白と黒のとびら: オートマトンと形式言語をめぐる冒険

著者 :
  • 東京大学出版会
4.20
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本棚登録 : 825
感想 : 60
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  • Amazon.co.jp ・本 (324ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784130633574

作品紹介・あらすじ

魔法使いに弟子入りした少年ガレット.彼は魔法使いになるための勉強をしていくなかで,奇妙な「遺跡」や「言語」に出会います.最後の謎を解いたとき,主人公におとずれたのは…….あなたも主人公と一緒にパズルを解きながら,オートマトンと形式言語という魔法を手に入れてみませんか?

<strong>新井紀子氏・推薦</strong>
「すべての誤解は『辞書さえあれば言葉の意味なんてわかる』という思い込みから始まる.その当たり前だが受け入れがたい事実を,本当の意味で教えてくれる本.」

※<strong>本書のプロローグと第1章を<a href="http://www.utp.or.jp/topics/files/2013/shirotokuronotobira.pdf">こちらのPDFファイル</a>(4.53M)で読むことができます</strong>.ぜひご参考ください.

感想・レビュー・書評

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  • タイトルだけ見ると難しそうに見えるけど、簡単に紹介すれば、ファンタジー要素が入った魔法使いの弟子の物語。
    弟子は、魔法使いになるために様々なパズルを解いて魔法使いとして成長していく。
    このパズルを弟子と一緒に考えて解くのが楽しい。
    中身をパラパラ見てみると、図形や記号が目立って難しそうだけど、逆に「図形や記号があるおかげで」かなり理解しやすい。
    文系の人に限らず、理数系の人や、公式を解くのが好きな人に特にすすめたい!
    読んで理解したら賢くなった気分になれた。
    でも私は賢くはなっていない・・・。

  • 『言語学バーリー・トゥード』の著者の、(恐らく)本職の作品。

    きっとオートマトン入門書としてはとっつきやすい部類のものなのだろう。私は単純に小説として読んだが、9章ぐらいまではオートマトンについてもそれなりに理解しながら読むことが出来た。

  • オートマトンシステムを魔法に例えた本作には前々から興味があり、やっと読むことができました。

    ストーリーとしては王道と言った印象を受けましたが、それのおかげでオートマトンシステムを理解する事に意識向けられたので、よく計算された一冊だなと思いました。

    唯一の欠点は値段が高い事です。小説ではなく、専門書と割り切ってみないとなかなか手が出ませんでした。

  • オートマトンという言葉だけは聞いたことがある、
    という状態で読んでみた。

    頭を使う必要があるが、
    物語のストーリーにはほぼついていけた。
    ただ、最後の最後、
    「万能装置で表現できないもの」
    は日本語を繰り返し読んでもピンとこなかった。
    クライマックスっぽいのに、そこが無念。。。

    とりあえず私の中では、
    「現状と入力によって次の状態が決まる規則がある」
    「オートマトンで実現できない境界がある」
    という考え方が大事、と捉えたが・・・

    さて、私はこの本を通して、
    オートマトンの基礎概念を理解できたのだろうか?
    今の時点では、正直よくわからない。
    オートマトンを勉強した後振返ってみて、
    初めてこの本の価値が理解できるのだろう。きっと。

  • 副題の「オートマトンと形式言語をめぐる冒険」が本書の肝。私は第2章まで読んだところで挫折してしまったけど、算数と言語が大好きな息子は飯食うのも忘れるくらいの没頭度で夢中になり、読み終わった後そのまま2回目を読んでいた。同じ著者の『働きたくないイタチと言葉がわかるロボット 人工知能から考える「人と言葉」』を読んでみたい。

  • 読み始めた頃は「なんの話をしているんだ??」と、なんというか、まるで普通の(面白い)物語で、時々謎解きが出てきて頭を使わされる、という読み物のイメージだった。自分はオートマトンという物になんの知識もないので、何をさせられているのかは全く分からず、わからないけれど自分が一生懸命前の章でやったことが次の章の謎解きに活きてきたり、ふと読んだ一文が頭に思い浮かんで「これが関係するんじゃないか?」と思って当たっているのが嬉しかったり、よくわからないときは主人公が丁寧に順を追って考えてくれる思考に乗っかって「なるほど…」と思ったり、そうやって本当に楽しく本を読み進めた。一番の衝撃が読み終わった時の「解説」を読んだ瞬間だ。そんなことに繋がっていたのか。そんなすごそうなものを自分はやっていたのか。いきなり専門用語を出されたら理解できたか分からないけれど、主人公と共に、物語に乗っかって、興味深い謎になっていたから取り組めたなと振り返って改めて思った。この本は非常に勉強になる。何をさせられているかは考えず、まずは楽しく読み進めて欲しい。

  • 2017.6記。

    魔法使いの弟子が古代の言葉を解読する、という形で学ぶコンピュータの仕組み。実は続編の「精霊の箱 チューリングマシンをめぐる冒険」を先に読んでしまっていたが、やはりこちらから読む方が分かりやすいと思う。

    この本では、文字の集合が言語であること、あるルールで並んでいる文字列が言語かどうかは実はそう簡単には判定できないこと、といったことが説明される。

    読み物としても面白く、魔法使いの師と弟子との会話が結構笑えたりする。弟子が「便利な技術」のつもりで魔法を学んでいくうちに、いつのまにか真理探究の道に目覚めていくところもぐっとくる。すごい本。

  • オートマトンの話でもあるけど,教育論も隠されていると思います(特に学ぶ側のあり方)。アルドゥインとガレットの側面が自分の中にあることを認識しました。

    とはいえ,アルドゥインは碇ゲンドウのように,他人を信頼していない性質があるところもあり,教育への疑義という側面も描かれているように思いました(アルドゥインは,「信頼できるかどうか分からない他人をわざわざ自分で教育する (p.300)」という考えの持ち主)。

    設定が設定だけにもっとイラストがあるといいと思うけど,全部をイラストにしてコミック化しても,数学ガールほどは売れないだろうな。でも,出れば買います。

    あと,科学であるはずなのにある種の宗教化した見方に毒されたり,それによって若い才能の目が摘まれたりと,学会が全てそうであるというわけではないけれど有り得そうな学会体質が,間接的にチクッと記述されている気がします。抽象的に物事を捉えられば(数学ガールでは「構造を見抜く目」のことでしょう),そういうアホ状態から抜け出せるのかもしれません。


    *****
    「お前にはまだ分からないかもしれないが,人を一人育てるというのは,本当に骨の折れることだ。細かい配慮が必要だしな。しかもそのような配慮は,育てられる側にはあまり気づかれない。育てられる側は,自分が成長するのに精一杯だから,仕方のないことだが」(p.36)

    「またお前は,いっぺんにすべてうまくいく案を思いつこうとしているのだろう。それは身の程知らずというものだ。お前には,自分の能力に合わせて,まず小さいところから少しずつ積み上げようという謙虚さはないのか?」(p.50)

    「何もかも自分でやらなければ,自分でやったことにはならない,とでも思っているのか? そういうのはな,子どもの発想だ。大人はそうは考えない。どんな人間にも,力の及ばない面はある。やり遂げなくてはならない仕事が大きなものであればあるほど,一人の力ではどうしようもなくなるものだ。そのようなときは,自分に何が必要で,何が足りないかを冷静に考え,頼るべき人に適切な仕方で頼るのだ。そして自分も他人から頼られたときに期待に応えられるよう,つねに力を磨いておく。自分の力の限界と,自分と他人に与えられた役割とを考慮し,日々精進する。それが大人だ」(p.299)

     肉体は物体だ。何からできているかを見るかぎりでは,我々の体も,その辺に転がっている物とほとんど変わらない。しかしなぜ,我々は話したり,思考したりすることができるのか。(pp.299-300)

  • 形式言語に関する自分の知識が乏しいこともあって、その点ではあまり楽しめず、残念。
    主人公の成長の物語としては、楽しむことができましたが。

    もっと「言語寄り」の本を想定していたのですが、論理学や数学寄りの内容でした。
    参考文献に、オートマトンや形式言語に関する本が紹介されていたので、今後のためにも、何冊か参考文献も読んでみたいと思います。

  • これ情報系の試験で見た事ある!っていうオートマトンがまさか言語と結びつくとは思わなんだ。しかも物語形式で、試練の祠を1つずつ攻略していくワクワク感も味わえる。主人公の成長が自分の成長に繋がる物語式学術本

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著者プロフィール

川添 愛(かわぞえ・あい):1973年生まれ。九州大学文学部卒業、同大大学院にて博士号(文学)取得。2008年、津田塾大学女性研究者支援センター特任准教授、12年から16年まで国立情報学研究所社会共有知研究センター特任准教授。専門は言語学、自然言語処理。現在は大学に所属せずに、言語学者、作家として活躍する。 実績 著書に『白と黒のとびら』『自動人形の城』『言語学バーリ・トゥード』(東京大学出版会)、『働きたくないイタチと言葉がわかるロボット』朝日出版社、『コンピュータ、どうやってつくったんですか?』(東京書籍)『ふだん使いの言語学』(新潮選書)など。

「2023年 『世にもあいまいなことばの秘密』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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