西巷説百物語 (C・Novels BIBLIOTHEQUE 73-7)

著者 :
  • 中央公論新社
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本棚登録 : 149
感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (613ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784125012131

感想・レビュー・書評

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  • どうにもならぬことをどうにかする裏商売、舞台は江戸から大坂へ。仕掛けるは御行の又市が朋輩、靄船の林蔵。帳屋の看板を掲げる優男が絵草紙版元“一文字屋”から請け負うは、生者を彼岸に導く狂言仕事。口先三寸の嘘船に乗り、気づかぬうちに絡めて取られ、通らぬ筋が一本通る。踊る亡者を前にして、露わになるのは真情か―いくつかの巷説を経、林蔵が大坂を離れた十六年前の「失敗り」、その真相が明らかになる。これで終いの金比羅さんや―

  •  この本を読むために、巷説シリーズをすべて再読しました。
     主役が又さんではないので、いつもと違うやり口に驚き、楽しみました。
     又市のかつての相棒、林蔵がメインのお話です。
     全然関係ないですが、これを読んでいるときに念願の盆栽を始め、せっかくなので松の名前つけようと思い、「松蔵」と命名しました。
     「これで終いの金比羅さんや」
     正直、金比羅さんに親しみがない私ですが、なんだかかっこいいと思いました。(単純です)京極さんはかっこいい台詞を生み出しますね。
     大体の話がその話のメインとなる、腹に一物抱えているような人が語り手となります。京極さんはこういうところがすごいのですが、その人になりきって、その人が思うこと、感じることを書いているので、かなりその人に感情移入をしながら読むことができます。
     昔、まだ小説を読むことに慣れていないときに、京極堂シリーズの関口君のパートを読んで、めちゃくちゃ暗い気持ちになりました・・・。
     引き続き京極さんの読んでいない本を読んで行きたいと思います。

  • 主役は又一ではなくて林蔵。
    舞台も江戸ではなく上方。
    と、今までの巷説百物語の外伝ポイ感じ。
    時代も多分、後巷説の前くらいだろうか?
    とりあえず、外伝であれもう読めないと思っていた作品が読めて良かったかなあと。
    だたし、又一と林蔵は勿論、やり方や性格が違うので、その辺の残念さは残ったりはする。
    あと、割と話が似通ってる感じなのもちょっといただけないかなあと。
    とは言え、中盤過ぎたら仕掛けも徐々に大きくなってくるし、最後の大集合みたいなのはどうやってもワクワクする話でありましたけど。

  • 他の本からの引用が多すぎて読んでないとわからないこと多し。

  • "西巷説百物語"京極夏彦著 中央公論新社C・NOVELS(注意:2012/08/24発売)
    (2010年7月 角川書店単行本のノベルス版)

    ・・・”巷説百物語”シリーズの五作目。今度の舞台は西。主役は又市ではなく、”これで終いの金比羅さんや”を決めセリフにして”靄船の林蔵”。

    ”桂男”・・・大店として成功した男。男に娘を貰いたいという若者が出てくるが。若者は乗っ取りの悪評のある大店の次男であった。男は”策”があることを知りつつ婚姻をすすめようとするが・・・。

    ”遺言幽霊 水乞幽霊”・・・目覚めると記憶を失っていた男。周りのものは男が兄と父の死後、店を継いだとかたらいだすが、どうも記憶とは齟齬があり・・・。

    ”鍛冶が嬶”・・・刀職人が”嫁の中身が変わってしまった。妖物では?”と語りだすが・・・。

    ”夜楽屋”・・・人形浄瑠璃。楽屋が荒らされ、”人形同士が争ったのでは?”との話が。8年前も同様の騒ぎがあり、一人死亡していたのだが・・・。

    ”溝出”・・・十年前、村で疫病が流行。男は死体を一箇所に集め焼き払った。村の顔役となった男の元に死体焼き場の幽霊騒動の話が持ちかけられる・・・。

    ”豆狸”・・・酒屋を継いだ男。微々たる物だが、売上が合わない店が出てきた。”豆狸”のせいでは、とう人もいるが・・・。(この話だけ、ちょっといい話的な終わり方。(笑))

    ”野狐”・・・林蔵の噂を聞きつけた女。女は”林蔵”の所在と殺しも請け負う辰造の殺しを一文字屋に依頼するが・・・。”前巷説百物語”以前、又市と林蔵が大阪を離れるきっかけになった事件も明かされる。又市、山岡も登場する最終話。

    ・・・主役が林蔵となったものの、話の大枠・雰囲気などは変わらず。安定の一冊。(どちらかが大幅に変わるのも期待してましたが・・・。)
    ”前巷説百物語”→本巻、と読むと林蔵の成長ぶりが楽しいですね。
    最終話で大坂を出ることに決めた林蔵。次は江戸か、はたまた別の土地か。”尾張巷説百物語”なども面白いかと。

  • 新書刊で再読。話の多くは忘れていたが、読み進めていくにつれて落ちを思い出してしまったので、先は見えていたものの、それを差し引いても十分に楽しめた。最後の又市の登場と店仕舞の林蔵のセリフから西としての次回作はないのかもしれないが、別の舞台での再登場を期待したい。

  • 林蔵は又さんに比べるとキャラが弱いなぁ、とか、やっぱり百介さんがいないとイマイチかな…とか思いながら読み進めていたんですが、最終章!
    …あいかわらず仕掛けの凝ったお話を、たっぷり堪能させていただきました。

  • これで終いの金比羅さんや。

    初め当事者の語りから入りつつの構成が読んでるこちらも一緒に騙されてるような感覚になりますね。
    自分の感情だってほんとのとこどこから来てるか分からない時だって多々あるのです。いつだって靄船に乗っているが如し。

  • 待ってた新書落ち。台詞がちゃんと読めずに頭の中がエセ関西弁でいっぱいに。

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著者プロフィール

1963年、北海道生まれ。小説家、意匠家。94年、『姑獲鳥の夏』でデビュー。96年『魍魎の匣』で日本推理作家協会賞、97年『嗤う伊右衛門』で泉鏡花文学賞、2003年『覘き小平次』で山本周五郎賞、04年『後巷説百物語』で直木賞、11年『西巷説百物語』で柴田錬三郎賞、22年『遠巷説百物語』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『死ねばいいのに』『数えずの井戸』『オジいサン』『ヒトごろし』『書楼弔堂 破暁』『遠野物語Remix』『虚実妖怪百物語 序/破/急』 ほか多数。

「2023年 『遠巷説百物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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