オランウータン: 森の哲人は子育ての達人

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  • 東京大学出版会
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (196ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784130633499

作品紹介・あらすじ

子育ての達人——オランウータン.アジアの熱帯雨林で暮らす「森の哲人」たちの究極の子育てを紹介.長い時間をかけて,とても大切に子どもを育て上げる母親たちの育児から,ひとりで生きていてもけっして孤立はしないユニークな社会がみえてくる.

感想・レビュー・書評

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  • 新着図書で見かけたので。

    とにかく面白かった。
    類人猿の本はいくつか読んできたが、それでも新たに知る興味深い事実があった。
    霊長類で『白目』があるのはヒトだけで、視線を用いたコミュニケーションを活発化させるための進化ではないかとか、
    チンパンジーやゴリラの乳児には白い毛が生えていて、生えている間は何をしてもオトナに怒られることは無いが、
    白い毛が抜けると群れのルール、社会ルールに従わないと怒られるとか。

    オランウータンについては、知らないことがほとんどでとても興味深かった。
    まずは、性的に成熟した雄には、社会的に優位な雄だけが「変身」してフランジ雄となる「二型成熟」があるということ。
    (そのためアメリカの動物園では高圧的な飼育担当者が、他の飼育担当者に変わった後にフランジ雄になったことがあるとか)

    フランジ雄は妊娠可能な雌の方からやってきて多くの子供をのこせるため、フランジ雄どうしで最優位の地位を巡って激しく闘うが、
    フランジ雄となっていないアンフランジ雄は相手にしない。
    アンフランジ雄の方は、雄どうしの争いを避け、雌を追って親しい関係を築いたり、ときに力ずくで交尾をする。

    ただ単に年を重ねれば、すべての雄がフランジ雄になれる訳ではないし、
    フランジ雄となるためには雄性ホルモンの大量分泌が必要なため、不可逆性だと考えられている。
    フランジ雄となるか、アンフランジ雄としてとどまるか。
    意識的な選択ではないと思うが、オランウータンの雄の戦略は面白い。

    一方、雌の方は、初産年齢が15歳前後、出産間隔が7年、基本的に一回の出産で1頭と、究極の少子で、
    ヒト以外では、これほどコドモを長期間手厚く世話をし、育てあげる動物はいないらしい。
    樹上生活のため、感染症リスクや肉食獣に襲われるリスクが低いのもあり、乳幼児の死亡率が低い。
    雌が繁殖を開始するまでに生存できる確率94%は、ヒトよりも高く、
    これを上回るのは先進国のヒトの女性99%のみということだ。

    その子育てのなかでも、
    コドモと他個体が遊ぶ機会を重視しているのが印象的だった。
    オランウータンは群れで行動しないため、他のコドモやワカモノと接触する機会は非常に限られている。
    そのため、コドモが他のコドモと遊びだすと、あきるまでひたすら母親は待つ。
    自分の摂取カロリーを減少させることになっても、優先するという研究結果もあるそうだ。
    コドモの社会性を養う重要性を理解しているためと考えられている。

    また、筆者本人のことも面白かった。
    筆者が就職活動の最終面接で面接官に「君は研究を続けたいんでしょう」と言われて不採用になって研究者になったとか、
    優秀なリサーチアシスタントを得るためには、
    素直でまじめな若者を時間をかけて育てることだとか、
    オランウータンの母親がコドモが他のコドモと遊びあきるまでひたすら待つ姿に、自分の子育てを振り返るとか。

    まだまだ謎の多いオランウータンの姿が明らかになることを期待したくなる一冊だった。

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著者プロフィール

国立科学博物館人類研究部特別研究員(RPD)

「2019年 『正解は一つじゃない 子育てする動物たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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