海市が舞台。仙河海が嫌で逃げて行った人も、震災で全てを失い出て行った人も仙河海と人々は優しく迎えてくれる。
    自然に対抗せず、自然と共生することを考えて暮らす。そんな未来へ変えようとする主人公『聡太』。彼の願いは叶うのか。

  • ☆4.5つ
    (と『富士山噴火』高嶋哲夫)

    じつわこの週末に掛けて二冊の本を交互に読んでいた。最初読み始めたのは『富士山噴火』の方。けれど、一気に読む進むのは辛いしシバシバ眠くもなるので『潮の音、空の青、海の詩』にも手を出す。
    そうすると『潮の・・・』の方が読みやすくどんどん進む。そして「希」という名前の女性がチラリと登場した辺りで再チェンジして『富士山噴火』に戻る。すると程なくしてこちらにも名前に「希」という文字が入った女性が登場する。
    この「希」さんは、なんだかちょっと似たような役割をどちらの方も与えられている。

    もともとこの二冊の本はテーマが「自然災害」という似ているところがあるのだ
    が、片や実際に起こった「東日本大震災」を描いた物語。片や全くの空想的物語。明らかに真似などしてはいないと思うが、「希」という漢字に意味を持たせて物語のスパイスに使ったのだろう、という部分で見事に一緒である。いや悪いとは言わないが、ともかく一緒である。すまぬ。

    ・・・・ここから『潮の音、空の青、海の詩』的感想。たぶんm(_ _)m

    そういえばわたしと同じ年令の熊谷達也は技術屋なのである。実際にそういう職業についたかどうかはよくわからないところがあるが、学校で学んだのは電気電子技術のはづである。そして彼わ音楽もやるしとにかく多才である。それが故に小説作品も実にいろん抽斗から出てきたものがあっておもしろい。こういう場合に大抵わたしはこう書いて偉そうに結ぶ・「あとは時代小説だぁ!」すまぬ。m(_w_)m。

    さて本は「潮の音」「空の青」「海の詩」という三つの異なる時代のお話からできているのだけれど、そのうち「空の青」はもうSFそのものです。もしくはSFそのものまではいかんくても、やれタキオン粒子だのリニアコライダーだの果てはチェレンコフ効果だのと、そりゃあもう凄い事になっているのだ。この本単なる東日本大震災回顧録小説、と思ったら大変にびっくりするよ。じつわわたしは相当ビックリしてしまった。(・・)

    今回この本を読み終わる前、も少し言うと前作の『ティーンズ・エッジ・ロックンロール』を読んでいた時から、物語の舞台となる「仙河海市」というのは実在するものだとばかり思っていた。なので今回は、いったいどこだろうと調べてみた。そうすると今更でかなりはづかしいのであるが、そんな町わ実在しなかったのだ。でも間違いなく「気仙沼市」がモデルであることは確信した。熊谷は気仙沼の某学校で先生をしていた時代があるそうだからまあまづ間違いない。
    本を読むときにその物語の舞台となった場所について地図の上で確かめて読む、というのは非常に有意義なことだと思う。ああここのことか、ここなら近くまでは行った事があるな、とか、全く知らなかったけどそういうことか、などと印象に残ってわづかだけれどわたしの空気スポンジ頭脳みそにも溜まるのあった。

  • 第一部は東日本大震災に襲われた仙河海市。
    第二部は、2060年の仙河海市での、9才の少年と老人の話。
    第三部は、震災から3年後の仙河海と元カノとの話。
    傷ついた故郷と自分と友人達の話。
    強く故郷を思う人達が、いろいろな問題を抱えても、故郷に帰ることで解決に向かうのは、そこにいる友人達のおかげ。
    これまでの仙河海市の話ともつながっていて良かった。

全11件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1958年仙台市生まれ。東京電機大学理工学部卒業。97年「ウエンカムイの爪」で第10回小説すばる新人賞を受賞しデビュー。2000年に『漂泊の牙』で第19回新田次郎文学賞、04年に『邂逅の森』で第17回山本周五郎賞、第131回直木賞を受賞。宮城県気仙沼市がモデルの架空の町を舞台とする「仙河海サーガ」シリーズのほか、青春小説から歴史小説まで、幅広い作品に挑戦し続けている。近著に『我は景祐』『無刑人 芦東山』、エッセイ集『いつもの明日』などがある。

「2022年 『孤立宇宙』 で使われていた紹介文から引用しています。」

熊谷達也の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×