白の闇

  • NHK出版
3.93
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本棚登録 : 222
感想 : 36
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  • Amazon.co.jp ・本 (365ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140053621

作品紹介・あらすじ

ある男が突然、失明した。視界がまっ白になる病気。原因不明のまま、伝染病のように感染は広がってゆく。政府はかつての精神病院を収容所にして、患者の隔離をはじめる。そこでは、秩序が崩壊し、人間の本性がむきだしになってゆく。阿鼻叫喚の世界。やがて国中が目の見えなくなる病気に侵されて…。圧倒的な空想力で描かれる現代の寓話。ヨーロッパで最も独創的な作家の衝撃的作品。1998年ノーベル文学賞受賞者・サラマーゴの最高傑作。

感想・レビュー・書評

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  • 感染性の「失明」により町が恐慌を来すという、カミュの『ペスト』のような劇が展開されるのだが、カミュのように主役の医者の超人的な姿はどこにも見えない。

    隔離された患者たちの内部で起こる争い、保菌者(?)たちの全滅をひそかに願う行政組織、など、人間社会のおぞましい姿が描かれて非常に不気味である。

    都市中の人間が失明したら、というワンテーマSFのような設定を梃子にして、人間の呆れるほどの暴力性を暴く。
    げに恐るべきは作家の想像力。

    ジョゼ・サラマーゴは大半の長編が日本語訳されているようなので、続けて読んでみたい。

  • 眼が見えなくなるという伝染病に国民全てが罹ってしまったら。想像を絶する世界が繰り広げられるのに、まるでその世界の様子すら白くぼやけて見えてくるような不思議な小説。

  • ル=グウィンの書評から、早速気になった一冊を読了。ディティールの具体性や感情移入感を好む身としては、こういう寓話的で細部のリアリティに欠ける作風はあまり肌に馴染まないのが正直なところだが、しかし一つの思考実験のような作品として面白かった。視力という、肉体的なファンクションの一つに過ぎないものが多数から奪われただけでいとも容易く獣へと堕ちる、人や社会とは何なのか。

  • コロナ禍/パンデミックになった初期の混乱時に一番に思い出した作品。

    ホラー体験とは違う恐怖が描かれている。読んだ当時、もうやめてと思いながら頁をめくった記憶。

  • 結構分厚い本だが一気に読んでしまった。突然目が見えなくなると言う病気。しかも人に感染する。まさに今読むべき本だと感じた。

  • 人々が次々に視力を失うというシンプルなテーマをこれでもかと掘り下げた内容。その人間性への深い洞察力には気分が悪くなってくる。文体は確かに読み難いし、皮肉な語り口が鼻につくところもあったが、次々に人々が白い闇に閉ざされていく冒頭部分から「次はどうなる、どんな酷いことが起こるんだ?」という不謹慎な好奇心をかき立てられ、流れるように最後まで読み進めた。好き・嫌いを別としても凄い小説を読んだという満足感と充実感がある。

  • 3.87/188
    内容(「BOOK」データベースより)
    『ある男が突然、失明した。視界がまっ白になる病気。原因不明のまま、伝染病のように感染は広がってゆく。政府はかつての精神病院を収容所にして、患者の隔離をはじめる。そこでは、秩序が崩壊し、人間の本性がむきだしになってゆく。阿鼻叫喚の世界。やがて国中が目の見えなくなる病気に侵されて…。圧倒的な空想力で描かれる現代の寓話。ヨーロッパで最も独創的な作家の衝撃的作品。1998年ノーベル文学賞受賞者・サラマーゴの最高傑作。』


    原書名:『Ensaio sobre a Cegueira』(英語版『Blindness』)
    著者:ジョゼ・サラマーゴ (Jos´e Saramago)
    訳者:雨沢 泰
    出版社 ‏: ‎日本放送出版協会
    単行本 : ‎365ページ
    ISBN‏ : ‎9784140053621

    メモ:
    ・世界文学ベスト100冊(Norwegian Book Clubs)
    ・死ぬまでに読むべき小説1000冊(The Guardian)「Guardian's 1000 novels everyone must read」

  • 涙の犬
    人々が視力を失った世界で起こること いかに普段当り前のようにソーシャルワークを享受しているか、人間性の崩壊、無秩序
    高橋源一郎氏は社会の構造を見えなくさせるのが“白の闇”ではないか?との指摘 我々はパンデミックの以前から見えているようで見ていなかったのではないか

  • 水が飲めることの幸せ
    食べ物が食べられることの幸せ
    目が見えることの幸せ
    当たり前のことがありがたいと思える。
    自分の悩みはまだまだ贅沢なんだなと感じさせられる。
    そういう話だった。

    非現実的な話なのにそこまで思わせてくれるのは、極限状態に至った時の人間の言動がとても生々しくて、想像できたからだろうなあ。

    また自分がくだらないことでうじうじしたり悩んだりしたら読みたいと思う。

    しかし、この結末の先を想像すると、そっちの方が怖いよな……
    最後の描写は、いっそ目が見えなくなってしまいたい、という隠れた願望もあるような……

  • 突然の盲目、それが伝染する恐ろしさ。
    不潔な環境の描写がリアル。
    こういう状況でも、男はそこまで性を求めるものなのかなぁ・・
    医者の妻の行動力がすごい。

    途中から文章に飽きて、斜め読みで読み終えたが
    雰囲気にはどっぷり浸かったので
    しばらく「今ここで全員盲目になったら」妄想しそう

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著者プロフィール

1922年、ポルトガルの小村アジニャガに生まれる。様々な職業を経てジャーナリストとなり50代半ばで作家に転身。『修道院回想録』(82)、『リカルド・レイスの死の年』(84)、『白の闇』(95)で高い評価を得て、98年にノーベル文学賞を受賞。ほかに『あらゆる名前』(97)、『複製された男』(2002)など。2010年没。

「2021年 『象の旅』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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