丘のうえの民主政: 古代アテネの実験

著者 :
  • 東京大学出版会
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  • Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784130230490

作品紹介・あらすじ

理論から導き出されたものではなく,試行錯誤の積み重ねにより獲得された経験の集成−−それが古代アテネの民主政であった.民主政をつき動かした「参加と責任」という原則に注目し,直接民主主義を実現したアテネの人々の精神と行動を描き出す書き下ろし作.

感想・レビュー・書評

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  • 読後気分としては
    (・0・。) ホホ-ッ
    って感じでした。私的に非常に学べた本でした。
    古代アテネの民主政がいかなるものだったか、ということを論じた本です。

    古代アテネの民主政は、哲学者プラトンや歴史家トゥキディデス、文筆家クセノフォンの民主政に対する芳しくない記述や、民主政に反する勢力として「三十人政権」を生み出してしまったことなどから、ペロポネソス戦争後半において、民衆を甘言で弄し、後先を顧みない政治家が権力を握る「衆愚政」に堕ちてしまったとされてきました。けれど、筆者はそれを否定し、むしろ三十人政権後の、民主政が復活したアテネにおける民主政の完成度の高さを強調します。
    三十人政権後、とくに哲学者ソクラテスが処刑された後は、アテネの内情はあまり注目されていない(教科書の記述をみればわかりますとおり)ので、そこに注目した本としては非常に評価できる本だと思います(でもペリクレスやミルティアデスのようないわゆる「スーパースター」がいないので、ちょっと飽き飽きしてしまうかもしれないですけど)。

    また、古代アテネの単純に見えて複雑な政治構造を、解りやすいように現代日本とくらべて説明しているところも面白かったです。意地悪な読み方をしてしまうと、現代の日本の政治構造への批判とも取れなくもないですが。でも単に古代アテネと現代日本の根本の考えから全く違う政治構造を比べて、読み手側がどう受け取るか、というだけの話だと思います。

    でも、この著者の言うように、もし三十人政権以前の民主政が衆愚政に陥っておらず、ペロポネソス戦争後半の政治家たちが、民衆に惑わされず本気でアテネをよくしようと頑張っていって散っていったんだとしたら、ものすごく切ないなぁ…、と個人的に思いました。

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著者プロフィール

1961年、札幌市生まれ。東京大学文学部卒。同大学院人文科学研究科博士課程修了。博士(文学)。現在、東京大学大学院人文社会系研究科教授。主な著書に『アテナイ公職者弾劾制度の研究』『賄賂とアテナイ民主政』『西洋古代史研究入門』(共著)ほかがある。

「2016年 『民主主義の源流 古代アテネの実験』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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