- Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
- / ISBN・EAN: 9784130830706
作品紹介・あらすじ
語ることで立ち現れる虚構の世界.語り手が担う「語り」のしくみを解きあかすことで,小説の物語はより深くより豊かなものとなる.小説を読むとはどのようなことか.語る行為,読むという行為を問いなおす,物語論と日本近代文学との出会い.
感想・レビュー・書評
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【評価】物語論の基本的な用語をわかりやすく解説
「はじめに」には、「語りという切り口によって日本の近代小説のテクストを分析」するとあるが、実際のところ、日本の近代小説の引用を例に、ジェラール・ジュネット『物語のディスクール』の主要な術語(物語内容/言説/行為、等質/異質物語世界的、間接/直接話法、先/後説法)を解説したのが本書である。「内的/外的焦点化」については、ジュネットを批判したミーケ・バル『物語論』の説も紹介されている。
東大(現・名誉)教授による懇切丁寧な解説書で、ありがたく押し戴くのが凡夫に相応しい振る舞いであろう。
「終章」および「あとがき」にある通り、「物語論」は「作品の魅力」(=読者の感銘)を記述する際に用い得る「語彙」を提供する。本書に示されたものも含め、「物語論」の旗印を掲げた小説の分析がひたすらに退屈なのは、道具(語彙)を論じているばかりで、その道具を目的のために駆使し得ていないためである。本書はただ、例文付きの用語集(しかしよく出来た)に過ぎないとも言えよう。
著者には是非、「物語論」というツールが「作品の魅力」を説く上で如何に有益であり得るのか、氏自身の心打たれた小説を例に論じてみせていただきたい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
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